ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿

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 今回はvs秋葉さん回。
 秋葉さんが登場する時は大体おふざけが過ぎるかシリアスのどちらかなのですが、今回は純度100%で後者の方です()


君はもう主人公じゃない

 

 遂にこの時がやってきた。これまで話を聞こうにも邪魔が入ったり海外出張で逃げられたりしていたが、とうとう奴の尻尾を掴むことができたんだ。コイツが事の次第にどこまで関わっているのかは知らないが、今のところコイツに聞かなければ話は一向に進展しない。だからこそ少しでも知っていることがあればこの機に洗いざらい、叩いても埃が出なくなるまで聞き出してやる。

 

 口を割らせたいことは2つ。

 1つは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のこと。アイツらが何故俺にあそこまで執着するのか、何故出会ったことのない俺を愛せるのか、上原歩夢と初対面してからずっと疑問に思っていたことだ。

 もう1つは俺の過去について。中須かすみや桜坂しずくの話を聞く限り、どうやら俺と彼女たちは顔を合わせたことがあるらしい。でも俺は全く覚えておらず、彼女たちもそれを知っていたうえで俺に接触している感じだった。俺はそこまで思い出を振り返るような性格ではないので幼稚園や小学生の頃の出来事は大半忘れてしまっているが、もしかしたら断片的に覚えていることがあるかもしれない。だから秋葉の話で己の記憶に刺激を与えたいと思ったんだ。

 

 以上2つが俺の聞きたいことであり、その2つの謎が明るみに出れば自ずと虹ヶ咲の子たちの正体も分かるだろう。

 

 

 だが――――――

 

 

「零君、この書類はそっちの棚ね。こっちの書類はシュレッダーに入れて大丈夫だから」

「あのさ、どうして俺が研究室の掃除をしなきゃいけないんだ……?」

「だって誰も掃除しに来てくれないんだもん! 今までは絵里ちゃんたちが手伝ってくれたけど、卒業しちゃってから来なくなったし。この裏切者ぉ……!!」

「独力でするって選択肢はねぇのかお前……。だからと言って来客に掃除を頼む気概もすげぇけどさ」

「零君と私は家族じゃん? 姉弟じゃん? それにこの世は助け合いだから!」

「バリバリの個人主義のお前に助け合いとか言われても……。絶対に裏切るだろ」

「ひっどーいっ! 私は零くんのことをこんなに愛してるのに……」

「姉弟としてな」

「相変わらず冷たいなぁもうっ」

 

 

 コイツの戯言にいちいち付き合っていたらどんな厄介事に巻き込まれるか分かったもんじゃないから、最初から話に付き合う必要は全くない。それに今から真面目な話をしようとしているのに、ここで秋葉のペースに乗せられてしまってはダメだ。常にこちらからマウントを取る形で、追い詰めるように話を進めていかないと。むしろそれくらいしなければコイツは口を割らないだろう。

 

 まあ掃除に付き合わされている時点で、既にマウントを取られちまっているのかもしれないが……。頭も容姿もスタイルも完璧で、最近料理まで上手くなってほぼ死角がないほど完璧超人なはずなのに、唯一掃除だけは壊滅的にできないからな。

 

 

「お前、俺がここへ来た理由分かってんだろ? どうしてそんなに余裕なんだよ」

「あなたが何を企んでいようとも、真っ向から打ち勝つ自信があるからね♪」

「なんだよそれ……」

「フフッ、そのまんまだよ」

 

 

 一応アポを取って来たことは来たのだが、どんな用事かは一切伝えていない。だが秋葉はどうやら俺がここに来た理由を察しているようだ。それなら話は早く、コイツが何かを隠しているのは悪戯な表情からも明白だった。隠していることを隠さないその余裕っぷりから、俺に何を問い詰められても切り返す自信があるのだろう。そう考えると一気に腹が立ってきたので、今日という今日はとことん搾り取って洗いざらい知っていることを吐かせてやる。泣いて謝ったって許さねぇから。

 

 

「単刀直入に言うけど、虹ヶ咲学園の奴ら、お前は知ってるんだよな?」

「ホントにダイレクトだね。知らないって言ったら?」

「こっちは遊びに来てるんじゃない。素直に答えろ」

「知らな~い」

「おいっ!!」

 

 

 あまりにも秋葉のおふざけが過ぎるせいか、俺は反射的に秋葉を机に追い詰めてしまう。彼女の身体が机に当たって大きく音を立て、端に置いてあった書類が床に散らばるが、当の本人は全く気にしていない。それどころか口角を上げていることから、俺の気が乱れる様子を見て楽しんでいるのだろう。さっき遊びに来たんじゃないと言ったばかりなのに、どこまでふざけるんだコイツ……。

 

 

「久しぶりに見たかも、ここまで攻撃的な零君を」

「俺の話はどうでもいい。虹ヶ咲のことについて、知ってることを話せって言ってんだ」

「その前に1つ。どうしてそこまで虹ヶ咲のことを知りたいの?」

「質問をしているのはこっちだ」

「だったら私も何も喋らない。口も開かない」

 

 

 感情的になって相手を問い詰めようとしても、冷静な相手には通用しないどころか逆に利用される典型的な展開になってしまった。会話の勢いはこちらに分があるのだが、俺の知らない秘密を握っているのは秋葉の方だ。だからいくら俺から強く攻めようとも、その秘密を盾にされたら引かざるを得ない。俺ももう少し冷静になってみるか……。

 

 俺は秋葉を机に追い詰めるのをやめ、近くの柱にもたれ掛かった。

 

 

「虹ヶ咲の奴らは俺のことが好きみたい、いや好きなんだ。それも友達とか先輩とか、そんな近からずも遠からずの関係じゃない。今にも告白をしてきそうなくらいに俺を1人の男性として見ている。会ったことがあるのはまだ3人だけど、上原たちの話を聞く限りでは他のみんなもそうだと思ってるよ」

「お~それはモテモテなことで」

「でも俺はアイツらのことを知らない。どうやら会ったことがあるみたいだけど、全く覚えていないんだよ。アイツらにどんな思惑があるのかなんてのは二の次でいい。あれだけ本気で愛を伝えてくれるから、俺だって応えてやりたいんだ。でも身に覚えのない女の子からいきなり好きだと言われても、俺はどう反応していいのか分からない。だからお前に聞きたかったんだよ。俺と上原たちって過去に一度でも会ったことがあるのかってな。アイツらとの思い出さえ蘇れば、その気持ちにも応えられる。そう思ってるんだ」

「自分を好きになってくれた女の子を覚えてないなんて、零君も罪な男だなぁ」

「茶化すんじゃねぇ。知ってることがあるならとっとと言え」

 

 

 秋葉は俺の話を聞いても顔色を一切変えず、憎たらしい笑顔を浮かべている。まるでこのような話の流れになることを最初から予想していたかのように……。

 ポーカーフェイスも駆け引きも上手い彼女が相手だから、正直虹ヶ咲のことを本当に知っているのか知らないのかは彼女の言動からはまだ判断できない。でも俺はコイツが100%この件に絡んでいると確証を立てている。特に根拠はないが、長年姉弟として付き合ってきたから彼女の雰囲気だけで察することができるんだよ。自分が黒幕のくせに、わざわざ知らないふりをして俺に喋らせているってことがな。

 

 秋葉はさっきまで掃除を人任せにしていたくせに、今は俺の話を聞きながら床に落ちた書類を整理していた。俺に問い詰められて焦ったから気を紛らわせるために――――なんてことは絶対になく、恐らく余裕綽々過ぎて俺の話を聞いてるだけでは暇だったのだろう。なんつうか、ここまで俺に対して冷たい秋葉は久々な気がする。μ'sと同棲生活をしている期間に研究室へ呼び出された時以来かもしれない。

 

 

「お前と虹ヶ咲の関係について、知ってるなら話してくれ。でないと俺はずっとアイツらのことを無意味に待たせてしまう」

「そもそもの話だよ? 仮に私が話したところで、あなたはあの子たちを幸せにできるの?」

「な、なんだよそれ……」

「μ'sやAqoursのみんなと違って、虹ヶ咲の子たちとは思い出がない。仮に思い出せたとしても、それはすっかり忘れていた朧気な記憶の一部。そんなミジンコみたいな思い出ごときで、女の子を幸せにできるとでも?」

「それは話を聞いてみないと分からない。もしかしたらお前の言う通り難しいかもしれないけど、まずはお前からアイツらのことを話してくれないとどうにもならないだろ」

 

 

 何も知らないんだったら、今から彼女たちについて少しでも知るしかない。俺が思い出を忘れていようとも、上原たちはお構いなしに好意を示してくる。そんな一方的な愛は受け取れないし、それ以上に彼女たちに申し訳ない。だからこそまずは上原たちの秘密をここで明かしてくれなければ、俺は前に進むことすらできないんだ。

 

 すると、こちらに背を向け床の書類を拾っていた秋葉は、俺に聞こえるくらいのあからさまで大きな溜息を吐く。

 そしてこちらを振り返ると、突き刺すような目線を向け口を開いた。

 

 

「つまらなくなったね、本当に……」

 

 

 相手からここまで『失望』という言葉を強く感じたのは、これが初めてだった。張り詰めた空気が更に凍り付き、俺はこの場の雰囲気に当てられて身体が動かないどころか声を発することもできない。これまで秋葉からは何度か生き方について咎められたことはあったけど、ここまでゴミを見るような目を向けられたことはない。厳しくはあるがその中に優しさもあった今までとは違い、今回は本気で俺を見限る覚悟で失望しているかのようだ。

 

 

「大人になって変わっちゃったよ、零君は。私の期待にすら応えられないほどマイナスの方向にね」

「どういうことだ……」

「高校生の頃のあなたは違った。獣のように女の子を求め、己の欲求を満たすためなら女の子が多少抵抗しても構わず手を出す。でもその嫌がる女の子すらも自分の魅力に憑りつかせ、自分へ従順な女の子に仕立て上げていく。その貪欲さこそ私の求める零君だったの」

「そんなこと、俺がするとでも……」

「してたよ、十分に。その結果が今のμ'sでしょ?」

「…………」

 

 

 言われるまでそんなことを考えたことすらなかったが、言われてみればそんな気がしなくもない。確かに高校時代の俺は今より己の欲求に従順で、抑えるところは抑えていたが解放するところは狂ったように欲求を解放していた。しかしそんなものは思春期の高校生が故の若気の至りだと思っていたのだが……。

 

 

「でも今のあなたは違う。ただ平和で平穏な生活を求めているだけ。Aqoursの子たちからの好意に応えているフリをして、たくさんの女の子から告白された優越感に浸ってるだけの愚かな子。アニメ用語で言うと『ヤレヤレ系の主人公』なのよ、あなたは。多くの女の子からの好意に甘えて、その愉悦を感じながら自分からは全く行動しない。どうしてこうなっちゃったかなぁ……」

「そんなことは……」

「気付いてるんでしょ? そういえば最近の俺はそんな感じだったって。厄介事に巻き込まれたくない、でも自分を慕ってくれる女の子とは一緒にいたい。こっちからは愛を伝えないけど、むこうからは愛を伝えて欲しい。女の子たちが自分のことを好きでいてくれて、そして自分が何もせずとも周りの女の子が集まってくれる平穏な生活。それこそあなたが今望んでること。違う? 貪欲にμ'sと絡んでいたあの頃とは大違いだよ」

 

 

 大剣で突き刺されたかのような痛烈な痛みが心に走る。自分でも気付いていない訳ではなかった。最近は面倒に巻き込まれたくないから変に首を突っ込まないよう努力(結局無駄に終わったことの方が多いが)してたし、相手の好意に気付いても無難な対応で終わることもしばしばあった。μ'sやAqoursとは今の関係のままで満足しているのだろうか……? Aqoursとの関係を進展させようと何か行動した記憶もないので、もしかしたら俺自身も知らず知らずのうちに現状維持を望んでいるのかもしれない。

 

 だがそれでも、あの頃からAqoursの関係は進んでいないとは言い切れないし、μ'sとの関係だって良好のままだ。虹ヶ咲のメンバーに対しては彼女たちを知ろうと努力しているつもりなので、秋葉から咎められる義理などないと思っている。そうだ、どうしてコイツにそんなことを言われなくちゃならないんだよ。恋愛沙汰なんて他人が割り込むものじゃないっていうのに……。

 

 

「その反抗的な目、もしかして自分はまだ主人公だって思っちゃってる? そう考えてるのなら片腹痛いね」

「何を言われようがどうだっていい。お前には関係のないことだろ」

「関係ないよ。でも関係ないから口出ししないような人に見える、私?」

「そういう奴だもんなお前は」

「そうだよ。だから自分勝手に口出しする。興味のない弟のことだから、何を言ってもいいしね」

 

 

 見えない。コイツが何を企んでいるのか全く見えなかった。別に俺自身がどれだけ蔑まされてもいいし、人を弄ぶほどに世の中を見下しているコイツなら誰かを卑下しようがそれはいつものことだから気にもしない。

 だが、俺の話と虹ヶ咲の話がどう繋がっているのかが分からない。最初の質問は虹ヶ咲の子たちについて知っているか尋ねたのに、いつの間にか俺の話にシフトしていたからやはり何かしらの接点が俺と虹ヶ咲の間にあるのだろう。俺が牙も爪も失った平和主義者になったことと、虹ヶ咲の子たちが俺の前に現れ始めたのは偶然じゃなかったのかもしれない。

 

 

「俺の話と虹ヶ咲の話は、どう接点があるって言うんだ? さっきからずっと俺の話をしてるけど、そろそろ最初の質問に答えてくれてもいいんじゃないか」

「その話をするなら、まず私自身の話を聞いてもらわないとね」

「…………勝手にしろ」

「まあ許可がなくとも勝手にするけどね」

 

 

 いくら話の流れを軌道修正しても、こうして秋葉のペースに傾いてしまうのは解せない。でもさっきも言ったが全ての真実を握っているのは間違いなくコイツであり、ここは否が応でも秋葉にマウントを取らせなければ会話が進まないのが現状だ。恐らくコイツも自分が絶対的優位に立っていて、それが揺るがないと分かっているからこそこんな余裕を見せているのだろう。

 

 

「ほら、私って全知全能じゃない?」

「あたかも世界の定義みたいなノリで言われても……。それがどうかしたのか……?」

「昔から私にできないことは何もなかった。その気になれば世界を歪めることだってできる。そう、世界は私のおもちゃ箱なの」

「あっそ……」

「この世界は私とおもちゃだけで構成されている。自分の実験や発明を試すモルモットたちが蔓延る世界。全生命体の頂点に立つのは気持ちよかったよ」

 

 

 そう、コイツは元からこんな性格なのだ。世界情勢を一転させるような脳を持っているのにも関わらず、実験相手は基本俺やその周り。その全知全能を世界のために活かそうとはしない。そうやって私利私欲、自分勝手のためだけに動いているのが秋葉という人間だ。

 

 

「でもね、支配者ってなってみると案外つまらないものだった。どんな世界でも人間でも自分の思うがままに動かせるってことは、すなわち結果が全部見通せてしまってつまらないってこと。私に結婚を迫ってくる男も、研究仲間になって欲しいと頭を下げてくる奴らも、それ以外でも私に言い寄ってくる愚図共も結局はモルモット。私がちょっと人生の軌道を変えてやるだけで、滑り台のように決められたレールに従って転落人生を送っていく。見ていて愉快だったけど、毎回そうなると分かっているからこそ段々つまらなくなってきたの」

「こうして直接話を聞くと現実味が……。いや知ってたけどさ」

「でしょ? でもそんな世界に飽き飽きしていた私を楽しませてくれる唯一の存在がいた」

「それが俺ってことか」

「そう。さすが、察しだけはいいね」

 

 

 秋葉が全知全能なのは比喩でもなんでもなくマジのことだ。だからこそ世界各国から研究の応援だったり、わざわざアポを取ってまで求婚を申し出てくる人もいる。もちろんそう簡単に首を縦に振らないのが彼女。研究内容が例え不治の病の人を助けるためであったとしても、求婚してきた相手がどれだけの世界的地位を持っていたとしても、結局は彼女の気まぐれで全てが決まる。つまり、秋葉は世界を意のままに動かしていると言っても差し支えはないんだ。

 

 

「零君だけだよ、私のおもちゃ箱から勝手に飛び出したやんちゃ者はね。まさかμ'sの全員と付き合って、しかも恋人にしちゃうなんて思ってもいなかった。その時に感じたの、この世で私を楽しませてくれるのはあなただって。あなたは常に私の予想を逸した行動を取る。その時、私は興奮してならないの。いつこの子は私のおもちゃ箱から飛び出すのか、それを観察しているだけでも楽しかった」

「まさか、お前の実験や発明の主な対象が俺なのは……」

「そう、あなたがどんな行動をするか期待しているから。そんじゃそこらのモルモットに私の崇高な実験を施したところで、結果は見え見えだもん」

「悪魔だな、お前」

「そんなこと既に分かってるくせに」

 

 

 これまで俺の反応が面白いからコイツの実験相手に選ばれていたものとばかり思っていたが、まさかそんな背景があったとは。まあ反応が面白いから選ばれている時点で、秋葉にとっては稀な存在なのだ。そもそも秋葉が自分で言っていた通り、コイツの気を引こうと思ったら生半可ハードルでは見向きもしてくれないからな。まあ見向きされたいかどうかは別として……。

 

 

「ここでさっきの零君の話に繋がるんだよ。唯一の実験対象であったあなたもつまらなくなっちゃったから、また私は楽しくもないこの世界の支配者に戻っちゃったの」

「それと虹ヶ咲の話、どう関係があるってんだ?」

「だから私が零君を更生させてあげようと思ってね、ちょっと仕向けちゃった」

「なるほど。アイツらを俺に(けしか)けたのは、やっぱりお前だったのか……」

「あなたの平穏な日常を崩すには絶好の子たちだから」

 

 

 これまで渦巻いていた謎が少しずつ明るみに出てきた。大方予想はしていたのだが、上原たちは秋葉の差し金で俺の元へやって来たらしい。

 しかしそう考えるとアイツらのあの好意は演技なのか……? いや、幾多の女の子と恋愛をしてきた俺なら分かる。アイツらが俺に向けていた好意は間違いなく本物の"愛"だ。嘘偽りもない、己の本心を真っ向からぶつけてきている。それに虹ヶ咲の子たちが秋葉と繋がっているのは分かったとしても、アイツらの正体が明らかになった訳じゃない。アイツらは一体何者なんだ……?

 

 

「なぁ、俺と上原たちって一度でも出会ったことあるのか? その素振り、俺の過去について何か知ってるんだろ!?」

「残念、今日はここまで。得体の知れない女の子たちを前に精々足掻きなさい。そして私を楽しませるの。μ'sやAqoursの時のようにはいかない、今回は見ず知らずの女の子から献身的な愛を注がれる。そんな状況であなたがどんな行動にでるのか、私に期待させてちょうだい。つまらないあなたが人生を逆転するチャンスは、もう今しかないんだから」

「勝手に人の人生を弄びやがって。しかもアイツらが本当に俺のことが好きなら、お前はそれを利用してるってことだ」

「そうだよ? それが私だから。それに今のあなたが女の子の心を語る資格はない」

「どういうことだ……?」

 

 

 勝手に人の人生を転落させる奴に他人の人生を語る資格はないと言いたいが、それよりも根本的な部分を突き刺されたみたいに何故か心が痛くなる。どうしてこんな気持ちになるのかは分からないが、自分で気付いていないだけで思い当たる節があるってことか……?

 

 

「あなた、最近女の子の気持ちに鈍感になってない? 好意を受け取るだけ受け取って返答しないのもそうだけど、そもそも女の子の気持ちに気付いていないこととかあるんじゃないかなぁ~?」

「そんなことはない!!」

「そうかな? 例えば、一緒にファッションモデルの撮影をした時。あんなに千歌ちゃん頑張ってたのになぁ、どうして何もせず終わっちゃうかなぁ~」

「ど、どうしてそれを……!?」

「例えば、善子ちゃんが悩みを抱えていたことにどうして気付けなかったのかなぁ~」

「な゛っ……!? どうして知ってんだよそんなこと!?」

「知ってるよ、全部ね。だっていくら私の興味が薄れたと言っても、まだ私はあなたに期待してるから♪」

 

 

 俺はここで、思わず研究室を飛び出してしまった。自分の心なのに俺よりも秋葉の方が詳しく、全てを見抜かれていたこと。なにより最近の俺の行動が女の子の気持ちを蔑ろにしていると裏付けされてしまったこと。その事実を突きつけられた瞬間に居ても立っても居られなくなってしまったんだ。もちろん行く当てなどどこにもないが、アイツと一緒の空間にいることで更に惨めにさせられると直感しているので同じ場にはいたくなかった。

 

 他にも聞きたいことは山ほどあるのだが、もうそれどころではない。この精神の乱れではまともにアイツと話し合うことすらできないし、そもそも平静を保っていられるか怪しくなってくる。結局虹ヶ咲の子たちの正体や俺の過去のことは聞き出せなかったが、今はもうこの場から立ち去ることを優先しよう。これ以上ここにいると、アイツにどんなことをされるのか分かったもんじゃないから……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 その後、研究室内。

 

 

「全く、この程度で逃げ出すなんてやっぱりつまらなくなっちゃったね」

 

 

 床に落ちた最後の書類を拾い上げながら、秋葉は不敵にほほ笑んだ。

 

 

「でもね、あなたはもう一度私に興味を引かせられる子だと思ってるんだよ」

 

 

 その書類の表紙を見ながら、研究者は己の欲望を語る。

 

 

「だからずっと見ていてあげるよ。ずっと、あなたをね……」

 

 

 『PERFECT Dream Project』と書かれた書類。

 研究者の計画は、次のフェーズへと進もうとしていた――――

 

 




 今回はスクフェス編に入って最初の謎解き回でしたが、どちらかといえば零君や秋葉さんの事情が多くあまり虹ヶ咲メンバーについては触れませんでした。一応まだ6人との出会いが残っているので、彼女たちの秘密を明かすのは一通り全員と出会ったあとにしようと思っています。

 それにしても、この小説で一番のヤンデレは秋葉さんなのかもしれないってくらいヤバさが滲み出ていた気がします。まあデレの要素がどこにあるのかって話ですが(笑)



 次回はこの小説では初登場となる、千歌のお姉さんである美渡姉ちゃんと志満姉ちゃんが登場します!
 秋葉さんからの精神攻撃を受けダメージを負っている零君とどう絡むのか……?



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