悪になりたがりの再生者   作:Soul Pride

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真心、誰よりも敵を愛そう

リンカーコアの、移植……!?」

「そんなバカげたことが……できるわけが……!」

 

 認めたくなかった。そんな非常識、認められるはずがなかった。

 自分の体に、他者のリンカーコアを埋め込み、そして同調させるなどと。そんな無茶を、十四はやっていたという

 ……かつて、リンカーコアを後天的に、人工的に発現させる方法として、移植という方法は古代ベルカの時代からやってきたが成功例はゼロ。臓器移植とはまるで勝手が違い、必ず拒絶反応が起きて死にいたるケースばかりであった。

 魔法の才ない者、魔法の才が乏しい者が、高い魔法の才を得るために、幾人も幾年も犠牲にしても、到達できなかった禁術。

 しかし、十四ならできる。十四は、できた。

 移植の際の拒絶反応を再生によって食い止め、徐々に体に馴染ませていった。人間の適応能力は並ではない。拒絶反応さえおさえこめれば、必ずなのはたちのリンカーコアを自分の物にできると確信があった。

 

 史上唯一、リンカーコアの譲渡、移植を、十四は可能とした。それがどれほどの偉業で、この魔法世界の常識を覆す事実か、十四自身は未だわかっていない。

 現状において。リンカーコアの真実に最も近づいているのは、十四であった。

 

「できることをやったんだ。やって何が悪い?もたもたしてっから、殺されにくくなっただろうが。どうしてくれる」

 

 いけしゃあしゃあと、とんでもないことをした十四は所詮その程度の認識でしかなかった。簡単な実験をしたら、思いの外うまくいきすぎて、予想の斜め上をいった。それくらいの考えでしかない。

 そしてうまくいきすぎて、益々死ににくくなってしまった。世の中、上手くいきすぎると同じように上手くいかなくなる。

 

「……ねぇ、ユーノ。フェイトたちの全部の魔力を合計したら、どれくらい……?」

「考えたくない。考える以前に、後方に立つ立場の僕らが、こうやって十四と対峙するのは凄く危険だ」

 

 戦うなんて、もっての外。戦いなれているアルフといえど、今の十四相手では、単純な魔力放出のみで鎧袖一触で殺されてしまうだろう。

 もとより、勝つつもりでここにいるわけではない。シャマルを守り切れば、前線のヴォルケンリッターがここへとやってくる。その間だけ、時間を稼げばよかったのだ。

 

「……別にさ、戦わなくていいぜ?」

 

 十四の口から出されたのは、停戦の提案。

 

「ここで見逃せばそれでいい。……用があれば、勝手にこっちから仕掛ける。そうだな、一週間後とかどうだ?」

「「「……!」」」

 

 一週間後、と言われて三人の顔が変わる。

 一週間たってしまえば、どうなっているのか。十四自身がわからないはずがない。

 ここで、ここで自分たちが十四を取り逃がしたら、仲間たちに申し訳がたたない。

 そして何より、自分が許せない。

 

「……二人とも、ごめんね。ここで私と、一緒に死んでくれる?」

「すみません。僕たちは、ここで死ぬつもりはありません」

「コイツをぶん縛って、生きて帰る!最初からそのつもりで来たんだ!」

 

 三人は、十四をこの場で止める。たとえ、一瞬で殺されることになっても立ち向かう。

 この男は、自分たちを舐めている。侮っている。侮蔑している。見下している。相手にするまでの価値はないと、決めつけている。

 確かに、自分たちは目立って前線に立つ者たちではない。なのはやフェイト、シグナムとヴィータたちに比べたら、どうしても見劣りしてしまうだろう。

 認めよう。確かに、自分たちは彼女らに比べれば弱い。

 しかし、はいそうですかと認めることは一番、むかっ腹が立つ。

 

「……見逃す気は?」

「「「ない!」」」

「ありがとう、お前らは俺の敵だ」

 

 期待を裏切らない。十四は嬉しかった。彼らが敵であったことに、この上ない喜びをもっていた。

 戦力が違う。そんなことで、戦わない理由にならない。そんな無謀なバカヤロー共に、出会えたことが。

 ああ、なんと愛おしい。この敵は、なんと愛おしいことだろう。

 自分だけが殺していい。自分だけが傷つけていい。誰にも渡さない。これは自分だけの敵だ。自分が殺されていいのは、この連中だけだ!

 満面の笑みを浮かべて、彼は。心から嬉しいという表現のつもりか。

 莫大な魔力を気ままに放出し、絶頂のまま高笑いをした。

 

「さぁ、やろうぜ馬鹿野郎ども!遊んでやるからかかってきやがれ!」

 

 

 

 

 

「シィッ!」

 

 斬る。

 

「だりゃあッ!」

 

 叩き潰す。

 

「でりゃあっ!!」

 

 殴りかかる。

 

 ──!

 

 その攻撃全てを、妖精女王(ティターニア)は辛くも凌いでいた。

 右手に持ったサーベルの剣技の技量はそれほど高くない。左手に持った小銃の狙いは粗い所がある。

 性能だけで、なんとか持っている。フェイトの速度、なのはの出力、そしてはやての魔力保有量。

 それぞれの利点を掛け合わせた理想というべき魔導師。魔導師の究極系。

 しかしそれでも、扱うだけの本人、十四の作り出したブラウニーの発展型である妖精女王(ティターニア)は、性能(スペック)技量(スキル)が追いついていない。素人丸出しであった。

 

「気付いているか」

「ああ……」

「うむ……」

 

 そんな相手だが、騎士たちの顔色は良いとは言えない。むしろ、苦虫を噛み潰した顔だ。

 十四を取り逃がし、狙っているのはシャマルたちの方だろう。同胞であるシャマルが、そう簡単にやられるわけがないのは信じていた。

 それでも、急ぐ理由は変わらない。一刻も早くこのティターニアを粉砕し、シャマルたちの方へ助太刀しなければならない。

 それだというのに。

 

「アイツ、時間が経っていくだけ技術を上げてる。シグナムの技を、真似してるみたいだ」

「お前の誘導弾の制御もだ。ザフィーラの格闘戦術も、物にしていっている」

「学習能力というわけか。厄介だな」

 

 『機械仕掛けの妖精(メタリカ・ブラウニー)』の自律性。つまり、自分で考えるという能力は、戦闘においても発揮した。

 どうすれば時間を稼げる戦い方ができるか。どうすれば足止めできる戦い方ができるか。それを模索し、突き詰め、考える。

 人体の細胞一片まで細かく記憶する大容量記憶装置の処理装置が、優秀でないわけがない。

 驚くほどのスピードで、実戦の内に学習し、物にしていっている。

 

「まだ未熟ではあり、勝てる相手ではあるが……時間がかかる。足止めでしかないということか」

 

 堅実な戦い方。実力の程をわかっていて、それでなお確実にこの場に留めておく戦い方に、厄介さを覚えていた。

 それでいて、自らは消えても構わない捨て身の戦い方。その無茶を繰り返し、実力が拮抗する領域までどんどんと引き上げて行っている。

 このティターニア相手に、長期戦はナンセンス。そもそも、いつまでもここで足止めさせられていられない。

 大技で仕留める。その意見は、口にせずに三人とも通じ合った。

 

「グラーフアイゼン!」

「レヴァンティン!」

『『Explosion』』

 

 ベルカ式デバイスの特徴、カートリッジシステムにより、魔力を供給。

 

「ギガントフォルム!」

「ボーゲンフォルム!」

 

 グラーフアイゼンとレヴァンティンが変形、一気に仕留めるべく最大火力で以て応戦する。

 大槌と、弓。彼女らの切り札を惜しみなく、投入する。

 

「ザフィーラ、頼むぞ!」

「任せろ!」

 

 守護獣ザフィーラが先駆ける。獣人の形態から切り替わり、獣の形態で飛びかかる。

 格闘戦闘からいきなり変化し、獣特有の牙と爪の攻撃で、ティターニアはリズムを狂わせられた。

 その隙を、彼は絶対に見逃さない。

 

「テォアアッ!!」

 

 ティターニアの右腕を、牙で捕えた。そしてそのまま振り回し、水面へと投げ飛ばす。

 体勢を立て直そうとするティターニアだが、その時にはすでに遅い。

 

「縛れ、鋼の軛ッ!!」

 

 水面からザフィーラの鋼の軛が炸裂し、ティターニアを閉じ込めた。 

 堅いゲージに縛られ、脱出は困難。

 しかし、追撃は終わらない。ここでこのティターニアを消滅させておかないと、厄介であるというのは騎士たちはこの戦闘で実感している。

 

「翔けよ、隼!」

『Sturmfalken』

 

 閉じ込めた上で、シグナムのシュツルムファルケン。飛翔する炎の矢、シグナムの最大火力を、容赦なく放つ。

 着弾と同時に、爆発。爆風と、砕けた鋼の軛が舞い上がり、ティターニアを容赦なく襲っている。

 

「ブッ潰れろ!」

 

 そして最後に、ギガントフォルムのグラーフアイゼンを振りかぶるヴィータ。巨大な鉄槌をぶん回し、高く掲げる。

 

「ギガント、シュラークッ!!」

 

 そしてそのままその鉄槌を、爆風の収まっていないうちに振り下ろした。

 轟音、爆音。三人の最大火力の魔法を、一気に放出した。

 単純、かつ隙のない息の合った連携。出し惜しみのない最大火力の連続は、何ものであろうと粉砕する。

 無事では済まない。無事であってはならない。確実に、ティターニアを葬っているはず。

 

「……おい、冗談だろ」

 

 だが、悪い予感は当たる。

 舞った爆炎と煙と水蒸気が晴れた時に確認したのは、集中砲火を受けたはずのティターニア。その、存在があった。

 無傷。ティターニアには、全くの外傷がなかった。甲冑やドレスに一切の汚れはなく、攻撃を受ける前と同じ状態である。

 

「確かに、当たったはずだ。全部直撃だった」

「だというのに無傷……いや、あれは」

「まさか、アイツも使えるのか?再生を」

 

 ティターニアは、ブラウニーそのものの集合体。ならば使えない方がおかしい。

 しかし、そうであってもあの集中砲火。もし十四が受けていて、再生をしていたとしても傷は残るはず。人間であるか、魔力体であるかの違いが、こうまでハッキリ出ることはないはずだった。

 腑に落ちない疑問が出てくるが、直後にティターニアが足下から粒子となって消えていく。

 ティターニアが起きていた消滅の原因は魔力切れ。単純な理由であるため、シグナムたちはすぐに理解した。

 ティターニアは、この集中砲火を防ぐために、多大な魔力を防御に集中させた。結果、自身の存在の現界すら危うくなり消滅している。

 魔力運用の拙さ。防御に回す魔力のギリギリの境目を見抜けず、維持に必要な魔力すらリソースに回してしまった。ようするに、自滅である。

 

 すっきりしない終わり方であるが、この際勝ち方など拘っている暇はどこにもない。少しでも速く、危機に陥っている後方へ向わなければならない。

 騎士たちは無言で、しかし表情はどこまでも真剣に、この滝壺から転移する。

 間に合ってくれと、願っていた。

 

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