悪になりたがりの再生者   作:Soul Pride

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偽悪、壊れたガラクタの鉄心

「呪いはまぁ、後だ。これが本題。次はついでだ」

「呪いをかけるって言われてそのまま黙って聞いていられると思うか普通?」

「抵抗できる手段がないんじゃ仕方ないだろ。お前、デバイス持ってるか?」

「そりゃ、杖は肌身離さず……」

 

 いつも騎士十字の杖(シュベルトクロイツ)の待機形態を首にかけてあるとはやては、それを取り出そうとするがすぐにないことに気付く。

 

「お探しの代物はこれか」

「なっ!?」

 

 十四の手には、はやてのシュベルトクロイツをこれ見よがしに見せつけていた。

 それを即座に奪い返そうとはやては飛びかかるが、十四はひらりとかわして、はやては十四の座っていたソファに顔を埋めることになった。

 

「もしくはコレ?」

 

 そして次に見せつけるのは、ネックレスのように首にかけられるようになっていた紅玉。不屈の魂、レイジングハート・エクセリオン。

 

「それとも、コレか?」

 

 最後に見せたのは、金色の台座に乗る黄色の宝石。閃光の戦斧、バルディッシュ・アサルト。

 十四の持つそのどれもが、彼女の知るデバイスたちであり、そして持ち主が半身と思える存在であり、大切な物であった。

 

「あなたのなくしたデバイスは、どれですか?」

「そんなん知らん!全部返して!」

「……ああ、あなたはうそつきのようです。うそつきにはなにもあたえません」

 

 わざとらしい棒読みで、十四はイソップ寓話の金の斧の登場人物である、ヘルメスを演じた。はやては欲張りなきこりの役どころだ。

 十四の演劇じみた挑発に、はやての怒りの沸点は簡単に頂点を超えるが、今はただの少女である彼女に、変身魔法で体格そのものに大きな差がある十四に敵う道理はなかった。

 

「返して!返して!それは、私たちにとって掛け替えのない、大切なもんなんやよ!十四くんも知っとるやろうが!!」

「知ってるさ。だからなんだ。コイツがなきゃ戦えないとか言うんじゃないだろうが。俺はデバイス無してテメェらに勝ってんだ。だったら死にもの狂いで奪い返して来いよ」

 

 十四がデバイスを持っていない理由としては、単に時間がないのと、本人自身がデバイスそのものに頼らない戦い方をするからである。

 だからこそ、彼女たちのようにデバイスとは自分の命を預ける相棒としてではなく、魔導師にとっての武器、魔法使いにとっての杖でしかない。

 

「魔法のための道具とちゃう!それは、私にとって、家族の形見や!」

 

 はやてにとってその杖は、大切な家族である、リインフォースの残した物であった。

 だからこそ、その杖が、戦いのための道具として見られるのは認めたくない。

 

「十四くんもわかるやろ!家族を失ったことがある気持ちは、誰よりも理解しているはずや!」

「さぁな」

 

 十四の顔は、どこ吹く風。まったく堪えた様子はない。

 

「家族が死んだことにはまあ、確かにショックっちゃあショックだった。だが実際はなんともない。精神の弊害で生活に支障が出たことはない。多分、お前らに会わなくてもそれは同じだったんじゃないか?そういう確信がある」

「……そ、そんなん……そんなん嘘や!」

「嘘じゃない。いるんだよ、現実には。家族だろうと、恋人だろうと、死んでも眉ひとつ動かさない下種が。俺もその一種なんだと思うぜ」

 

 あの事件の後、医療用のベッドで目覚め、家族が殺されたことを覚えていながらも、十四は涙の一つも流さなかった。

 十四は考えるが……多分あのとき、今までの加添十四は死んだんだと結論付けた。今までの十四であれば、悲しみに暮れて、絶望して、悲劇の主人公を気取ったような男になっていただろうと考えていた。

 しかし、あの時十四は確かに死に。そして今の十四が鉄の心を備えて蘇った。悲しみにも暮れない、他人の痛みを感じない、涙のない冷酷非道な男へと成り下がった。

 言わば加添十四の残骸。芥子粒。塵。屑。

 そんなもので、いいんじゃないかと十四自身は納得していた。

 

「だからさ。俺は笑えたんだと思うぜ、お前らをぶっ潰した時にさ。大恩がある人を踏みにじってようやく幸せと思える、そんな屑野郎なんだよ俺は」

「自分で屑野郎って言えるんなら、まだ間に合う!正気に戻りたいっていうんやったら、戻したる!絶対にや!」

「嫌だね。俺が真に満足できる時は、敵を殺すか敵に殺される時だけだ」

 

 十四の真の救いとは、敵を殺すか敵に殺されるかだ。

 十四の定めた敵を殺していいのは十四だけだ。十四が殺されてもいいのは、十四が定めた敵だけだ。

 己の中の欲望がそう叫んだのだ。そうしたいと。そうしなきゃいけないと。そうしなきゃ始められないし、そうでなきゃ終われないのだ。

 

「全員無事のハッピーエンドなど期待するな。必ず最低一人は死ぬ」

 

 ──俺が死ぬか、お前らの誰かが死ぬか。

 

「戦争だ。殺して殺して殺して殺して、最後に殺される。そういうことがやりたいんだよ……!」

「……!」

 

 はやては声を失う。

 十四の言っていることがどういうことなのか。

 

「そんなのって、そんなのって……!」

 

 残酷で、無慈悲で、悲しすぎる。

 

「それでも俺を救えるか?」

「……」

「救うってのは、壊れてないヤツに言うんだよ」

「でもっ!」

「俺を真に救いたかったら、俺を壊せ!俺を殺せ!俺に壊される前に、俺に殺される前に──」

 

 

 

 

 

 ────俺の全部を、壊してくれ!

 

 

 

 

 

 十四の叫びを、はやては黙って聞き遂げた。

 外見は大人の鎧を纏おうとも、本質の姿は弱く、脆く、幼い。

 

 これが彼女たちが聞きだせた十四の本音であり、本懐。

 辿りついたことによって、彼女たちは選ばなければならない。

 

 破滅か、闘争か──。

 

 ──殺すか、殺されるか。

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