悪になりたがりの再生者   作:Soul Pride

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謝罪、そして最後は笑顔へと

「俺の負けだ、なのは。好きにしろや」

「うん」

 

 降参。両手を上げてホールドアップの格好を十四はする。

 なのはは納得するが、他の面々はそうはいかない。

 どうして。どうしてなのはにダメと言われただけで、あの負けず嫌いで死にたがりの十四が、その怪物にとどめを刺さなかったのか。

 その怪物を殺めれば、十四の望みは叶う。

 己の業に、歪みに、何よりの憎悪を抱いていたからこそ、十四は殺されたがった。悪になりきろうとした。

 

 目と目で通じ合っただけで、その二人の間にそれ以外の言葉は交わされていない。

 よって他の者達は、状況が呑みこめなかった。

 

「ちょ、ちょっと待って!なんで?なんで十四くん……えっと」

「急に、そんなこと……」

 

 はやてとフェイトは、いきなりそんなことを言い出した十四に、理解が追いつかない。

 あれだけ。あれだけ自らの死に固執していた十四が、ああもあっさり、その機会を捨ててしまう。

 

「俺がこうなっている時点で、俺は負けている。本当なら、あの世界を使った時から勝負は投げてたんだ」

 

 時間停止を使うことができた、十四の死に場所。理想の墓場。それを使った故に、十四は負けたも同然だった。……より正確に言うならば。闇の書の闇を取り込んだ時点で、勝ち負けどうこうを言ってられる状況ではなかった。

 勝とうが負けようが、十四の体は限界であった。イコールを繋げられるのは、十四がその怪物へと成り果てること。そうなることで、彼ら管理局が危険な怪物として自分を討伐するように仕向ける。それが狙いだった。

 最初から、勝負に臨んですらいなかった。開始直後のチェス盤をぶん投げる行為。最初から、駒に触っていなかった。

 そんなことをすれば、反則として強制的に負けとなる。なのはたちが対抗できた時点で、十四は詰んでいた。

 

「ソイツを止める方法は、俺自身が出張って殺すかお前らがブッ飛ばすかの二択に限られる。だが、これはあくまで模擬戦。殺しは法度。つまり俺が手出しできないその時点で負け」

 

 怪物を殺そうとした十四を、なのはがルール違反を指摘した。殺してはいけない。この模擬戦において、十四が定めたルールである。守らずにはいられない。

 それ以外に十四には怪物を止める手段が存在しない。それが止められた時点で、十四に勝つ手段がない。

 

「べ、別に殺さへんでも」

「仮に殺さない場合、俺の精神が妖精女王(ティターニア)から本体に移る。そうなった場合、妖精(ブラウニー)一体も出せないくらいに魔力枯欠で、ボコボコになった体に入ることになる。勝てるか、俺?」

 

 本体の、怪物と化した十四の体から闇の書の闇を追い出したら、そこに残るのは満身創痍の十四である。魔力はなく、立てる力もない。

 ブラウニーを基軸とした戦術こそ、十四の基本型。それができない時点で十四の負けは確定している。

 魔法が使えなくなる……そうなったとしても、無駄だとわかっていても、十四は戦い続けようとするだろう。それがわかりきっているからこそ、十四は今ここで矛を収めた。

 あの世界が崩壊した時点で、十四はこの展開を予測していた。

 

「わかっただろ。わかったらさ……」

「rfjghiuaon!!!」

 

 ──剣戟射撃直射弾(スティンガーブレイド)

 

 起き上がり、そして一番近くにいたなのはへ襲い掛かろうとした怪物を、十四は剣の弾丸で背後から撃ち抜き、地面に縫い付けた。

 

「とっと、コイツなんとかしてくれ」

 

 鬱陶しそうに、魔力刃で突き刺された這いつくばる怪物へ目を向けた。

 今の十四は、もうこの合成獣相手にとどめを刺す余力は残っていない。

 怪物の内から、無理やりにティターニアを形成し、そして妖精大王(オベロン)による時間加速によってほとんど魔力は残っていない。ティターニアを維持できる時間も、残り少ない。

 

「いいよ。だけどその前に言うことがあるんじゃない?」

「……なんだよ」

「人に迷惑をかけたら、なんて言うの?」

 

 なのはが、十四に言うべき言葉を要求する。

 この言葉を聞かない限り、十四が負けたと認めることはできない。

 

「……悪かった」

「もっと、誠意をこめて」

 

 意地悪なことを言い、十四はたじろぐ。

 負けた自分が悪い。そうだとしても、己の性格とやってきたことから素直に言うことには抵抗がある。

 しかし、言わなければならないだろう。大きく息を吸って、そして吐いて。深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい」

「うん、許してあげる」

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