悪になりたがりの再生者   作:Soul Pride

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決意、魔法少女は空を翔る

「なのはちゃん、フェイトちゃん!」

「はやてちゃん!?」

「はやて、足は……!」

 

 小学校の帰り、はやては聖祥付属小の校門の前に、なのはとフェイトを待っていた。

 はやての足は、完全に治っていた。彼女を巣食っていた呪いは、呪いをかけた十四によって完全に解かれ、すぐにでも全力疾走ができるくらいに回復していた。

 ピクリとも動かなかった足が、こうまで動く。全治一か月以上の傷を、一瞬で治す。十四の『機械仕掛けの妖精(メタリカ・ブラウニー)』の反則具合は異常であった。

 そして、その反則具合も磨きがかかっている。再生にかかった時間が、ほとんど一瞬に済んでいるという事実。

 自分のレアスキルを成長、進化させている。ブラウニー、ティターニアを十全に運用できる莫大な魔力と技術。その両方が完成した今、何よりも誰よりも凶悪な性能へと昇華させた。。

 

 戦わなければならない。その、彼と。呪いの解放に条件付けられた最後の決戦。

 勝たねばならない。いかに十四が、自分の生に絶望していようとも、自分たちは希望を見せなければならない。

 見たくはない。目の前で、自ら命を幕引こうとするところを、もう二度と。

 そのために、勝つ条件を揃える。少しでも、勝利に近づくために、戦力を集める。

 渡す物がある。彼女らが長く待っていた、相棒を元の持ち主へと。

 

「……二人とも、これ」

「レイジングハート……!?」

「バルディッシュも……はやて、どうしてこれを?」

「十四くんが、渡してくれた。呪いも、この通り」

 

 十四が返した、という言葉に二人は驚いた。

 何を考えて、この三人の愛機を返したのか。何の裏があるのか。

 呪いも解かれている。喜ばしいはずのこの事実は、いつまでも拒んでいた十四の態度に反していた。だからどうしても、懐疑的になってしまう。

 

「どうして、なの?」

「それはこっちが聞きたいくらいや。私を治した条件が、一つあって」

「条件?」

「全力全開、手加減なしの模擬戦。もちろんお互い非殺傷全開。十四くん対私たちの総力戦で」

 

 総戦力対十四独り。それが十四自身が望んだ、最後の戦争。

 敵と見なした全戦力と、十四の全戦力をぶつけ合おうという提案。それを十四自身から持ちかけられた。

 一見すると余りにも大きすぎる戦力差とは思った。

 人数差、戦力差が開きがある。著しい成長をしている十四といえど、いくらなんでも無謀としか思えない。

 ──普通であるなら。

 

「……ちょっと、絶望的かな」

「闇の書の防衛プログラムクラスの脅威。あの時のような偶然が、また上手くいくとは思わない」

「そやね。もう私たちは、十四を侮ったりはしない」

 

 だが、十四はもはや普通とはかけ離れていた。一人前……否、第一級の捜索指定のロストロギアクラスの危険性を持った相手と考えていた。

 この三人は、十四に辛酸をなめさせられた。大胆にも三人でいるところを襲撃されて、そして破れている。

 油断という言葉は、頭の中から消え去っている。十四はかなりの負けず嫌いで敗北を嫌っていた。今回も、何かしらの策を巡らせているのだろう。

 そして今、魔力量はここにいる三人のリンカーコアを得て、アースラ勢の誰よりも多くの魔力を保有していた。

 脅威としては十分すぎるほどに危険すぎる。

 

「それで、私たちが勝ったら、十四はもう何もしないって言っとる」

 

 殺そうとしないし、殺されようともしない。言われるがままにされるという。

 

「負けた場合は?」

「やることを一つ、目を瞑って欲しいって。決して私たちに危害を与えることやないって、言ってたけど」

 

 その言葉を鵜呑みにするわけにはいかない。たとえ自分たちに危険がなくても、十四が自ら命を絶つような真似をするに決まっている……。

 十四ははやてに言った。最期の機会をくれと。死ぬ最後のチャンスが、欲しいと。

 これは決闘だ。命を賭けずとも、十四の全存在をぶつける戦いだ。

 十四はこの機会でハッキリしたいのだろう。この戦いで、見極めたいのだろう。自分は、生きるに足りる者であるのか。生きていい者であるのか。

 

「勝つ、絶対に。もう、負けは許されない」

 

 転んで、そして立ち上がった。もう、転ぶのはいいだろう。

 フェイトは決着をつけたい。

 十四に希望を見せたい。歪んだままでも生きていいのだと、証明させたい。

 スタートラインにすら立っていない十四の手を引っ張りたい。

 

「負けることは考えない。勝つための戦術、知恵と勇気と魔法を、全部総動員して挑もう」

 

 そのために掛け値なしの全力で挑もう。

 なのはは、自分の罪の償いをしたい。

 十四には笑ってほしいから。泣いたままで、いてほしくないから。

 十四の叫びを、嘆きを、聞き届けるのが自分の役目だと思うから。

 

「あの馬鹿に教えないとあかん。何でも自分の思い通りに動くと思ったら大間違いやってな」

 

 それは違うと、否定してやろう。

 はやては、あの少年に生きる喜びを与えたい。

 あの時聞いた、十四の叫び、嘆きは今でも耳に新しい。

 己自身を屑とは呼ばせない。十四は誰よりも人らしく、そして弱いだけなのだから。

 

 

 

 

 

 戦う決意を胸に。魔法少女たちは最後の戦場へと向かう。

 

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