ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿

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合同合宿編、7話目
今回は文章量がいつもよりボリューミーな曜ちゃん回です!


心と体

 

 なんだろう、今日は女の子たちと一緒にいる時間が多かったためか、女の子たちの身体に触れることも多かった気がする。

 最初はバスの中で絵里に膝枕をしてもらい、旅館に着いた直後は半裸のことりに抱き着かれ、海で遊んでいる時には水着を流された果南を庇うために抱き合ったり、夜は温泉で亜里沙たちに身体を洗われたりと、まだ合宿1日目なのに至れり尽くせりだ。夏休み期間中は毎日μ'sかAqoursのどちらかの練習を見てやってるから女の子たちと一緒にいる時間は多いのだが、やはり練習が中心となれば触れ合う時間はそう多くはない。だからこそ今日のように女の子たちとあそこまで接近できるとなると、まるで純情な童貞男子のように挙動不審になってしまう。やっぱ男なら、自分の恋人たちやJKの身体に反応してしまうのは仕方ねぇよ。

 

 しかしこうも女の子たちと触れ合っていると、やはり男なら我慢の限界というものがある。成熟した女の子の身体とJKの発達途中の身体を同時に味わったんだぞ? そりゃ欲ってものが湧いてきても仕方ねぇだろ。だが教師の道を目指す者として、そして他の宿泊客がいる旅館でそんな情事なぞできるはずがない。高校時代であれば高ぶった性欲を抑えきれずに何かしらアクションを起こしていただろうが、今の俺は立派な大人、そんな下品なことはもうできない。だからといってこの欲求を抑えつけておくのも身体に毒だけど、特に苦しむことなく抑えつけられているだけマシなのかもしれない。心配しなくても、発情したから所構わず女の子を襲うような真似はしないから。

 

 

 気分転換を兼ね、俺は飲み物を買いに自販機スペースに来ていた。旅館の自動販売機の飲み物は微妙に高いのでボタンを押すのが躊躇われるのだが、僅か2、30円高いだけで旅館の外に出るのもそれまた面倒。全く、いい商売してるよな宿泊施設ってさ。

 

 そんな中、自販機スペースの隣のスペースから女の子たちの一喜一憂する騒がしい声が聞こえてきた。

 いるんだよな、こうやって他の宿泊客がいるのにも関わらず騒ぎ散らす奴ら。旅行でテンションが上がるのは分かるけど、せめて他の人に迷惑を掛けないで欲しいものだ。それに同伴者であろうとも身内に1人でもうるさい奴がいると自分まで同レベルの人間だと周りに認識されてしまうので、今時の若者はもっと自制心を持つべきだな。これ、20歳を過ぎたオッサンの戯言だから。

 

 そしてふと隣のスペースに足を運んでみると、女の子たちが騒ぎ立てている理由が明確になった。

 

 

「この一球に、ヨハネの闇の力を全て注ぎ込むわ! これぞパラサイト・ダーク!! はぁあああああああああああああああああああああああ!!!!」

「いいから早くサーブするにゃ……」

「よしっ、注入完了! これで決める!!」

「かよちん! 審判として遅延行為を見逃していいの!?」

「そ、そんなこと言われても……」

 

 

 なるほど、隣は卓球場だったのか。そりゃ騒ぎ立てるのは分かるけど、聞いている限り痛々しい卓球をしているようなのであまり関わり合いになりたくない。それに周りからアイツらの保護者とも思われたくないので、今日はとっとと部屋に戻って休むとするか。俺がこの合宿に来たのはガキのお守りじゃないから、仕事くらいは選ばせてくれ。

 

 部屋に戻ろうと思いその場で振り返った時、目の前に女の子の顔がアップで映し出された。

 

 

「わっ!!」

「うおっ!!?」

「あははっ! 先生驚きすぎですよ♪」

「よ、曜……」

 

 

 曜は憎たらしい笑顔でビビっている俺を嘲笑う。驚きすぎだって言うけど、後ろから突然大きな声を上げられたら誰だってビビるだろ……。

 曜の格好は浴衣姿で少々顔が火照っていることから、今しがた温泉から出てきたばかりなのだろう。なんつうか、風呂上りの浴衣少女って色っぽいよな。普段の曜は大人の色気よりも年相応の可愛さの方が目立っているが、今の彼女は温泉の効能なのか肌もより艶やかでいつもとは違う魅力を感じられた。

 

 

「ていうかお前、こんなところで何してんだ? 部屋はこっちじゃねぇだろ」

「善子ちゃんと凛さんが卓球をしてるって聞いて、私も参加しようかと」

「なるほど。それじゃあ俺は部屋に――――」

「そうだ、先生も一緒に卓球しましょう! ぜひ私の相手になってください!」

「いや、俺は部屋に――――」

「おーい凛さん! 善子ちゃん!」

 

「ヨハネ!!」

 

 

 話を聞けよと言う前に卓球場に引き摺り込まれたため、もはや抵抗しようにもできなくなってしまった。見た目は普通の女子高校生に見える曜だが、その実、日々の水泳やトレーニングで身体が鍛えられてるから力はそこそこ強い。いきなり腕を掴まれて呆気に取られている男をちょっと引っ張るくらいは造作もないだろう。そのせいで卓球をしていた凛と善子、そして得点係をやらされていたであろう花陽にあっさりと俺の存在がバレてしまった。

 

 せっかく今晩は部屋でゆっくりできると思ったのに、悪戯な神様は俺の1日をまだ終わらせてはくれないようだ。

 

 

「私も卓球やりにきたよ!」

「そう。だったらヨハネが栄光の勝利を掴み取る瞬間を、そこでおとなしく眺めていることね」

「それはいいや。向こうの台で先生とやるから」

「ちょっ!? 眷属が裏切る気!?」

「いやそれは梨子ちゃんとルビィちゃんの立場でしょ。私は違うもん」

「もうっ、早くサーブしてよ善子ちゃん! あと1点で凛の勝ちなんだから!」

「ヨハネ!!」

「あれだけ見栄張ってるのに負けてるのかよアイツ……。お前も厄介な奴に絡まれたもんだな、花陽」

「あはは……。でもAqoursのみんなと一緒に遊ぶことができて、私は楽しいよ」

 

 

 相変わらず俺が乱入したことで会話があり得ないくらいの盛り上がりを見せているが、これもまた変な騒動に巻き込まれる予兆なんですかねぇ……。まあ今回は曜の卓球に付き合うだけだし、善子の中二病ネタに巻き込まれないよう離れた卓球台を使用すれば問題ないだろう。つうか善子の奴、人前では堕天使キャラが出ないように更生したいとか言ってたくせに、μ'sの前では堂々と曝け出すのな。それだけ目の前の凛と花陽に対して心を開いていると思えば、それはそれでいいかもしれないけどね。

 

 とりあえず、俺を巻き込まなかったらそれでいいから。

 

 

「零くん! あとから凛の相手もしてね!」

「フフフ、眷属なら主人の相手をするのも当然でしょ?」

「だ、だったら私も……いいですか?」

「マジ……?」

 

 

 いやぁ女の子の人気者になるって辛いね――――って、言ってる場合じゃねぇなこれ。どうやら女の子たちは俺を部屋に返すつもりはないらしい。その言葉だけを聞くと何だか卑猥な響きに聞こえるが、やることはただの卓球。しかもさっき温泉に入って汗を流したばかりなのに、今から曜を含めて4人連続で卓球の相手をするハメになる。いくら夜遅くまで女の子の相手をしなければならない絶好のシチュエーションだと言っても、残業代として時間外手当を貰わないと割に合わねぇぞそんなの。μ'sとAqoursのメンバーからこうも求められているのに回避したいと思うだなんて、俺の心も贅沢になったもんだ。

 

 だが彼女たちの気持ちを無碍に扱いたくもないので、ここは仕方ないか……。

 

 

「分かった分かった。曜との卓球で体力が余っていればな」

「それ、私がどんな卓球をすると思ってるんですか……? 某サッカーやテニスのアニメみたいに、異次元の力を使うとか思ってません……?」

「いやお前さ、普通に容赦ねぇだろ。特にスポーツ関係に至ってはさ」

「運動家として、スポーツマンシップに誓うのは当たり前のことじゃないですか!」

 

 

 これだから運動部所属は……。こちとら特に用事がない日は引き籠るような生活をしてんだから、いきなりスポコン要素を持ち出されても困っちまう。しかも大学生なんて言ってしまえば準ニートみたいな自堕落な生活を送ってる訳だし、高校の決まった時間に起きて授業を受け、決まった時間に帰るなんて規則正しい生活をしてる奴と比べたら体力面も不安定だ。

 

 でも曜はやたらと嬉しそうなので、その笑顔に免じて許してやるか。笑顔を向けておけば俺が言うことを聞いてくれると思ったら大間違い……でもないかあながち。もはや笑顔が麻薬となって、俺を衝動的に突き動かしているとしか思えねぇなこれ。

 

 曜は意気揚々(ダジャレではない)とラケットを選ぶと、浴衣の袖を捲ってポジションにつく。俺も適当なラケットをカゴから取り出し、卓球台を挟んで臨戦態勢に入ってる曜の目の前に立った。

 

 

「よ~し! 早速いきますよ先生!」

「はいはい……」

「よ~~~~そろーーーーーーっ!!」

「な゛っ……!?」

 

 

 卓球って、ここまで超難易度のスポーツだったっけ……? 曜の打ったサーブボールが、えげつないほどのパワーとスピードで盤面をバウンドして通り過ぎて行ったんだが……?? それになんか球が跳ね返った盤面から煙が出てるんだけど、大丈夫かよこれ?? 俺はもっと、キャッキャウフフしながら温泉後の準備運動的な感じで卓球をするのかと思っていた。言うなればそう、砂浜で男女がのほほんと追いかけっこをするような穏やかな雰囲気。そんな風に片手間にできるくらいの卓球を想像していたのだが、コイツはガチだ。ガチで俺を打ち負かそうとしてきやがる……。

 

 曜はしてやったりの表情で、俺をにんまりと見つめてくる。コイツまさか、最初から俺を潰す気で卓球を挑んできたんじゃねぇだろうな? よくいるんだよな、弱い奴を虐めて優越感に浸ろうとする奴が。可愛いからって狡賢いのが許されると思うなよ……。まぁ許しちゃうんですけどね、可愛いから。曜からしてみれば普通の卓球かもしれないが、俺からしてみたら某サッカーやテニスのアニメのような超次元領域なので、とりあえず手加減はしてもらわないと身体的にも精神的にもボコボコにされてしまうだろう。

 

 

「あのさ、いきなり全力すぎやしませんかねぇ……」

「だ~か~ら! これが私のスポーツマンシップなんですよ。手加減をしたら相手に申し訳ないじゃないですか」

「一理あるけど、今はもっと力を抑えてくれねぇか? お前の打った球の力が強すぎて、打ち返したら手首がもげそうだからさ」

「そ、そんな馬鹿力じゃないですよ! ていうか、女の子にそんなことを言うなんて相変わらずですね」

「男女平等主義なんでね俺は」

「女性贔屓しかしていない先生が何を言ってるんですか……」

 

 

 それは俺の周りに女性しかいないだけで、男に対して態度が変わるなんてことはないから。それにμ'sやAqoursのみんなは他の誰よりも大切な存在だから、接し方が違うのは必然というかそれが普通だ。それに俺からコイツらへ向ける態度よりも、コイツらから俺への態度の方が一線を画していると思うんだけど気のせいか?

 

 とりあえず、このままフルパワーの曜と卓球を続けると打ってきた球で身体を貫通されかねないので、一回り手加減してもらうことにした。当の本人は渋々な様子だが、しばらくラリーを続けるうちに再び楽しそうな表情に戻っていった。でもようやく準備運動並みの卓球ができて、命の心配をせずに済んだのは良かったよ。つうかこんな優しいショットが打てるなら最初からやって欲しかったもんだ。

 

 そして、そんなこんなでゆったりとした卓球を続けていたのだが――――

 

 

「えいっ!」

 

 

 曜がラケットを振るたびに、浴衣が身体の動きに合わせて靡くため――――

 

 

「とうっ!」

 

 

 浴衣の奥の肌がチラチラと見え隠れしていた。

 しかも温泉上がりで元々浴衣を緩く着ていたためか、アイツが動くたびに徐々に着崩れている。

 

 

「そいっ!」

 

 

 更に曜は下着を着けていないらしく、球を打ち返して身体が揺れるたびにおっぱいも元気良く揺れる。だが着崩れているが中々開けない浴衣、また卓球台で下半身が微妙に見えないのが非常にもどかしい。もうちょっと大きく動けばおっぱいが浴衣から零れ、卓球台がなければ太ももを完全に拝めるものの、さっきから絶妙に隠されて見ることができない。

 

 そんな絶対領域に翻弄されていればもちろん、卓球に集中できるはずもなく……。

 

 

「先生、集中してますか!? さっきから私のワンサイドゲームになってますけど? 手加減してって言ったのは先生じゃないですか全く」

 

 

 こうして怒られる訳である。

 あのな、温泉上がりの艶のある胸元を見せつけられて卓球に集中できる訳ねぇだろ。しかも柔らかそうなおっぱいを大胆に揺らしやがって、誘ってんのかコイツは。大人だから理性を保つと冒頭に言ったのだが、早速その牙城が破壊されて目の前のほぼ半裸少女に手を出してしまいそうだ。しかも今日はたくさんの女の子の裸体を見たり触れたりしているから、少し欲求が溜まってんだよ。だから目の前で浴衣をチラチラさせられると、もはや卓球どころじゃなくなってしまう。そんな状況で力なんて入らねぇって……。

 

 

「先生ってもしかして、卓球苦手なんですか?」

「いや嗜む程度にはできるんだけど、そのなんだ……? 煩悩が……」

「あっ、もしかしてさっき女湯に侵入した時のことを思い出してるんですか? 相変わらずエッチというか、よくそれで教師になろうだなんて思いましたよね……」

「ほっとけ……」

 

 

 教育実習を終えた今でも実感するよ。俺ってつくづく教師なんて柄じゃないってことがな。しかも女の子が好きだからという自分勝手な理由だけで女子高の教師を希望しているのがこれまた不純。特に今のご時世では教師が女子生徒に手を出したり、校長など上位の役職の人たちまでもがそのような不祥事を起こす時代だ。つまりこんな変態が教師になって女子高に務めようだなんて、曜からしてみれば意味不明で監獄に入りたかがる無謀な挑戦者だと思っているだろう。

 

 でも俺は好きなことに対しては命を懸ける。ほら、μ'sやAqoursに献身的な愛を注いでるのと一緒だよ。まあこれだけの女の子に囲まれておきながら、まだ女の子たちにちやほやされたいのかと言われるかもしれないが、それはそれ、これはこれだ。

 

 

「とにかく、これからは本気を出してくださいよ! せっかく先生と2人きりで卓球してるのに、本気でぶつかり合わなくてどうするんだって話ですから」

「お前そんなにスポコンだったっけ……? 分かった分かった、できる限りは頑張るよ」

 

 

 とは言うものの、曜の浴衣の着崩れがどうしても気になるので本気が出せないのは事実。今も首元が開け、綺麗な鎖骨がくっきり丸見えとなっているため既に集中できていない。しかも薄っすらと汗をかいていることで色っぽく見えるのがこれまた厄介。

 

 露出で男を油断させるとは、あどけない顔をして卑怯な奴め……!!

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 結局、曜の無自覚な肌の露出に翻弄されて惨敗してしまった。女性に対する免疫力は学生時代より上がっているとは言えども、やはり女子高生の身体を生で見られるとなると目を離すことはできない。男の性だからな、これも。

 

 ちなみに俺が集中していないことで再び曜が怒り、無駄に卓球を2試合3試合と続けてしまったためか善子たちとの卓球に付き合う時間はなかった。とりあえずまた明日の夜に付き合ってやると約束してしまったのだが、この噂を聞きつけた他の子までもが誘ってこないか心配だ。まあそれだけ求められるのは幸福だと思って、甘んじて受け入れるよ。

 

 そして現在、俺と曜は卓球を終え部屋に戻っている最中である。

 

 

「もうっ、先生ってば最後の最後まで手を抜いてましたよね」

「それは色々な事情があってだな。またいつか本気でしてやるから」

「さっきからずっとその言い訳ですけど、どんな事情があるんですか……?」

「女の子には女の子の秘密があるように、男には男の秘密があるんだよ」

「まーたはぐらかそうとしてますね……」

 

 

 俺の隣を歩く曜は、目を細めながら俺を見つめてくる。

 お前の身体がエロ過ぎて集中できなかったとか言える訳ねぇだろ。しかもそれに言ったら言ったら浴衣を着替えてしまい、あの至福の時間を存分に味わえなかっただろう。

 

 その時だった。曜の雰囲気が少ししおらしくなったのは。

 

 

「…………良かったのに」

「へ?」

「別にもっと私の身体に夢中になってくれても、良かったんですよ……?」

「な゛ぁっ……!?」

 

 

 な、何言ってんだコイツ!? しかもそんな言葉が出てくるってことは、コイツ最初から俺が卓球に集中できなかった理由を知っていたのか?? それに自分の身体に夢中になっていいってことは、好きにしていいってこと……!? ダメだ、突然の告白に混乱してきた。

 

 すると戸惑っている俺に追い打ちをかけるように、曜が俺の身体にしなだれかかってきた。そして自分の腕を俺の腕に絡ませ、そのまま自分の胸にギュッと押し付ける。さっきまで浴衣の中で揺れる様しか見られなかったあの胸を、まさかコイツから密着させてくれるなんて……!!

 

 

「急にゴメンなさい。でも先生と一緒に遊べたことが嬉しくて、それに周りに人もいないのでつい……」

「そっか。でもどうして……?」

「先生とゆっくりお話ししたかった。ただそれだけのことですよ。東京に来たけどずっと練習続きで、先生と一緒にいられる時間はあってもお喋りする時間はそれほど多くはありませんでしたから。まぁ、練習のために東京に来てるんで仕方ないと言えば仕方ないんですけどね。それでもやっぱり、先生と一緒にいる時間が欲しいなぁと思いまして。ほら、いつもは千歌ちゃんたちに先生を譲っているので、今日くらいは……。あはは、ワガママですよね私……」

 

 

 なるほど、如何にも彼女らしい想いだ。曜は千歌と同じく明るく活発で物怖じしない性格のように見えるけど、その実、自分の中で悩みや鬱憤を溜め込みやすい性格なのだ。どうしても自分から一歩引いてしまう性格で、誰から背中を押されないと中々自分から強く踏み込むことができない。その証拠として、Aqoursの他のメンバーは練習後に時間がない時でも積極的に俺と触れ合っていたものの、曜とはあまり2人きりで喋ったことがない。水泳だったり服を見繕ったりと1人の趣味に対しては全力を注げるものの、恋愛、増して千歌たちがいる状況だとやはり一歩引いてしまう。それがコイツの他人を思いやれるいいところでもあり悪いところでもあるのだ。

 

 

 でも――――

 

 

「ワガママでもいいんじゃね?」

「え……?」

 

 

 俯いていた曜は、目を見開いて再び顔を上げた。

 

 

「好きな人と一緒にいたいって気持ちは誰にでもあるだろ。千歌たちのように積極的な奴らもいれば、梨子たちのように謙虚な奴らもいる。でも積極的だからとか謙虚だからとかで、相手に対する想いの強弱なんて決まるものじゃねぇと思うんだ。そもそも好きな人への想いなんて、誰かと比べるものでもないしな。要するに、自分の信念を第一に行動しろってことだよ」

 

 

 愛の強さを他人と測ったらどうなるのか。それは5年前にμ'sの9人が身をもって体験させてくれた、あの事件から結果は明らかだ。だから愛の強さなんて考えるだけ無駄だと、俺はその事件以降に身に染みて実感したんだ。

 

 

「お前はお前なりに、自分のやり方で想いの人を振り向かせてやればいいんじゃねぇの? それがどんなワガママな方法であろうとも、自分と相手が良ければそれでいいじゃん。ま、お前の振り向かせる対象である俺が、こんなことを言うにも変な話だけどな」

 

 

 そう言って曜に微笑みかけると、彼女からも自然と笑みが零れた。さっきから何やらクサいセリフを吐いているが、愛情を向けられる対象の俺自身からこんな話をするなんて滑稽すぎるだろ。まるで自分がこんな風に愛情を向けてもらいたいと曜を誘導しているように見えるので、ちょっとばかり恥ずかしいなこれ。

 

 でも、それで曜がよりやる気になってくれるのなら俺も願ったり叶ったりだ。だって曜がやる気を出せば出すほど俺へのアタックが強くなるってことだろ? そりゃ誰だって後押しするだろ。

 

 

「私自身のやり方で……」

「それが卓球で身体を晒すことだったなんて、中々できる発想じゃねぇけどな」

「でも、ずっと私の身体を見ていましたよね? 触りたいとか、思っていたんじゃないですか……?」

「そりゃ触りたいだろ。あんな綺麗で柔らかそうな肌を見せつけられたら、男だったら誰でもめちゃくちゃにしたいって」

「いいですよ。私はいつでも……」

「えっ……?」

 

 

 この流れ、曜と2人きりになった直後の話に戻ってね? やっと混乱した頭が落ち着いたのに、曜の大胆告白でまた取り乱してしまいそうだ。だが彼女とは雨の中の公園で2人きりの時に()()()()()()()をした関係なので、俺との交流の方法に自分の身体を差し出す考えに至るのは分からなくもない。だけどそれを加味しても、浴衣姿で俺を誘えばどうなるのかは明白なのに肝が据わり過ぎてるだろコイツ……!!

 

 雨の中で俺に()()()()()()()をした時はもっと俺に対して積極的になると決心していたらしいのだが、今は浴衣姿で躊躇なく身体を差し出す積極さを見せているので十分に合格点だ。そもそも、この積極さは成長したって扱いにしていいのか……?

 

 

「私、先生のことが好きです。表面上の私だけを見ず、私の心を奥底から気持ちを汲み取って後押ししてくれる。そんな優しく誠実な先生が大好きです。だから先生が望むことならどんなことだってしてあげられます。自分で言うのもアレですけど、私、いい身体をしていると思うんです。もしその身体で先生を満足させてあげられるのなら、先生が望むだけ好きにしてもらっても構いません。それが、私のできる愛情の伝え方ですから」

「性格も面倒だと思えば、思考までピンク色とは恐れ入ったよ」

「自分の好きに行動しろって、さっき先生が言っていたじゃないですか」

 

 

 どえらいことを口走っているくせに笑顔を向けられるってことは、それだけコイツが本気だってことか。

 そしてここまで女の子の許可ありで誘われると、大人だからとか教師だからとか、そんな柵を考慮すること自体がバカバカしくなってくる。相手が身体を求めているんだったら、その方法がどれだけ外道であろうとも応えてやるのが筋ってもんだ。世間体とか周りがどう思おうが関係ない。これは俺たち2人だけの問題なんだから。

 

 

「ひゃぁっ!?」

 

 

 俺は唐突に曜の腕を掴むと、廊下から少し離れた死角となるスペースに彼女を連れ込んだ。階段の下で廊下の照明も届かない薄暗い場所。多少の音や声が漏れてもバレることはないだろう。

 

 

「今日は女の子たちの裸を見たり触れたりしたけど、下手な行動はしないようずっと我慢してたんだ。でもお前をここに連れてきた」

「先生が仰る意味は分かってます。だから……」

 

 

 そして曜は、浴衣を開け始めた。

 

 

 女子高校生と身体で繋がろうなんて、どれだけ大きな不祥事になるのかは理解している。でも曜との愛情を一番効率良く、強く感じられるのはこの方法だ。もうこれ以上彼女が寂しがらないように、人生で最も多感で瑞々しい一生に一度の思春期に、俺の所有物(モノ)だってことを刻み込んでやる。

 

 それが俺が曜に向ける、一途な愛情ってやつだから。

 

 




 曜との恋愛話は基本的に歪んだ方向に話がシフトしていくことが多いですが、零君も曜も大人の情事にはどっぷり浸かってしまう子たちなので、彼らにとってはこの関係が一番良いのではないでしょうか。

 この前の果南もそうだったのですが、もうAqoursの子たちは零君にゾッコンですね(笑) まあ思考回路がピンクに染まっているのは確実に私の裁量のせいですが……

 こんな感じで、合同合宿編の中でAqours個々人の回は全員分執筆しようと思います。


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