ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 合同合宿編、21話目
 今回はAqours編です。合宿回ではAqoursは最後の見せ場となるので、彼女たちの成長っぷりを最後まで見届けてやってください!


Aqoursの意義

 

 μ'sに全てを打ち明けて間もなく、俺はAqoursの練習に顔を出していた。相変わらずパラソルの下で寝転び、くつろぎながら彼女たちの練習を眺めている。大した指導もせずに女の子をまじまじと見つめるのももはやいつものことだが、今日は何故か彼女たちの練習態度に口出ししたい衝動に駆られていた。μ'sとの話し合いの中で千歌たちをより大切な存在だと再認識したためか、それとも昨晩の話の件を一刻も早く彼女たちに伝えたいとか、色々と理由は思い浮かぶ。

 

 だが、アイツらの動きを見ているとそれは違うとすぐに分かった。

 一言で言ってしまえば、ダンスにキレがない。お互いの意識がバラバラなのが目に見えて明らかであり、まるで一致団結できていないのだ。各々が自分のパフォーマンスを最大限に引き出すためだけに力を注ぎこんでおり、そのせいで周りと連携が取れていない。辛うじてダイヤとルビィだけは周りと合わせようと必死になっているが、千歌たちが各自1人で独走してしまっているため息が合っているとはお世辞でも言えなかった。昨日までは楽しそうに練習していたのに、今日はやたらと焦りが見える。

 

 遂に見るに見かねたのか、ダイヤがみんなの前に出る。

 

 

「いったん休憩にしましょう。このまま続けても無駄ですわ」

 

 

 ごもっともな意見だった。千歌たちのダンスはそこら辺の幼稚園児がやるようなお遊戯会のようなもので、決して大観衆の前で見せられるようなものじゃない。何年も幾多のスクールアイドルを目に焼き付けてきた俺が言うんだ、間違いないだろう。かなり言葉は悪いが、音楽で例えればアイツらの動きは不協和音だ。

 

 だが、千歌たちはそのことに気付いていない。だからダイヤが練習を止めた途端、ルビィを除くAqoursメンバーが目を丸くした。

 

 

「どうして!? まだ練習を始めて30分も経ってないのに、休憩なんてしてたら時間の方が無駄ですよ!」

「千歌さん、焦る気持ちは分かりますが少し落ち着いて……」

「グズグズなんてしてられない! このままだと……このままだと絶対に虹ヶ咲学園のみんなに勝てないじゃん!!」

「そ、そう言われましても……」

 

 

 千歌はいつも以上に熱くなっていた。自分の熱中することはとことんやり込むタイプであり、スクールアイドルに至っては特に志が高い。だからこそ暴走する彼女を見て、ダイヤは思わず後退りしてしまっていた。恐らく千歌がどうして焦っているのか、その理由を分かっているのだろう。だが千歌の言っていることも理解できてしまう自分がいるので、下手に彼女の意志を無下にできない葛藤が湧き出ているのはダイヤの様子を見れば察せる。それはルビィも同じようで、何かを言いたげな様子だが、自身の引っ込み思案な性格も相まって切り出すことができないようだ。

 

 反面、それ以外のメンバーからは千歌と同様の焦燥を感じられた。

 そして、梨子、曜、善子、花丸、果南、鞠莉の6人も各々口を開く。

 

 

「多少無茶をしても練習を続けるべきです! スクフェスまでもう1ヵ月もないんですから!」

「もっと実力を上げないと、私たち負けちゃうよ……」

「た、たまにはヨハネの本気を見せてあげないとね……」

「マル、もっと頑張るから。練習を続けさせてください!」

「μ'sの皆さんに練習を見てもらえるのは今日まで何だし、休んでいる暇はないんじゃない?」

「みんなの言う通り、時間はいくらあっても足りないんだから。もっと効率的に使わないと!」

 

「み、皆さん……」

 

 

 梨子たちもスクフェスに向けての意気込みは十分――――とは言い難かった。チームワークの欠片もなかったさっきの練習風景を見ていたら、彼女たちの熱意など全く伝わってこない。行き場のない焦燥感に千歌たちは落ち着きのない様子だが、みんなの焦りを間近で見ているダイヤとルビィの表情も段々雲行きが怪しくなってきた。

 

 さて、そろそろ出番かな?

 達観した主人公のようなセリフを吐くが、実際には俺の過去話によって引き起こされている事象だと思うので、騒動の中心人物としてみんなを落ち着かせる義務が俺にはある。虹ヶ咲との一件について千歌たちに言いたいことはたくさんあるが、まずは現状をなんとかしないとな。

 

 

「お前ら、その辺にしておけ。ダイヤが困ってるだろ?」

「せ、先生!? いたんですか……?」

「いたわ!! つうか、結構前からお前らの練習を見てたのに気付かなかったのかよ……」

「練習に必死になっていたせいで……ゴメンなさい」

「いや別に謝らなくてもいいけどさ。それよりも、あまりダイヤに迷惑をかけるな」

「先生も練習をするなって言いたいんですか!? 練習をするための合宿なんですよ!?」

「そもそも練習になってないから口を出してんだよ」

 

 

 千歌は頭に?マークを浮かべている。その様子を見る限り、俺とダイヤが練習を止めた理由なんて分かっていないのだろう。

 彼女は珍しく俺に噛みついてきており、飼い主に慣れない犬のように威嚇する。いつもは聞き分けがいい子なのでここまで吠えられたことに驚きだけど、だからと言ってこちらも怯む訳にはいかない。浦の星の教育実習生としての俺はもう卒業してしまったが、今でもAqoursの顧問なのは変わりない。だからこそ彼女たちを多少厳しく諭してやるのも顧問の役目だと思うんだ。

 

 

「もっと肩の力を抜け。焦りに縛られてたら、本当の自分を発揮できないぞ?」

「自分の魅力をもっと上げるためにたくさん練習するんですよ!!」

「我武者羅に練習したって、時間を無駄に浪費するだけだぞ」

「じゃあどうしろって言うんですか! 今よりもっともっと練習してスクールアイドルとしての実力を上げて、スクフェスで優勝する。そうしないと……」

「どうしてそこまで自分磨きに拘ってるんだ?」

「そうしないと虹ヶ咲の皆さんに勝てないじゃないですか!」

 

 

 千歌の叫びに、他のみんなも同意を込めてか沈黙する。ダイヤとルビィは場の重い空気に押し潰され、自分の言いたいことを口に出すこともままならないようだ。そもそも2人も練習を積み重ねないと虹ヶ咲に勝てないことは分かっていると思う。その事実を受け入れているからこそ、頭ごなしに千歌たちを否定できないのだろう。

 

 このままではAqoursの結束は崩壊の一途を辿るため、なんとかコイツらの道を正してやらないと。

 

 

「そこまで歩夢たちを目の敵にする理由はなんだ?」

「別に目の敵になんてしてません。ただ今の私たちでは、先生を惹きつける魅力が足りないだけです。歩夢さんたちと比べて……」

「お前ら、やっぱり……」

 

 

 どうやら千歌たちの中で渦巻いている感情は、さっきダイヤとルビィが抱いていた感情と同じだ。同年代の歩夢たちにスクールアイドルとしての実力も、俺に対する想いも負けていると思い込んでいる。だから無茶をしてでも練習をして、自分たちのスキルを向上させようとしたんだ。そうすれば自ずと自分の輝きも増すと思って……。

 

 これはダイヤとルビィにも言ったことだが、それは勘違いだ。誰が誰を好きだろうとも、自分の想いを殺す理由にはならない。だからこそ千歌たちはここまで必死に練習しているのだろうが、それも方向性が間違っている。虹ヶ咲という目先の相手に捕らわれ、自分自身を磨くためだけに躍起になっているせいで自分たちの真の目標が見えていない。その様子から崖っぷちまで追い詰められているのは明らかだった。

 

 だから、俺の知っていることを全て話そう。これまでAqoursのみんなには色々と隠し事をしてきたけど、何もかも、洗いざらい全て。

 千歌たちをここまで追い詰めた要因は俺にもあると思っている。それも余計な心配を掛けさせたくないからという優しさだと考えていたが、みんなは自分の想いを素直に俺にぶつけてくれるのに、自分だけ秘密をたくさん抱え込んでたら卑怯だしな。これでようやく、本当の意味で彼女たちと向き合えるのかもしれない。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 そんな訳で、俺の秘密や気持ちを隅から隅まで千歌たちに話した。さっきダイヤとルビィに教えた『自分の気持ちを押し殺す必要はない』ってことも、梨子だけが知っていた『俺がμ's全員を女にしている』ことも。あらゆる情報が一気に雪崩れ込んできたためみんな戸惑いの表情を浮かべているが、徐々に脳内整理ができると次第に焦りも消えたようだ。

 

 しかし梨子もそうだったけど、千歌たちの様子を見る限り、俺の説明に対して完全に腑に落ちた訳でもないようだった。特に自分の好きな男が別の女性と、しかも複数人と付き合っていることを知らされたら戸惑わない訳がない。しかも虹ヶ咲との過去話を聞かされた直後だから、感情的にならざるを得ないのも分かる。でも俺はこのタイミングで知って欲しかった。みんなの焦りや迷いを解消するには、俺の秘密を全て明かさないといけないと思ったからだ。

 

 緊張の糸が解れない雰囲気の中で、まず最初に俺と向き合ったのは曜だった。

 

 

「い、一応確認なんですけど、私……いや、私たちとは遊びじゃないんですよね……?」

「当たり前だ。それだけは断じて違う。俺の想いも、お前たちと一緒で本気なんだよ」

「そっか。それだけ分かれば十分です」

「ちょっ、ちょっ!? それで納得したの!?」

「善子ちゃんは先生に聞きたいことあるの?」

「あ、あるっていうか、頭の中がモヤモヤしっぱなしで整理できていないというか……」

「言いたいことがあるなら素直に言え。別に整理できていなくてもいい。今この場で全てを解決するために何もかも明かしたんだから」

 

 

 千歌たちの迷いを完全に消すためには、この場で彼女たちの疑念を全て解決しないといけない。そうでなければスクフェスまでにAqoursの練習はままならず、それどころか自分たちの願いを叶えることすらできなくなるだろう。俺に現を抜かして、自分たちの夢を忘れそうになっている彼女たちを早いとこ取り戻さないと。

 

 善子はずっと俯いて考え事をしているようだったが、覚悟を決めたようで俺の目を力強く見つめてきた。

 

 

「アンタの言う通り、確かに私たちは虹ヶ咲の人たちに負けたと思い込んでたわ。いや、今でもちょっと思ってる。あの人たちがアンタに向けている愛は、本物よ」

「そうだな。それも熱烈なファンとか、憧れの人とか、そんな生温い類じゃない。アイツらは本当に俺のことを心から愛してくれている。自分で言うのもおかしな話だけど、それくらい歩夢たちの想いは強いんだ。アイツらにとってスクフェスなんてものは、俺に自分たちをアピールする場としか見てないだろうな。スクフェスでμ'sやAqoursに勝つことで、愛の強さを証明しようとしてる」

「なんだ、分かってたんじゃない。だったらどうして練習を止めたりしたの? 私たちみんな、負ける訳にはいかないと思ってるのに……」

 

 

 そりゃスクフェスはラブライブ本選と同じく明確に順位が付けられるため、誰しもが1位になりたいと願っているだろう。スクフェスに参加する以上、より高見を目指すなんて当たり前のことだ。誰にだって負けたくない気持ちがあるってことくらい分かっている。

 

 だが、千歌たちは力の入れどころを間違っているんだ。スクフェスで歩夢たちに勝つ。それがAqoursなのか……?

 

 

「お前らって、どうしてAqoursを結成したんだ? そうだな……梨子、お前はどうしてAqoursに入った?」

「わ、私ですか!? そうですね……千歌ちゃんが浦の星を救いたいって気持ちに感化されて、お手伝いをしたくなったのが理由です」

「花丸は?」

「マ、マルはルビィちゃんと一緒に憧れのスクールアイドルができるならって。それにマルも浦の星が好きだから、統廃合を阻止するために入学希望者を増やしたくて……だからマルも千歌ちゃんたちに協力しようと思ったんです」

「それだよ。Aqoursには浦の星の統廃合を撤回させるって目的があるんだろ? そしてそれは、お前たちの夢でもある。そうだろ果南、違うか?」

「確かに、私たちがどうして9人でスクールアイドルを始めたのか、見失っていた気がしますね……」

「もっと輝きたいと自分を磨くお前たちの気持ちも分かるけど、夢を忘れるなってことだ。歩夢たちが俺を想う強さより、自分たちの想いの方が強いと証明したいからスクフェスを勝ち抜く、なんて考えても、お前らの本来の力は発揮できないからな」

 

 

 Aqoursと虹ヶ咲では、スクールアイドルを続けている理由がまるで違う。Aqoursはさっき言った通り、もっと自分を輝かせたいと願うと同時に、浦の星を統廃合から防止する目的も含まれている。自分たちの故郷と学校を守るために、9人が一致団結して同じ夢を追いかけているんだ。

 対して虹ヶ咲がスクールアイドルを続けている理由はただ1つ。俺に自分たちをアピールするためだ。恋をする相手に本気の自分たちを見て欲しいから。辛い過去による同情なんて抜きにして、自分たちの実力で俺を振り向かせたいから。つまり、アイツらはたった1人のために自分たちを磨き続けている。同じスクールアイドルであったも、Aqoursとは目的の根底が違うのだ。

 

 それなのに、Aqoursは自分たちの土台を捨てて虹ヶ咲の土台に殴り込もうとしていた。そう考えると、如何に千歌たちが無意味な練習をしていたのかが分かるだろう。

 

 

「とは言っても、あの人に勝ちたい、追いつきたい、そう思うのは人間なら普通のことだ。でも自分たちの本当の目的を忘れるな。お前たちは俺だけじゃなくて、全国にAqoursをアピールしたんだろ? だからもっと輝きたいと思ってるんだろ? なぁ鞠莉?」

「そう、ね……。さっきまでの私たちは、自分自身のことしか見えてなかった。仲間のことすらも置き去りにして、自分だけが成長しようと必死だったから……」

「それが分かってもらえるだけ良かったよ。あのまま道を踏み外していたら、とてもじゃないけどスクフェスに出場させられなかったらさ」

 

 

 みんなの表情から曇りが消えたところを見ると、どうやら見失っていた自分を取り戻したようだった。あとは俺とμ'sの関係をどう感じているかだが、場の和やかになりつつある雰囲気から察するに拒絶されるってことはないだろう。ま、拒絶されたところで俺には手の打ちようがないんだけど……。

 

 

「でも、お前たちの気持ちは嬉しいよ。夢を忘れてしまうほど、俺への愛を形にして示そうとしてくれたんだろ? 努力の方向性は我武者羅だったけど、その気概にはグッと来た。なんつうか、ありがとな」

 

 

 大したことを言っているつもりはなかった。ただ純粋に自分が思っていたことをみんなに伝えた、それだけだ。

 だが千歌たちは妙にそわそわしていた。顔を赤くし、まるで愛の告白でもされたかのような様子だ。こうしてみると、やっぱり根は純粋な子が多いよなAqoursって。別にμ'sや虹ヶ咲が特別ぶっ飛んでると言いたい訳でもないけどさ。統廃合を阻止しようなんて大層なことをやってる子たちだけど、恋愛に関しては年相応なんだと思い微笑ましくなっちまうよ。

 

 その中でも千歌が、少し不安げな表情で俺に話しかけてくる。

 

 

「程度の違いはあれど、先生がμ'sや虹ヶ咲の方々と関係を持っているのは分かりました。それでも尚、私たちのことをずっと見ていてくれますか……?」

「愚問だな。さっきも言ったけど、お前らを好きな気持ちにμ'sや虹ヶ咲は関係ないよ。だからお前たちはお前たちなりに自分をもっと輝かせてみろ。夢や目的を忘れず、好きな人のためにも頑張る。欲張りだけど、それでいいと思うんだ。好きなこと、やりたいことに全力でぶつかってみろ。そうすれば自ずと輝けるようになるからさ」

「自分たちのやりたいこと、叶えたい夢のこと……。統廃合の阻止も、自分たちがもっと輝きたいという思いも、どちらも諦める気はありません。自分たちがやりたいことを貫く。それで全国の人たちに、もちろん先生にも、Aqoursの魅力をたくさん伝えたいと思います!」

「うん、分かればよろしい!」

「ひゃっ!? ちょっ、ちょっと髪の毛くしゃくしゃしないでくださいぉ~」

 

 

 髪は女の命だとよく言ったものだが、その命をこの手で弄ぶ感じが堪らなく好きなんだよ。髪を弄ってやると女の子は決まって抵抗の色を見せるから、そんな可愛い反応を見たいがためにイジメてるってのもある。

 ―――というのは半分冗談で、純粋にみんなが俺の全てを受け入れてくれたことに安心していた。まだ高校生ながら複数の女性と付き合う非常識な大人の言い分を理解してくれるなんて、正直なところ期待は大きくなかったんだ。でも千歌たちは俺を拒絶しなかった。それだけでもう嬉しいのなんのって。これでもコイツらがどんな反応をするのか緊張していたんだぞ? 嬉しさと共に安心して心が軽くなったから千歌の頭を激しく撫で回してやった、こんなところだ。

 

 

 そしていつの間にか、あの重苦しかった空気は沈静化していた。一足先に俺に諭されていたダイヤとルビィも千歌たちの復活に胸を撫で下ろし、本来のAqoursを取り戻せたことに安堵しているようだ。

 

 

「ダイヤぁ~? ちょっと聞きたいことがあるんだけどぉ~?」

「な、なんですか鞠莉さん……? そんな怖い顔して……」

「もしかしてダイヤは、さっき先生が言っていたこと全部知ってたの?」

「えっ……と、全部ではないですわ。でも自分たちの想いを天秤にかける必要がないと、さっき旅館の部屋で……って、果南さん? どうして私の肩に手を……? それにやたら力が強い気が……」

「へぇ、私たちが練習の準備をしている間に、ダイヤは先生と一緒に部屋にいたんだ……へぇ……」

「別に疚しい意味はありません! ただ私はルビィを……!!」

「お、お姉ちゃん! それは言わない約束だって!!」

「あっ……」

 

 

 なんだろう、急に流れがコミカルになってきたな……。いつもの風景が帰ってきて安心はできるんだけど、一部メンバーのオーラが黒に染まりつつある。ほら、ルビィの後ろの花丸と善子も……。

 

 

「ルビィちゃん、先生と2人きりで何をしてたずら……?」

「花丸ちゃんの声が低い!? 聖歌隊がそんな声出したら喉痛めちゃうよ……?」

「いいから答えるずら……」

「ピギィ!?」

「たかがリトルデーモンの癖に、主を無視して眷属同士でじゃれ合うなんていい度胸してるじゃない!」

「じゃれ合うっていうか、先生に抱きしめられて……あっ!?」

「「抱きしめられるぅ~??」」

「あっ、いや、その……だ、誰か助けてぇ……」

「それお前のセリフじゃねぇだろ……」

 

 

 花陽の十八番を奪ってしまうほどルビィも同学年の2人に追い詰められていた。でもルビィが抱きしめるって表現してくれて助かったよ。正しくは俺が彼女を押し倒した、だからな。今日は自分のあらゆる秘密を暴露してきたが、その事実だけは包み隠しておこう。

 

 ちなみに2年生勢も、梨子が千歌と曜に執拗に迫られていた。

 

 

「梨子ちゃんは、先生とμ'sの関係を知ってたんだよね? いつから??」

「が、合宿の前から何となく察して……」

「どこで知ったの?」

「先生の家に行った時に……」

「曜ちゃん、これはギルティってやつなのかな?」

「そうだね。私たちに内緒で先生の家に行って、しかもイチャイチャしてたなんて許せないよ」

「あらぬ事実が付け加えられてる!? イチャイチャなんてしないわよ!? 」

「先生と2人きりの秘密を共有してたなんてズルい!! 先生、私にだけ何か教えてくださいよ!」

「ねぇよそんなの!!」

 

 

 千歌の無茶振りにツッコミを入れていると、突然後ろから服の袖を引かれたので振り向いてみる。

 そこにはいつの間に回り込んできたのか、曜がもじもじしながら立っていた。

 

 

「な、なに……?」

「私たちだけの秘密、ありますもんね……♪」

「は……?」

 

 

 最初は何のことか分からなかったが、曜のやたら股をもじもじさせている動作を見て全てを察してしまった。

 そういや、そんなこともあったっけか……。

 

 

「あっ、曜ちゃんが抜け駆けしてる!!」

「えっ、し、してないよ別に。してないよ……♪」

「だったらどうしてそんなに嬉しそうな顔してるの!?」

「そ、そんなことないよ!? う、うん……えへへ」

「してるじゃーーーーん!!」

 

 

 数分前までは押し潰されるかってくらい重い雰囲気だったのに、一気に騒がしくなったな……。

 でもこれがAqoursだ。くだらないところでバカ騒ぎして、盛り上がるところではみんなで盛り上がり、真面目な時にはみんなで真剣になって取り組む。ようやくグループとしてのメリハリもついてきたみたいだし、スクフェスまでに彼女たちはもっともっと自らの輝きを増すことだろう。

 

 

「梨子ちゃんも曜ちゃんも先生との秘密があってズルい! 私も先生の家に忍び込めば……」

「おい怖いこと言うな!!」

 

 

 賑やかなのはいいけど、俺に飛び火することだけはやめてくれるともっと嬉しいんだけどな……。

 




 あまり表立って公表したことはありませんでしたが、この小説の時系列はサンシャイン1期と2期の間の出来事として描いています。そもそもこの小説でアニメの話題を出すことはほどんどないので時系列は飾りみたいなものなのですが、千歌たちの精神面の成長に関してはアニメ2期とかなり相違しそうです。今回もそうですが、この小説で千歌たちがやたら成長してしまい、アニメ2期と照らし合わせた時に精神面が逆に弱くなっていると思っちゃうかもしれません。もしこの小説のAqoursがそのままアニメ2期に突入したら、本当に統廃合を阻止できてしまいそうですね(笑) 元々アニメ設定を捻じ曲げている小説なので、こんなことを言うのも今更なのかも……?

 この小説で千歌たちが初登場してから何気に130話以上も経過していたりします。そりゃここまで逞しく成長しますわと、作者ながらに思ってしまいました(笑) もう我が子を見ているかのようですね()


 次回は千歌回であり、長かった合同合宿編(時系列的には3日ですが)のラストとなります。


新たに☆10評価をくださった

きょんたんさん

ありがとうございます!
まだ評価を付けてくださっていない方、是非☆10評価を付けていってください!
小説執筆のやる気と糧になります!

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