上杉の章 新たな兵衛   作:北極星

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第百五十五話 消えた巨頭

 龍兵衛が軍からはぐれてしまったのは本当に大失態だった。義元の死を見届けた後、別働隊のことも想定していた官兵衛の案で救援に向かおうとしたが、今川軍は簡単に挟撃を突破してしまった。慌てて龍兵衛は追撃しようと指示を出したが、途中で自分が軍からはぐれてしまったことに気付いた。理由は深追いしようとした最上の部隊を見つけ、止まるように自ら向かおうとしたら道が分からなくなってしまったのだ。

 

「やらかしたなぁ……」

 

 大体、帰り道は分かるが、間違えて今川軍と鉢合わせになった時のことを考えるとあまり動きたくない。

最上のことは諦めようと龍兵衛は溜め息を吐き、軍に合流する為にそっと移動することにした。

 周りは本当に何もない。これを宗二のような茶人はわびさびと言うのだろうかと分かっていないことを適当に考えながら合流する為に歩く。

 

 それは本当に偶然だった。龍兵衛が大丈夫と分かって歩いていた方向に何故か知らない人がいたのだ。容姿、服装からかなり位の高い将だと分かる。上杉軍にはいない。かといって上杉に従軍している大名の者でもない。今川軍の者だと分かった時、相手は龍兵衛に気付いていなかった。だからこそ、背後から不意打ちを食らわせることも出来た。しかし、龍兵衛は身体よりも口が先に動いた。

 

「あなたが太原雪斎殿ですか?」

 

 自然に自分の口からこぼれた台詞に慌てて龍兵衛は口を噤む。やはりばれてしまい、相手は龍兵衛の方を向いてきた。

 

「ええ、そうです」

 

 相手は簡単に頷くと軽く微笑みかけてきた。嘘かもしれないと思ったが、龍兵衛は何となく合っていると思った。正直なところ初めて雪斎と対面し、少し拍子抜けした。義元の教育係として長年、今川の中枢に居座り続けた大物が若々しい風貌をそのままにしている。

 

「あなたは少し女子に対して失礼なことを思うようですね」

 

 少し雪斎の表情が険しくなったのを見て、龍兵衛は驚いた。景勝ならまだしも初めて会った人に思っていることを的中されるのは初めてである。だが、素直に認める程、龍兵衛の性根は真っ直ぐではない。

 

「気のせいでは?」

「……上杉の者は気骨のある者ばかりと聞いていたのですが、違うようですね」

「情報は薬にもなれば毒にもなる。自分も今川に仕える軍師殿はかなりの老年と聞いていたのですが」

「やはり失礼な方ですね」

 

 雪斎の口調から不機嫌さは全く見られない。何故だか楽しそうにしている。龍兵衛はそう感じ、違和感を抱いた。どうして自分は雪斎の思いを確証が無くても分かるのだろうか。思い返してみると先程、雪斎もこちらの思っていたことを悟ったようだった。何故、そのようなことが起きるのだろうかと思っていると龍兵衛の頭の中を何かがよぎった。

 

「どうかしました?」

「義元様が無事であることを願う……」

「……」

 

 雪斎は驚いた表情で龍兵衛を見てくる。何となく思っているのではないかということを龍兵衛は口に出してしまった。

 

「いえ、何となくそう思っただけです」

 

 慌てて言い繕うが、雪斎の表情はかなり真剣なものになっている。じっと龍兵衛を方を向き、何を考えているのか分からない。

 

「あなたからは私と同じ気を感じます」

「はい?」

 

 突破のことで間の抜けた声を発した為、雪斎はおかしそうに笑みを浮かべる。今まで浮かべていた怜悧な裏を隠したものではなく、屈託のないものだった。ひとしきり笑い終えると雪斎はむくれる龍兵衛に詫びを入れて改めて向き合う。

 

「何か術をかけられたのでは?」

 

 龍兵衛は思わず唸ってしまった。取り繕うにも雪斎はそれよりも早く問い詰めてくる。

 

「そうなのですね?」

「あなたはどうなのですか?」

「質問を質問で返すのは良くないですね」

「人は先に自分のことを話さないといけませんからね」

「残念ですが、私はあなたが思う程、良い人ではありませんから」

 

 龍兵衛は答えずに雪斎を見る。雪斎は既に構えを解いていて、攻めてくるような雰囲気はまるで無い。しかし、相手が今川の屋台骨である人物である以上、油断は出来ないと龍兵衛は刀に手を置き続ける。

 

「互いにこのような所で討ち死したとなれば恥でしょう?」

「有益なことの為なら敵の恥も関係無いのでは?」

「それは私があなたに勝った時です。負けた時のことを考えれば博打をすべきではありません」

 

 龍兵衛は鼻から息を小さく吐くと刀からゆっくり手を離す。それを見て笑顔で頷いた雪斎は少し距離を縮めてきた。

 

「話が途中でしたね……」

 

 龍兵衛を促すような口調で雪斎は答えを求めてくる。しかし、龍兵衛もそう易々と自らの身にかかった突然変異のような出来事について話すような馬鹿ではない。 

 

「そうですね……確か、少女のような容姿でありながら私よりも遥かに大人のような雰囲気を持っていました」

 

 簡単に身の上話の前置きを話し始めた雪斎に驚き、龍兵衛は慌てて口を挟もうとする。

 

「いや、自分は女性であったが……」

「そうでしたか……他にもそのような方が……」

 

 咄嗟のことであったとはいえ龍兵衛は失態に気付き、口を噤む。何とか言い逃れ出来ないか頭で模索したが、答えが見つからない。何故、あのことを言おうとしたのだろうか。龍兵衛は頭の中で考えようにも理解出来ない。

 雪斎の方は同一人物の仕業であると思っていたのか驚いたように声を漏らしている。龍兵衛は隙だらけの雪斎に斬りかかろうと思ったが、金縛りにかかったように動かない身体のせいで出来ない。おかしいと思いながらも龍兵衛は雪斎の言葉を待つしか出来ない。雪斎の方も龍兵衛の身体の異変に気付いたのか首を傾げている。

 

「何でもありません……」

「そうは見えませんが」

「近付くな!」

 

 龍兵衛の鋭い声は雪斎の足を止めたが、隙だらけであることをはっきりとさせてしまった。辛うじて動く手で刀を取ろうとする。しかし、雪斎がその必要は無いと頭を振った。

 

「私はただあなたと話をしたいだけです」

「自分は早く戻りたいです」

 

 どうしても雪斎は話を聞きたいように感じたが、龍兵衛もおいそれと話すようなことなどしない。平行線を貫こうと雪斎の誘いをはぐらかす。金縛りから若干解放された為か龍兵衛の身体中に汗が流れ出した。

 

「私は以前、あなたに術をかけた人と同じような術を持つ方に一度お会いしたことがありました」

 

 雪斎は龍兵衛の様子を見て仕方ないと判断したのか自分の話から始めた。

 

「あなたが術をかけられたのならば会うのは当然では?」

「ああ。言い方が悪かったですね……夢の中でお会いしたのですよ」

 

 分からないと龍兵衛は首を捻るが、大体のことを理解出来た。おそらく術を使える者が人の夢の中に入り込み、何か言伝のようなことを行うものだろう。自分には起きたことが無い為、どのようなものなのか知らないが、龍兵衛は信じることにした。

 

「どのようなことを?」

「……信じるのですか?」

「人が信じないことを本当だと思い、考えるのも必要なことでは?」

 

 雪斎は納得したように笑うと口を開く。

 

「『貴方に不幸と面白いことが起こる』と」

「分かりませんねぇ」

「でしょう?」

「どのような方だったのですか?」

 

 何故、会話が弾んでいるのだろうと思いながらも龍兵衛は聞かずにはいられなかった。自分に術をかけた人物に興味を持った雪斎と同じように龍兵衛も好奇心が動いた。雪斎が何かしらの術にかかっているのは間違いないが、同一人物でないというのは非常に気になるところなのだ。

 

「髪の色が中心で分かれていて、容姿も幼げであったのですが、私などよりも遥かに年を取っているようでしたね……」

 

 今の台詞から龍兵衛は雪斎の年がやはり自分の思った通りかなりいっているのだと確信したが、言わないことにした。

 

「ふふっ、あなたの思った通りです。私はかなり年ですよ」

「……どうして分かったのです?」

「分かりません」

 

 雪斎の笑みに龍兵衛は背筋を凍らせた。先程とは違い、目が全く笑っていない。気に食わなかったのだろうが、素直に謝るという選択肢などない。

 

「義元様はどうなったのですか?」

 

 雪斎が怒るかと思ったが、すぐに話題を切り替えてきた。密かに龍兵衛は安堵した。

 

「我々にとっては残念なことに逃げられました」

「そう、ですか……」

 

 龍兵衛は首を左右に振ってみせると雪斎の表情が曇った。

 

「やはり、ですか……」

「何がでしょう?」

 

 義元の最期を龍兵衛は近くではないが、見届けている。そのことを知れば冷静な雪斎でも龍兵衛に怒りを向けるだろう。しかし、雪斎は静かに顔を上げると静かに尋ねてきた。

 

「承坊は討たれたのですね?」 

「承坊……まさか……!?」

 

 悟られたことよりも龍兵衛は雪斎の口から義元の幼名が出てきたことに驚きを隠せなかった。雪斎を見ると自らの失態よりも何故、驚いているのかという目で見てきている。 

 

「年を取っていると言った際に既に気付いているのかと思いましたが」

「嘘だと思いました」

「疑り深いですね……当然ですか」

「では、あなたはやはり……いや、止めましょう」

「賢明です」

 

 雪斎の雰囲気からただならぬものを感じた龍兵衛の判断は正しかった。密かに安堵すると龍兵衛は素直に義元の最期について話した。雪斎はその話に口を挟むこともなく、運命と捉えているように黙って表情を変えずに聞いている。

 

「何かお聞きしたいことは?」

「いえ、結構です」

 

 感情の無い、冷たい横顔が龍兵衛の心に深く刻み込まれた。無性に龍兵衛は腹立たしくなった。雪斎と義元どうして長年共にいた同士のような存在の筈である。義元の死に最初に動揺こそすれ、その後は冷淡とも捉えられる程に簡単に受け入れている。

 

「何故……」

「私がかけて頂いた術によって承坊よりも後に死ぬことは知っておりました。ですから今生の別れが少し早くなっただけなのです」

「しかし、寂しいとは思っている」

「思っていても運命は変わらないでしょう? それに、夢の中とはいえ教えて頂いたのですから」

「それでも少しは感情に出すべきでは?」

「軍師が敵に真の感情を表し、利益を得ることはありません」

「それでは本当は悲しいと思っているのですね?」

 

 言動で示さずに雪斎はただ微笑んだ。龍兵衛は唖然としてその表情を見る。目を見開いている龍兵衛が端から見れば雪斎に見惚れているように見えたかもしれない。ただ怒りを通り越して呆れていたのである。

 何故、心の奥底で思っている筈の感情を言い当てられ、平然としていられるのか。もしかすると心から寂しくないと思い、義元の死を簡単に受け入れているのだろうか。たとえそうだとしても雪斎の思いを龍兵衛は理解出来ない。本当に抱いている感情は何なのだろう。相変わらず雪斎は感情の無い笑みを浮かべている。

 いっそのこと動くようになった身体で怒りにまかせて一発殴ってやろうかと龍兵衛は拳に静かに、強く力を込める。木々を利用した冬の寒い風の音が周辺に響き渡った。

 

「雪斎殿ー! いずこにおられるー!?」

 

 林の奥から聞こえる声に龍兵衛は腰を伸ばし、辺りを見回す。足音が聞こえない為、近くはない。

 

「残念ながらここまでのようですね」

 

 心底そう思っているのか名残惜しそうに龍兵衛を見ると雪斎は頭を下げ、ゆっくりと身体を反転させる。どこまでも悠然としている雪斎に羨望の思いが募った。そこまで人のことに冷淡になれるならばと思ってしまう。

 抱いた感情が身体を突き動かし、雪斎に近付くと龍兵衛は肩を強く掴む。驚く雪斎をよそに耳元を口を近付け、小声で一言囁くとすぐに距離を取る。

 

「それが自分に望ましい術をかけた人です」

 

 耳元で囁いていた時まで見せていた驚愕の表情は既に雪斎から消え、真剣なものへと変わっていた。互いに何も言わずにしばらく目と目を見合う。風が二人の髪を揺らし、木々に残った枯れ葉を飛ばす。

 

「ありがとうございます」

 

 何かを成そうという気概を全て無くし、価値の無い言葉が龍兵衛の心を満たした。そして、自らが抱いている感情に素直に向き合えた。雪斎が視界から消えても立ち尽くしたまま動かない。瞬きもせず、呆然と雪斎の去って行った方向を眺めることしか出来ない。

 

「おーい、河田よー! すまぬ、はぐれてしもうて。案内を頼む!」

 

 探していた義光の声で我に返った龍兵衛は急いで駆け出す。一度だけ振り返ったが、風だけが存在していた。

 

 

 

「謙信様。今川義元は討ち死。太原雪斎は行方知れずと報告が」

「そうか。これで今川はしばらく混乱するだろう」

 

 謙信の表情は涼しいままだった。歓声が陣幕まで響いている。外を見てみたいと謙信は立ち上がった。陣中では「今川義元、前田慶次が討ち取った!」と慶次が義元の首が入っているのであろう布を振り回している。その度に歓声が沸き立ち、徐々に下がっていた士気が盛り上がっていると伝わってくる。

 

「謙信様。このことは北条にも直に伝わるでしょう。今が内に……」

「……越後に帰るか」

「えっ?」

 

 驚いた兼続が顔を上げ、謙信の表情を伺うと本気であると悟った。

 

「し、しかし、小田原城の蓮池門から既に二の丸まで攻め入っております! 里見殿の水軍による小田原城南からの放火や黒田殿の調略によって落城まで後僅かになっております!」

「このままでは春を迎える。兵達は田植えがあろう」

「それについては龍兵衛が越後中を回って頭を下げに回ったではありませぬか」

「いや。それはあくまでも最悪でのこと。私は最悪の形で勝とうとは思いたくない。それに、関東にかかりきりだった為、他の動きも気になる」

 

 兼続は謙信の最後の言葉が本音なのだと悟った。年をまたいでまで関東に遠征を続けた上杉の疲労を狙って一向一揆や武田が越後を狙うとも限らない。 

 謙信が憂いているのは邁進に付いて行けないかもしれない民達のこと。あくまでも極力だが、民の生活を殺してまで謙信は何かを取ろうとしない。兼続もそれは承知である。

 しかし、利益を優先するならばこのまま止まっていた方が良い。北条を倒せば広大な関東の平野を得られる。龍兵衛曰わく、変えられるだけ変えれば関東は日の本随一の農産地になると言っていた。そして、商いにおいても同様だと。締めくくりに今まで苦労して得た東北よりも関東を得れば遥かに多くの利益を得られると言って。兼続は龍兵衛の言葉を借りて説得しようと試みたが、謙信は首を横に振る。

 

「それは龍兵衛から聞いた。此度は此度。今川も主を失い、この冬に強行した兵は精鋭の筈だ。立て直しには時間を要するだろう。それに、我々にも我々のやることがある」

 

 謙信の言葉が意味するところを兼続もよく分かっている。上杉軍は越冬の為、物資が不足し、兵も消耗している。しかし、土地を得なければ戦を行った意味が無い。取った関東の地を手放すことになるのが必至である以上、不満の声が上がるかもしれない。もっとも、兼続は北条との戦を続け、背後を固めた上で早く上洛をしたいというのが本音である。その為に多少の無理をしてでも勝ちたい。謙信の首を縦にさせられればの話だが。

 

「小田原城という巨大な兵器がある北条を倒すのは戦続きの我らには無理だということが分かっただけでも良い」

「武田や一向一揆との戦に目を向けると?」

「仮に北条が我らと同じ程の時を得て軍を整えたとしても我らと直接刀を交えることはない。援軍の要請が来ても伊達らに任せるようお前達は強く言うだろう?」

 

 今の北条なら残った関東の者達も十分に渡り合えるだろう。兼続は小さくはっきりと頷く。

 

「ならば、撤退しても良いだろう。皆には迷惑をかけるがな」

 

 佐竹や里見にとって北条へ引導を渡す好機をここまで来てふいにされるのは面白くないだろう。兼続もそのことを憂いていたが、謙信が決めた以上、従わなければならない。謙信の決意が固いようだと思い、兼続も不満を押さえなければと息を吐く。

 

「承知致しました。ならば撤退の時は?」

「ひとまず鎌倉にて関東管領の就任の儀を正式に行わなければなるまい。終わり次第、直ちに撤退だ」

「御意。ならば今宵にでも皆に伝えるべきかと」

「うむ……」

「如何なさいましたか?」

 

 謙信は一度何でもないと言いながらもやはりと口を開く。

 

「北条は景勝を殺めようとした。そして、我らも北条一族の北条氏邦を殺めた。これで上杉と北条は完全に相容れない者同士となったな」

「我々と武田もまた、と?」

 

 陣の奥へ向かおうとしていた謙信の足が止まったのを見て、兼続は余計なことを言ってしまったかと口を噤む。

 

「そうだな。だが……」

「報告!」

 

 謙信の言葉を遮断する兵の大声が背後から聞こえてきた。兼続は振り返ると顔を真っ青にした兵が跪いている。

 

「如何した?」

「今川義元が首、何処かに消えた由!」

 

 兵に問いた兼続も未だに小田原城を眺めている謙信も兵の言葉に息を呑んだ。兵が言うには慶次は首を見えやすい所に置いておいた。その後、一瞬の隙を突かれて首を盗られたようだ。

 

「何故に!? きちんと監視していたのか!?」

「はっ! 決して目を離すようことは……」

「現に盗まれているではないか!」

「よい、兼続。義元の首があろうと無かろうと死んだことに変わりはない。北条にも報せは届いているだろう」

 

 謙信は兵に義元の首を徹底的に探すように命じると兼続に近くへ来るように手招きする。

 

「先程も言ったが、今川が義元のおかげで織田に降ってもあれほどの大国を治めることが出来ていた。しかし、子供の方はまだまだと聞いている。当分今川も北条を救えぬ」

「ならば、一層北条を叩く好機では?」

「いや。これで北条は小田原城から出ることはないだろう。如何に北条の士気が落ちようと小田原城を落とすことは難しい」

 

 撤退する理由を前々から探していたのではないかと兼続は思った。もしかすると謙信の中で小田原城を落とすことは出来ないと確定されていたのかもしれない。兼続は何か反論を見つけたかったが、民という言葉を使ってきた謙信には出来ない。兼続も民のことを第一にしているからだ。

 

「いつか皆が平等になることはないのであろうか……」

 

 意味も無く呟いた謙信の言葉が兼続の心に深く止まった。

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