悪になりたがりの再生者   作:Soul Pride

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夜空、動く戦況

 作られた機会。作られた舞台。作られた体。管理局の魔導師・騎士たちの状況は、正にそうであった。

 たった一人。たった一人の少年に、ここまで踊らされた。

 どのように動こうと、十四は思いのまま止められる。体の自由が他人に委ねられるというのが、ここまで不利な状況を生むというのか。

 

 しかし、それでも彼らは決して屈しない。

 個人の身で集団を上回る圧倒的戦力。それを前にしても、まったく怖気づかない。

 

「……まだ、やるかい?」

『当然!』

 

 この作り出した世界の真実。それを聞いてなお、彼らは屈しない。

 無駄だと知ろうとも、勝てないと知ろうとも、彼らは決して諦めなかった。

 どれだけ状況が不利であろうと、どれだけ相手が悪かろうと、どれだけ反則的な能力を有していようと、それをものともしない。

 その勇気。その不屈の心。無謀、愚かと罵りを受けようとも、輝きを失わない眩い宝石。

 そのどれもが、十四が憧れ、そして欲しがったものであった。

 彼らの心が自分にもあったというのなら。こんな状況になどなっていなかっただろうに。

 

「ああ、お前ら最高だ。大好きだ。もっと足掻け、もっと踏ん張れ、もっともっと、俺を楽しませろ」

 

 笑いが込み上げてくる。この歓喜。この狂喜。たまらなく心地よい。

 十四の想いは正しかった。彼らなら、自分を倒してくれると確信していた。

 この者たちが。自分に挑んでくる彼らが愛おしい。心の底から大好きだと叫びたい。

 楽しもう。ああ楽しまなければ損だ。

 正義の味方の彼らに倒される、悪で在ろう。強大で、どうしようもなく愚かな悪で在ろう。

 どんなに強かろうと、最後に正義が倒してくれる。十四は、そう信じたからこそ。

 

「俺を、倒してみろよ」

 

 悪の敵……正義と認めたからこそ、彼らに倒されることこそ最大の救いになるのだから。

 

 

 管理局勢の全員の時を止める。そして、ミッドチルダ式の魔法陣を展開。

 

 

 ──広範囲殲滅型(スティンガーブレイド)剣戟射撃直射弾(エクスキューションシフト)

 

With(それと)

 

 ──密集陣形設置型(フォトンランサー)光子投槍射撃直射弾(ファランクスシフト)

 

 この世界の夜空を埋め尽くすほどの剣とスフィアが、十四の周りに配置される。

 時間を止めることで、大火力魔法の発動にかかる時間を稼いだ。

 バインドなどで動きを止めてから、このような大威力の魔法は撃つもの。しかし、十四の場合は時間を止めることによっていくらでも発動にかかる時間を稼ぐことができる。

 この方法で有効な点は一つ。止められた側の相手は何も行動をすることもできず、認識すらすることもできない。相手にしてみれば大火力魔法をノータイムで繰り出されるようなものなので、非常に脅威となる。

 

「時間停止、解除」

 

 そして時の流れを戻した瞬間、彼らは空にある膨大な魔力弾の数に圧倒される。

 その一つ一つが、全員へと向けられている。全てが誘導のできない直射弾といえど、この密度の弾幕を避けられるわけがない。防ぐなど、もっての外。

 防げない、避けられないのであれば、叩き落とすしかない。

 

「レヴァンティン、シュランゲフォルム!」

『Schlangeform』

 

 シグナムの判断は早く、広範囲でもって攻撃できる蛇腹剣形態へと変え、スティンガーとスフィアを潰しにかかる。

 連結刃が魔力刃を砕き、スフィアを崩壊させていく。着実に、数を減らしていった。

 シグナムの行動を、十四はあえて止めない。止めようと思えば止めれたがそれでは一方的すぎる。

 余裕を見せなければ。この世界では、十四が王で、彼らが挑戦者。器量を見せる必要がある。

 

「私たちも行くよ、レイジングハート!」

『All right,My master』

「カートリッジロード、エクセリオンバスター!」

『Load Cartridge』

 

 レイジングハートから、二発のカートリッジが排出される。

 シグナムと同じように、空にある魔力弾を撃ち落とすべく魔力砲撃をチャージする。

 

「シュートッ!!」

 

 レイジングハートから発射された桃色の閃光は、夜の闇を切り裂いて、浮かぶ魔力弾などを薙ぎ払う。

 その光は、空の奥……この幻想の世界の天井へと届こうとしていた。

 

「っ!?」

 

 途端、十四の顔色が変わる。余裕を湛えた顔から一変して、焦りを見せた険しい顔へと。

 なりふり構わず高速移動(ソニックムーブ)。砲撃の速度より早く、着弾点である結界の天井部分へと到達し、砲撃を前にして十四は盾型魔法陣(ラウンドシールド)を最大出力展開。

 そして、当然のように桃色の砲撃は十四へと直撃する。

 

「ぐっ……!!」

 

 だが、高町なのはのエクセリオンバスターを、十四は防ぎ切れていない。

 当然と言えば当然。魔導師は、魔力量だけで決まるものではない。

 魔力量は十四は圧倒的に高くなっていても、魔力の最大出力は精々五割ほど上昇したに過ぎない。なのはの魔力出力量には及ばず、ラウンドシールドが押され気味となっていた。

 

「ティターニアッ!」

 

 ならばと、十四は周りに五十体のティターニアを形成。

 ごっそりと、魔力を奪い取られる感覚が体に走るが、気にしてなどいられなかった。

 

「時間、停止……対象俺withティターニア×49ッ!」

 

 そして自らを対象に、時間停止をかけた。

 時間停止による、絶対防御。時間という壁を利用した、最硬の盾。

 ──身を呈してでも。その盾で、守らなければならない物があった。

 

「──時間停止、解除」

 

 エクセリオンバスターを防ぎ切った直後に、一体だけ時間停止をしないで残したティターニア……十四のデータを入力したものに、止められた時間が動く。

 他のティターニアは、全て消滅。十四も、守れる物を守り切れたことに安堵した。

 

「……なんで、私の砲撃を……?」

 

 突然の、十四の奇行。防御しなくてもいいなのはの砲撃を、わざわざ高速移動と時間停止を併用してまで使った。

 

「……なるほど、そういうことか」

「突破口は、見つかった」

 

 つまり、この世界にはそこまでして守らなければならないものが存在する。

 この幻の世界で絶対無敵だと信じられた十四には、綻びが存在するのだ。それも、十四らしくない間抜けなほどの欠陥が。

 ユーノとクロノは、確信した。この勝負、勝ち目はあると。

 

 

 ──戦況は、大きく動く。

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