悪になりたがりの再生者   作:Soul Pride

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幻想、求めた死に場所

「……なに、これ……!?」

「結界を……侵食したの?」

 

 儀式魔法と思われる詠唱。そこから展開した、この別世界。

 昼が夜へと変わり、闇夜には地球のものとは思えない青白い巨大な月が浮かんで、無数の星が輝く。

 地には花。勿忘草が一面に広がる花畑が地平の向こうまで続く広大な丘だった。

 

 幻想的で、ファンタジーの世界に迷い込んだような、そんな景色。思わずため息が出てしまうような、美麗で儚さを感じさせる光景。

 そんな世界を、十四は作り出したのだ。

 世界を一つ作り上げる魔力など、滅茶苦茶である外ない。

 すぐにこの世界が、幻術の類であることを看破する。しかし、十四が幻術を習得しているとはとても思えなかった。

 

 ────ようこそ、妖精大王(オレ)の世界へ。

 

 念話で、全員が十四の声を聞きとった。

 

「……これは、一体どういうことだ」

「ただの、幻の世界だ。コイツを使って幻として作り出した」

 

 彼らの前に姿を現した十四は、いつものジャージ姿ではなかった。

 小学五年生に相応の子供の姿ではなく、成人した大人の姿。高い身長と、大人の色気を醸し出していた。

 格好は喪服。全身黒のスーツを纏い、黒ネクタイをしていた。その上には灰色のトレンチコート。靴は高級感のある革靴で、白手袋を着用、お洒落に黒縁の眼鏡もしていた。

 これが十四のバリアジャケット。再生能力があるため滅多に使わない、十四の本気を示す姿。この戦いで、全ての決着を付ける姿勢が見て取れた。

 傍らには、濁った紫の色をした妖精女王(ティターニア)。顔は形成していないが、長い髪を靡かせて、十四の側にいる。

 

「……それは、まさか」

「お前たちが、闇の書の闇と呼んでいた代物だよ。コイツを俺の体に馴染ませるには苦労したよ」

『!!!』

 

 闇の書の、闇。ティターニアのシルエットは、かつての闇の書の管制人格の形と瓜二つであった。

 ティターニアに、その闇を埋め込んだ。そうすればその禍々しい魔力は証明できる。だが……。

 

「テメェ十四!いつの間に……!」

「八神はやての呪いを解く際、呪いが進行した時の状態のデータも取った。そこから、闇の書のデータを復元……生体部分だけの復元だけだったが、それでも四割程度の力は引き出せる」

 

 ヴィータの言葉に、十四は素直に答える。

 データであろうと、生体であるならば再生は可能。むしろデータの塊であるならば、細胞だけの生体より扱いやすい。

 闇の書の闇を一部だけとはいえ復活させ、そして自分の身に取り込んだ。

 生体部分であるなら、闇の書の闇の中核であるコアも含まれる。それすらも十四の内にあるというのなら。

 

「本当の意味で、闇の書クラスの危険存在になるとはな」

「使える物が多かったからな。魔力にはこと欠かないよ」

 

 使えるから。そういう理由で、十四は闇の書の闇を取り込んだ。それがどれだけの危険性を含んだ代物であるか、わかっているはずだというのに。

 それを人の身で受け入れたとなれば、それはもう人の許された域を超えている。怪物に成り果てても構わない。その意思がありありと感じられた。

 

「ここは闇の書が作り出した夢の世界。見たい夢だけを見せて、精神を閉じ込める。誰かさんは経験したことあるんじゃないか?」

 

 ピクリと、フェイトは反応した。覚えのある魔法と思っていたが、まさかここがそうであったとは。

 つまり、今いる自分たちは生身ではなく、精神だけの存在であると。

 だが、こうして招いているということは戦えるだけの力はある。魔力も感じ、デバイスも持っている。

 ここなら存分に戦っても何も壊さない。十四は、生まれ育ったこの土地(にちじょう)魔法という穢れ(ひにちじょう)で無茶苦茶にしたくなかった。たとえ、結界を張って現実に何も影響を与えることはないとはいえ、見慣れた場所が壊されるのは許さない。

 

「ここは俺の願った、俺の理想の死に場所。誰もいない、何も変わらない、忘れられていくだけの夜の世界」

 

 十四だけの、理想郷(ユートピア)。ここが、最後の戦場。仮初の幻が解ければ、生まれた土地が自分の枕となる。そうして初めて、自分は日常に戻ることができたと実感できる。

 管理局側の者達は、デバイスを起動させて戦闘態勢に入る。

 十四は禍々しい魔力を滾らせて、紫電をまき散らしている。傍らにいるティターニアも、両手に桃色(なのは)金色(フェイト)のリンカーコアを手にして小銃とサーベルを手にした。

 

「劇の幕開けだ。幕引き(おわり)まで、とことん楽しもうぜ!」

 

 十四とティターニアが駆け出し、彼らの前へと躍り出る。

 

 決戦の幕は、開けられた。

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