「
左腕に、莫大な魔力が収束していく。
高町なのはの十八番、ディバインバスター。それを本人の前にして発動する。
しかし、十四はそのまま撃たず、射程を犠牲にしてその分貫通力と破壊力を強化させるために、拳に装填する。
これが十四の
「その魔法は、種が割れている!」
シグナムが駆け、十四へとレヴァンティンを向ける。
十四の格闘魔法は、発射するにあたって装填というワンアクションを置かなければ発動できない。十四がミッドチルダ式を得意としているため、近距離魔法に特化したベルカ式寄りの格闘魔法は、こうしなければ安定した出力を得られない。
発射するまでのタイムラグ。そこを突けば、十四の魔法は怖くなどない。
しかしそのことは、十四自身が良く知っている。
『Explosion』
「紫電、一閃!」
炎を纏ったレヴァンティンを、十四へと振り下ろす。
「……どこを見てる」
「!」
紫電一閃は空振りに終わる。十四は、シグナムの背後に回っていた。
速い、なんてレベルではない。シグナムクラスの実力者が感づかないほどの速度。フェイトですら、ここまではいかない。
なんの仕掛けを使った?何をやった。一瞬の逡巡が頭を過るが、考える暇はなかった。
「させるかよっ!」
『Gigantform』
シグナムへの攻撃を加える直前、ヴィータからの攻撃が十四へと襲う。
舌打ちし、またも目にも止まらない高速移動でヴィータのギガントシュラークを飛び上がって回避。
その背後には、フェイトがバルディッシュのハーケンフォームで十四を刻もうとしていた。
「もらったっ!」
フェイト自身、これは絶対に当たると確信した。
完全な不意打ち。たとえ攻撃を察知していても、反応が追いつかない。
しかしまたも光刃の鎌の一閃は空振りに終わる。
「またっ!?」
「遅い」
ふと気づけは横に十四がいる。
右手を銃のようにして、人差し指の先には
このメンバーの中で最速を誇るフェイトを相手に、遅いの一言。確かに十四はフェイトレベルの速度を出すことは可能ではあるが、コントロールに関しては本家本元のフェイトには及ばないはずである。単純に、速さではフェイトには敵わない。
だからこそ、このスピードは説明できない。
「
「……!」
『Defensor plus』
指先から発射された四連射のフォトンバレットに防御が間に合った。
しかし、スピードに自信があったフェイトは、自分のお株を奪われたことに大きいショックを受けた。
認識できないほどの超スピード。こんな技、彼女たちは知らない。
その様子を見ていたなのはは、驚くというより疑惑を持った面持ちで言った。
「……フェイトちゃん、どうして
「えっ……」
「はっ……?」
「……?」
なのはの言葉に、彼女たちは疑問を持つ。
止まっていた。つまり、十四へと攻撃する際、手が止まっていたということになる。
それはあり得ない。彼女たちは、躊躇いなく、全力で攻撃を振るった。十四を本気で潰すため。本気で勝ちにいくために。
だが、なのはには攻撃の瞬間が、止まって見えていた。
「……お前が言いたいのは、こういうことだろ」
「……!」
『Accel Shooter』
なのはは周囲に十発の高速誘導弾を配置。その一発一発をなのはは自在に操れる。
もし高速で動くというのなら、この誘導弾で十四の行動圏を制限する。移動できる場所を限れば、攻撃も自ずと当たるはず。
「アクセルシュ──」
「だから、意味ないんだ」
ほぼ同時に、周囲のアクセルシューターが消滅。そしてなのはの真正面……鼻と鼻の数センチという間の距離に、十四の接近を許していた。
ゾクリと、なのはの背中に寒いものが走ってほぼ反射的に後退。
これか。これが、フェイトたちが感じた、得体の知れない高速移動の正体。
認識することすら許されなかった。魔力の感知、接敵の気配、その他もろもろが何も感じられなかった。
なのはは本能で悟る。違う。これは、魔法とはまた違う力であると。
人に過ぎたる、力であると。
「……わかったか、お前ら。これほどヒントをやったんだ。理解したろ」
余裕綽々に、十四は攻撃も加えずにそう言ってのけた。
フェイト、ヴィータ、シグナムの三人は見ていた。十四のその手品のタネを。
自分もああいう状態であった。第三者から見るならば、そういう風に見えていたのだろう。……いや、十四がそう見せていた。本来ならば知覚すらできない。そういう業である故に。
手品のタネを、見せられたのだ。これでわからないなど言わせない。
「……お前のその力は、生体の時間操作。なら、可能だな」
シグナムは、納得する。ブラウニーは時間を“戻す”ことによって再生という結果を出している。
なら、“止める”ことだって不可能じゃないだろう。否、できない方がおかしい。
「──