十四の心境は、正直を言って最悪という他ない。
この結界を張るにあたって、最も警戒に値すべきなのがなのはとフェイト、はやてと攻撃担当のシグナムとヴィータであることくらい、最初からわかっていたはずなのに。
気付かれることは頭に入っていた。この結界が、この世界の生命線であり、自分の勝利条件における絶対条件であることが。
「どうした十四。そんなに焦った顔をして。なのはの流れ弾が結界に当たるくらい、当然だろう」
「……!」
「その結界、それほど強度も強いわけじゃないね」
クロノ、そしてユーノには見破られた。
この世界を覆う結界強度は非常に弱い。それこそ、なのはの砲撃一発で壊される。
結界の壁に攻撃を中てられるわけにはいかない。
「……だから、どうしたっていうんだよ」
「元々この結界は古代ベルカ式。それを無理やり、ミッド式にエミュレートしてるから、強度面では期待できない」
「……ああ、そうだよ」
「しかしそれでも、守る理由がある。自分の身を挺してでも重要な意味がある」
それがなんなのかは、彼らはまだ具体的に察してなどいない。しかし、壊せば状況は一変する。
それは確信していた。好転するか、しないかは別として、この状況を打開はできる。
「この結界の本当の効果……単なる、お前の理想の死に場所というわけじゃないだろう」
「そうだよ畜生」
「じゃあ、聞かせてくれないか?この結界の意味を」
「教えるかよ、コイツばっかりは」
ユーノには以前、ティターニアやリンカーコア移植の件について隠しもせず話した。聞かれたから答えた。学者だから知る者から学ぶのだと、その恥も臆面もなしに尋ねる態度に感銘を受けたから。
しかし、こればかりは無理であった。聞かれても絶対に教えない。教えられない。
たとえ教えなくとも、クロノとユーノの二人には十分だった。結界の破壊が、十四の状況を窮地へと陥れるというのなら。
だからこそ、結界の破壊へと踏み込むだろう。それだけは阻止しなければならない。
なのは、フェイト、そしてはやての三人が、十四へではなく、結界へ向けて各々の杖を向けた。
念話で、伝えたのだろう。十四よりまず、結界を壊せと。
「結界は、壊させねぇっ!」
再び、生体の時間停止を彼らに。そして、また同じように大火力魔法を発動する。
──
──
空を埋め尽くす弾丸の数々。容赦という言葉を、完全に取り払った。
その全ての照準を、彼女たち三人へと向ける。
時を動かした直後、すかさず弾丸を一斉射出。
手加減はない。地に花を咲かせないほどに、撃ち尽くす。
ノータイムで発射された広範囲殲滅攻撃。避けることも、防御も許さない弾幕を、暴雨のように降り注がせた。
「この程度で、終われるかっ!!」
ザフィーラが、吼える。
突破口が見えたのなら、それを逃す手はない。
このままみすみす、やられるわけにはいかない。
「鋼の軛ィッ!!」
地から突き出でた白い槍は、この全員を覆うように突き出た。
堅いゲージタイプの防御。剣を弾き、槍を逸らしていく。
だがこの弾幕の密度は厚く、いかに守護獣であるザフィーラ一人では耐えられるものではない。
降り注ぐ槍と剣の雨はそれに亀裂を入れ、さらに突き破って通り抜けた。
「イージス、プロテクションッ!」
一発も、彼女たちに当てるわけにはいかない。
かつて、収束砲すら防ぎ切った最大の防御魔法を、ユーノは惜しみなく発動した。
「今度は、こっちの番だっ!」
『『Stinger Blade Execution Shift』』
クロノの、S2Uとデュランダルを同時使用した広域殲滅魔法。十四へと教えた魔法をそのまま、送り返す。
防御魔法でなんとかしのぐものの、左右後ろには、シグナム、ヴィータ、アルフの三人が詰め寄り。
さらに動きも、シャマルのバインドで動きを封じられていた。
「なっ、に……?!」
──時間停止。本来なら、シャマルのバインドに捕まる前に発動するはずだった。
時間を止め、包囲陣を脱して砲撃を撃とうとしている三人に直接打撃を叩き込む。そうするはずだった。
なのに、時間が、止まらない。
魔力量こそ、ティターニアの大量展開でそれなりに減りこそしたが十二分にある。タイミングも間違いないはずだった。
原因こそ、あるとしたら──。
(……チッ、やっぱもう本体が限界かッ!)
己を過信しすぎた、驕りこそが──。
「ディバインバスター、撃てるよ!」
「こっちも、砲撃の準備はできてる」
「ほな、一斉にいくでっ!」
なのはの、ディバインバスター。
フェイトの、プラズマスマッシャー。
はやての、クラウソラス。
「「「
その三種の砲撃が、一斉に結界を叩く。
結界の壁へ激突した砲撃は容易く破り、この幻の世界を打ち壊した。