ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 合同合宿編、11話目
 零君と穂乃果たち幼馴染組とが、本格的に名前呼びになった経緯が分かります。しかし幼馴染組というより、もはや海未回と言った方がいいかも……?


Call my name(後編)

 

「先生が恥じらいを持つなんて、どんなことがあったらこんなのになっちゃったんですか??」

「千歌お前、時々俺に敬意を払うふりをしてさり気なく罵倒する時あるよな……」

 

 

 まるで未確認生命体を見つけちゃったかのような顔で、千歌は俺を凝視する。しかも俺の話を聞いていた他のAqoursメンバーからの目線も痛く、どうしても昔と今の俺を同一人物には見られないようだ。でも安心しろ、あの頃の俺も今の俺も神崎零そのものだから。まあそんな純真な心を持っていたのは穂乃果たちと出会った当初くらいで、すぐに下劣な目を向ける変態魔人に変貌するんだけどさ。そんなもんだろ、男の欲望なんて。

 

 

「それでそれで!? 先生と海未さんはどのように仲良くなったんですか?」

「それは穂乃果の手解きがあってこそだよ。せっかくだから、穂乃果の武勇伝を――」

「はいはい、それじゃあ続きを話すよ」

「ちょっ!? だから穂乃果に喋らせてよぉおおおおお!!」

「絶対に話を盛ろうとするからヤダね」

 

 

 そもそもの話、穂乃果がやったことなんて武勇伝なんて伝説染みたことじゃない。むしろハラハラさせられたというか、穂乃果がやらかしてくれたおかげでお互いに緊張しまくりだった。コイツのせいで、あの頃は海未のことを色んな意味で意識してしまったと思っている。まあそのおかげで海未と親しくなれた上にお互いに名前呼びする仲になったので、一概に怒ることができないのがじれったいだどな……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「なに? 数学の教科書を忘れた?」

「はい……。いつも家を出る前に忘れ物がないかチェックするのですが……」

「ホントに、珍しいよなお前に限って」

 

 

 園田海未が緊張面だってことは、彼女と同じクラスの人間ならば誰でも知っていることだ。それくらい有名だからこそ彼女が忘れ物なんて凡ミスをしたことが珍しい。それに休み時間もあと1、2分で終了するため、隣のクラスから借りる暇もなかった。

 

 

「俺のを使うか? 教科書なんてなくても数学なら余裕だし」

「そ、そんな悪いですよ! それにもし練習問題を解くことになったら、問題が分からないじゃないですか……」

「じゃあどうするんだよ? 隣の教室に行く時間もねぇだろ」

「つ、机を……」

「えっ?」

「机をくっつける、というのはどうでしょう……?」

「マジ?」

 

 

 教科書を忘れたから隣の奴と席を合体させるなんて小学生以来だ。しかも相手は女の子、更に大和撫子の美少女と来た。海未は教科書を忘れたことを恥じているのだろうが、俺はむしろ海未と机を連結させて授業を受けることにドキドキしてしまっていた。別に隣に海未がいたところでいつもは緊張も何もしないのだが、教室で机を合体させるなんていつもの状況ではない。つまり、特別な状況で隣同士になるからこそ緊張するんだ。相変わらずこの頃はハートが弱いな俺……。

 

 

「ダ、ダメでしょうか……」

「い、いや、お前がいいならそれでいいけどさ……」

「ありがとうございます……れ、れ……冷蔵庫の中に入っている梅干し、お礼として持っていきますね」

「ながっ!?」

 

 

 『れ』の文字が出てくるなら、次に『い』の文字を言うだけで万事解決なのに……。しかも長々と『れ』から始める言い訳を考えやがって、どうせならその労力を『い』の一文字を言う精神力に回せよとは思う。まあそれができないから苦労してるんだろうけど。それに俺だって未だに"海未"と名前で呼べていないからどっちもどっちだ。

 

 とりあえず忘れたものは仕方ないので、海未の提案により俺たちは机を連結させた。クラスメイトから『神崎君と園田さんって仲がいいね』と思われるのも恥ずかしいし、先生に事情を説明しなきゃならない海未はもっと羞恥心を感じてしまうだろう。それでもなおこんなことをする海未の意図が、当時の俺は全く分からなかった。

 

 

「海未ちゃんも零君も、机をくっつけて仲いいね!」

「茶化すな。そもそもお前、教科書なんていらねぇだろ。どうせ授業中寝てるんだし、海未に貸してやれ」

「ダメ! 先生に当てられた時に困るもん!」

「どうせ当てられても分からねぇだろ。宝の持ち腐れだ」

「ひどっ!? 昨日の今日で零君とっても意地悪になってない!? ことりちゃんと海未ちゃんには優しいのに」

「普段の行いの差だな」

「なんか納得いかない……。もういいもん! 寝ちゃお!!」

「自暴自棄になるな……ん??」

 

 

 穂乃果は数学の教科書で顔を隠して、身体を机に伏せ睡眠体勢に入る。

 だがその時、海未の教科書の行方がようやく分かった。穂乃果が自分を隠すために防壁としている教科書に、達筆な字でこう書いてあった。

 

 

『園田海未』

 

 

「おい、犯人はお前か」

「えっ、犯人……?」

「惚けんな。ここに書いてあるだろ、園田の名前が……」

「教科書に名前を書くなんて小学生みたいなこと――――――あ゛っ!? ほ、ホントだぁ!?」

 

 

 穂乃果はまさか教科書の裏に自分の名前を書いている奴が、高校生にいるとは思っていなかったらしい。確かにいちいち名前なんて書かないけど、海未の几帳面な性格を考えたらおかしいことではない。

 

 

「穂乃果……。あなたって人は、自分が教科書を忘れたからといって人のモノを盗むなんて……」

「ち、違うんだよ海未ちゃん! これは零君と海未ちゃんを仲良くする大作戦なんだから!」

「はぁ?」

「ほら、教科書がなかったら隣の人に見せてもらうしかないでしょ?」

「なるほど、それで俺たちを強制的に接近させようとしたと」

「そうそう。それに穂乃果はうっかり教科書を忘れてきちゃったから、零君と海未ちゃんは仲良くなれるし、穂乃果は教科書を入手できたしで一石二鳥じゃない?」

「…………」

「…………」

「あ、あはは……2人共、顔怖いよ? ほら、スマイルスマイル! えっ、えぇ~っと……ご、ゴメンなさぁああああああああああああああああああああい!!」

 

 

 コイツの本音がどっちなのかは分かりかねるが、策士策に溺れるとはまさにこのことだろう。まあコイツ場合、策士と呼べるほど賢い策を立てていたかと言われると頷くことは難しいだろうけど。

 

 しかしこれで海未の教科書も取り戻せたし、机をくっつける必要もなくなったな。授業中のような静かな雰囲気の中で肩が触れ合うほどの距離に海未がいると思うと、この頃の俺はとてもじゃないが授業に集中できなかっただろう。教科書を見せるだけでお互いが名前で呼び合えるきっかけを作れるのか微妙なところだが、そもそも話すきっかけがないと名前呼びも何もないので、もしかしたら絶好の機会を逃しちゃった……?

 

 

「…………その教科書は穂乃果が使ってください」

「へ?」

「えっ、いいの!?」

「教科書がないと練習問題も解けないですし、先生に当てられたら困るでしょう。私はれ、れ……神崎君に見せてもらいますから」

「でもそれだったら穂乃果が隣の奴に見せてもらって、園田は自分の教科書を使う方が普通だろ」

「ほ、ほらっ! もう先生が来ちゃいましたから、席に着いてください!」

 

 

 意外というか、自分の教科書をあっさり貸しやがった。てっきり海未にとって俺と机をくっつける行為は苦肉の策だと思っていたのだが、あながち避けられている訳ではないみたいだ。ここまで名前で呼ばれないと、近付きたくもない相手に無理をしているのかとヒヤヒヤしてたから安心したよ。とにかく海未は俺に歩み寄りたいんだと、今の彼女の行動で分かった。

 

 教科書を盗んだ犯人は分かったものの、彼女の意向で俺と海未が仲良く(?)1つの教科書を使うことになった。授業中は海未が肩が触れ合うほど近い距離にいるためか、女の子特有のいい匂いや時たま手が触れちゃったりしたせいで案の定授業には集中できなかったことを今でも覚えている。それは海未も同じだったようで、いつもは凛とした態度で授業に望み、先生に当てられても迷わず答えを返す彼女は優等生そのものだったが、その授業だけは口籠ってあたふたと慌てふためいていた。

 

 なんかこの頃が一番まともにラブコメしていたんじゃないか……? 今ほら、エロいことばかりだし……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「どうして俺たちが衣装を作らなきゃいけないんだ? ことりの仕事だろこれ」

「仕方ないではありませんか。急な用事が入って作業ができないみたいですし……」

「いや、絶対に測ってたぞアイツ。顔を見れば分かる」

 

 

 この頃のことりは天使の側面も持ちながらも、さっきのように小悪魔的な面も持ち合わせていた。今回も俺と海未を2人きりにさせるのが目的で、用事なんて嘘っぱちだとアイツの口角が上がった表情を見ればすぐ分かる。今はただの歩く性玩具なので、この頃はまだ(性格的に)可愛かったよ。

 

 そんな理由でことりの策略により、慣れもしない2人が次のライブの衣装作りをする羽目になった。

 被服室に2人で寂しく残りながら、ことりの作った衣装作り設計書を見て作業を進めていく。部屋にはミシンの音が小刻みに流れるだけで、俺たちの間に会話はない。慣れないミシンに集中しているってのものあるが、数学の授業中にお互いをずっと意識していたこともあってか妙に気まずい。世間話くらいならいつも普通にできていたのに、いざ名前呼びで仲良くなろうとすると途端に緊張してしまう。しかも穂乃果とことりが俺たちを2人きりにする舞台を作り出そうと躍起になっているから、なおさらお互いがお互いを意識してしまう。もっと自然な感じなら落ち着けるのに、2人が下手に土台作りをしてくるから余計に戸惑っちまうんだよな……。

 

 まあ本人たちは善意でやってくれている(穂乃果はどうか分からないが)ので、やめてくれと言えないのももどかしいところだ。

 

 

「あ、あの!」

 

 

 最初に静寂を破ったのは海未だった。やはり彼女もまだ俺との2人きりには慣れていない様子なのだが、わざわざ緊張の糸を切ってまで話しかけてきたってことは、2人きりだからこそ伝えたいことがあるのだろう。これまでは2人きりと言っても穂乃果やことりが近くにいたり、教室の中だったりで完全個室に2人だけって状況はなかったからな。

 

 

「ご、ゴメンなさい!」

「えっ、どうして謝るんだ……?」

「いや、今日1日、私に話しかけにくくなかったですか……? 神崎君のことを名前で呼ぼうと思えば思うほど緊張してしまって、それで取り乱しちゃいました。そのせいで授業中に先生に当てられた時にもフォローをしていただいて、あなたには申し訳ないことをしたと思っています……」

「そんなこと考えてたのか。確かに今日のお前は挙動不審だったけどさ、別に気にしてないから」

「ですが迷惑をかけたことには変わりありません」

 

 

 ここで当時の俺は理解した。海未は海未なりに俺へ歩み寄ろうとしてくれていたことを。そして、俺自身は手をこまねいて待っていただけってことに。

 当時の俺は、てっきり海未が緊張しまくって立ち往生している者とばかり思っていた。だけど海未は自身の焦燥を振り切ってでも、俺の心に近づこうとしてくれていたんだ。対して俺は彼女から歩み寄ってくれるのを待つばかりで、よくよく思い返してみれば自分からアクションを起こしたことはなかったと気付く。そんなことでは、お互いを名前呼びするほどの仲になれないにも仕方がないよな。

 

 今の俺も女心には疎いと思うが、この時の俺は女心に疎いどころか無視していたレベルだったと思う。

 だが海未の様子を見て、当時の俺もようやく彼女の行動理由を察することができた。海未は俺ともっと仲良くなりたい、そう考えていると。そして机とミシンを挟んでお互いに向き合いながら、俺は決心した。

 

 

「なぁ、隣に行ってもいいか?」

「ふぇっ!? ど、どうしてですか!?」

「ほら、俺の分はもう終わったからさ。教えてやるよ」

「は、早いですね……。ミシンを使うのは初めてだと言ってませんでした?」

「俺は天才だから、初めてのことでもすぐに慣れちゃうんだよ。今ならことりよりもいい衣装を作れるんじゃないか」

「フフッ、傲慢すぎませんかそれ」

「悪いな、昔からだ」

 

 

 ファーストライブの帰り道以来だ、海未の笑った顔を見たのは。何故だか知らないが、いつの日からか女の子の笑顔を見ると心が落ち着く。だからなのか、女の子の笑顔だけは何が何でも守りたくなってくる。どうして自分がこんな行動原理を持っているのかは知らないが、これは論理的なことではなく直感なのかも……?

 

 とにかく、雰囲気がいつも通りに戻ったのでお互いに幾分か気が楽になった。

 俺は海未の隣へ移動する。授業中はお互いを意識し過ぎて逆に心の距離が遠かったけど、緊張の糸が解れた今ならそんな戸惑いはない。やっぱり、親友同士の距離なんて良くも悪くも些細な意識の違いで変わるもんだ。

 海未の堅かった表情も次第に柔らかくなり、もう穂乃果やことりと会話するのと同じくらい自然に話せるようになっていた。

 

 

「そうそう、その調子。不器用な奴かと思ってたけど、案外いい手捌きしてるじゃん」

「それ、褒めてるんですか?」

「褒めてる褒めてる」

「神崎君って、意外とお調子者だったんですね。言葉の端々に人を見下してると言いますか」

「元からこうなんだ、許してくれ」

「許すも何も、既にそんなあなたに色々助けてもらっていますから、今になって咎めたりはしませんよ」

 

 

 自然と会話ができるようになった流れのせいか、思わず自分の傲慢な性格が露呈する。だけど海未は気を悪くするどころか、むしろ俺の本性を知ることができて嬉しそうだった。よく考えてみれば、海未は常に自分を出していたが、俺はずっと体裁を取り繕っていたことを実感する。俺が海未に歩み寄ろうとしていなかったのがその証拠だ。この頃の俺は女の子に対してだけはコミュ障だったと、今になってはっきり分かったよ。まあ今も今で女の子をぞんざいに扱う時があるけど、それは淫乱ちゃんたちの暴走に相手をしきれないだけだから。

 

 

「ここ、ミシンで縫うのは難しいですね。ここだけは手でやりましょうか……」

「いや、コツさえ掴めば行けるって。ちょっと失礼」

「ひゃぁっ!?」

「な、なんだよ!? 手を触っただけだろ?」

「それがビックリしたんですよ!!」

 

 

 確かにそりゃそうだ。例え手だろうが、いきなり異性に触られたらセクハラを疑っちまうよな。さり気ない流れで海未の手を触っちゃったけど、言われて気付くことの重大さ。仲良くなっていきなり身体に触れるとか、出会ってすぐにヤっちまうエロゲー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされたエロゲのようだ。俺って、この頃から女の子に対するデリカシーがなさすぎだよな。まるで成長してない。

 

 すると、海未は俺の突然の行動に戸惑っていたためか、ミシンが現在進行形で動いていることをすっかり失念していたようだ。そのため、ミシンの針が自分の手に近づいてしまっていることに気付いていなかった。

 

 このまま彼女に声を掛けても、ミシン針のスピード的に彼女が反応するまで間に合わない。

 仕方ない……方法はこれしか!!

 

 

「えっ、きゃぁっ!?」

 

 

 俺は咄嗟に海未に抱き着いて床に押し倒してしまう。椅子が倒れる音と海未の驚く声が部屋に響いたが、そこからしばらくは無音だった。海未が現状を把握するのに時間がかかっていたんだとは思うが、俺自身も彼女を助けるとはいえ大胆なことをしてしまったと今更ながらに思ってしまう。とりあえず奇声を上げられて誰かを呼ばれる前に、ちゃんと弁明しておくことにした。

 

 

「こ、これはお前の手がミシンに巻き込まれそうになったから、思わずこうして……」

「つ、つまり、私を助けてくれた……」

「大丈夫か海未? 手、ケガしてないよな?」

「え、ええ……。あ、ありがとうございます、零」

「あっ、名前……」

「えっ……お、思わず! 馴れ馴れしかったですか!?」

「いや嬉しいよ! やっと海未から名前を呼んでもらえて!」

「海未……? フフッ、それは私もですよ」

「あぁ、いつの間に俺も……」

「優しいところを見せてくれたかと思えば、意外と鈍感で可愛い面もあるんですね」

「せっかくいい気分に浸ってるんだから茶化すなよ……」

 

 

 お互いに押し倒し押し倒されながらも、名前呼びができた喜びから体勢のことなんて全く気にしていなかった。それほどまでに俺の中では海未と仲良くなれた事実に幸せを感じ、また海未も余計な気兼ねがなくなって安心しているようだった。

 

 かくいう経緯で、ほんの些細な事件があったものの、俺が彼女の想いに気付いたおかげでお互いに歩み寄ることができたんだ。異性に恋をすることに特別な事情なんて必要なく、日常的に一緒にいるだけで自然と好きになっているもの――――そんな格言を編み出した俺だが、それは友情にも当てはまるのかもな。下手に意識をしなくても、心の持ちようさえあればあとは自然と心が繋がるもんだ。

 

 

 

 そして、これだけで話が終われば大団円だったのだが……。

 

 

 突然、被服室のドアが開く。

 

 

「零くん、海未ちゃん。ごめ~ん、用事が延期になっちゃったから様子を見に来た……よ?」

 

 

「「あっ……」」

 

 

 ことりは俺たちの体勢を目を丸くして凝視する。

 それもそのはず、ちょっと前までお互いに名前ですら呼べなかった奴らが、放課後の学校でほぼ抱き合っている状態で床に転がっているからだ。

 

 ことりは身体を震わせると、その場で一回転する。

 

 

「あの、そのぉ……。あとは2人でごゆっくりぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 

「ことり!?」

「待ってくれ! これには深い事情が……って、行っちゃったよ」

 

 

 この後、ことりが穂乃果に事のあらましをチクったためか誤解が広がりそうになった。しかし海未と2人ですぐ事情を説明したから、学校中の噂になることだけは食い止めることができた。仲良くなってすぐ押し倒して恋人同士になるなんて、そんなあらぬ噂を立てられたら学校での居場所がなくなるところだったぞ……。

 

 すっきりとした展開で幕を降ろさせてくれない不幸な体質は、昔も今も一緒だな。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「なるほど、結局いつもの先生だったって訳ですか」

「改めて弁明しておくけど、下心なんて一切ないからな」

「分かってますって!」

 

 

 千歌の笑顔って、純粋に無邪気で可愛い時もあるんだけど、時たま憎たらしい時もあるんだよな。笑顔を向けておけば俺を騙せると思ってんのかコイツ……。

 なんかこれから先このネタで弄られそうなので、これは言わなきゃよかったってやつか?

 

 

「それにしても、先生と海未さんってそんな苦労があったんですね。今の仲の良さを考えると、ちょっと意外でした」

「まあ今は気兼ねがなさ過ぎるどころか、即興で漫才ができるくらいには愛も情も深いよ。名前で呼ぶのは、そりゃ最初は緊張するかもしれないけど、慣れちゃえばなんであんなことで悩んでたんだろって思うくらい些細なことだから。それに、呼び方1つ変えるだけでお互いの距離がグッと近くなったから、あの時にお互い踏ん切りをつけてよかったと思ってるんだ」

「お互いの距離が縮まる……。私も先生を名前で呼ぶことができれば、今よりもずっと……」

 

 

 千歌はしばらく俯き、自分なりの答えを導きだそうとしているようだ。

 名前呼びに関する話はそれで終わってしまったが、千歌以外のAqoursメンバーも物思いに耽っているようで、何かしら心境の変化があったみたいだった。

 

 

 

 

 ちなみに、顔を赤くして悶絶している子がここに1人――――――

 

 

「お、思い出しただけで恥ずかしい……。あの時が零に初めて押し倒された日でしたから、なおさら……」

「はは、ドンマイ……」

 

 

 心をより強固にしたAqoursとは対照的に、海未の心はいつの間にかボロボロになっていた。

 そりゃ男に押し倒された事実をこんな大っぴらに語られるとねぇ……って、俺のせいか。失礼失礼!

 




 零君まで初々しいので、普通のラブコメを描くのがここまで新鮮だとは思いもしませんでした(笑) 今の零君がまともな恋愛ができるかと言われたら、それは確実に"否"ですから。まあR-15やR-17.9方面に傾いちゃうのは、この小説の魅力だと思っているので直す気は全くありませんがね()


 次回は鞠莉回を予定しています。


 また6月上旬に2回目のリクエスト小説を投稿しようと思っているので、以下の投稿フォームから是非リクエストをご応募ください!
 活動報告からも飛ぶことができます。

【募集箱】
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=181617&uid=81126




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