この話を読む前にμ'sのキャラがそれぞれどちらの派閥(きのこ or たけのこ)なのか、想像しておくとより楽しめるかもしれません。そして是非自分の所属する派閥を応援してあげてください!
「うぃ~す」
「あっ、こんにちは零君♪」
とある秋の放課後、部室にやって来た俺は笑顔の花陽に迎えられる。
あぁ~やっぱり花陽の笑顔は天使だなぁ~!!今日1日の疲れがみるみる浄化されていく。笹原先生からの制裁も癒されるってもんだ。ことりの堕天使具合にも参ってたし、俺の中での真の天使は花陽と亜里沙だけだよ。
部室には、俺と花陽以外に真姫と凛もいる。
真姫は足を組み、コーヒーを飲みながら優雅に読書をしていた。更にその手元には、如何にも高級そうな箱に詰められているクッキーもある。この光景を写真に撮るだけでも、そこら辺の適当コンクールなら余裕で優勝できそうだな。
凛は机の上にお菓子を広げながら、オレンジジュースを片手に様々なお菓子を順番に摘んで食っている。これだけ食って太らない方が凛のすげぇところだよ。普段から馬鹿みたいに走り回って騒いでるから、余計な脂肪も燃焼されているのだろう。だが胸に脂肪は付けた方がいいと思うがな。
「凛、練習前なんだからもう少し食うの抑えたらどうだ?」
「えぇ~……ラーメンを食べてないだけ褒めて欲しいにゃ~。それにかよちんだってずっとおにぎり食べてるし」
「ふぇっ!?そんな食いしん坊みたいな言い方しないでよ!?それに今日だってお弁当はおにぎりじゃなくてサンドイッチだったし」
「は、花陽がご飯じゃない……だと!?明日は氷か……」
「別にいつもいつもおにぎりばかり食べてる訳じゃないよぉ~……」
どうだか。去年じゃなかったっけ?特大おにぎり食べて体重が激増したのは。どこからどう見ても胸以外はふくよかに見えなかったんだが、女の子ってすぐ身体や体重を気にするよな。見た目は全然変わってないっていうのに。これを言うといつもデリカシーがないと全員に罵倒されるから絶対に言わないが。
机の上のお菓子を見てみると、ポテトのチップスやらキャラメルのコーン、かっぱのえびせんに辛いムーチョなど、見事にスナック菓子だけが広げられていた。
そしてその中で一際輝く、スナック菓子ではなくチョコレートの類のお菓子があった。
きのこの形をした、傘の部分がチョコレートで柄の部分がビスケットである、あの有名なチョコレート菓子だ。
な、なんだろう……大波乱の予兆を感じる!!
そしてその予兆はすぐに現実になる――――――
凛が美味しそうにきのこを頬張っていると、急に真姫が本を置いて立ち上がり、机をバンと強く叩きながら凛に顔を近付けた。
「にゃっ!?ま、真姫ちゃん……?」
「きのこ……凛はきのこ派なの?」
「当たり前だにゃ!!きのこの方がチョコレートの量多いもん!!」
「ふん!!そんなのきのこ派が流した悪質なデマに決まってるわ!!たけのここそ至高よ!!」
「はぁ?真姫ちゃんイミワカンナイ~」
「ちょっとそれ私の真似!?きのこが真似しないでくれる!?」
い、いきなりなにやってんだコイツら……いや、争っている意味は分かる。これはかの有名な"きのこたけのこ戦争"って奴だろ?いつまで経っても決着が着かない、あの不毛な争い。この戦争の名前ですら、たけのこ派からすれば"たけのこきのこ戦争"と、たけのこを先にしろと怒られるくらいだからな。
これは巻き込まれない内に退散した方がいいのか……花陽もオドオドして焦ってるし、こっそり天使を連れ出して、後は2人でしっぽりと――――――
「かよちんは!?かよちんはどっち派!?どっちが好きなの!?」
「えぇっ!?わ、私は……どっちかと言えばきのこかなぁ」
「きのこぉ!?まさか花陽まで裏切り者だったなんて……」
「う、裏切り者ぉ!?別にそんなことは全然、ただ好きな方を言えって言われたから……」
「やっぱりかよちんは凛の味方だったにゃ~♪」
「り、凛ちゃん!?」
凛は真正面から花陽に抱きつき、頬をスリスリと擦り寄せる。
真姫はそんな2人をバカバカしそうな横目で見ているが、実は混ざりたいんじゃねぇか?顔もどこか寂しそうだし……全く、つまらない維持張りやがって可愛い奴め!!
だが、きのことたけのこの戦争に私情を持ち込んではならない。これは歴史上にも残るであろう全世界を股に掛けた大戦であり、勝利した方は地位と名誉を同時に手に入れることができる。そのため私情というつまらない理由で戦いを放棄しては、共に戦う世界中の仲間たちを見捨てたことと同意なのだ。
ここで部室の扉が開き、穂乃果たち3年生組が入ってくる。
「やっほ~!!穂乃果だよ!!」
「なんですかそのセリフは……」
「さっきまで生徒会業務でヘトヘトだったのに、急に元気になったね穂乃果ちゃん」
「次舞台に立った時のMCを考え中なんだよ。だからその練習!!」
マズイ……ここできのこたけのこ両軍に新たな増援が送り込まれてきたか。穂乃果たちがどっちの軍に付くのかは分からないが、増員されることで戦争が更に苛烈を極めることは紛うことなき事実だ。
「穂乃果ちゃんたち!!穂乃果ちゃんたちはきのこかたけのこどっち派なの!?まぁどうせきのこだと思うけど」
「何言ってるのよ凛!!穂乃果たちはたけのこ派だって信じてるから!!」
「きのこ?たけのこ?あぁ、あのお菓子のことですか……」
凛も真姫も必死だなオイ。海未なんて『またくだらないことで騒いで……』みたいな顔で呆れてるじゃねぇか……そうだよ、くだらないことだよ。でもそんなくだらないことを全力で楽しむって、素敵じゃん。
「きのこにたけのこ……」
「ことり……なぜ俺を見る?」
「ん~ことりはあまり食べないんだけど、零くんのたけのこならずっと食べていたいよ♪あっ、しゃぶっていたいよ♡」
「言い直さなくてもいいわ!!てかどこ見てんだ!?」
ことりは座っている俺の下半身を覗き込みながら、頬に手を当ててウットリしている。
またコイツは……!!そんな表情をされると――――――可愛くて俺のが元気になってしまうからやめてくれ!!更にそれを見たことりが、また更に興奮すると……あれ?これ淫猥な方向に連鎖してるような……。
「穂乃果も零君のきのこなら、1日中頬張っていられるかも♪チョコレートなんかよりも断然……ジュル」
「ちょっと涎垂れてるから!?」
穂乃果は目を輝かせ涎をハンカチで拭いながら、ことりと並んで俺を見つめる。もちろん俺の下腹部を……。
もうコイツらどうにかしてくれ!?この2人をこんなキャラに仕立て上げたのは俺だけど、まさかここまで末期になるとは思ってなかった。第二第三の楓と化すとは……もうお手上げ。
「――――ということは、ことりはたけのこ派ね。お菓子好きのことりがこっち側だと、俄然たけのこ優勢ね」
「ふんだ!!たけのことかいうチョコレートの面汚しなんて、凛と穂乃果ちゃんの元気パワーで一撃だにゃ」
「そんな子供騙しが通用すると思う?これだらきのこ派はお子ちゃまなのよ……」
「たけのこが随分と粋がるにゃ!!」
どうすんだよこの状況……真姫と凛はお互いに煽り合っているし、穂乃果とことりは気持ち良さそうな表情をして妄想の世界に浸っている。そして花陽はチラチラと俺を見て、俺に助けを求めている。むしろ俺が助けて欲しいよ……。
そういや海未はどっちなんだろう?コイツのことだから、適当に答えた後は聞き流すと思うがな。
「海未ちゃんはどっち!?」
「凛……残念ながら私はたけのこ派です」
「海未!!信じてたわ!!」
「ぐぬぬ……まさか凛の尊敬する海未ちゃんまでもがたけのこだっただなんて。これからは軽蔑するにゃ!!」
「勝手にどうぞ。きのこに尊敬されても虫唾が走るだけです」
「凛だってたけのこを尊敬するなんて末代までの恥、こちらから願い下げだよ!!ね?かよちん!?」
「ふぇぇええ!?ここで私に振るの!?」
ドンマイ花陽…………
そして海未まで参戦し出したぞ。あの海未がここまで熱くなるなんて……いや、勝負事なら何事にも熱くなる奴だったなそう言えば。そもそも海未や真姫がこのようなお菓子を食べていることに驚きなんだが……なんか一気に庶民派っぽく見える。
ここで一旦派閥をまとめておこう。
きのこ派
凛
花陽
穂乃果(ただし俺のきのこ)
たけのこ派
真姫
海未
ことり(ただし俺のたけのこ)
穂乃果とことりがひでぇ……コイツらをこの派閥に入れておく必要があるのか?脳内ラブホテルさんは文字通りラブホテルに帰ってくれ!!
そこでまた、室の扉が開き、私服姿の3人組が入って来る。
「一体どうしたの?廊下まで騒ぎ声が聞こえていたわよ」
「でもいつものことと言えば、いつものことやね」
「全く、にこが来る前に面白そうなことやってんじゃないわよ」
最悪の状況で大学生組が来やがった。コイツらもコイツらで一癖も二癖もある奴らばかりだから、戦争が混戦になるのは必死。火を見るよりも明らかだ。面倒事に巻き込まれる前に帰りたい!!帰りたいけど、ちょっとでも動いたらコイツらに存在を気付かれて巻き込まれそう……。
ここは賢い可愛いエリーチカ、略してKKEに戦争を鎮圧してもらうしかない!!
「またあんなに騒いで……先生に怒られるわよ」
「だって真姫ちゃんと海未ちゃんがたけのこだって抜かすから、粛清しようとしていたんだにゃ!!」
「たけのこ?あぁ、あのビスケットの部分が美味しいお菓子ね」
「じゃ、じゃあ絵里もたけのこ派なのですか!?」
「何を言ってるのかしら?賢くて可愛い私がそんな卑劣なお菓子を好きになる訳ないでしょ。私はきのこ派よ!!」
あっ、これは賢くないわ。ただのポンコツだわ……どうしてこうなるんだよ、はぁ~……
折角同棲生活中に更生させてやったというのに……もう手伝ってやんねぇからな。
「やった!!絵里ちゃんはこっち側だにゃ~!!」
「フッ、賢くないですね……流石は絵里、巷からPKEと呼ばれるだけのことはあります」
「たけのこの挑発になんて乗らないんだから。そもそもきのこの方が圧倒的勝利と、既に数値でデータは出ているわ」
「フンッ、そんなのきのこ派の悪質なデマに決まってるわよ」
「それぞれ1つあたりのチョコレートの量は、きのこが1.792g、たけのこが1.273gなのよ。チョコレート好きの私としては、僅か0.5gの差でも決定的な差だわ」
なんだよその数値データは……俺初めて知ったんだけど。チョコレート好きな絵里だからこそ調べたのか、それともたけのこを完膚なきまで叩きのめすために調べたのか、どちらのせよたけのこ派にとっては不利な情報には変わりないな。
「絵里ち、まさか絵里ちが敵やったとはね……」
「の、希、あなたまさか……!!」
「カードがウチに告げるんや!!たけのこに魂を捧げてたけのこ派を援護せよと!!」
「希!!私は信じてましたよ!!」
なんだよその意味不明な展開!?どんなお告げを聞いてたけのこ派になった!?
それにどんどん話がくだらない方向に進んでいるような気が……もちろんくだらないなんて口に出してしまったら、確実に両軍から成敗されるから黙っておくけど。
「希……まさか同学年に裏切り者がいただなんてね」
「それはウチのセリフや……異端者は切り捨てないとね」
「れ、零君!!ど、どうしよぉ~」
「だから俺に振るな……」
絵里と希は地を揺るがす効果音を立てながら対峙する。花陽も俺の肩を揺らして助けを求めてくるが、正直な話、不毛な争いに自ら飛び込むほど俺は無鉄砲じゃない。そもそもこの戦争の決着ってどうやったら着くの!?
「きのこは柄の部分を掴めば手が汚れないけど、たけのこは掴む場所がないからチョコの部分を掴むしかない。つまりたけのこなんて欠陥品だわ!!」
「きのこだって傘と柄の付け根の脆さから、封を開けた時には柄がポッキリ折れていることだってあるでしょ?」
「そもそも折れた時点できのこじゃないもんね。やはりきのこの方が欠陥品や!!」
「全部が全部そうなっている訳じゃないにゃ!!もし折れてたとしてもたけのことイーブンだから!!初めから掴むところのない、常に手が汚れる欠陥品と一緒にしないで!!」
確かにきのこを食べる時に、傘と柄が折れていると少し萎えるもんな。しかしたけのこもチョコが手に付いて、いちいち手を拭かないといけないのが煩わしくもある。もうどっちもどっちじゃねぇか?なぁ~んて言ったら殺されるんだろうな。だからさっきから全然口を出せねぇ……。
「ちなみににこちゃんはどっちなの?」
「愚問ね花陽。にこはぁ~♪」
「だからなぜ俺を見る!!」
「零のきのこならなんでもいいっていうかぁ~♪そんな戦争よりも、冬限定きのこのホワイトチョコレートの含有量を多くして欲しいわね♪エロくない?きのこの傘の部分がホワイトチョコレートだと……」
「分かるよにこちゃん!!きのこの先っぽが白いと……穂乃果も興奮してきちゃった♪」
「たけのこだってそうだよ、あのホワイトチョコレートはまさに男の子特有のあの液体みたい♪ことりの大好物のアレ……」
「やめろやめろ!!エロいのはお前らの頭だろ!?真面目な戦争をしている前で発情しないでくれる!?」
にこも穂乃果とことりの隣に並んで妄想の世界へダイブしてしまった。コイツらだけきのこたけのこ関係ねぇじゃん!!
もうコイツらは放っておこう。俺としてはきのこたけのこ戦争の決着なんかよりも、脳内ラブホのコイツらを相手にする方が数万倍難しいと思うぞ。
「きのこの1箱辺りの個数は、たけのこの個数を上回ってるわ!!どう考えてもたくさん入っている方がお得じゃない?同じ値段で個数の少ないたけのこを選ぶ理由なんてないわ」
「それだけきのこが大量生産されているってことやろ?たけのこの方が時間を掛けて真心を込めて作られている証拠や!!」
「たけのこはビスケットをチョコレートで綺麗にコーティングしなければなりませんからね、それだけ丹精を込めて手間暇が掛かっている証拠です!!」
「きのこなんてチョコに棒を刺しただけでしょ。高貴な私としては、そんな杜撰なお菓子なんて意味分かんないから」
「どれだけ手間暇掛けても、要は味だよ!!所詮たけのこなんて、きのこの美味しさには敵わないから意味ないにゃ!!」
たけのこよりきのこの方が数が多いって、それも初めて知ったわ。コイツら相手を叩き潰すために、敵の情報調べ上げ過ぎだろ。むしろ調べ過ぎて、相手方のお菓子も好きなんじゃねぇかと勘違いするレベルに……もしかして、戦争に参加している奴らって全員ツンデレか?
~ここまでの派閥まとめ~
きのこ派
凛
花陽
絵里
穂乃果(ただし俺のきのこ)
にこ(ただし俺のきのこ)
たけのこ派
真姫
海未
希
ことり(ただし俺のたけのこ)
そしてここでまた部室の扉が開き、μ's最後のメンバーである1年生組が入ってきた。
「遅くなりました!!済みません!!」
「全く、掃除中に楓が遊ぶから」
「えぇ~雪穂だってノってたじゃん」
「あれは楓を止めようとしただけだからね!!」
これが最後の増兵か……楓は予想できるとしても、雪穂と亜里沙がどちら側に付くかは見ものだな。くだらねぇ戦争だけど、傍から見ている分には嘲笑える程度に楽しい。あの冷静沈着な海未や真姫ですら暴走しているんだ、この2人は果たしてどのような反応を見せてくるのか。
「ねぇねぇ!!3人はきのこ派かたけのこ派、どっちかにゃ!?」
「きのことたけのこ?」
「もしかして、あのチョコレート菓子ですか?私は……どちらかと言われたらきのこかな」
「私はたけのこです。どちらもあまり食べたことはないですけど」
「な、なんですって!?!?」
「お、お姉ちゃん!?」
突然絵里が亜里沙の肩を鷲掴みにし、彼女の身体をブンブンと揺さぶる。
そういや絵里はきのこ派だったな。穂乃果と雪穂は姉妹できのこ派だが、絵里と亜里沙は見事に分裂。これはシスコンである絵里にとっては死活問題だ……面白いけど。
「亜里沙がたけのこ派だっただなんて、まさか洗脳!?これだからたけのこは……正々堂々勝負しなさい!!」
「いやお姉ちゃん、私は別にどっちでも……」
「中立の立場!?ここから徐々にたけのこ派になるように洗脳する気ね!?」
あの賢かった絵里を返してくれぇえええええええええ!!クールで美人で憧れのお姉さんキャラだった頃の絢瀬絵里をもう一度見たい!!どんな超常現象が起こったらここまでキャラが様変わりするんだよ!!
「たけのこはやっぱり汚い手ばかり使うにゃ!!きのこを弄ぶ、悪意のある画像もたくさん作ってるし!!実力で勝てないから画像に頼るんでしょ!?」
「なによ!!きのこだって捏造ばかりしてるじゃない!!」
「知っていますよ私は。きのこの検索結果は166,000件、たけのこの検索結果は989件と、きのこ派が大嘘と付いていたってことを。いくらたけのこに勝てないからと言って、このような陰湿な手を使うとは……」
「それは一部のきのこ派だけで、凛たちには関係ないにゃ!!」
「仲間全員と戦ってこその戦争なのよ!!統率の取れていないきのこ派が壊滅するのも時間の問題ね!!」
やっぱりお前らきのこもたけのこも両方好きだろ!!そこまでお互いにお互いの情報を知っているって、つまりはそういうことなんだよな?もうとっとと和解しろよ、案外すんなり行くかもしれないぞ?もちろんさっきと同じ理由でこの場では言わないけど。
「零君、これは一体……」
「雪穂、俺に助けを求めても無駄だぞ。俺はアイツらに巻き込まれないように、雰囲気すらもかき消しているから」
「私も面倒事は疲れるので、一緒に消えます」
「それが正解だよ。きのこ派だって知られたら、凛や絵里に捕まって強制的に戦争に参加させられるから」
「私も亜里沙と一緒で、別にどっちだっていいんですよね。そこまで食べないし」
「そうそう、結局それなんだよな……」
食べる時は気分によって変えるとか、割と交互に買っている記憶もあるから、一概にどっち派かなんて言われても迷うだけだ。
それにしてもこの前の1000万円騒動と同じく、雪穂とはよく思考が合致する。これはお嫁さん候補決定ですわ。
「お・に・い・ちゃ~ん♪」
「お前には聞いてないぞ、楓」
「私はお兄ちゃんのたけのこ派かなぁ~♪あの刺々しく尖っているフォルム。まるでお兄ちゃんのアレみたい♪」
「無視するなよ!!そして見たことねぇだろお前!!」
「タイミングならいくらでもあるよ。深夜、こぉ~そりお兄ちゃんの部屋に忍び込んだ時とか、一緒にお風呂に入った時とか、チラッとね♪」
「ま、マジで……?」
「さぁ~?どうなんだろうねぇ~♪」
楓は神崎家の女性特有の、明るい悪魔の笑顔を振りまく。
確かに寝ている時は無防備だし、風呂の時は俺が気付いてないだけでもしかしたら垣間見えているかもしれない。それに楓のこの黒い笑顔……ほ、本当に俺のモノを知ってる!?そういや朝、やけに下半身が気持ちよくてスッキリとした目覚めだったような……ま、まさかねぇ~。
~ここまでの派閥まとめ~
きのこ派
凛
花陽
絵里
雪穂
穂乃果(ただし俺のきのこ)
にこ(ただし俺のきのこ)
たけのこ派
真姫
海未
希
亜里沙
ことり(ただし俺のたけのこ)
楓(ただし俺のたけのこ)
結局どっちの派閥も6人ずつで人数的には一緒か。。
そして残っているのは俺だけと。そして俺の投票次第で決着が着くと……どちらを選んでも面倒だから、よぉ~しこっそり逃げちゃおうぞぉ~!!
だがしかし、俺の進路を楓が悪魔の笑顔で妨害する。
「あれれぇ~!!お兄ちゃんだけどっちの派閥にも入ってないぞぉ~!?どっちどっちだ!?」
「おいこら楓!!大声でなんてことを言い出すん……だ?」
楓が叫び出した瞬間、凛たちきのこ派と真姫たちたけのこ派が争いを止め、一斉に俺に注目する。さっきまで妄想に浸っていた穂乃果たちや、中立寄りの立場であった花陽たちまで……。
これだから巻き込まれるのは嫌だったんだ!!きのこと答えればたけのこ派が、たけのこと答えればきのこ派が、中立と答えればどちらの派閥も俺に襲いかかってくるからな!!
「零君はどっちなの!?凛たちの味方だよね!?」
「きのこの卑猥な形に騙されてはダメよ!!真面目な時のあなたは、いつもマトモな決断を下してるでしょ!?」
「たけのこに洗脳されていないことを祈るわ!!さぁ零、どっち!?」
「零、私は信じています。私たちはこの1年半で築き上げてきた絆がありますから!!」
「卑劣な手を使う、きのこの誘導尋問に惑わされたらいかんよ!!」
「お、俺は……」
ここで自分を偽る必要などどこにもない。俺が好きなお菓子を答えればいいだけだ。それにきのこ派もたけのこ派も、みんな笑顔で笑い合えるように、この俺がこの戦争を終戦に導いてやる!!
「俺は…………パイの実派だ」
「「「「「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」」」」」
俺の所属する派閥を知った瞬間、全員が目を丸くして驚く。
だって、だって――――こっちの方が好きなんだから仕方ねぇじゃん!!きのことたけのこよりも、コンビニに行って買うお菓子といえばこれなんだ!!
外はサクっとしたパイ生地で、中は少しトロっとしたチョコレート、俺はこの絶妙な組み合わせが好きなんだよ。それに暖めると、中のチョコレートが更に溶けて口の中でとろけるような美味さになる!!俺の中ではきのこやたけのこよりも天下一品なのだ。
だが、みんなは黙ったまま動かない。特にきのこ派とたけのこ派で罵倒し合っていた奴らは前髪で表情が隠れ、非常に危ない雰囲気を醸し出していた。まるで"あの9日間"のように……。
み、身の危険を感じる――――!!
「零くん失望したにゃ……まさか異端者だっただなんて……頭、大丈夫?病院行く?」
「零……今度私の家に来た時に、とびきりのパイを食べさせてあげるわ……私が食べさせてあげる、お腹がいっぱいでイヤと言っても食べさせてあげる……」
「零、洗脳も何もなかったわね……初めからきのことたけのこ、共通する敵だったんですもの……腕が鳴るわ」
「零、私たちがこの1年半で築き上げてきた絆は、すべて嘘だったのですね……なるほどなるほど」
「零君、カードがウチに示すんや。零君をきのことたけのこ、共通の敵として成敗しろってね……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!どうしてそこまで言われなきゃいけねぇんだよ!?ただ俺は自分がよく食べるお菓子をだな……」
凛も真姫も絵里も海未も希も、ここまで殺意の籠った目をしているのは"あの時"以来だ。もしかしたら"あの時"よりも簡単に人を殺めることができそうな、鋭い視線で身体を貫かれる。
中立派の花陽、雪穂、亜里沙は苦笑しながら目を背けてるし、エロ派(?)の穂乃果、ことり、にこは『私にたちには関係ないですよ~』みたいな顔で口笛を吹いている。
こ、コイツら、さっきまで俺を頼っていたクセに!!!!
「さぁ審判の時です。覚悟はいいですか?」
俺からの忠告だ。
きのこたけのこ戦争に参加する時は、絶対に他のお菓子の名前を出さないこと。でないと俺みたいに、理不尽にボコボコにされるぞ☆
そう、ボコボコに……ね。
ちなみに私はアポロチョコ派です(異端者)
今回はここ数十年間も行われているきのこたけのこ戦争の話でした。結果的には決着しなかった(できなかった)ので、Twitterや前書きで詐欺して申し訳なかったということでどうか!(笑)
1つ分かったことは、この2つの派閥の戦争中に他のチョコレート菓子の名前を出したら殲滅させられるので気を付けましょう。
自分の推しキャラと見事派閥が被った人はおめでとうございます!被らなかった人は残念でした!
μ's内でのきのことたけのこの派閥はただの適当です(笑)。でも凛と真姫を対峙させたいとか、絵里と希を戦わせたいなど、普段から仲のいいキャラが敢えて激突する描写を書いてみたいというのは1つ考えにありました。でも真っ先に思いついた展開は、穂乃果やことりのあの淫語だらけの展開ですが(笑)
遂に次回は記念すべき第100話目の話となります!ネタは既に考えてあり本編に関係のない番外編となる予定ですが、当日までどんな話になるのかは伏せておくので是非ご期待下さい!
そしてここからは本編とは全く関係がないのですが、11月7日に私が小説投稿から一周年、そして新日常も同時期に100話を突破するということで、11月に企画を立てました。
新作小説ではないのですが、『新日常』の一風変わった話がたくさん見られると思うので、是非ご期待ください!!
投稿は11月1日からスタートし、毎日投稿の予定です。
もうあと1週間でスタートなので、私も楽しみにしています!
Twitter始めてみた。
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