乱れ飛ぶ弾幕は果たしてどちらのモノか。
縦横無尽に飛び交う苛烈なまでの弾幕。
既に弾幕の開始しから一刻以上が経っているが、なお互いの弾幕は衰えることなく入り乱れている。
こちらは決して底をつくほどのない妖力をもって無数の弾幕を張り続けているのに対し、霊力では決して立ち向かうことの出来ない彼女はその未来予測のような精密射撃によって相対する。
その射撃はまさにまさに数百メートル先から動き周る針の穴すらも打ち抜かんとするほどの、例え妖怪であろうとも不可能と言わざるおえないほどの射撃である。
私が百の弾幕を放つ間にあちらが放つ弾幕はたかだが数発。
数の上では既にこちらが圧倒的なまでに勝利しているけれど。
されどなお、ここまでに互いに拮抗しているのは。
全てがその恐るべきほどまでに精密さによる。
「っ!!」
ほんの少しでも油断すればその一撃は私を射抜こうと飛来する。
彼女は、その精密さをもって自らに飛来する私の弾幕を迎撃し、なおその上で私に反撃しているのだ。
ありえない……。
弾幕を弾幕で迎撃など。
あるいはそんなことを一度は夢想する者もいるかもれないけれど。
されど、それを実戦の中で、一度のミスもなくやりとげるなど。
一体誰が出来るだろうか。
だが、そんな否定をしたところで。
目の前で実際にやられているのだから。
どれだけ否定したところでそれをあるとしか言いようがない。
彼女は、ただその数発の弾幕をもって、自身の目の前に来るであろう弾幕をのみ撃ち落とす。
そしてその上でこちらに向けその一撃を射抜いてくる。
一体彼女の瞳には何が映っていると言うのか。
どれほどの果てにこんな曲芸じみた真似が出来るというのか。
本当に戦えば戦うほどにここまで面白いと思える相手が他に居るだろうか。
その瞳を紅く燃え上げて、その穢れ一つない白い顔や体を血に染め上げなら、なお一切の衰えもなく戦い続ける姿のなんと美しいことだろう。
それは本当にいつまでも愛でていたいと思うほどに……。
だがまぁ……。
それほどの神技を惜しみも無く披露したところで。
それでもなお翻すことの出来ない現実というものは存在するのだけれど。
「くっ…………」
その呻きは被弾による痛みか、それとも止めどもなく続いている流血によるものか。
空を覆い隠さんとするほどの弾幕を降り注がれてなお、そこに一切の揺らめきも迷いもなく射続けるその姿はまさに、私と正面から撃ち合えるほどの確かな力が感じられる。
もしも、最初に彼女が見せた未来予測のような連射を繰り返されれば。
いずれ撃ち落とされるのは私の方であったろう。
だがしかし。
そうはならない。
彼女が一撃をこちらへ撃ち、ニ撃目を許すほどこちらの弾幕は甘くない。
いや、そもそも回避ではなく迎撃を選んでいる時点で、一撃でも放てるだけで驚嘆に値するのだ。
一矢を放つ間に、数十数百の弾幕が彼女へと飛来する。
そしてそれを。
自身が回避できるだけの最小限度の数だけ撃ち落とそうとしたところで。
それでも撃ち落とせないだけの弾幕が存在する。
そしてそれは、容赦なく彼女へと被弾していく。
肩に体に、致命傷こそ避ける場所へと当たるようにしているみたいだけれども。
それでもその顔には、隠し切れぬ苦痛が感じられる。
そもそもこの射撃戦が始まる前に彼女はこちらの特大の一撃を既に喰らっているのだ。
その一撃は情け容赦なく彼女に傷を与え、そこから多くの血を奪い続けているのだから。
その状態でなお、こちらと正面から値するなど、彼女は本当に人間なのだろうかと思わざるおえないのだけれど。
既に限界などとうの昔に訪れていてもおかしくないほどの負傷。
意識を失い、その場でいつ倒れ伏すまさにその寸前。
それこそそのまま目覚めぬ永遠の眠りについてもおかしくないと言うのに。
それでもなお彼女は――――。
「はっ……はは……」
笑う。
楽しそうに。可笑しそうに嗤う。
これだけの弾幕がありながらなおはっきりと見て取れるほどに嗤う。
妖怪を。私を魅了し続ける笑みをなお浮かべ続けているのだ。
「…………何を笑っているのかしら?」
それは届くともしれない問い。
そもそも彼女との間にはかなりの距離があるのだ。
彼女は地に。そして私は空に居るのだから。
ゆえに答えの返ってこないだろうけれど。
それでもなお呟くように零れたその私の問いに。
まるでそれが聞こえたかのように彼女は目の前の弾幕を撃ち落としながら口を開いた。
「もう少し……後もう少しで……見えてきそうで……」
それは答えになっていないような言葉。
彼女は一体何を見ているのか。
それとも何が見たいのか。
彼女は、私が見て居ない私が見えない何かを見ようとしているのかもしれない。
けれど、何であるのか私には分からないけれど。
それでも終焉は近い。
限界を超えてなお彼女を支え続けている力も、尽き果てる瞬間はすぐそこに。
そこに覆せないほどの地力の差がありながら、なお正面から食らいつく彼女の神技に驚嘆し。
妖怪である私を魅了し続けるその笑みを、この戦いの間中見れたことに私は確かに満足していることを自覚しているからこそ、幕引きは私の手によって。
最後のその瞬間まで手は抜かない。
その結果どうなるかも分からないけれど、それでもこの振り切った心で今更止めることなど出来はしないし、するつもりもない。
ゆえに――――。
「だけどこれで終わりの時よ、琥珀」
『無双風神』
そして私の速度は限界を超える。
例え神であろうとも私の速度は追い切れぬ。
それほどの誇りと自負をもって、私はこの世界を飛び回り、羽扇を振るい弾幕を張り巡らす。
その数まさに無限とすら言っても過言でもないほどに。
この世界を、覆い尽くさんと撒き散らす。
そして、今度こそこの戦いに終止符を打つために。
ここが終わり。ここが彼女の終焉。
未だ変わらぬ笑みを浮かべこちらを見つめる彼女の終わりは今此処に。
「あは。やっぱりそう……だよね……。弾幕を霊力なんかで造ろうとするのが……間違っているんだよ……ね」
だがしかし、その呟きはなんであろうか。
既に彼女が迎撃出来る数など遥かに凌駕する弾幕に囲まれて、一切に逃げ場もない状況においてなお呟くその言葉が一体何を意味しているのか。
「だったら霊力なんて枯渇させてしまえば良い……。必要なことは幻想の具現化なのだから……」
笑みは深く。
既にどうしようもない現実が目の前に広がっているというのに。
それでもなお彼女は一切の諦めを見せることなく。
いや…………むしろ此処からが本当の始まりの時となすかのように。
楽しそうに、本当に楽しそうに……それを口にした。
「幻想は此処に――――。さぁ――開演の時と為す」
幻符『鏡合わせの幻想舞台』
――――そして、その瞬間に現実世界は幻想世界へと変貌した。
「………………………………うそ」
その光景が何を意味するのか。
認識は出来るが理解が出来ない。
いや……起きているこは実に単純なことであるのだが。
その世界の説明なんて簡単なことだ。
要は――――私の弾幕を同質、同数の弾幕をもって悉く打ち合わせたということ。
実に単純明快な話ではある。
だがしかし。
一体誰が――――妖怪の切り札とも言える弾幕を、全くそのまま打ち放てる人間がいると言うのか。
それこそ、神であろとも、他人のしかも多種族の弾幕を完全に模倣するなど不可能であろう。
けれど琥珀はそれを成し遂げる。
私の弾幕と同質同数の弾幕を完璧に造りあげた。
なるほど――。
確かに全く同じの弾幕を用いることがでるならば、弾幕の相殺も可能に――。
いえ――。ただ同質の弾幕を構築しただけならばそれは成り立たない。
彼女はそれら全てを造りあげながらに。
その上で私の弾幕とかち合うように――その全ての弾幕を精密なまでに操ってみせたというその事実に。
ありえない。
散々に彼女の非常識ぶりを見せられてきたが。
今回のそれはまさに、この世界の理すら捻じ曲げるほどにありえない。
一体琥珀は何をしたのだという言うのだろうか。
彼女の成し遂げたその事象に、理解が追いつけば追いつくほどに分からなくなるからこそ。
思わずに呆然と動きを止めてしまう。
未だ互いの戦いの途中だと分かっていても。
彼女が起こした現象に目を奪われてしまったが故に――その翼を羽ばたきを止めてしまう。
それが致命的なまでの隙になるのだと頭では分かっていたのだけれど。
そして彼女は、そんな私の隙を見逃すような人間ではないからこそ――。
だから琥珀の方に目を向けたその瞬間に――。
彼女は笑みを浮かべながらに、次なる幻想を造りあげようとしていた。
「行くよ――文」
華符『百花繚乱』
世界に華を咲かせましょう。
そんな琥珀の歌う言葉と共に放たれた弾幕は――。
あぁ――。確かにこれは華だ。
世界が華で満たされていく。
琥珀が造りあげる幻想舞台において造りあげたまさに百花繚乱。
一つ一つが恐ろしいまでにの密度を持つ花びらを模した弾幕が。
回避しようなどと思わないほどに。
美しく艶やかに。
世界を覆い――。
私はそんな彼女の弾幕に飲まれていったのだった。
そして……気が付けば私は地に足をつけていた。
もはや空を飛ぶ気力も残っておらず。
此処に勝敗は決した。
そして、そんな風に地べたに膝をついている私の元に琥珀が寄ってくる。
「……私の勝ち?」
「えぇ――。貴方の勝ちよ」
もはや言い訳をしようと言う気すら起きないほどの敗北であるからこそ。
私は素直に負けを認める。
そして未だ立ち上がる気力も無いままに。
その場で座り続ける私を琥珀はただ見つめ続けており。
そんな彼女と目線が合った時に思い出す。
あぁ……。
そういえば負ければ私は彼女のモノになるんだっけね。
そんなことを言われたかこそ彼女と戦い始めたのだったと。
今さらにながらに思い出す。
私が……。
鴉天狗である私が人の下につくなど――と。
もはやそんな想いすら湧き出てこないというその事実こそに……。
思わず苦笑が漏れる。
いえ。そもそも初めからそんなことに怒りなど覚えてなどいなかったのだから。
私は結局のところ彼女と戯れるのが楽しかっただけということかしら。
だからこそ、その戯れの結果がコレなのだと言うのなら。
別にそれを受けれても良いか……なんて考えて。
彼女と共に彼女に望まれるままに空を飛ぶのも悪くないのかもしれない……なんて。
そんなことを考えながらに居ると。
気が付けば――琥珀が私の目の前にまで近寄ったかと思えば……。
その右手を口元まで運び。
何をするのかと見ていると――。
「……っ」
彼女は――迷わずその右手の先を噛み切った。
「なにを……!?」
思わずそう問い返すと――。
彼女は血に塗れるその右手を私の目の前にまで運び。
「……舐めて」
そう呟いたのだった。
「なっ!」
私は彼女が何をしたいのかが分からずに。
ただ呆然と彼女の目と右手を眺めていると。
琥珀は首を傾げながらに――。
「……要らないの?」
そう問いかけられたけれど――。
はっきり言って彼女が何をしたいのかが分かるはずもないが故に。
「……………できれば貴方が何をしたいのか説明して欲しいのだけれど?」
というより琥珀は饒舌な時とそうでないときの落差が結構激しい。
気分が高まると謳うように語り始めるけれど、そうでない時は必要以上に話そうとしなくなる。
そして……どうやら彼女の中ではもはや気分が落ち着いているようで。
語られる言葉が単語のみになっているが為に、彼女の言葉が分かりづらくなっているからこそ。
彼女の真意を知るためにそう問うと。
「……ん。私は文を欲した。それは今も変わらないけれど。でも貴方をただの一度の勝敗で手に入れようなんて思わないから。だから――」
――これはその対価。
そう呟きながらに――。血の滴る右手を私の口元まで運んでくるのだった。
……そう。彼女の言いたいことは……何となくわかったけれど。
対価が血……って。
私は吸血種と勘違いしているのかしら――なんて。
思わずそう突っ込みそうになったけれど。
しかし――。
目線は――。
彼女の白い右手から滴る血から離せずにいる。
紅い血。
私の意識は釘づけとなる。
思わずに夢想してしまう。
妖怪すらも魅了するような琥珀の血を飲めば一体どうなるのだろうと――。
あるいはそれは本能の疼き。
妖怪としての私の奥底から湧き出る衝動のように。
そして……その血から漂う甘い香りに誘われ。
私は自らの口を彼女の指まで運んでいき。
最後はもはや無意識なまでに――。
舌で彼女の血を舐めとった。
「……っ!」
その瞬間にこの身を襲った感覚を――私は生涯忘れないかもしれない。
それほまでに……それは甘美であった。
血であるはずなのに。けれどそれはどうしようもないほどに甘く。
どのような古酒よりもなお澄んだ感覚のようで。
けれど妖艶とも言えるような味わいでもあるようで。
もはや私はなりふり構わずに。
彼女の指を口に含み。
そこから流れ出る血を嚥下する。
辺り一帯は先ほどまでの戦いが嘘のように静まり返っているが為に。
ただ私が血をの飲む……どこか淫靡さすら感じるような水音のみが響く。
そんな世界の雰囲気を相まって。
今ままでに感じたこともないような酩酊感がこの身を襲い。
もはや天地が逆さまになっているような感覚に至り。
自分が立っているのか座っているのかすら分からなくなった頃に。
「……満足した?」
そんな言葉が私の耳元で囁かれ――天高く昇っていたかのような意識が地へ戻ってくる。
「……ぇ……あ」
そして……その時になり。
私が琥珀の前に跪きながらに、ただ一心不乱になり彼女の指に吸い付いていたのだと認識し――。
余りの醜態ぶりに思わず彼女から飛び退こうとするけれど。
しかし体に力が入らなかったが為に。
結局ただよろめきがらに後ろに下がっただけであった。
そしてそんな私の行動を眺めながらに……。
琥珀は問うてきた。
「これは……貴方を手に入れる対価になった?」
あぁ……。
そういえばこれはその為の対価だったんだと。
今さらに思い出し。
けれど、彼女の血で口元を汚しながら彼女の足元に座り続けている今の私にできる答えなど――。
もはや一つしか残されていないからこそ。
「えぇ……。貴方の――琥珀の言葉に従うわ」
此処に盟約は成る。
彼女の挑発に乗るがままに戦い――負け。そしてあまつさえ、そんな彼女の指に一心不乱に舐めながらに血を飲むなんて。
それほどの醜態をやらかした私からすれば。
もはやそれは当然の言葉だったのだけれど。
「……ん。良かった」
しかし、そんな私の言葉に琥珀は嬉しそう笑う。それは今までの笑みとは違う――。
まさに一点の曇りも無いような澄んだ笑みであったからこそ。
思わずそんな彼女の笑みに見惚れてしまい。
そんな動揺を隠すように――。彼女へ声をかける。
「っ。どうして……。どうして貴方がそこまでして私を手に入れたがったのか聞いても良いかしら?」
そう問いかけると。
彼女はただ笑みを浮かべながらに、私の目の前まで寄るようにしゃがみこむと。
そのまま手を後ろへと回し、私の翼を撫で始めた。
突然のそんな行動に。
けれどもはや忌避感なども沸いてこず。
むしろ彼女の手つきを気持ちよく感じる自分をはっきりと自覚しながらに。
ただ彼女の行為を受け入れていると。
「……私は空を飛ぶことが苦手だから。でも私はこの幻想郷の果てまで高く飛んでみたいと思ったから――。だから……誰よりもそらを自由に駆ける美しい翼を持つ文に抱かれながらに飛ぶことができれば――きっと……私が望む世界の一端が見えるかもしれない。文の飛ぶ姿を見た時にそう……思ったから。だから、その為なら――」
――私の血を貴方にあげる。
なんて。そんな言葉を耳元で呟かれ。
思わず顔が赤くなるのを自覚する。
翼とは鴉天狗にとっての誇りを占める部分であるからこそ。
それをこの少女に――。妖怪を魅了する人間に、あの八雲紫からすらも寵愛を受ける琥珀から。
自身の血を対価にしてでも私の翼を欲したと言われ……。
もはや私が人の下につくことに対する忌避感など何処にも無いかのように――。
それを嬉しいと思ってしまったが為に。
「……そう。なら貴方の望むままに飛んであげるわよ。どうせしばらく妖怪の山には私も居られなくなるでしょうしね」
今さらではあるが。もはや言い訳をしようもないほどに私は琥珀の足元に跪いているのだ。
そんな姿を……。というより琥珀との戦いの前から他の天狗に見られていたとするならば。
彼女の指に吸い付き血を舐めている姿すら見られたことになるのだから。
そんな姿を他の天狗に見られれば、どう考えてもしばらくはこの山には居られなくだろうからこそ。
ならば彼女と共に――。
琥珀が望むがままに空を飛んでいけば良いや。
なんて考えていると――。
「……あぁ。それなら多分大丈夫……だよ。ここに来る前に他の場所で少し弾幕をばら撒いてから……ここに来たから。多分まだ他の天狗はそっちにいると思う……よ?」
「……は? でも貴方さっき他の天狗がこの辺りに居るって。え? 騒ぎ? どういうことですか……?」
「それは嘘……だよ?。さっきも今もこの辺りに他の天狗の妖気は感じない……よ。さっきのは貴方を挑発する為のモノだったから……。嘘ついて……ごめんね?」
「……え? あ……いえ。それは別に良いのですが……。ってじゃあ私達のやり取りは誰にも見られていなかったんですか?」
「……ん。そうだと思う……よ」
そう言いながらにこちらを見つめる琥珀の瞳と目が合って。
あぁ――彼女なりに私に気を使ったのだということを理解して。
とりあえずこれで心配の種が杞憂だったの分かったことに対することに安堵と。
こちらに気を使うならそもそもわざわざ妖怪の山で危険を冒さなくても良かったじゃないかなんて思いが――渦巻いたけれど。
しかしそれでも――気持ち良さそうに翼を撫で続けている琥珀を見ていると。
彼女はある意味において――どこまでも唯我独尊なのだということを改めて思い知り。
そしてだからこそ。
彼女はきっと此処にいるのだろうと思うからこそ。
私は今こうして彼女のそばに跪いているのだろうと――。
そう思ったのだった。
「そう――。それは……まぁ分かったわ。けれどとりあえずこのままここに居続けると今度こそ本当に面倒事になりそうだし。出来ればどこかに移動したいのだけれど――」
「……ん。とりあえず……この傷の手当をしてもらえるとこに……お願い」
「傷? って! そうしてた! 貴方大怪我してたじゃないですか!」
彼女の雰囲気に吞まれていたかこそ気づかなかったけれど。
琥珀は体中に怪我を負っていたのだった。
だからこそ――。
私はそんな彼女を抱きしめると。
幻想郷における医者の元へと運ぶ為に空を飛ぶ。
そんな慌ただしい飛行が。私が琥珀を抱いて飛んだ最初の出来事であった。
文編が終了。
次からは月の姫編からの第二章完結までいきます。