ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿
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 凛&鞠莉、ついでに善子回の後編です!
 ついに女の子を孕ませてしまった零君の末路は……??


身体は子供、頭脳も子供、その名は――――

 

「おい、何故俺の手首を掴む……」

「所構わず女の子を産ませちゃう零くんは、これから署に連行するからね」

「署に連行するのは探偵じゃなくて警察の仕事だろ……。しかも問題はそこじゃないし」

 

 

 凛と鞠莉の斜め上の推理のせいで、突如2人の捜査対象が善子から俺に向いた。2人は『いつかコイツはやってしまうと思っていました』と言わんばかりの顔で、尾行そっちのけで俺を問い詰めようとしている。

 

 

「まさか先生と善子の間に、既に赤ちゃんがいたとはねぇ……」

「でもそう考えると、これまでの善子ちゃんの行動も全部納得できるよね。善子ちゃんがシャンプーを気にしたり髪に気を使ったりしていたのは、子持ちになったことで大人の女性にならないといけなかったから。赤ちゃん用のミルクを買ったのはまさにその裏付けだよ!」

「善子が私たちに何も言わなかったのは、先生に無理矢理襲われて望んでいない赤ちゃんが産まれたことを知られたくなかったから」

「だけど産まれた赤ちゃんに罪はない。だから善子ちゃんは仕方なくその子をこっそり育てることにしたんだね」

「そして先生は何も知らないふりをして、自分の罪を誤魔化そうとしている……まさにGuilty」

「凄い! やっぱり凛たち探偵の才能あるかも! だってここまで事実が1本に結び付くなんて、ナイス推理だよ鞠莉ちゃん!」

「凛さんのおかげだよ! さぁ先生、観念してね♪」

「茶番はもう終わったか……?」

 

 

 清々しいほどの冤罪に鼻で笑ってしまいそうになる。だが現状の証拠だけでは俺と善子の間に赤ちゃんが生まれたと推理できなくもないので、一概にコイツらの推理を否定できないのも事実だ。もちろん善子が子供持ちだと裏付ける証拠も全く確証がないため、凛と鞠莉の推理は早計にも程があるのだが、何故か自信満々なのはなんでだよ……。2人共自分の考えには絶対的な自信を持っているようで、どうやら意地でも俺を犯人に仕立て上げたいようだ。

 

 つうか、凛は自分の彼氏が女子高校生を無責任に産ませる男でいいのかよ……?

 

 

「おい、善子はいいのか? もう会計に行っちまったぞ」

「そういって凛たちの気を逸らそうとしても無駄だよ。もう調べはついてるんだから!」

「調べって、どうせ思ったことを衝動的に喋ってるだけだろ……」

「先生、私たちとは遊びだったのね!!」

「急にシリアス展開へ持っていこうとすんな!」

「だって、昼ドラ的なシチュエーションに憧れてたんだもん」

「探偵やってんじゃねぇのかよ……」

 

 

 これではっきりしたな。凛と鞠莉は善子を心配する以前に、自分たちの好奇心と欲求を満たすために探偵をやっていたのだと。そう結論付けた瞬間に帰りたくなってきたんだが、もういいかな? これ以上コイツらと一緒にいると犯人にされるわ尾行の片棒を担がされるわで、俺にメリットが一切ない。そもそも凛や鞠莉が善子を不審がっていたのも本当かどうか怪しく、探偵をやりたいがために俺への説明を盛っていたとも考えられる。こんな胡散臭くもない推理をするくらいだから、その可能性は大いに有り得そうだ。

 

 だったらどうするか。

 うん、帰ろう。

 

 

「さて、凛は零くんをμ's署へ連行するにゃ」

「それだけはやめろ。女の子を孕ませたなんてデマ、信じる奴がたくさんいるから。特に楓から何をされるか分かったもんじゃねぇ……」

「それじゃあAqours署へ連行ね!」

「善子が産まされたなんてデマを千歌たちに伝えてみろ。一瞬でグループ解散の危機だぞ」

「もうっ、零くんが取れる選択肢は2つに1つだよ!」

「このまま帰るという選択肢を寄こせ!」

 

 

 いくらデマであっても、神崎零と津島善子の間に子供ができたと聞いて驚かない女の子は俺の周りにいない。そうなれば事態を終息させる作業が発生してしまい、それまた面倒なので危ない芽はここで摘んでおくのが正解だ。つまりここでコイツらの推理を受け流し、何もなかったかのように帰宅するのが一番いい。下手に2人の会話に乗ってしまうと探偵ごっこに付き合わされるからな。

 

 

「も~う! 零くんってばノリわる~い!」

「ノリで女子高生を産ませた犯罪者にされるこっちの気持ち考えたことあんの?? ま、俺のことはどうでもいいけど、これ以上善子に関わるのはよせ。アイツにもプライベートがあるだろうし、それを詮索する権利は誰にもない」

「先生は気にならないの? どうして善子の様子がおかしかったのかとか、さっき赤ちゃん用のミルクを買ったのかとか」

「さぁな。別に悪いことをしてるようには見えないから、コソコソ覗き見る必要もないだろ。ほら、善子も店を出るみたいだし俺たちも帰るぞ」

「「は~い……」」

 

 

 善子がスーパーを出たタイミングを見計らい、俺たちも外へ出る。

 凛も鞠莉も善子のことが多少心配な気持ちは分かるのだが、ストーカー紛いの行為で彼女の周りをウロチョロする方が迷惑だろう。買ったものから推察するに誰かとデートする訳でも危険なことをしようとしている訳でもないので、わざわざ尾行しなくても問題ないという判断だ。凛も鞠莉も理解してくれたようで、探偵ごっこができなくなってつまらなさそうにしつつも、しっかり俺の言いつけを守ってそれぞれ帰路に着いた。

 

 ただの自己満足でも他人に迷惑をかけるな。ためになる教訓を掲げた上で、今回のお話はこれにて幕を降ろすことにしよう。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 なぁ~んて、簡単に降ろさねぇよ。

 騒がしくも賑やかなアイツらが帰ったことで、俺の尾行がバレることはほぼ0となった訳だ。実はこれまで気付かれていないと言っても、凛と鞠莉が騒ぎ立てるたびに善子は後ろを振り返ったり周りを気にしていたので、内心はかなりヒヤヒヤしていた。でもこれからは俺1人での追跡なので、そんな心配は無用だろう。アイツらがいたらいつ善子に俺の存在が気付かれるか分かったもんじゃねぇからな。

 

 こうして尾行を続けているは探偵ごっこでも何でもなく、ただ単に善子の動向が気になるからだ。もしかしたらプライベートかもしれないが、もしかしたら何か悩みがあって1人ぼっちで解決しようとしているのかもしれない。凛と鞠莉の話が本当であれば、今の彼女が背負っている状況はただ事ではない可能性が高い。そう考えると尾行を途中でやめるにやめられなくなっちまったんだ。まあ結局は過保護なだけなのだが、やっぱり心配なんだよ。

 

 俺は人込みに紛れながら善子の追跡する。時たま彼女が周りをキョロキョロとするので、その時は物陰に隠れてやり過ごす。まるでストーカー技術が身に付いているようだと思うかもしれないが、いくら俺でもコソコソ女の子を付け回したことなんて今回だけだからな? それに陰キャじゃないんだから、女の子と接触したかったらわざわざ尾行なんてせず直接声をかけるから、俺ならね。

 

 

 凛と鞠莉がいなくなったことで追跡はスムーズに進み、周りに人があまりいなくなった閑静な住宅地に入っても俺の存在はまだ気付かれていない。

 

 ――――――と思っていたのだが、突然何者かに服の裾を掴まれていることに気が付く。

 ま、まさか!? 女の子をストーカーしてる変質者だと疑われちゃった!? や、やべぇ……!!

 

 

 …………って、あれ?

 

 

「凛? 鞠莉……?」

「……………」

「……………」

 

 

 恐る恐る振り返ってみると、俺を制止していたのは帰ったはずの凛と鞠莉だった。2人共ジト目で俺を見つめ不満気な表情を浮かべている。

 どうしてコイツらがここにいるんだよ……。

 

 

「お前ら帰ったんじゃないのか……?」

「零くんの考えなんて凛にはお見通しだよ! それっぽいこと言って凛たちを追い払って、でも善子ちゃんのことが心配だから自分だけ尾行を続けようたってそうはいかないもんね!」

「それに先生なら、怪しい行動をしている女の子を見過ごすはずがないと思ってね。全く、優しいけど不器用な人」

「じゃあ何か、お前らは善子の尾行をしている俺を尾行してたってことか?」

「Exactly! 私たちの尾行を見抜けないなんて、先生もまだまだだね!」

「ったくお前らなぁ……」

「これでも凛たちだって善子ちゃんのことを心配してるんだからね。そりゃ探偵ごっこが楽しくないかと言われたら嘘だけど、それはあくまでついでだから」

「善子が私たちに内緒でどこかへ行こうとしてるんだから、下手に直接口を割らせるよりもこうして尾行した方が真相を確かめやすいしね。それくらいは考えてるんだよ、私たちだって」

 

 

 なるほど、遊びかと思っていたが本心ではしっかり善子のことを心配していたのか。もちろん探偵ごっこをやりたかったってのもあるんだろうけど、それは善子に気を使わせないための名目上であり、彼女を心配する気持ちは俺と同じだったらしい。なんだか急に頼もしく見えてきたよコイツらが。

 

 

「分かった。でも騒がしくするなよ?」

「もち! 凛たち3人は探偵なんだから!」

「そうと決まれば、早く善子のお悩みを解決しにLet's Go!」

「俺も入ってんのね。ていうか騒がしくするなって言っただろ!?」

 

 

 また騒がしくなっちまったが、これはこれで悪くない気がしてきた。これって最初は主人公たちにツンツンしていたライバル系のキャラが、戦いを共にしていく間に主人公たちを認め、やがて主人公をヤンデレのごとく執着して心配をするパターンに似てるな。俺ってそんなチョロいキャラだったっけ? どうも大人になってから平和を求めすぎて周りに流される傾向にある……かも?

 

 

「あっ、見て! 善子ちゃんが路地裏に入っていったよ! 凛たちも追いかけなきゃ……くしゅん!」

「どうした風邪か? スクフェス前に体調は整えとけよ」

「体調は万全なはずなんだけど、さっきから鼻がムズムズして……くちゅ!」

「凛さんのくしゃみ可愛い♪」

「もうっ、そんなのはどうでもいいの! 早く善子ちゃんを追いかけないと……くしゅっ!」

 

 

 風邪じゃないとしたら、どうしていきなりくしゃみなんて……? 細かな粉塵が舞っているのかもと考えたが、俺や鞠莉が何ともないことからその線は薄い。それに小さいくしゃみが間髪入れず連発して起こるこの現象は……あっ、もしかして! シャンプーにヘアブラシに赤ちゃん用のミルク、人影のない路地裏への用事、誰にも言えない秘密――――――そうか、善子が何をしようとしているのかようやく分かったぞ。

 

 

「まさかあの路地裏に、零くんと善子ちゃんの赤ちゃんが!?」

「無責任に種付けをされ産まされ出産をしちゃったけど、赤ちゃんには何の罪もないものね。でもこんなところで子育てだなんて……」

「まだその推理続いてたのかよ! 俺たち探偵仲間じゃないのか!?」

「しっ、静かに!」

「はぐらかしてんじゃねぇぞ……。それにアイツが何をやってるのかもう分かったから、もうバレても問題ねぇよ」

「へ……?」

 

 

 善子は建物の陰に置いてある段ボールに近づくと、先程スーパーで買ってきた赤ちゃん用のミルクを小さな容器に入れる。

 そして、その容器を段ボールの中にそっと置いた。

 

 

「あ、あの中に先生の赤ちゃんが!?」

「だから違うって言ってんだろ!? ほらよく見てみろ」

 

 

「にゃぁ~」

 

 

「あっ、猫の鳴き声だにゃ! って、猫!?」

「だ、誰!?」

「「あっ……」」

 

 

 この一瞬で色々なことが起こり過ぎて、凛と鞠莉、そしてようやく俺たちの存在に気付いた善子は数秒間目を丸くしてお互いを見つめ合う。特に善子の場合は先輩スクールアイドルの凛、同じAqoursメンバーの鞠莉、更に元恩師である俺と、各方面から精鋭が勢揃いしているため状況の把握に時間を要しているのだろう。もはや段ボールの中の猫すらもほったらかしで、ついにバレたと言わんばかりの強張った顔をしていた。

 

 

「くしゅん! なんだ、善子ちゃんは零くんとの赤ちゃんを育てていたんじゃないんだね」

「先生との赤ちゃん? 何を意味分かんないこと言ってるのよ……。それにどうしてアンタたちがここに!?」

「善子のことが心配で勝手についてきちゃったのよ。SorrySorry!」

「あぁ、やっぱり気付かれてたのね……」

「俺は寝てるところを無理矢理連れて来られただけだがな……」

 

 

 しかし凛たちが俺を探偵ごっこに引き込んでくれたおかげで善子の様子がおかしいことにも気付けたし、最初は厄介事に巻き込まれて陰鬱だったが結果的には感謝だよ。どうも最近は女の子の微妙な変化に気付けず鈍感な自分を晒してしまうことがあるから、どうにかして意識改善をしていかないと……。

 

 

「零くんはどうして善子ちゃんが猫のお世話をしに行くって分かったの?」

「わざわざシャンプーやヘアブラシを新調したってことは、自分以外の誰かの髪質に合わせるためだ。その時点では善子が会おうとしているのは人間か動物か分からなかったけど、赤ちゃん用のミルクを買った時点でピンと来たよ。もしかしたら動物の赤ちゃんなんじゃないかってな。そしてその動物の種類が分かったのは、凛が小刻みなくしゃみをしたから。動物アレルギーの人はそんなくしゃみの仕方をしちゃうことがあるんだよ。つまり、猫アレルギーの凛がくしゃみを連打してたから善子の会おうとしている相手が子猫って分かったんだ」

「なるほど、さすが先生! それにしても、凛さんって猫アレルギーだったのね」

「大人になってかなり治ってきたと思ったんだけど、まだ少し出ちゃうね……くしゅんっ!」

 

 

 しかし、凛が猫アレルギーだってことを久しぶりに思い出した。善子が小動物に会いに行こうとしていることを予想していなかったら、恐らく直接対面するまで子猫だってことは断定できなかっただろう。つうか今更ながら凛の猫アレルギー設定を回収するんだな。設定って言っちゃったけど。

 

 

「心配をかけたのは謝るけど、今はこの子たちよ。今日はちゃんとミルクを飲んでくれるといいんだけど」

「Oh! 子猫たちが3匹も!」

「ソイツら捨て猫か?」

「2日前に私がここを通りかかった時から段ボールの中にいたから、多分そうね」

「えっ、それじゃあ今日を合わせれば3日もここにいるの?」

「だからお腹が空いてると思って昨日から色々買ってきてるんだけど、この子たち全然口をつけないのよね。さっき買った赤ちゃん用のミルクも飲んでくれないし……」

 

 

 段ボールの中にいる子猫は3匹。だがソイツらは誰も善子の入れたミルクを口にせず、3匹身体を寄せ合っている。

 子猫たちの身体をよく見てみるとところどころにフケや汚れが溜まっており、こう言っちゃアレだがかなり汚い。しかしそんな様子から、捨てられて3日経っていることは疑う余地もなく明らかだ。しかも元気がないことから食べ物も飲み物もロクに受け取っていないことも分かり、ほぼ衰弱に近いほど体力が低下しているようだった。

 

 

「もうっ! お腹が空いてるのなら素直に受け取りなさいよね!」

「どうしよう、凛たちのことを怖がってミルクを飲みたくないのかな……?」

「このミルク、買ってきたばかりだから冷たいんじゃないのか?」

「そ、そうだけど……」

「子猫に冷たすぎるものを与えると逆に腹を壊しちゃうぞ。人肌でそれなりに温めてからあげてみろ」

「え、えぇ……」

 

 

 善子はミルクを自分の腋に挟んで1分ほど温めると、小さい皿にミルクを垂らし3匹の子猫の前に差し出す。

 すると、さっきまで段ボールの端で石像のように動かなかった子猫たちがピクリと反応した。そして徐に立ち上がると、3匹揃ってミルクの入った皿に近付く。最初は少し躊躇していたものの、真ん中の猫が舌を伸ばしてミルクを1口飲んだのを見ると、残りの2人も真似をしてミルクを飲み始めた。

 

 

「飲んだ……。やっと飲んでくれた!」

「3匹揃ってミルクを飲む姿、可愛いにゃ~♪」

「先生って猫に詳しいんだ?」

「昔だけど、母さんが捨て猫を拾って飼っていた時期があってな。その時に世話の方法を覚えたんだ。もうかなり前だなぁ、いつだっけ……?」

 

 

 猫を飼ってたのは辛うじて覚えてるんだけど、俺が何歳の頃に飼っていたのかまでは思い出せない。幼稚園の頃だったか小学生の頃だったか。

 お世話の仕方を覚えたと言っても、実質母さんと楓が可愛がっていたから俺はそこまで猫と絡んでいない……気がする。さっきから記憶がすげぇ曖昧だな……。

 

 

「あとは身体を綺麗にしてあげたいんだけど……」

「猫って基本シャンプーが苦手だから、あまり泡立てると怖がっちゃうぞ。それにここじゃ身体を洗うこともできないから、どこかへ連れていければいいんだけどなぁ」

「私たちのところは無理よ。ただでさえ家を借りてるのに、みんなもいるし」

「知ってる。最近はスクフェスの練習で忙しいから、個人的な相談でみんなの時間を使いたくなかったんだろ? だから自分だけで解決しようとした。お前って変に律儀なところあるよな」

「そこまで見抜かれると恥ずかしいわね……」

「もう善子ってば水臭いよ!」

「ご、ゴメン……」

「だからね、これからは1人で抱え込まずに私たちに相談すること! OK?」

「お、おっけーだから、そんな顔近付けるなぁああああああああ!!」

「Wow! 善子の頬っぺた柔らか~い♪」

 

 

 結構いいコンビじゃねぇかこの2人。頬を擦り合わせて百合百合な雰囲気になっているのはスクールアイドルではよくあることなのでさて置き、これでまたAqoursの絆もより強固になるだろう。こうして仲間同士が仲良くなる瞬間はいつ見てもほのぼのして大好きだから、探偵ごっこに飽きて途中で帰らなくて良かったよ。

 

 

「これで事件も解決だね! 凛の探偵スキルも大きくレベルアップしたにゃ!」

「だったら探偵さん。この捨て猫たちをどうすのか考えてくれよ」

「えっ、それは零くんが連れて帰るんでしょ?」

「はぁ!? どの流れでそうなった!?」

「先生が連れて行ってくれるの?? まあそれなら私も会いに行きやすいし、無難な落としどころかもね」

「でも楓さんにお世話されてる先生が、猫のお世話なんてできるのぉ~?」

「それこそ余計なお世話だっつうの! つうか、誰も連れて帰るって言ってねぇ――――――って」

 

 

 反論を黙らせるほどの3つの悲しい眼差しは、背負う必要のない罪悪感を俺に担がせる。そもそも1vs3の時点で多数決で負けており、借家で共同生活をし、あと1週間で東京を去るAqoursはもちろん、猫アレルギーである凛も飼うことはできない。つまりこの場で子猫たちを飼うことができるのは俺だけって訳だ。コイツらはそれが分かっているのにも関わらず、わざと悲しそうな眼を俺に向けて同情を誘おうとしているのだろう。どんな状況でも涙目になって悲壮感を漂わせておけばいいと思いやがって……。汚い、やっぱり女の子って手口が汚い。

 

 

「分かったよ! 連れて帰ればいんだろ連れて帰れば!!」

「やった! 良かったわね、ルシフェル、イシュタム、アザゼル!」

「「「は……?」」」

「何よその反応。この子たちの名前なんだけど」

「お前らしいけど、子猫に付ける名前としては禍々し過ぎるだろ……」

 

 

 さっきまで段ボールの端に包まっていた子猫たちだが、善子があまりのも仰々しい名前を付けたせいで急にこの子たちが悪魔の子に見えてきた。心なしか、変な名前で呼ばれた子猫たちも善子を威嚇しているような――――って、毛が逆立ってないか!? さっきまで衰弱してたように見えたけど、普通に元気じゃん!

 

 

「まさか、善子からモノを受け取らなかったのって……」

「善子ちゃんが変な名前を付けるから怒ってたんじゃ……」

「そ、そんな訳ないわよ! ねぇみんな!?」

「「「フシャーーーーッッッ!!」」」

「うっ、めちゃくちゃ怒ってる!?」

「なんだこのオチ……」

 

 

 善子と鞠莉の仲が深まったのはいいけど、善子と子猫たちが仲直りするのは当分先になりそうだな……。

 ていうか、せっかくいい雰囲気で終われそうだったのにこんなオチになるとは、これぞ不幸体質の善子って感じで逆に安心したよ。ここ数日面倒を見ていた子猫に飼い犬に手を嚙まれる改め、飼い猫に手を噛まれる形になって不憫でならないけど……。

 

 

「ちなみにアンタならどんな名前付けるのよ!?」

「そうだなぁ。3匹のオスの子猫だろ……? それに捨て猫だから力強く育って欲しいという意味も込めて――――ノブナガ、ヒデヨシ、イエヤスなんてどうだ?」

「おおっ、とっても強そうな名前だにゃ!」

「そんな安直な名前なんて……」

「「「にゃ~♪」」」

「よ、喜んでる!? どうしてよ!?」

「あはは、どんまい善子! 今日はみんなで善子の好きなモノ作ってあげるから♪」

「そんな慰めいらない!! それにどうしてそんなに笑顔なのよ!?」

「いつもの善子が戻ってきて嬉しいんだもん!」

「なんか納得いかないぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 

 最後の最後まで哀れなり、善子。

 そんな不幸に打ちひしがれる善子をよそに、3匹の武将猫が新たな家族になりましたとさ。 

 




 善子がいるとオチが盤石になるので、執筆する側としては大助かりです(笑) もちろんオチに使われるたびに彼女に不幸が降り注ぎますが、この小説ではこれが仕事なので勘弁してもらわないと……

 ちなみに今回登場した猫が再登場するのかは未定です。猫を使った話のネタを思いついていないので、何か考えてくださった方はご一報ください。


 次回は新章に入って初、秋葉さんとのコンタクト回です。
 これまで浮上していた謎の全て……とまではいきませんが、この辺である程度は発散させておきたいと思います。


新たに☆10評価をくださった

Uchuu2001さん、なかがわさん、島知真さん

ありがとうございました!
まだ評価を入れてくださっていない方は、よろしければ小説に☆10評価をつけていってください!


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