吸血鬼という種族は限りなく不死に近い。
もちろん完全な不死などこの世に存在しえないが、それでもなお吸血鬼は――いえ、この私は不死に限りなく近い吸血鬼だと言える。
しかし、そんな私が――いえ、私に限らず不死性に近いモノを持つ者たちにとって致命傷となりうるものがある。
それこそが――倦怠。
日々をまさに惰性に、怠惰に過ごすこと。
私達が生きる時間はあまりに長い――。
だからこそ――そう、だからこそ私達はこの世界に生きる意味が無ければならないのだ。
それこそまさに人間以上に。
私達は概念の存在であるからこそ。私は吸血鬼であるからこそ。
吸血鬼という概念が具現化した存在である。
けれどそれは、人々の想像の産物という意味では無く――。
私はレミリア。レミリア・スカーレットという唯一無為の存在ではある。
しかし、それでもその本質は概念であるからこそ。
だからこそ、その概念がこの世界にあり続ける為には意味が無ければならない。
それは人間が吸血鬼という概念を想像するよりもなお――重要なこと。
私が、私であるという意味。私が此処に居るという意味。私が――この世界に生きる意味。
それこそが必要なのである。
だからこそ退屈は私を殺す。
退屈な世界に生きる意味がどこにある。面白いとおもえない世界になんの意味がある。
愉悦の存在しえない世界の何処に生きる価値があるというのか。
しかして、世界はつつがなく。
それはこの幻想郷に来る前は言わずもがな。
人間は幻想を忘れ、ただその日を生きる為だけに生きる存在に過ぎなかった。
そしてそんな人間の影響を受け、嘗ては欧州を支配していた吸血鬼一族もまた怠惰の元に衰退し。
だからこそ、価値を求めて、幻想を求めて、まだ見ぬ楽しさを求めて、世界にただ唯一幻想が蔓延るこの幻想郷に移ってきたと言うのに。
しかし、その幻想郷すらも怠惰な日常で溢れていたのだ。
妖怪は居る。人々は妖怪を確かに覚えている。幻想は確かに世界の端々まで溢れている。
だが――。だというのにだ、この世界もまたどうしようもないほどに退屈な世界だったのだ。
無為に、惰性に、無意味に――時が流れゆく世界。
妖怪は幻想を忘れただただ無価値に、その日を生きるだけの愚物に成り下がっていたのである。
なんだそれはという諦めと。
これほどの幻想に溢れているにもかかわらず、平凡な日常を良しとする妖怪たちに対する怒りから。
私の名の元にこの世界に対する戦争を始めたのだった。
戦争。そう――それはまさに戦争であった。
戦う力を失った妖怪に、未だに幻想と未知に溢れた世界に居ると言うのに、ただ目の前に日常に縋り付き惰性を貪る存在に生きる価値などありはしないという鉄槌を下すために。
そして――私こそがこの世界を支配してやる。
私ならばこの世界を十全に使ってやるという思いからの戦争――。
そう――世界が怠惰に満ちていると言うのなら、私こそが世界に新たな娯楽を造ってやるという思いの元に――。
けれど、結果とすれば――その戦いは私の敗北に終わった。
この世界を造ったという妖怪の賢者によってである。
八雲紫。それがこの世界の創始者の一人である妖怪。
幻想を忘れず、幻想を纏う為にこの世界を造りあげたその妖怪は流石に強かった。
いかな吸血鬼と言えども、たかだか五百年しか生きていない私に――そして外の世界で幻想を摩耗させた私に勝ち目など無かった。
故にこの戦争は私達の敗北に終わったのだけれど。
しかし、その戦い――後に吸血鬼異変と呼ばれるようになった行動は決して間違いではなかった。
妖怪は妖怪のあるべき姿を思い出し、そして人間もまた妖怪の恐ろしさを再確認したからこそ。
そしてなによりも、妖怪の賢者との戦いは心が躍り、乾ききった心に潤いをもたらしたのだから。
そして、その異変から数年後。
私達は再度異変を起こした。
今代博麗の巫女である博麗霊夢との戦いの為に。
嘗ての吸血鬼異変の後に造られた決闘法は実に面白いものであったから。
そしてそれはれは紅霧異変と呼ばれ――嘗ての吸血鬼異変すらも軽く凌駕するほどの面白さであった。
新たな決闘法であるスペルカードルールは十二分に楽しいものであったし。
そしてなによりも今代の巫女である博麗霊夢は、こちらの予測すらも超えるほどの存在であったから。
嘗てに出会ったどのような人間をも凌駕する技量。そして何よりもそのあり方が。
博麗の巫女は博麗の巫女にしかなりえないと思っていたけれど。
しかし霊夢は確かに霊夢であったのである。
博麗の巫女すらも受け入れる――いえ、博麗の巫女ですら縛ることが出来ない存在が霊夢であった。
人間であるにも関わらず妖怪すらも凌駕するほどの奇跡。
そんな人間との戦いが楽しくないわけが無く。そしてその後の語らいもまた素晴らしいものであった。
それは此処数百年の中で一番の出来事であったことはもはや疑うことの無いほどのことであるけれど。
まだまだ満たされないからこそ。
だからこそ私達は幾度となく行動を起こした。
怠惰を無くす為に。退屈こそを殺すために。
時には月面に向かったことも、あった気がする。
あれはあれで暇は瞑れたけれど。
しかし。しかしである。
それでもなお――足りないのだ。
まだまだこの程度では足りないのだ。
もっと――。もっとだ。
この生まれてから五百年間感じ続けていた怠惰な心を満たすには――。
さらなる娯楽を。この停滞する世界を吹き飛ばすほどの台風とすら呼べるほどの出来事を私は望んでいるのだから。
そんな風に考えながらに、何時ものように日が昇る前に眠りについた私を待っていたモノは――。
待っていたモノこそが。
まさに――そうまさに!
まさに。まさにまさにまさに――。
私が待ち望んでいたモノ――そのモノである。
遂に。
遂に。遂に遂に遂に。
遂に遂に遂に遂に遂に――。
遂に――この空洞を埋める存在に。
この私が――少女のように胸を躍らす存在に。
そんな存在に、私は確かに出会うのだ。
出会うという夢を見たのだ。
そう――。
私はその日見たものは夢。
いや、正確に言うならば運命を視たのだ。
この世ざらなる美貌を持つ少女と満月の下戯れる姿はノイズ混じりの光景を。
退屈で退廃とした世界に訪れた閃光を。
どうしようもないまでに心が躍る世界を。
心が躍り、鼓動し、乾いた心ごと癒す存在に。
いえ――アレはそんなレベルのモノではなく。
まさに、この世界すらも――いえ、この『運命を操る』私すらも巻き込むほどの暴風に。
私は確かに出会うのだ。出会うという運命を私は確かに視たのだから。
かつての博霊霊夢との戯れすら凌駕するほどの甘美さをともったその光景は、どうしようもないほどに私を惹きつけた。
ああ……これが運命だと言うのならどうか今すぐにでも訪れてくれ。
あぁ――違う。
違うだろう。
私は何を間抜けことを言っている――。
何を馬鹿なことを。
そんな呑気な事がどうして許される。そんな怠惰が何故許される。
運命をただ待つなど、そんなこの悠長なことをしている暇などどこにある――。
これほどの世界を、これほどまでの光景を、どうして座して待つことなどできできるというのか。
その為の舞台が必要だと言うのな用意しよう。
この私こそが、舞台の役者となって踊ると言うのだから。
さぁ――だから私のもとに姿を現してくれ幻想の少女よ。
「おはようございますお嬢様。お食事の用意が整いましのたのでお呼びに参りました」
「………………ああ……おはよう咲夜」
「…………どうかなさいましたかお嬢様?」
「……ん? 何故そう思うんだ?」
「いえ……お嬢様が何時になく楽しそうに笑われているので……珍しく思いまして」
いつもの様に食事の準備が出来たので呼びに来た咲夜は私を見るになり訝しげにそう聞いてきた。
笑っている――?
誰が――? 私が――?
ああ……本当だ。
確かに私は笑っている。
愉悦に笑みを浮かべることを止められないほどに心が高揚しているのが分かる。
「楽しい……そう楽しいんだよ咲夜。きっとこれからどうしようもないほどに楽しいことが起きるに違いないんだ」
心が思うがままに私は言葉を口にする。
そう楽しいことだ。
この退屈した日々が一新してしまうほどに楽しいことが起きるに違いない。
それは予測ではなく確信。
だからこそ心の高ぶりに抑えられないのだ。
「…………そうですか。ではその為の舞台を用意しなければなりませんね」
「ああ……その通りだ。その通りだよ咲夜。実にお前は私のことを良く分かってくれる」
全てを語らずとも私の想いを察してくれるからこその私専属のメイドだ。
この気分に一切の水を差さずあまつさえ高めてくれる。
ああ、今ならいくらでも褒めてやろう。
「ありがとうございますお嬢様。それではどのような舞台になさいましょうか」
「決まっているだろう――――。紅い月の下で踊る
私は最高の笑みと共にそう答えてやると咲夜もまた微笑んで頷いてくれた。
ああ……待っていろ運命の乙女よ。
今招待状を送ってやろう。
お前と私で踊る最高の舞台の招待状だ。
「では咲夜。彼女を我が屋敷へと招待してきてくれ」
そう言って咲夜を送り出したのが今から数時間前だ。
見つけ出すまでにもうしばらくは時間がかかるかとも思ったのだが、本当に運命のように向こうから彼女の情報が転がり込んできた。
その日、ちょうど咲夜が人里へと出向いだ先で話題に上がるのたった一人の少女の噂。
それまで一度として人里で見た者の居ないその少女は。
しかし一度でも見れば決して忘れない印象を人に植え付けるという――。
そんな少女の噂は――。
――博麗神社に居候している。
――髪は白、肌も白、その醸し出す雰囲気もまた――白。
――純白に染まる、穢れを知らないかのような――美少女。
あぁ――理解する。たった一度でもその言葉をこの耳に入ったならば。
その姿は間違いなくあの彼女だと。
そう彼女だ。
夢に見た運命に視た少女だと。
ふふ。本当に素晴らしい。これから探し出そうと思っていたのにまさか向こうから教えてくれるなど。
そう彼女は博霊神社に居るのか。
ならば話が早い。早速咲夜に迎えへとやらせよう。
ああ早く。早く来い。幻想郷に迷い込んだ少女よ。
私は此処だ。燦々と輝く満月の下でレミリア・スカーレットが紅の屋敷で待っている。
そして――待つことのいかに長いことか。
普段であらば寝ている時間すらも――ただ起きて待ち続ける。
我ら妖怪からすれば一日の流れなど、まさに山頂から流れゆく激流よりもなお早いものだというのに――。
まるで恋する少女かと自分で自分を笑いたくなるけれど――それでも私は、ただただ待ち続けた――。
そうして気が付けば、いつの間にか日が暮れ――――――――そうして、空に紅い月が昇りはじめようとした頃に――――。
「お嬢様。彼女をお招きいたしました」
来た。遂に来た。私が指定した時間よりも遥かに早い時間に。
咲夜がそのような間違いなど犯すはずが無いからこそ――。
あぁ――だからこそ面白い。
始まりからして私の想い通りにならないという――その事態がどうしようも面白いからこそ――。
そして――そんな事態を招いている存在こそが――。
彼女だ。咲夜の隣に佇む白髪の少女が一人。
吸血鬼の館にたった一人で招かれたと言うに――――彼女は一切の怯えを見せることも無く、ただその紅い瞳で私を見つめ返してきた――。
ああ――。
分かる。分かるよ――。何故これほどまでに恋い焦がれたのか。
異変を再び起こすことすら躊躇わないほどに気分が高揚している理由が。
彼女が私の前に来て分かる。
白。そう白だ。純白の存在。この世のあらゆる穢れを受けず清純無垢な人間。
この世に生れ落ちてすぐのような幼子のごとき純粋。
まさに奇跡のようなあり方。
神でも人間から外れた存在でも無く人間としてありながらなお一切の穢れを内包しないなどこの世の摂理すら容易く捻じ曲げた存在だ。
きっとそれは生まれながらの血が関係しているのだろう。
だが分かる。分かるよ。
およそ生まれながらの宿命だけでは決して此処までの存在にはなりえないだろうことを。
彼女の目を見れば分かる。
彼女はそれ相応の、人として生きるならば必ず受けるであろう穢れを…………違うな……そんなものなど計り知れないほどの穢れを受けてなおそれを内包しながらも純白であり続けている。
ああ――知りたい。何が彼女をそこまでしたのかを。
これまでの道程において一体何があったのかを。
お前は何を考える。何を経験しそして何を想いこの地へとやってきた。
「ようこそ私の屋敷へ。此度は良く私の招待を受けてくれた。それに対して感謝するとともに心からの歓迎をしよう」
咲夜が私の後ろに立つの待って一礼を持って彼女へと言葉をかける。
「――ん。別に気にしなくて良い。私も……貴方に興味があったから」
その声は鈴のように世界に響き渡る。
はは――。分かっているのか?
今お前の前に立つのは西洋において妖の王にまで上り詰めた吸血鬼。
その一族を前にしているというのに――それでもその泰然自若とした態度を、演技でも何でもなく貫き通すというのか――。
そんな彼女を見ていると――。
気分の高まりを抑えられず妖気が体から漏れ出すのが分かる。
常人ならばそれだけで気を失うであろう。
だが彼女はそんなものに一切の恐怖すら見せず媚びずこちらへと言葉をなげかけてくる。
素晴らしい。本当に素晴らしいよ。
私には分かるよ。
その態度の先にあるものは――――。
私はお前と対等だと――。そう言いたいのだろう少女よ。
「くく――。興味――興味ね。私もお前に大変興味があるよ――。だからこそ――互いにじっくりと話し合いたいと言いたいところだが――まずは互いに自己紹介でもするとしようか。私の名はレミリア。レミリア・スカーレット。この紅魔館の主であり、西洋にて生まれた妖である吸血鬼一族に連なる者よ」
「――私は琥珀。八雲琥珀」
実に淡々とした言葉による名乗り。
自分の名前しか名乗らないそれに――。
けれど私はその意味を考えて呟いた。
「八雲……ね……」
八雲。八雲紫を筆頭としたこの幻想郷において知らぬ者は居ないであろう名。
それを目の前の少女は名乗ってきた。
これは偶然だろうか。
はは――。そんな馬鹿なことがあるか。
そもそもこの少女が、部屋に入ってきたと同時に目に入るそれは――実に引裂きたくなる自身の感情を押さえつけてきたのだから。
そんな――八雲紫の匂いをばら撒き続けるような――白い少女をただ穢すだけのような下品な首輪など。
「……ん。私は八雲。八雲琥珀。紫様から頂いた――私の名前。私だけの――名前」
けれどそんな私の感情など気にもしないかのように、琥珀がその名を呟いた時に見せた――その表情に映るものは。
それまで一切の感情を見せなかった少女が見せたたった一つの明確な感情を映し出していたからこそ――。
そうか……。
やはり既に八雲紫は既にこの少女に唾をつけたと言うことか。
まあこの少女が外の世界よりやってきたという時点で八雲紫がこの少女と関わっていたことは十分に予測できたことだ。
そしてあの八雲紫がこの少女を見て放っておくわけがないであろう。
きっとあの女も今私が描いているような笑みを浮かべながらに、この少女に手を伸ばしたのだろう。
だが……八雲……か。
この幻想郷においてその名は余りに重い。
その名をもつ少女に手を出すというこは後ろに居るであろう八雲紫にすら喧嘩を売る行為であろう。
それは確かに危険極まりないことであることを――――私は確かにこの身で一度受けているけれど。
だが――。そうだけれど――。
目の前の。
この少女を前にして何もせぬまま帰すなどどうして出来よう。
極上の料理を前に涎を垂らすだけなど何故レミリア・スカーレットたる私が出来よう。
「そう……か。まあその辺りのことについてもおいおい聞いてみたいのだが、出来ればこれから一緒に食事などどうだ? お前の為に極上の料理を用意したんだが」
「……ん。なら御馳走になる」
「咲夜。料理をこちらへ運んでくれるかしら?」
「畏まりましたお嬢様」
咲夜にそう告げると次の瞬間には私と彼女を挟んでいたテーブルに色とりどりの料理が並んでいる。
そして咲夜は琥珀を席へと案内している。
時間操作による一瞬の所業。
この幻想郷においてなお、彼女と同等のことをできる存在は居ないと断言できるその能力。
だからこそ私は、琥珀へと問いをかける。
そんな咲夜に琥珀は一体どんな反応を示すのかと言う――まさにほんの少しの好奇心からのものであったのだけれど――。
「はは。これは咲夜の能力だが……驚いたか?」
そんな問いに、けれど琥珀が目を閉じながらに――――漏れ出るように小さく呟いたそれは――まさに驚愕すべきものであった。
「驚き……えぇ……驚い――。あぁ……いえ――今のはやはり空間の――、あぁ……違う。そう――。空間を操作したのではなく、時間を止めていた……かな」
席に座りながら僅かに首を捻りながらに、そう誰に聞かせるでも無く呟くように漏れ出たその言葉に――。
それが耳に届いた咲夜は――見開いて驚きの表情をしている。
勿論私も驚いている。
琥珀の言葉はピタリ咲夜の能力を言い当てている。
「…………どうして咲夜の能力が分かったのかしら? 今の一瞬で見切ったと言うの?」
「……違う。さっき――文と弾幕ごっとをしていた時にある程度予測を付いていて……今の動きで確信した……かな」
そう何でもないことのように言ってくるがたった一度の戦闘で見破ったというのか。
咲夜の能力は到底一度見た程度で理解できるものではないはず。
「……出来ればどういった理由で気が付いたのかお聞きしてもよろしいですか?」
そう咲夜が口を出す。
本来主人である私と会話をしている客に咲夜が横から口を出すなど不作法な真似はしないのだけれど今回は――まぁ許そう。
自分から能力を口にしたのではなく、その動きをたった一度見ただけで把握ししてみせた琥珀の理由を私も気になるというのは事実だからな。
「……ん。口で説明するのは難しい……けど。咲夜の動きは本来の流れとしておかしかったから。本来なら……上から下にしか流れないはずのそれを……下から上に流れ……いえ、その場で止め続けていたみたいな……感じがしたから」
そんな漠然とした言葉に――。
けれど彼女の言いたいことは確かに伝わってきたから。
「そう……それで時間操作だと当りを付けたというわけか?」
「……ん。始めは空間操作だと思ったけれど――。でも今の動きで分かった。空間を捻じ曲げているのではなく――咲夜は時間を操作していると――。あぁ……でも、咲夜は空間の操作もやっぱり出来る……よね?」
「…………えぇそうよ」
咲夜はその琥珀の説明を聞いてもどこか呆然として答える。
その言葉は――文字通りに咲夜の能力を全て理解した言葉であるからこそ。
まさに驚愕に値するそれは――。
その洞察力に推察力。
淡々と説明しているがこの子は本当に外から来た人間だというのか。
何故たったそれだけのことでそこまで考えが思いつく。
時間操作などこの幻想郷においてもなお異端じみた能力だ。
それを僅かそれだけの情報で辿り着くそれは。
この幻想郷においてなお、それは異端の先に位置する所業であるかこそ。
あぁ――――本当に面白い。
その紅い瞳には何が映っているというのだろうか。
何がお前をそうしている。お前は何で構成されている。
そうだ。もっと会話をしよう琥珀。私はお前のことがもっともっと知りたいのだ。
「ふふ。本当にお前は面白い奴だな。このまま幾らでも話続けていたいが折角の料理が冷めてしまう。まずはこれを食べながら話の続きをしようではないか」
「――ん。いただきます」
そう言うと、琥珀は迷うことなく目の前に出された食事に手を付けていく。
はは――。本当に――此処は吸血鬼の館だと言うのに。
けれどそれを全く気にもしないかのように食事を口に運ぶその姿は――。
ああ――。本当に楽しい夜になりそうだ。
カリスマ全振りれみりゃー。
たぶんブレイクしない。