悪になりたがりの再生者   作:Soul Pride

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密室、牢獄の中で

「構えろ。死ぬぜ」

 

 ──誘導型狙撃銃光弾(スティンガースナイプ)

 

 十四の指先から発射した一発の光弾は高速で螺旋を描き、彼女たちを襲う。

 なのはは一歩前に出て、手からミッドチルダ式魔法陣の盾であるラウンドシールドを発生させ、十四の弾丸を止めようとする。

 しかし、スティンガースナイプはラウンドシールドには着弾せず、寸前に停止した。

 

 ──再加速(スナイプショット)

 

 魔力弾が収束し、軌道を変え、盾で防御したなのはを飛び越える。

 ……狙われた所は、魔法を使えない一般人……アリサとすずかの二人。

 

『Defensor』

 

 バルディッシュの緊急発動で、二人を庇いフェイトが防御魔法で魔力弾を防ぐ。

 火花を散らし、ディフェンサーとスティンガースナイプが拮抗するが、元々防御魔法が得意ではないフェイトが真正面から攻撃を受けたのは失策であった。

 

「ハァッ!」

 

 それでも誘導弾の一発。防御の出力を高め、無理やり魔力弾を掻き消した。

 フェイトの顔は、静かではあるが怒りの色が入っていた。

 どうして怒っているのかは二つある。魔法が殺傷設定……十四は殺すつもりで魔法を撃ったことと、

 

「……どうして」

「ん」

「どうして、アリサとすずかを狙ったの?」

 

 彼女二人が魔法を使えないことを知りながら、それでも誘導弾で明らかに彼女二人を狙っていたこと。

 それ以前に、アリサとすずかは何故、結界魔法に巻き込まれているのか。

 過去に事故で彼女たちが結界に巻き込まれた経験はあるものの、そういうことは頻繁に起きるようなことではない。

 そしてこの結界は、結界に入れる対象を選別できるような内容を、他でもない十四が言っていた。結界に入れる人物を、指定できると。

 十四は故意に、アリサとすずかを巻き込んだ。そう、言っているようにしか思えない。

 十四は沈黙したまま何も答えない。その態度が、尚更フェイトの逆鱗に触れる。

 

「答えて」

「……そりゃお前。わかってんなら聞く意味ないだろ」

「答えろッ!」

「お前らクラスの相手に一人で一辺にやり合うのに、足手まといくらいのハンデをくれたっていいじゃねぇか」

 

 ギリギリと、怒りを精一杯抑えこもうとフェイトは歯を食いしばる。

 悪びれた様子もない。少しでも防御が遅れていたら、どうなっていたと思っているのだ。

 待機形態のバルディッシュを握る手が、真っ白になるくらいに強くなる。

 許せない。十四が、許せない。

 

「……ほんまの外道や、そんな言い方……!」

「敵に容赦するヤツがいるか?いねぇよ。敵対者は無情に殺せ。鉄則だ」

 

 それがどれだけ汚い手段であろうとも。十四は手段を選ばない。効率よく、敵を殺す術があるというのなら迷わず十四はそうするだろう。

 だが、今回の十四の目的は殺すことにはない。お人好し集団に、自分に敵意と殺意を与えることだ。

 十四と敵対するにあたって、彼女らには敵意も殺意もない。あくまで救いたい、助けたいという善意で動いている。

 ならば認識を変えるため、十四は救いようのない外道を演じることにした。彼女たちを、自分を無慈悲に殺せる機械へと変えるために。

 

「手加減するなよ。俺もしない。……ああ、もしかしたら流れ弾が飛ぶかもな」

「……わかった。アリサちゃん、このアホをボコボコにするわ」

 

 ……また一つ、敵意が生まれた。はやての目には、敵意と怒りで、十四を睨みつけている。

 二人から向けられる怒りのこもった視線を受け、十四は満足そうに笑う。ああ、心地よい。かつて親密だった者たちから向けられる敵意とはこんなにも快感だったとは。

 既に三人は臨戦態勢。いつでも戦いを始められる。

 

「……ごめん、フェイトちゃん、はやてちゃん……私は、戦えない……」

「っ!なのは」

「なのはちゃん……?」

 

 なのはは、膝をついて座り込んでしまう。俯いた顔は、誰とも顔を合わせようとしない。

 十四とは戦いたくない。あんな、人を平然と傷つけるようになってしまった十四とは。

 十四を、あんなにしてしまったのは自分のせいだ。十四を、あれほど狂わせてしまったのは自分のせいだ。

 

 ──あの時、間に合っていれば、こんなことにはならなかった……!

 

 自分を責め、責め続け、今の十四の姿にしたのは自分だと、自分で自分を傷つける自傷行為を続ける。爪を腕に突き立て、血が出るほどに掻き毟る。

 十四の負った傷はこの程度ではない。こんな程度では済まされない。

 もう、こんな十四を、なのはは見ていられなかった。

 

 ────パァッン!

 

 乾いた音が響いた。

 じわり、となのはの頬が赤くなる。

 

「甘えてんじゃないわよ、なのは」

 

 アリサがなのはの頬を叩いた。

 軽くたたいたものであったが、なのはにとって、どんな魔法を生身で受けた時よりも痛く、心に響いた。

 なのはの胸倉を掴み、よく聞かせるために自分の顔を近づかせる。

 

「アイツは、敵よ。どういう経緯だろうと、十四はアンタの敵になった」

「アリサちゃん……」

「戦いなさい。アンタにはその力があるでしょう。アイツにこれ以上、好き勝手させないために、アンタが止めなさい!ウジウジ考えるのは、その後にしなさい!」

 

 親友からの檄を飛ばされ、なのはの腕を傷つけていた手が止まっていた。

 その手の魔法は、泣いている子を助ける力。力なき人を、守る力。

 なのはは、立ち上がる。こんなところで折れてなどいられない。負けてなどいられない。

 高町なのはは、誰かを守ろうとする時こそ、真価を発揮する。いつだって、そうであった。

 

 ──そして、これからも。

 

「……やれんのか、高町なのは」

「やるよ。やらなきゃ、始まらない」

 

 なのはの目には敵意はない。悪意はない。怒りはない。

 一つあるのは、守らなきゃと思う強い意志。それだけを宿して、十四の前に対峙する。

 三人の少女(まほうしょうじょ)たちは、己の愛機を手に持つ。

 一人の少年(てき)は、周りに妖精(ブラウニー)を出現させる。

 

「じゃ、やるか」

 

 コマンド →たたかう

       まほう

      にげる

 

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