ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

43 / 588
 映画を見に行った人はお疲れ様でした、これから見に行く人はいってらっしゃい。自分は皆さんのネタバレや感想を見て、映画を見に行った気になりました(笑)

 今回は真姫回です!!連続で『R-17.9』展開だったので、今回はロマンチックな場所で真面目な話。終始ゆったりとした展開なので、寝る前にでもゆっくり読んで頂ければと。


真姫、深夜の天体観測

 

 

前回のラブライブ!

 

 風呂場に突撃してきた穂乃果とことりにこってりと搾られた俺。体力も精力も使い果たしたその時、凛が泣きながら脱衣所に飛び込んで来た。その理由は絵里に大嫌いな魚を押し付けられたかららしいのだが、どうも様子がおかしい。実は半分演技であり、俺と2人きりになるための作戦だった。そこで俺は凛に誘惑され、欲望のままに手を出してしまう……

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 夕飯を食べ終わり、お腹がいっぱいになったμ'sメンバーを待ち構えていたのは睡魔だった。今日はほぼ一日中練習をしていたためこうなるのも仕方がない。明日は休みだから、今日は早くぐっすりと寝て体調を整えた方がいいだろう。ちなみに俺はいつも通りみんなの練習を傍観していただけなのでまだまだ平気だ。

 

 

「ふあぁ~~……こんなに頑張ってのはいつぶりかな……?」

「穂乃果、そんな大きなあくびをして……はしたないですよ」

「そういうお前もすっごく眠そうだけどな」

「普段家にいる時よりもだいぶ疲れましたからね……」

「ご苦労さん」

 

 

 海未は練習での指導役、さらに夕飯を食べ終わりゴロゴロしていた穂乃果や凛を注意するなど、まるでμ'sのお母さんのような役割を担っている。そのせいでかなり疲労が溜まっているのだろう、もう目が閉じかけていた。放っておいたら酔っ払いみたいにリビングで寝てしまいそうだ。

 

 

「亜里沙起きて!!ここで寝ちゃダメだよ」

「亜里沙の奴、もう寝ちまったのか。しょうがない、俺が運ぶから雪穂は亜里沙の着替えだけ一緒に持ってきてくれ」

「ありがとうございます……」

「お前もかなりウトウトしてるな……階段でコケるなよ」

「お姉ちゃんと一緒にしないでください」

「コケたことあるのか、穂乃果……」

 

 

 でもコイツならやりかねん……雪穂もしっかりしてそうでたま~に抜けているところがあるからな。それは姉の悪い部分が見事に遺伝している。

 

 そして俺は亜里沙を両手で、俗に言うお姫様抱っこで抱え上げる。まず一言感想いいですか?

 

 

 天使過ぎる!!!!

 

 

 なんだこの寝顔は!?その寝顔だけで世界中の男を萌え殺すことができるぞ!!俺の腕の中ですぅすぅと可愛い寝息を立てて寝ているその姿、もう今すぐにでも自室へ連れ込んで抱き枕にしたい!!絶対に柔らかいだろうその頬っぺに顔を擦り付けて匂いを嗅ぎたい!!

 

 

「きゃあ~……お兄ちゃん……獣の目になってるぅ~……♪」

「眠そうな声で煽ってくるんじゃねぇよ、お前ももう寝ろ」

「じゃあ私もお姫様抱っこしてぇ~~」

「2人同時とか無理だから……イヤなら床で寝てろ」

「ふ~ん……私だけならいいってこと……?」

「まぁ……そのうちな」

 

 

 俺も楓に対して甘くなったもんだ。以前の俺なら全力で拒否していただろうが、これも秋葉に揶揄されたからに違いない。そのせいで無駄にコイツを意識せざるを得なくなってしまった。でも見た目だけではあざとくて、悩みなんてないように見える。これも俺の先入観なのか……?

 

 

 しかしその悩みをどのように聞き出せばいい?素直に真正面から突っ込んでも大丈夫なのだろうか?それで彼女たちを傷つけることになるのでは?それで関係が壊れてしまったらどうする?前に踏み出せない……このままだとずっと先延ばしにしてしまう。俺は改めて、彼女たちについて何も分かっていなかったんだと痛感させられた。

 

 

 一体どうすればいいんだ……?やはり直接聞くのは気が引けるよな……

 

 

 

 

「零~、早く部屋に行くわよ。今日はにこたちと一緒に寝るんでしょ」

「あ、あぁ……そうだけどお前、布団に入った瞬間爆睡しそうな顔してるぞ」

「じゃあウチはにこっちを抱き枕にして寝ようかなぁ~……」

「なんでにこなのよ。むしろ抱き枕になりそうなのは希でしょ……その胸とか……」

「もうお前らも早く寝ろ、言葉に覇気がなさ過ぎる」

 

 

 にこと希の会話で、思考の渦に巻き込まれていた俺は現実に引き戻される。

 いつもはテンションの高い漫才をしているこのコンビも睡魔には敵わなかったようだ。言葉だけで眠いってことが伝わってくる。それにしても、女の子のウトウトしている表情は可愛いな。みんなの判断力が鈍っているだろうこの状況、もしかしたら何をしても許されるのではないだろうか。それぐらい彼女たちは無防備なのだ。胸を触っても全然気づかれないんじゃあ……

 

 

「ほらことりも立ちなさい。こんなところで寝たらいくらなんでも体調を崩すわよ……」

「ふわぁ~……絵里ちゃん眠いよぉ~……」

「ことりの声を聞いたら本当にここで寝ちゃいそうだわ……」

「絵里、お前も眠いなら先に寝室へ行ってろ。ことりは俺があとから連れて行く」

「ありがとう……」

 

 

 こんな腑抜けた絵里の顔を見るのは久しぶりだ。こんなぽわぽわした空間にいると、俺まで力が抜けて眠ってしまいそうになる。ことりもさっきから寝言で、『零くん……そこはダメ』と意味深な発言をしているので早急にここから立ち去ろう。

 

 

「おい凛、花陽。真姫はどこへ行った?」

「さぁ~……知らないにゃ~……もう寝ちゃったんじゃない……?」

「トイレかな……?」

 

 

 おいおい眠いからって適当に答えるなよ……俺までその眠気が移るだろうが。俺にはみんなの寝顔とパジャマ姿をカメラに収めてニヤニヤするっていう作業がまだ残っているんだ、まだ寝るわけにはいかない。

 

 

 そうしてみんなは2階の寝室へと上がって行き、そこで倒れこむように寝てしまった。『今日は夜更かししてみんなで遊ぶぞぉおおお!!』と意気込んでいた穂乃果や凛も、今は可愛い寝息を立ててスヤスヤと眠っている。なんだか、一気に家が静かになったな。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「よ~し、穂乃果たちの寝顔もバッチリ撮れた!!あとは花陽と凛、真姫だけだな」

 

 

 それから数十分後、俺はカメラを片手に各々の寝室を回ってその不防備な姿を写真に収めている。寝相が悪い人はパジャマがはだけ、白い肌が見え隠れしていたので心底興奮した。正直女の子のパジャマ姿だけでも萌えてしまう人間だから、今にもみんなに襲いかかってしまいそうになったぞ。もう俺ってμ'sのみんななら、どんな姿にだって萌えられるような気がする。

 

 

「じゃあ最後にこの部屋っと……あれ?凛と花陽しかいない……?」

 

 

 真姫、凛、花陽の寝室に入ってみると、そこには凛と花陽の2人が転がっているだけだった。真姫の奴、あれから寝室に戻っていないのか?今日は一日中練習して疲れているはずなのに……まさか家の中で迷子になるなんてことはないだろう。だってアイツの家や別荘の方が俺の家より遥かに大きいし。

 

 

 そして俺はふと、ベランダへ続く廊下に目が行く。俺の家のベランダからは星が綺麗に見えることで有名(μ's内で)だ。俺はあまり星には興味がないけど、その景色は興味がない人間も惹かれるほど綺麗だと思う。そういえば子供の頃は、秋葉や楓とよく一緒にここから星を見ていたな。地味にガキの頃の思い出が詰まっている大切な場所だ。

 

 

 星か……ん?星と言えば確か――――

 

 

「真姫って、天体観測が趣味だったよな。まさか……」

 

 

 

 家の中のどこにもいないとなると、もう真姫がいる場所はただ1つしかない。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「やっぱりここにいたのか……真姫」

 

 

「零……」

 

 

 予想通り、真姫はベランダの柵に腕を掛けながら夜空を見上げていた。月明かりで照らされたその綺麗な顔に、俺は見とれてしまう。もしかしたらどんな夜空よりも、どんな星の輝きよりも綺麗かもしれないその顔に……

 

 

「ほらコーヒー。こんなところにずっといたら流石に寒いだろ。今晩は結構冷えるからな」

「あ、ありがとう……」

「お前の肥えた口に合うかは分からないけどな」

「大丈夫よ、零の入れてくれたコーヒーなんだもの」

「なにその超理論……」

 

 

 今晩の真姫はツンデレの『ツン』の要素を完璧に忘れているみたいだ。いつもだったら『そこまで美味しくないけど、零が入れてくれたんだし、仕方ないから飲んであげる』とか言いそうなものだけど、今晩の真姫はかなり丸い。やっぱり夜風に当たり過ぎて体調がおかしくなったのか?

 

 

「お前、こんなところで何してんだ?」

「天体観測よ。あなた、この前『ここから見える夜空は綺麗だ』って言ってたでしょ?」

「あぁ、でも6月に入ってからは中々綺麗な夜空は見られないんだ」

「しょうがないわよ、必然的に雨が多くなるんだし。梅雨前線にでも文句を言ってなさい」

「自然に反抗するのだけはやめておくよ」

 

 

 人間に文句を言えば何かが起こるかもしれないが、自然に文句を言ったところで100%何も変わらない。流石に完璧な俺でも自然様だけはどうしようもできないからな。頭を下げて晴天になることを祈り続けるしかない。

 

 

「美味しいわねこのコーヒー。もしかしてバリスタになれるかも……」

「そうかぁ?でもバリスタみたいに上手くコーヒーは入れられないけど、好きな人のために愛情を注いだコーヒーなことは確かだよ」

「も、もう!!またそんなことを平気で!!」

「ハハハ!!顔真っ赤だぞお前」

「あなたのせいでしょ!!全くもうっ」

 

 

 そう言って真姫はプイッと顔を逸らしてしまった。流石μ'sの中でからかわれ率ナンバー1西木野真姫、今日もいい反応で俺を楽しませてくれる。そろそろ煽り耐性が付いてもおかしくはないが、もう1年間もそのポジションだから無理そうだ。

 

 

「まあバリスタ云々はいいとして、お前って天体観測が好きなんだよな」

「覚えていてくれたのね。あまり公言はしないんだけど」

「自分の彼女の趣味ぐらい、ちゃんと覚えてるよ」

「そう……嬉しいわ」

 

 

 やっぱり今日はいつもより素直だ。ツンデレが発動しないとこっちの調子が狂うというか、普通の女の子と話をしているみたいだ。少なくとも真姫は"普通"という分類には当てはまらない、個性の塊だと思っている。それは真姫だけじゃなく俺やみんなもそうか。

 

 

「だから俺の趣味も全部言えるようにしておけよ」

「零の趣味?思いつくだけでも最悪なモノばかりなんだけど……」

「女の子のスリーサイズ目視、セクハラ発言、スカート覗き、胸揉み……挙げたらキリがないな」

「最低ね、最低」

 

 

 そもそも9股をしている奴に最低と言っても今更だろ。俺が最低な人間だということは自分が一番良く知っている。でも最低な部分があるからこそ、俺の最高な部分が際立つんじゃないか!!――と自画自賛してみたり。しかし、μ'sのみんながそんな最低な俺を普段どう見ているのか、あまり聞いたことがない。いい機会だしちょっと聞いてみるか。

 

 

「なぁ真姫」

「なに?」

「お前から見て、俺はどうだ?お前の目にどう映っている?」

「なによ急に」

「いや、気になったからさ……」

 

 

 自分のことを誰かに聞くのはすごく勇気がいる。もしかしたら自分のことをよく思ってくれていないんじゃないか、それゆえ相手に気を使わせていないか、そう想像してしまうと中々聞くに聞けないだろう。特に俺の性格はμ'sには受けがいいかもしれないが、決して万人に受け入れられるようなものじゃない。本当は彼女の心の中に、俺を受け入れられないことが僅かでもあった場合、この質問は彼女を苦しめる可能性がある。

 

 

 ここでこんな質問をしたのは失敗だったか?そう思った時、真姫が口を開いた。

 

 

「私は、あなたの何でもズケズケと言えるその性格に一番憧れてる。さっきもそうだけど、そんな変態な趣味を女の子の前で堂々公言するなんて正気の沙汰じゃないわよ」

「悪かったな正気じゃなくて……」

「いや、でもそれが羨ましい。私は何事も自分の中に閉じ込めちゃう人間だから、誰かに気兼ねなくどんなことでも話せるその性格と精神が、あなたのすごいところだと思ってる。だって自分の中に閉じ込めちゃったら、誰にも自分のことが伝わらないじゃない」

 

 

 自分の性格がそこまでの長所を持っていただなんて、特に気にしたこともなかった。もしかして俺がこんな質問をしたことも、真姫にとっては異常な行動だったのかもしれない。まさかこんなところで自己啓発ができるなんてな。

 

 

「ほら、μ'sに入る前の私ってヒドく意地っ張りだったでしょ?」

「それは今もだけどな」

「そうだけど!!そうだけど今よりも意固地だったわ。誰にも自分を見せようとしないから、孤独だった。多分そのせいで自分のやりたい音楽も諦めていたんだと思う。誰にも自分の気持ちなんて分かってもらえないと、勝手にそう思い込んでいた。それで心を閉ざし過ぎて、自分で自分を見つめられなくなっていたから……」

 

 

 心に鍵を掛けていたのは何も真姫だけじゃない、9人みんなそうだ。みんな何かしらの思いがあって、一歩前へ進むことを躊躇っていた人ばかり。その時の記憶が俺の頭に次々と浮かんでくる。

 

 

 

 

 思い出した――――真姫がどこか寂しそうにピアノを弾いていたあの時を……

 

 

 思い出した――――ことりが自分には何もないと悩んでいたことを……

 

 

 思い出した――――海未が幼馴染との関係で迷っていた姿を……

 

 

 思い出した――――花陽が自分を卑下して初めの一歩すらも踏み出せなかった時を……

 

 

 思い出した――――凛が『女の子』を捨てようとしていたことを……

 

 

 思い出した――――にこがスクールアイドルを続けてきた裏で、背負っていた重圧を……

 

 

 思い出した――――希が抱いていた『夢』を……

 

 

 思い出した――――絵里がスクールアイドルを否定していた時の気持ちを……

 

 

 思い出した――――穂乃果が、あの穂乃果がスクールアイドルをやめようとしていた時を……

 

 

 

 

「あなたはそんな私やみんなの心に、平気で踏み込んできた。初めは『失礼な人』という認識しかなかったけど、でもそのおかげで私たちは救われたのよね。あなたのそうやって何事も、相手に多少迷惑が掛かろうと、悩んでいる人がいるなら迷わずに手を差し伸べる、その真っ直ぐに突き進むその性格に動かされた。あなたがいたから、私たちは一緒にいられる」

 

 

 真姫は一旦そこで言葉を区切り、連続で話し始める。

 

 

「あなたのその鬱陶しい性格、私は大好きよ。それは多分私だけじゃなくて穂乃果たちも……そしてそんな性格のあなたが好き。そんなあなたが――――大好き!!」

 

 

 そこで俺に向けられる真姫の笑顔。その彼女の表情は、俺が今まで見たことのない満面な笑顔だった。月明かりに照らされた綺麗な顔に、俺はまた見とれてしまう。そしてようやく、自分の中で渦巻いていた迷いが停滞して消え去った。

 

 俺は雪穂や亜里沙、楓の悩みを解決するために、彼女たちからどう聞き出したらいいのか迷っていた。もしかしたら彼女たちの傷に触れてしまうかもしれない、その恐怖が根付いていたんだ。"μ'sのメンバー"としての彼女たちとはまだまだ付き合いが浅い。だから慎重になっていた。

 

 だけどなぜ慎重になることがある。一年前、俺は真姫たちの心に勝手に踏み込み、それですべての問題を解決してきたじゃないか。余計なことは考えず、ただ彼女たちを救いたいがための一心で、俺は前へと突き進んできた。

 

 じゃあ今回も同じだ。同じ方法で突破すればいい。人の心を傷つける最悪な方法かもしれないが、これが俺なんだ。このやり方に納得できる人が少ないのも分かる、理解してくれる人が少ないのも分かる。だけどこれが俺のやり方。自分の信じた道を突き進む、これが"神崎零"だったな。

 

 よく考えれば、みんながヤンデレ化して殺し合いが起きたあの事態だってそうだった。あの事態もひたすら自分の信念を貫いて解決した。途中で何度も挫折しかけ、失敗もしたけど、それで後悔はしていない。

 

 なぜ慎重になっていたのか。それは彼女たちと恋人同士になってから、女の子の心に敏感になっていたからだろう。だから俺は雪穂や亜里沙、楓に対しても、自ら一歩引いていたんだ。

 

 

 俺から踏み込まなければ解決しない。アイツらが心を閉ざしているのなら、それを無理矢理にでもこじ開ける。それこそが最低な人間である"神崎零"なんだよな。

 

 

 

 

「その顔……何か吹っ切れたのね」

「ああ、ありがとな真姫。おかげで自信がついたよ」

「自信がないあなたなんて、もうあなたじゃないもの」

「そうだな」

 

 

 そこで俺たちは笑い合う。夜空には星が満開に広がり、月と共に俺たちを照らしている。まるでモヤが晴れた俺の心のようだ。流石に俺の心にしては例えが綺麗過ぎたかな?

 

 

 そして俺はマグカップを真姫のカップの隣へ置き、その手で彼女を自分の身体に抱き寄せた。

 

 

「きゃあ!!れ、零!?」

「悪い、急にこうしたくなった」

「もうっ……しょうがないわね」

 

 

 いくら真姫のスタイルがいいと言っても、身長は俺より一回り低いから、俺の身体に彼女の身体がすっぽりと収まる。俺が真姫の背中に手を回すと、彼女からも抱きつき返してくれた。俺と真姫の顔が極限まで近くなる。。整った顔立ちに朱色に染まっている頬、吸い込まれるような綺麗な目、俺の胸を打つには十分だった。

 

 そして俺たちはしばらくお互いの顔を見つめ合った後、ゆっくりと唇同士を近づけキスをした。コーヒーで若干苦みのある味がしたが、非常に濃厚で甘いキスだ。俺が与えたものよりも、真姫はもっと強く応えようとする、激しくて誠実なキス。

 

 

 時間はほんの数秒。だがその時だけは、俺たちだけ時間が止まっていたような気がした。

 

 

「真姫、協力してほしいことがあるんだ……」

「待ってたわその言葉。あなたって本当に1人で解決しようとするんだから。それで、なにかしら……?」

「ありがとう、実はな――――」

 

 

 3人同時に悩みを解決するのは無理だ。だから1人1人、真っ向から勝負をする。そのためには真姫、そしてμ'sの助力が必要だ。本当はあの3人に悩みがあることを誰にも話さないでおこうと思っていた(同棲生活中だとタイミングすらない)のだが、これは俺1人で解決しない方がいいだろう。みんながみんなの想いを共有する。そうやってμ'sは成長してきたのだから。

 

 




 2話連続で『R-17.9』展開で、『零君って1年生組の問題を解決する気あるの?』と思われたかもしれません。今回でようやく話を動かすことができました。

 いつもの構図として、『μ'sの誰かが悩んでいる』⇒『それを零君が解決』が一般的だったのですが、今回はその逆の展開にしてみました。やっぱり本当に完璧な人はいないものなのです。

 実は今回の真姫のポジションを、海未や絵里にする話も考えていたのですが、真姫の趣味の1つに天体観測があったことから、夜空の下で話すなら彼女しかいないだろうということで真姫に決定しました。海未や絵里も夜が似合いそうですけどね。

 今回の話で出てきた零君の思い出(9人の葛藤を思い出したところ)は、基本アニメの話をベースにしています。

真姫・・・『まきりんぱな』回
ことり・・・『ワンダーゾーン』回
海未・・・『ともだち』回
花陽・・・『まきりんぱな』回
凛・・・『新しいわたし』回
にこ・・・本編開始以前(『非日常』の第五章にて掘り下げ)、『にこ襲来』回
希・・・『私の望み』回
絵里・・・『やりたいことは』回
穂乃果・・・『ともだち』『μ'sミュージックスタート!』回

 これは全部零君を中心に解決してきた扱いになっているので、本編に沿っていないこの小説ではイマイチ掴みが弱かったかもしれません。『非日常』を読んでいる方ならすんなり受け入れられたと思います。



Twitter始めてみた。
 https://twitter.com/CamelliaDahlia

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。