「十四くん!」
「おう」
ぶっきらぼうに十四は、なのはの呼びかけに返事をする。
十四は、内側から無理やり魔力を捻りだして自分の精神を入力したティターニアを作り出し、外へと出た。
つまり、ティターニアでありながら宿主。レアスキルを使うことのできない怪物化の十四とは違い、その能力を十全に使うことができる上、絶対服従の制限に当てはまらない。
「fdnguisngrfgfd──」
「ひっでー格好。なんつーか、頭の悪そうな面してんな。……自分で自分を貶してなんかすげぇ惨めだ」
頭を抱えて、頭が悪いのはお互い様かと納得する。
「テメェら、手出すなよ。コイツは、俺の獲物だ」
「"fjngiusdnguireng"──」
「遅い」
魔法詠唱に入った怪物が、十四の回し蹴りで宙に浮く。
踏み込みが速すぎる。いつ十四が間合いに入ったのかわからないくらいに。
決して恐ろしいほど速いわけではない。フェイトもシグナムも、高速で動く十四を見ることはできたが、動きがあまりにも自然過ぎた。まるで、動きそのものが、早送りしたように見えていた。
「おら、もちっと気張れやコラ」
──
追い打ちに砲撃。微塵も容赦はない。光の奔流に、怪物は呑みこまれた。
それでもあの怪物は全く通じていない。それは十四自身がよく知っている。
だからこそ、都合がいい。
「いいね。どうせ相手は俺だ。なんなら本気で殺してみるか」
自分が相手なら、遠慮も容赦も必要がない。なんとも都合のいい相手であろうか。
「ちょ、ちょっと十四!私たちは……!」
「手を出すなって言っただろう。離れてろ、本気出すから」
フェイトが、殺しにかかる十四を止めようとするが、十四には聞く耳は持っていない。
「"道化は舞台にて踊り、喜劇を演ず。喜び、怒り、泣き、楽しめ。
十四の詠唱は、さきほどの物とはだいぶ違う。
詠唱とはイメージ。魔法の形を決める際の、具体的な形付けである。
「"全ては筋書の通りに。全ては
──
しかし、そのオベロンは先ほどの巨大な妖精ではない。ただ、新たに十四の頭に、妖精王の王冠が乗せられた。それだけの変化であった。
「uisdfguwhgf!!」
怪物は右手の龍の頭を十四に向け、そこから灼熱の業火を発した。
広範囲で吐き出されたそれは、コンクリートは消し炭になるほどの超高温度。魔力で防御しても、火傷は避けられない。
十四だけでなく管理局勢全員を対象にした広範囲攻撃。しかしそれに対して十四は、非常に落ち着いた態度であった。
「……だからさ、鈍いよ」
怪物の背後に、十四はいつの間にか回り込んでいた。
先ほどと同じような、超高速の踏み込み。動きそのものを加速させたような、十四の移動術。
時を止めたわけではない。時を止めたのなら知覚そのものができない。あくまで高速移動。しかし、高速に移動しているにしては動きが自然過ぎる。
「俺のみを対象に、オベロンを発動する。これこそが、本当の使い方だ」
この高速移動術はオベロンの効果。否、効果の一つ。
本当の使い方。あの巨大なオベロンと時間停止はあくまで応用でしかない。
実戦で使うなら、この方法が最善。
「生体時間加速。今の俺のスピードは、通常の三倍だ」
それが十四の最終奥義。奥の手。最後の
生体時間を加速させることによって、どんな動作も加速させて行動することができる。
背後に回られた怪物は、両肩の黒い双蛇に十四を襲う。
その牙は致死性の毒がある。噛まれたら一巻の終わり。
しかし、十四は悠々と襲ってくる四匹の蛇の頭を、蹴って潰した。
蹴り足が見えない速度。一つ一つの動作が通常の三倍である今、今の十四に追いつける存在は皆無であった。
「かかって来いよ化け物。敵はここだ」