ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿

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 久々にAqours登場!
 今回の時系列はAqours編で零君が浦女の教育実習生として活躍している時のお話です。


浦女の下着ドロボー(前編)

 

「お前、下級生の教室にズカズカ入り込んでくるなんて、生徒会長としてどうかと思うぞ?」

「誰もないのですし、気兼ねする必要はないでしょう。それに、素直に真実を話してくださったら即退散しますので」

「はぁ……?」

 

 

 放課後、俺は誰もいなくなった2年生の教室で今日の活動報告を作成していたのだが、そこにダイヤが殴り込んできた。

 何があったのかは知らないが、教室に入ってきた時からコイツはご立腹のようで、腕を組みながら鋭い目付きで俺を見下す。こうしてダイヤに怒られるのはもう慣れっこなのだが、今回ばかりは心当たりが全くない。これまではラッキースケベとは言え、この学校の女の子たちにあれこれ手を出しちゃったので、それで怒られるならまだ分からなくもない。そもそも教育実習生が生徒に怒られること自体がおかしいんだけどさ……。

 

 

「何があったんだ? 今活動報告を書いてる最中だから、片手間でいいなら聞いてやるよ」

「しらばっくれても無駄ですわ。先生でしょう? 女子更衣室から下着を盗んだのは」

「はぁ? んなことする人間に見えるか?」

「見えます」

「即答かよ……。とにかく、俺は知らん」

「教師の立場において、嘘は付いてないと誓えますか?」

「どれだけ疑ってんだ……。お前がそれで満足するなら誓ってやるよ」

 

 

 俺がそう言っても、自分が納得していないのか、それとも片手間に会話をされてあしらわれてると思っているのか、ダイヤは未だに難色を示している。どうにもこうにも俺を犯人に仕立て上げたいようだが、思い込みで犯人を決めつけるのは真実を暴く立場として解せないな。

 

 最初は適当に聞き流すつもりだったけど、一応生徒のピンチっぽい問題なので、ここで活躍して教育実習生としてポイントを稼いでおくのも悪くない。しゃーねぇから付き合ってやりますか。

 

 

「ま、お前の気持ちは分からなくもねぇよ。だってこの学校、教師と生徒を含め男が俺しかいないからな」

「そういうことです。先生は前科もありますし」

「前科持ちだからって疑うのはよくないぞ。ってことで、何があったのか言ってみろ。少しくらいなら力になってやる」

「あ、ありがとうございます……。さっきも言った通り、プールの女子更衣室で千歌さんのショーツがなくなってしまったのです」

「盗まれたの千歌のやつかよ……。で? アイツは今どうしてんだ? まさか……ノーパン??」

「そこで興奮なさるから疑われるのですわ……」

「じょーだんじょーだん」

「保健室に替えの下着がありますから、今はそれを着用しています。なので被害という被害は出ていないのですが、今後も同じ被害者が出ないよう、生徒会として問題を解決しておきたいのです」

「なるほどねぇ……」

 

 

 まさか千歌のパンツが盗まれてたとはな。アイツのパンツって子供っぽいし、盗んでもそれほど利益にならないと思うけどどうなんだろう。どうせ盗むならダイヤや鞠莉のような、お高そうで上品なパンツを履いてそうな奴を狙った方がマシだ。

 

 そもそもの話、ここは女子高だ。校門には警備員がいるため外部からの侵入は不可能。となると、千歌のパンツを盗んだのって女性ってことになるよな? つまり、犯人は百合属性持ち、または生粋のレズビアンだと考えられる。同性のパンツを更衣室からパクるなんて、超ド級の変態に他ならないに決まってる。なんか、底知れぬ泥沼に足を突っ込んでしまった気がするぞ……。

 

 

「先生? 顔色が悪いようですが、どうかされましたか?」

「いや、何でもない。じゃあ行くか」

「えっ、行くって……どこへ?」

「その女子更衣室だよ。現場百回(げんばひゃっぺん)って言うだろ?」

「ちょっ、そんな躊躇いもなく!? あっ、待ってください先生!!」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「ここか。そういや、ここに来るのは初めてだな」

「男性なのに女子更衣室に来た経験がある方がおかしいと思いますが……」

「細かいことは気にすんな。行くぞ」

「えっ、い、行くって、一応確認しますけど、ここ女子更衣室ですよ!?」

 

 

 ドアノブに手を伸ばそうとしたら、ダイヤに手首を掴まれて遮られる。男が躊躇もせずに女子更衣室に入ろうとしてるんだから、誰がどう見ても妥当な判断だと思うだろう。そもそも俺は教育実習生とは言えども教師だ。こんな行為が上の人にバレたら、一発で人生が崩壊するに決まってる。

 

 だが、俺にはそうならない保証と自信があった。

 だから俺はダイヤの手を振り解き、その勢いで女子更衣室のドアを開け放った。

 

 

「せ、先生なんてことを……!!」

 

 

 目の前には男が絶対に訪れることができない花園。今まさに水泳部の着替えの途中だったようで、制服を開けている者、下だけ脱いでシャツだけになっている者、下着を脱いでいる者、スクール水着を着用している最中の者等々、女の子が制服からスク水に着替える各工程を一目で捉えることができた。学校の更衣室と聞くと多少薄暗くて辛気臭いイメージがあるけど、目の前に広がっているのはまさに桃色。この光景を1枚の絵にするだけでも芸術品になりそうだ。

 

 女の子たちは突然開いたドアの先に俺がいたので、目を丸くして驚いている。しかし、だからと言って叫び声を上げる子は誰1人としていなかった。

 しばらく場の空気が硬直したままだったが、ここで着替え途中の女の子たちが一斉に口を開く。

 

 

「きゃっ♪ もしかして、今日は神崎先生が指導してくださるんですか!?」

「嘘!? 先生に手取り足取り教えてもらえるなんて、今日部活あって良かったぁ♪」

「あ~ん! 先生が来るならもっと可愛い下着を履いてこれば良かったぁ……」

「ちょうどダイエットしたばかりだし、これはアピールするチャンスだよね!」

「先生、ようこそおいでくださいました。事前に連絡をくだされば、しっかりとおもてなしできましたのに……」

 

 

「これで分かったろ、ダイヤ。みんなこんな感じだから、女子更衣室だろうがどこだろうが入っても問題ねぇって訳だ」

「な゛っ……!! 水泳部の方に一体何があったのですか……?」

「この前、ちょっと親睦を深めただけだよ。ちょっとだけな」

「皆さんの反応を見てると、ただ事ではないようですが……」

 

 

 何も知らない奴からしてみれば、この光景が異様なのは分かる。俺だって冷静そうに見えるが、これでも想像以上に友好的に出迎えてくれて少し驚いているんだ。この子たちと何があったのかは今回の本題とは違うため多くは語らないが、ここは思春期で多感な女の子たちが集まる女子高。しかもこの子たちは生まれも育ちも内浦という田舎住みで、男との遊びとは何たるかも知らない。まぁ今は男との遊びを知り尽くしているているんだけど、とにかく、田舎の女子高に若い男が教師としてやってきたら、生徒の子たちはみんな気になる訳だ。

 

 

「これはこれでまた先生の罪状が増えましたが、今は目下の問題を解決するために敢えて目を瞑ることにしますわ」

「そりゃどうも。だったら、この事件を見事に解決したら許してくれよ」

「それはそれ、これはこれです」

「ったく、わざわざ協力してやってんのに……。なぁ、曜?」

「ふぇっ!?」

「曜さん、いたのですね……。しかもそんな隅っこに」

 

 

 当然と言えば当然だが、水泳部の曜もこの更衣室で着替え中だ。だが他の子たちは俺を歓迎するムードなのにも関わらず、コイツだけは更衣室の隅で顔を真っ赤にして俺を見つめていた。そもそも、曜の反応こそが健全なんだけどな。コイツ以外の部員が全員歓迎ムードだから、普通の反応をしているコイツの方が目立っているという異様な状況となっていた。

 

 歓迎されたいのは山々だけど、このまま身を委ねるとダイヤにどやされるのは目に見えているので、しっかりとここへ来た目的を果たすとしますか。

 

 

「曜、お前も千歌のパンツが盗まれた事件は知ってるよな? 2年生のプールの時間に怪しい奴はいなかったか?」

「う~ん、特にはいなかったかと……。それに今日の授業はほぼ自由時間だったので、誰がいつ抜け出して更衣室に戻ったとかも覚えてないんですよね」

「なるほど。その時間はみんな授業中だし、生徒では犯行は無理か」

「だとしたらまさか、外部から……ということですの?」

「校門には警備員がいるからそれは無理だろ。水泳部のみんなに一応確認するけど、千歌の下着がどこかに挟まってたりとか、カゴの下敷きになってたりとか、そういうのはなかったんだよな?」

「はい。着替える前にみんなで確認したのですが、特に何も見つかりませんでした」

 

 

 千歌のことだから、うっかりパンツを落としてしまったとかマヌケな事態も想定したが、どうやらそうではないらしい。これでパンツの消失が事故ではなく事件だってことが明らかになったのだが、同時にパンツを盗む変態が近場に存在するって事実も明らかになった訳だ。外部から侵入できない学校で、しかも俺以外は教師と生徒含め全員女性。あまり関わりたくないと思っていたのだが、こりゃ生粋のレズビアンと真っ向から戦うことになりそうだな……。

 

 

「なぁ曜、梨子がどこにいるのか知ってるか?」

「梨子ちゃんですか? 確か、練習の前に図書館で勉強をすると言ってましたけど……」

「そうか。ダイヤ、次は図書館だ」

「え? 梨子さんが何か関係あるのですか?」

「あぁ、お前は知らないのか……」

「え、えっ……??」

 

 

 梨子の名誉のためにも、アイツへの聞き込みは俺だけでやった方が良さそうだな。人には1つや2つ、例え仲間であっても知られたくない秘密があるってもんだ。

 まぁアイツにとっては一番知られたくない俺に知られてしまっているのだが……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「よぉ花丸、邪魔するぞ」

「先生、ダイヤさん? 2人揃ってどうかしましたか?」

 

 

 梨子から話を聞くために、俺たちは図書室へとやって来た。

 受け付け席にいた図書委員の花丸は、突然俺たちが殴り込んできたのを見て本を読む手を止めた。そもそも俺は図書室へ来る柄じゃないし、ダイヤも主な根城が生徒会室だから、俺たち2人がここに来ることを珍しく思ったのだろう。

 

 

「ちょっと梨子に用事があってな。ここにいるって聞いたんだけど」

「梨子ちゃんなら、奥の机で宿題をするって言ってましたよ。でも先生たちがわざわざ図書室へ来るなんて、何かあったんですか?」

「実は例の下着泥棒の事件を調査していたのですが、先生がここにヒントがあると信じてならないようで……」

「あぁ、そういえば学内SNSはその話題でもちきりだったずら。それに便乗して、『神崎先生に調査されるなら、私もパンツ盗まれたい』って声もたくさん……。他にも『先生がパンツを盗んでくれるのなら、いくらでも渡しちゃうのに』とか、『むしろ盗んで欲しい!』とか……」

「この学校の生徒はいつから変人の集まりになったんですの……」

 

 

 ダイヤと花丸は呆れた顔をしながら俺を見る。いつからとか言いながら、如何にも犯人は俺だって言いたげじゃねぇか……。確かにこの学園の女の子たちが淫乱思考になったのは俺のせいかもしれないが、そもそも淫乱になる奴ってのは潜在能力を秘めてる奴らだ。つまり、生徒たちが勝手に自分の内なる性格を発揮しただけに過ぎない。俺は田舎の穢れも知らない少女たちに少し教育を施してやっただけなんだから。

 

 何か言いたげな2人は放っておいて、さっさと梨子に話を聞きに行こう。このままでは下着泥棒とはまた別の問題で立件され兼ねないしな。

 

 この時間帯は部活時のためか、あまり人はいない。それ故にただでさえ静かな図書室がより静まり返っており、確かにここであれば勉強をするのにはもってこいの場所だろう。そもそもこの学校自体が生徒過少だから、浦女にとってはこれがいつもの風景なのかもしれない。

 

 

「梨子」

「ひゃっ!? せ、先生?? どうしてここに?」

 

 

 花丸の言う通り、梨子は図書館の奥の隅っこの机で数学の教科書を開いていた。如何にも地味なコイツがいそうな場所だが、今はどうでもいいか。とにかく、俺はコイツから聞き出したいことがある。

 

 

「勉強中に悪いが、ちょっとこっちへ来てくれ」

「え? どうして……?」

「いいから」

「は、はい……」

 

 

 梨子は怪訝な表情で立ち上がり、俺の元へと歩み寄ってくる。

 数日前までは俺を汚物を見るような目で見下してきたのに、今ではこれほどまでに無防備になっちゃって。コイツは警戒心は強いけど、信じた相手にはとことん油断する傾向にあるので、将来巧妙な詐欺に引っかからないか心配になってくるな。

 

 ま、それはそれとして――――――

 

 

「えっ、ひゃっ!? 先生!?」

「静かにしろ」

「そ、そう言われましても……」

 

 

 俺は梨子を本棚と本棚の間の誰にも見えない、いわゆるデッドスペースに追い込んだ。どこからどう見ても俺たちの体勢は俗に言われる『壁ドン』であり、この体勢こそまさに梨子が最も興奮するシチュエーションなのだ。現にコイツの顔からは既に湯気が立っており、もう今にも沸騰して爆発しそうだ。

 

 そう、梨子のこの性格を知っているのは世界で俺だけ。その他にも、梨子には誰にも話せない特殊性癖があるのだ。

 

 

「素直に吐けばすぐに解放してやる。盗んだモノを出せ」

「ぬ、盗んだって……何をですか?」

「惚けるな。知ってるだろ、千歌のパンツが盗まれたって騒動」

「そりゃ千歌ちゃんとはいつも一緒にいるので知ってますけど……って、まさか、その犯人が私だと思ってるんですか!?」

「この学校に外部から侵入するのは無理だ。そして、この学校には俺以外の男はいない。それで俺は犯人じゃないとすると、犯人は女だ。つまり、女が女の下着を盗む度し難い変態と推測できる。その条件に当てはまるのはただ1人、お前だ」

「は、はぁ!? 意味が分からないんですけど!?」

「それはお前が一番よく知ってるだろ。お前の部屋のどこに何の本があるのか、ここで赤裸々にしちゃってもいいんだぞ?」

「な゛ぁ……!?」

 

 

 梨子もようやく俺の言いたいことが理解できたようで、それを把握した瞬間に真っ赤だった顔が一瞬で真っ青になる。

 俺の知る女の子の中で、百合モノをこよなく愛しているのはコイツしかいない。しかも女の子同士の壁ドンという、偏りに偏ったシチュエーションが大好きだとすれば、千歌の下着を盗んだ犯人候補としてコイツが挙がってもおかしくないだろう。

 

 いくら偏屈な趣味を持っている人でも、外見だけを見れば至って普通に見える。だが世間の需要から外れた趣味を持っているってことは、それだけ心には一般人とは違う偏った考えがあるということだ。つまり、ソイツが何をしでかすかなんて想像もできない。だって自分には受け入れがたい趣味を持っている奴の行動なんて、予測できると思うか? 何が言いたいのかと言えば、梨子なら下着ドロボーくらいやり兼ねないってことだ。

 

 

「素直に吐け。今なら盗まれたパンツがそこらに落ちていたってことにしてやるから」

「私は何もしてませんよ!? た、確かに女の子同士は見ている分には好きですけど、二次元は二次元、三次元は三次元の区別はできています!」

「ホントかぁ~?」

「そうやってありもしない事実を自白させようとするの、良くないと思いますよ……」

「なんだ、つまんねぇなオイ……」

「まさかとは思いますが、私を困らせようとしてました……?」

 

 

 この俺が適当な推理で幼気な少女を犯人に仕立て上げる訳ねぇだろうが。とは言いつつも、コイツが犯人だったら面白いだろうなぁってお遊び思考はあったんだけどな。

 それにもし梨子が下着を盗むとしたら、人目が多いプールの更衣室なんかよりも直接千歌の部屋に行って盗んだ方がいいに決まってる。

 

 

 ま、お遊びはこのあたりにしてそろそろ本題にでも――――――

 

 

「なっ!? 先生に梨子さん!? こんなところで何をやっているのですか!?」

「ダイヤさん!? い、いやこれはそのぉ……」

「梨子の恥ずかしい秘密を赤裸々にしようとしていたところだ」

「い、意味は分かりませんが、とにかく校内での不純異性交遊……と言いますか、そもそも教師と生徒でしょう!? いいから早く離れなさい!!」

 

 

 物静かな図書室にダイヤの怒号が飛ぶ。

 梨子の秘密がバレないようにわざわざ本棚の隙間に連れ込んで人目を避けてやったんだから、感謝くらいして欲しいもんだけどな。

 

 

 そんな訳で、下着ドロボー探しはまだまだ続く。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 浦の星を舞台にした話を描くのは久々ですが、結局雰囲気はいつもと変わらないので舞台がどこだろうが関係なかったりします(笑)
 それよりも、せっかく最終章でAqoursが零君のことを名前呼びできたので、その後の話の方も描いてみたかったり。


 次回は下着ドロボーの真実が明らかとなります。
 また、バンドリ小説の方が一段落したので、しばらくはこちらの投稿ペースを上げていこうと思います。


 本日バンドリ小説も同時に投稿しているので、そちらも是非ご覧ください!

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