今回は読者さん方のネタを採用したリクエスト小説となります!
これまでのリクエスト小説は1ネタで1話でしたが、今回は3ネタで1話構成のサザエさん方式となっています。
また、話は全て合同合宿1日目内で起きた出来事になっているので、これまでのお話と地味に繋がりがあったりなかったり……
ちなみにサブタイトルは、ネタが組み合わされば1つの芸術的作品が完成するという意味が籠っています()
《お嬢様たちの戦い in ゲームコーナー》
旅館の中に古き良きゲームコーナーがあるのは定番だが、この旅館はゲームコーナーというよりゲームセンターと言っていいほどゲームの種類と数が凄まじかった。旅館に設置されているゲーム筆頭のアーケードを始めとして、メダルゲームやお菓子タワーのゲーム、ダンスゲームなどが軒を連ねている。
俺はそのゲーム中の1つ、UFOキャッチャーに四苦八苦している子たちを眺めていた。慣れないUFOキャッチャーに苦労しているのは髪金ハーフお嬢様の鞠莉と、赤髪ツンデレお嬢様の真姫。ケース内のとあるクマの人形に一目惚れしたため、人生で初めてのUFOキャッチャーに挑戦している。
しかし――――――
「Oh! また取れなかった!! アーム弱すぎるんじゃないのこれ!?」
「それにさっきの失敗で人形が横を向いちゃったし、ちょっと取りにくくなっちゃったわね……」
「でもそっちの方がExciteできるし、俄然燃えてきたわ!」
あぁ、これはゲームセンター中毒者にありがちな、ゲームセンター側の罠に引っかかってるパターンだ。
このようなゲームは店側が内部操作をすることができ、例えばUFOキャッチャーならアームの強度を弱くしたり、ボタンを押すタイミングとアームが動くタイミングをズラすなんてこともできる。それは他のゲームも然りで、じゃんけんゲームならこちらの押したボタンでゲーム側の出す手を決めたり、ルーレットやスロットなんかに至ってはほぼすべての設定が店側の思う壺だろう。それくらいゲームセンターというのは非情な遊び場なのだ。
そして鞠莉と真姫は、ズブズブとその沼にハマりつつある。
まぁコイツらはお嬢様でゲームセンターの裏事情どころかゲームで遊んだことすらなさそうなので、本人たちが楽しんでいるのならそれはそれでいいのかもしれない。
2人はまたUFOキャッチャーに100円を入れてゲームを開始したが、案の定というべきか、また人形の捕獲に失敗した。
「What!? さっき私がボタンを押したタイミングと、アームのタイミングがちょっと違ってたような気がするんだけど!?」
「さすがにそれはないでしょ。そんなことをしてたら詐欺よ詐欺」
「そうね。もし詐欺なんてしてたら、小原家の総力を上げてこの旅館を検挙してあげるわ」
「UFOキャッチャーは子供たちも喜んで遊ぶでしょうから、そんな子供の夢を壊すような真似をしたら西木野家も黙ってはいないわね」
こわっ!? コイツらの場合は権力と圧力で本当にこの旅館を潰せそうだから、全くの嘘じゃないのが本当に怖い。しかも小原家と西木野家が総力を上げたら、世界のほとんどの不正ゲームなんて悉く潰せそうだ。更に今の2人はUFOキャッチャーに翻弄されてかなり苛立ってるから、冗談抜きに世界のゲームの常識が塗り替えられてしまう恐れもある。今思ったけど、俺ってこんな凄いことができる女の子たちから恋をされてるんだよな……。なんか急に身体が震えてきたぞ……。
このまま2人にUFOキャッチャーをやらせても永遠に金を失い続けるだけなので、仕方ねぇから出しゃばってやるか。それにこの世のゲームを潰されたら堪ったものじゃねぇし。
「どいてろ。取ってやるから」
「零? どうしたのよ突然」
「先生、UFOキャッチャー得意なの?」
「いいから見てろ」
俺は100円を投入口に入れると、UFOキャッチャーを起動させる。
確かにゲームセンターのゲームは確変されていることが多いが、その中でもUFOキャッチャーはテクニックさえあれば意外とあっさり景品がもらえるゲームだ。つまり慣れれば定価で数千円する人形をたった数百円で手に入れることも可能。そして今回は2人が幾度なく人形をアームで掴んで落としてくれたためか、人形のポジションが穴に近い位置に移動している。さらにさっきの挑戦で人形の体勢も抜群良い。更にさらに、ボタンの押すタイミングとアームのタイミングがどれだけズレているのかは、これまでの観察で全て把握していた。
そう、今の俺は負ける気がしない!!
「ほら、取れたぞ」
「す、凄い……。私たちがあれだけやっても取れなかったのに、たった1回でこんなにあっさりと……」
「Good Job 先生! いつにも増して輝いてるわ!」
「お、おい鞠莉……ったく」
興奮してアメリカンの血が騒いだのか、鞠莉は衝動的に俺に抱き着いてきた。この嬉しそうな笑顔を見られた上に確変されたゲームを制したから、俺も物凄く優越感を満足感を味わっている。いやぁ女の子を助けて感謝されるっていいわ、やっぱりね。
すると、俺から人形を受け取った真姫が怪訝そうな顔で貰った人形を眺めていた。
「真姫? どうした……?」
「よく考えればこれ、1万円も出せば余裕で買えたのよね……」
「ま、まぁそうだけど……」
「確かに言われてみれば! こうなったら不正なUFOキャッチャーの腹いせに、この中の景品を全部お金で買っちゃおうよ! そっちの方がゲームするより早いしね♪」
「いい考えね。なんならゲームセンターごと買い取って、子供たちの夢を取り戻すのもありかも」
「Nice Idea! 子供たちの夢と希望をもう一度叶えてあげましょう!」
「まずお前たちが夢のないことを語ってることに気付こうな……」
そんなことを言うから果南にこう言われんだよ。
これだから金持ちはってな……。
~※~
《痴女な人妻とヤンデレな娘》
「うわぁっ!?」
「ひゃっ!?」
完全に油断してた。穂乃果たちの混浴を終えて部屋に戻ろうとした最中、旅館の廊下の角で女性とぶつかってしまった。しかもラッキースケベマンの特性がここで発動してしまい、なんとその女性を押し倒してしまう事態に。さっきは女湯に侵入(故意ではないが)して、今回は女性を押し倒す(故意ではないが)。まさに犯罪者ここに極まれりって感じだな……。いやそんなこと言ってる場合じゃねぇか、まずは謝らないと。
――――――あ、あれ? 俺が押し倒しちゃったこの人って……!?
「り、理事長!?」
「零君!?」
「アンタこんなところで何やってんだ!? それ以前にどうしてここにいる!?」
「聞けばことりが零君と旅館に泊まるって言うじゃない。だからそろそろ子作りをする時期かなぁと思って、ひっそりと応援に……」
「余計なお世話って言葉がここまでピッタリ当てはまる状況、中々ねぇぞオイ」
その、なんだ? もう心配しただけ損した気分だよ。最初は押し倒してしまったことを土下座覚悟で謝ろうと思ったが、相変わらずの痴女っぷりを発揮してきたためこちらも容赦はしない。ていうか、この人も会うたび会うたびに変態度が上がってる気がするんだけど気のせいか? まあことりの母親だからって理由なら余裕で納得できるんだけどさ。
すると、後ろから誰かの気配を感じた。足音が聞こえないことから、恐らく立ち止まって俺たちの様子を伺っているのだろう。
マ、マズい! こんな痴女人妻の相手なんかをしていたせいで、従業員の人にバレちゃったか?? 痴女を相手にしていて俺が通報されるなんてまっぴらゴメンだが、状況だけを見れば俺が理事長を押し倒しているようにしか見えない。つまり傍から見れば俺に非がある訳だ。
とにもかくにも、まずは離れないとな。
そう思った瞬間、ドスを効かせた曇った声が俺にのしかかかった。
何事かと思い後ろを振り向いてみると、そこには目から光を消してこちらを突き刺すように見下すことりがいた。ことりは黙ったまま動かず、その場で俺と理事長を瞬きもせずに見つめている。その目にどんな感情が宿っているのか、長年の付き合いの俺でも分からないほど目の色が濁っていた。
「零くん、お母さん。こんなところで何をしてるのかなぁ……? まさか2人がそんな関係だっただなんて、ことり知らなかったなぁ……。どうして言ってくれなかったのかなぁ……。別に零くんが誰と肉体関係を持とうがことりには関係ないけど、恋人なんだから教えてくれても良かったのになぁ……。お母さんも旅館で堂々と人の恋人を奪って浮気だなんて、凄い覚悟だなぁ……」
「こ、ことり? 声のトーンが一定で怖いんだけど……。それに感情ってものが全部消えてるぞ」
「そうよことり! お母さんは別に零君と浮気だなんて……」
「だったらどうしてそんなに顔が赤いのかなぁ……。どうして今も満更じゃない反応をしてるのかなぁ……」
「ふえっ!? そ、そ~お……?」
「そんな反応をするから満更じゃないって思われるんだろうが……」
確かに理事長はμ'sのお母さんたちの中でもトップクラスに若々しく見え、高校入学時に出会ってから7年も経ってるのに容姿が全然変わっていない。それゆえに心も若く、俺のような年頃な男に靡くのは分からなくもないが……一応言っておくけど、この人は人妻だからね? しかもことりの言った通り、俺に押し倒されてもイヤな顔1つどころか抵抗までしないから、もしかしたら俺に気があるのかと勘違いしてしまう。でも1つ申し上げておきますと、俺は人妻を相手にする気なんて更々ねぇからな!!
「ていうか、いつまで零くんはお母さんを押し倒しているのかなぁ……。お母さんもいつまで零くんに押し倒されて悦んでるのかなぁ……。やっぱり2人はそんな関係なのかなぁ……」
「あっ……。わ、悪い、今離れるから!」
「私としては、このままでも全然構わないけどね♪」
「はぁ!? 何言ってんだアンタ!?」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「おいっ! ことりが目を真っ黒にしながらこっち見てんぞ!? どう落とし前付けてくれんのこれ!?」
「そんなことりも可愛いでしょ?」
「黙ってなクソアマ……」
高校時代に結構お世話になった理事長だけど、そんなのはもう関係ない。憎たらしい笑顔でこの状況を弄んでいるこの女に敬意を払うのもバカバカしい。前々から理事長に対して敬語は外していたのだが、もうこの人もことりと同じくぞんざいに扱ってやろうか……うん、そうしよう。
ちなみにことりは俺たちを突き殺すかのような目線で俺たちを見つめ、目の色は完全なる黒に染まっていた。5年前、μ'sのみんなを傷付ける気満々だった病み期全盛期のことりが帰って来たみたいだ。雰囲気的に本気で俺たちのことを甚振りそうで、恋人や母親相手でも容赦のない光を失った目をしている。どうすんだよこれ!!
「零君ったら、相変わらずモテモテね♪」
「お母さん、やっぱり零くんを狙ってるのかなぁ……」
「もう手羽先にして食っちゃうぞ親鳥……」
「ひ、人妻を食べるってそんな……」
「零くんって節操がないのかなぁ……」
「もうイヤこの親子!!」
ちなみにこのあと親鳥を威圧して、力尽くで東京へ帰らせておいたから安心してくれ。
~※~
《梨子、決死の同人布教》
これだけ大人数にもなると、車から荷物を運び出すだけでもかなりの手間だ。しかも女性がμ's12人+Aqours9人+秋葉で22人いるのにも関わらず、男は俺だけ。つまり男手が足りな過ぎて、荷物運びの負担は更に重くなる。しかも海に到着した嬉しさからか、自分のバッグも持たずにはしゃぐ奴らがちらほらと。ちょっとくらい手伝えやこら……。
そんな荷物運びの主担当となっていたため、俺は誰が誰のバッグかを聞かずに適当に手に取ったバッグを女の子たちに手渡していた。ただでさえ荷物の荷下ろしに労力を割いているので、持ち主の元へ行き届けるくらいはそっちでやって欲しいものだ。
そして、俺が乱雑に配ったとあるカバンが海未の手に渡った。
「このカバンは私のモノですね。とりあえずこれからすぐに練習ですし、練習のメニューでも確認しておきますか」
海未のことだから直筆で練習メニューをまとめているのだろう、カバンから1冊の青いノートを取り出して中身を確認する。
だがその時、海未は目を見開いた。ノートを持つ手が小刻みに震え、見てはいけないものを見てしまったような引きつった表情をしている。
自分のノートのくせに、一体何が書いてあるってんだよ。作詞作業中にノリでポエムを書いたけど、今読み返してみたら突然恥ずかしくなったとか?
「な、なんですかこれは……!! こんな破廉恥な……!!」
「破廉恥? まさかエロ本でも持ってきたのか?」
「違いますよ!! ど、どうしてこんなものが……」
海未の持っているノートを見てみると、そこ書かれていたのは練習メニューでも作詞の文章でも何でもない。女の子が女の子に壁ドンされているシチュエーションのラフ画に、そこから進展して半裸になっている2人の女の子の線画。更に男同士で壁ドンしているラフ画もあれば、まだ書きかけだが男同士でキスをしそうなシチュエーションの線画もあった。キスですら破廉恥と言い張る海未のことだから、同性同士のこんな絵を見せられたらそりゃ気も動転するわ。
つうか、俺たちの中でこんな偏屈趣味を持ってるのはただ1人だけ――――――
その瞬間、海未の手からノートが引っ手繰られる。その犯人――――梨子は顔を真っ赤にしながら息を切らせていた。
やはり察しの通りコイツだったか……。
「はぁ……はぁ……。み、見ました!?」
「見たよ。見開き2ページだけだったけど、そのノートがどんなノートなのかはっきりするくらいにはな」
「園田さんもですか!?」
「え、えぇまぁ……。趣味は人それぞれなので、私がとやかく言う権利はありませんが……」
「私の目を見てくださいよ!! あぁもうっ! 先生以外の人、しかも先輩にバレちゃうなんて……」
いつものおとなしい彼女はどこへやら、自分の趣味がバレた衝撃でパニックになっている。
そもそもの話、どうしてそんなノートを合宿に持ってきてるんだ……? まあ2泊3日だから趣味となるモノを携帯しておきたい気持ちは分からなくはない。現に楓は修学旅行などで俺から離れる時は、決まって俺の写真を撮りまくって持参する性格がある。もしかしたら梨子もその類の性格が発揮されたのだろうか……?
「海未さんのカバンはこっちです! それは私のカバンですから!」
「あぁ、同じカバンだったのですね。どうりでおかしいと……」
「うぅ……。カバンは取り返せても、ノート内容がバレてしまったのは取り消せない……。こ、こうなったら!!」
「さ、桜内さん!? いったい何を……!!」
「海未さんにこのジャンルを布教して、裏の道に引き摺り込むしかありません!!」
「はぁ!?!?」
出たよ、梨子の暴走。普段はおとなしい梨子だけど、自分の裏の趣味が露呈した時は決まってこう暴走する。オタク界隈の用語で言うならキャラ崩壊ってやつか。表ではピアノを弾けて作曲もできる清純な乙女なのに、裏では善子とならんでオタク全開だからなぁコイツ。そしてそんな梨子の裏の顔を知った海未は、彼女の勢いに圧倒され後退りしていた。
「女の子同士の壁ドン……桃色の雰囲気にテンション上がりません??」
「上がりません!! そもそも同性同士なんて非常識ですよ……」
「非常識だからこそ背徳感があっていいんじゃないですか!!」
「零みたいなことを言わないでください!」
「確かに先生と同類にされるのは恥ですよね、ゴメンなさい……」
「オイお前ら、俺泣いちゃうよ?」
百歩譲って海未に自分の趣味を布教するのはいい。でも全く関係のないネタで俺を巻き込むのはやめてくれないかな……? まあもし俺みたいな性格の奴が他にいたとしたら、絶対にソイツみたいになりたくないと自分でも思うけどさ。
「そうだ、このノートを貸してあげますから是非読んでみてください! 合宿から帰ったらおススメの同人誌もお貸ししますので!」
「ど、同人とは……? 何であれ、同性同士の愛に興味はないですから!」
「でもμ'sって、その手の界隈だったら女性同士のカップリングが作られているんですよ。高坂さんと園田さんとか、南さんと園田さんとか」
「確かに穂乃果とことりは大切な友人ですが、断じてそんな関係ではありません!!」
「それをその手の界隈の人に言ってはいけませんよ。夢を壊しちゃうことになるので」
「どうして私が怒られているんですか……。それにその手の界隈って一体なんですか、零?」
「俺に聞くな。つうか俺を巻き込むんじゃねぇ……」
海未にはオタク界隈のことを知ってもらいたくはないと言うか、コイツだったら知ったところで自分から拒絶するだろう。その点だと梨子とは相容れないのかもしれない。
雰囲気や性格的にもこの2人はウマが会うとこの時までは思っていたのだが、これから先、海未と梨子が顔を合わせた時に気まずくなるやつだよなこれ。だけどとりあえず、今の梨子には関わらないようにしよう。下手に首を突っ込めば、梨子からどんな無茶振りが飛んでくるのか分からない。暴走した梨子はそれほどまでに危険な存在なのだ。
「先生! 先生も一緒に園田さんを説得してください! 同じ穴の
「ほら来たよ無茶振り……。ていうか、勝手にお前と同類にすんな!!」
「零……。あなたもまさか……」
「海未……? お前も勘違いすんなよ!?」
梨子から逃げようと思ったが、時すでに遅しらしい。
μ'sとAqoursの結束を固めるための合宿なのに、こんなスタートで果たして大丈夫なんだろうか……。
久々のリクエスト小説であり、初めて1話で3ネタを扱う方式でしたが如何だったでしょうか? 1ネタが短いこともあり、4コマ漫画的な感じで読めたのではないかと思います。そしてこちらの方式の方がキャラをたくさん登場させやすいので、初めての方式でしたが私はかなり気に入っています。
今回のリクエスト小説が好評であれば、この先も定期的にこのような方式でリクエストにお応えしていきたいと思っているので、引き続き皆さんからのネタを募集しています!
今回は以下の方のネタを採用させていただきました。
赤青の龍さん、Ψ(海未推し)さん、紅葉さん
今後もリクエスト小説を続けていきたいと思うので、「こんな話が読みたい!」というご要望があれば是非活動報告にてコメントをお願いします!
【募集箱】
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=181617&uid=81126
また、小説への評価も募集中です!
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小説執筆のやる気と糧になります!