上杉の章 新たな兵衛   作:北極星

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第二十四話改 共感

 三日前。

 謙信に集められた軍師達が揃っていた。

 呼ばれた理由は伊達の援軍がこちらに進発している為にどう動くべきなのかというものだった。

 皆、予測していた。いつ来るかは不明だったが、対応策はある。

 問題は最上軍に対して完全勝利することが難しくなったことだ。

 数で向こうが同じかやや上になると結束力が高い上杉軍とはいえ簡単にはいかない。懸念している冬の到来は刻一刻と迫っている。

 ここで完全勝利を納めずに長谷道や山形城に籠もれる程の兵を最上が残してしまっては今年中に勝つ確率はかなり低くなる。

 もう迷ってはいられない。

 軍師達は密かに服従を誓っている大宝寺と寒河江へ使いを送り、伊達軍の背後を突いてもらうことを提案した。

 謙信も了承し、直ちに実行に移された。三人はもうこの時点で気がつくことも出来たが、当然だろうと思い、気付くことが出来なかった。

 もし、ここで気付いていればあのようにはならなかっただろう。 

 寒河江達はすぐ動いた。大宝寺は山形城へと向かい、こちらにやってきた。

 もちろん全て軍師達が指示通りの動きである。

 

「反撃の時間だ。伊達政宗を捕らえろ!」

 

 龍兵衛の指は、真っ直ぐに夕日が差す政宗の姿を指す。

 それに呼応した兵士たちは突撃を始めた。

 最上軍に勝利したところで伊達軍が到来したことは偶然だった。

 中央では義清がようやく包囲陣に穴を開けようとしていると報告が入ってきた。元々伊達軍の備えであった為、こちらに向かわずに上杉最上軍を包囲する伊達軍に反応が遅れてしまった。

 どうにか景勝の指示で急いで謙信を救うべく敵中に入ることが出来た。そして、そこで彼女が見たのは想像していた伊達軍にやられる上杉軍ではなかった。

 伊達軍相手に気を吐く上杉の勇将たちは端から見れば、気分が悪くなるほどの屍を積み上げている。

 周りの兵士もそれに続かんと敵を斬っていく。包囲されてもその士気が落ちている様子は無い。

 仲間が暴れ回っている姿を見ていて、胸が騒がないはずがない。そこに義清の援軍が来たことが知らされると包囲されていた兵士達は歓声を上げた。

 だが、さすがの伊達軍も落ち着いて対処しようと試みている。

 

「皆怯むな! 我らが上杉軍を包囲しているんだ! かかれ! 謙信を捕らえろ!」

 

 鬼庭左月であろう老将が前線にて指揮を取っている。

 早く決着を着けたいのだが、上杉軍の頑強な粘りの前に肝心の謙信が何処にいるのかさえ把握出来ていなかった。

 左月は謙信の勇猛な性格を考えて中央にいると考えて中央に多くの兵を投入したが何処からも謙信らしき人物が居たという報告がない。

 本陣だろうかという考えも浮かんだが、すぐに無いと判断した。

 斥候から本陣に謙信は居なかったことはもう聞いている。

 消去法で考えると側面しか無い。左月は陣を変えて突貫を仕掛けて側面を突こうとしたが、そこに綱元達が血相を変えて前に出て来て彼の動きを止める。

 

「父上! 急いで撤退を!」

「何故だ! この機を逃してどうする!?」

「左月殿、それどころじゃ無いよ! 梵天丸の居る所が!」

「なに!?」

 

 左月が見ると政宗の軍は挟撃されている。

 数は多くないが、完全に虚を突かれていて混乱状態になっているではないか。謙信を捨てることになるが、次期当主を放っておくなど以ての外。

 

「やむを得ん・・・・・・退け!!」

 

 左月は苦虫を潰したような顔をして馬を反転させて駆け出す。

 敵に背を向けているのは何年振りだろうか。初めてかもしれない。歯痒い思いが左月の脳裏によぎった。

 

「ん、なんじゃ? 敵は退いて行くぞ」

「義藤殿、あれを見るのじゃ」

「あ~! 龍ちんったら自分だけ美味しい所持って行こうとしてない!?」

 

 別働隊では謙信がすぐに異変に気付いた。

 

「むっ? 敵が退いて行くぞ」

「謙信様、どうやら寒河江の援軍が到着したようです」

「謙信様! 今こそ反撃の好機です! 突撃命令を!」

「分かった。行け! 伊達軍を追撃しろ!」

 

 謙信の号令で上杉軍の反撃への狼煙は上がった。苦しい戦だったが後は仕上げのみである。

 

 

 龍兵衛は刀は持っているが前には出ない。

 寒河江の援軍が来るかどうかは正直わからなかった。あの挑発の時も覚悟は出来ていた。

 肩が砕け散っても景勝の居る本陣に行かせる訳にはいかないとそう考えていた。

 援軍が来た時には内心ほっとして膝から崩れそうになったのを叫ぶことで堪えた。

 自分にも幸運はあった。そう思った時、彼は現実に戻された。

 

「はぁああ!!」

「っ!?」

 

 龍兵衛に向かって一人が突撃して来た。政宗の代わりに龍兵衛を討たんと景綱が斬り掛かって来たのだ。

 伊達軍からすると普段の彼女の性格上珍しい事だが、彼女は龍兵衛に対する怒りを抑えられなかった。さっきの彼の人を喰ったような物言いが我慢出来なかったのである。

 

「我らが鼠だと・・・・・・貴様はどうなんだ!? 貴様も同じような物ではないか!?」

「では、貴方は伊達は鼠同然と認めるのですね?」

「なっ!? そんなことは一言も言ってない!」

 

 怒りに任せて刀を振って来る景綱の剣撃を龍兵衛はかわし、いなして隙を窺う。

 向こうが攻撃した時に出来た隙を見逃さずにそこを突くのが龍兵衛の得意とする技だ。そして、更に景綱の心理を抉る。

 

「あなたは軍師ですよね? 軍師は汚れて汚れて当主を潔白なままにするのが役目ではないのですか? 景綱殿?」

「・・・・・・」

 

 確かに自分は軍師だ。

 軍師たる者、自らが策にて当主を勝利に導くのが務め、たとえ汚れるような仕事も顔色変えずにやっていくもの。

 それが自分はどうだ。次期当主の政宗に先を越され盟約を破るという汚点を政宗に作った。作らせた。

 本来ならば自分が汚れるべき所だったのが、先程の龍兵衛との口戦でもうっかりと政宗が立てた策だと認めるような言葉を言ってしまった。

 敵に知らせるという完全な失言を行ってしまった。

 情を捨てて利を求める筈の軍師がこの体たらくでは主君の支えとなるのだろうか。

 

「潔白な軍師などこの世にはたして居るのでしょうか? 自分は居ないと思いますよ。軍師という職に就いた以上、自分達は汚れるべきです。貴方は・・・・・・変わるべきです」

 

 その台詞は心の中では何度も返ってくる。

 そして、邪念の入った景綱の攻撃に隙が出来た。それを龍兵衛は見逃さずに脇に入り込む。

 景綱の右脇腹にどすっという音がしただろうか。

 

「敵将、片倉景綱捕らえたり・・・・・・」

 

 呟くような声は伊達政宗にも届いただろうか。

 こちらに向かって来る。怒りの目を隠すこと無くおぞましい程の覇気を纏い、龍兵衛に向かっている。完全に殺気立っている。

 龍兵衛は腰を落として政宗の攻撃に備える。

 だが、それはある意味無駄となった。

 伊達軍の主力部隊が戻って来た。

 

「若! 御無事で!?」

「梵天丸、小十郎は?」

「居たよ。あそこに・・・・・・」

 

 綱元が指を指した方向には景綱が倒れている。それを見て一番に成実が駆け出した。

 

「小十郎の仇ぃいい!!」

「生きてんだけどなぁ・・・・・」

 

 そんな呟きが聞こえる訳無く、成実は龍兵衛に斬り掛かる。

 重い。

 景綱よりも身体が小さいのにもかかわらず一撃一撃が強い。隙を窺うもそんなもの成実には無く、龍兵衛は一方的に攻撃される。

 隙らしきものを見つけて必死に反撃するが、それも簡単にかわされる。

 避けること自体に苦ではないが、攻撃となると龍兵衛はあまり得意ではない。

 守りに徹して確実に成実の攻撃を観察する。必ずどこかに隙がある筈だ。だが、なかなか見つからずにしばらく斬り結ぶしかなかった。そうなるとあまり体力的には自信がない龍兵衛にはだんだん不利となる。

 

「せいりゃぁああ!!」

「しまった!!」

 

 成実の槍の重さに負けて刀が弾かれた。なんとか力を強引に使い刀は手離さないが、大きな隙が龍兵衛に出来てしまった。

 

「覚悟!!」

「くっ!!」

 

 体勢を持ち直して槍を防ごうとする。

 その強引な身体の動きに付いていけないところが一つあった。防ぐことは出来たがまた刀を弾かれる。その時だった。

 その音は成実にも聞こえたのだろう。成実も何の音か最初はわからなかった。

 動きを止めて間を取る。これは龍兵衛には持ち直す時間を与えるが、成実はそれよりも聞こえた音が気になった。

 一方の龍兵衛はまったく動かない。

 

「がぁあああ!!!???」

 

 そして、彼の断末魔のような声が周辺にまで響き渡った。そして、その声は上杉軍の将達にも聞こえた。

 

「龍兵衛!? 大丈夫か!?」

 

 追撃してきた本隊がやってきた。義藤が龍兵衛の異変を見て一番に駆け寄る。

 他の者達も徐々に集まって来た。

 

「片倉景綱殿です・・・・・捕縛してください・・・・・・」

 

 すぐに痛みをこらえて龍兵衛は動く左腕で身体を起こして景綱を指す。だが、肩を外した彼は歩くこともままならない。

 

「あやつを捕らえるのじゃ!」

 

 義藤がそう言うと呆然としていた兵士達がはっと我に帰って気絶している景綱を連行する。

 それを見て伊達軍の三人の将達も動き始めた。

 

「小十郎を取り戻すぞー!」

 

 成実の号令に兵士達も動き始めた。それを見た義藤は素早く龍兵衛を兵士達と一緒に後ろ下がらせるよう命じると、続けてやってきた秀綱と弥太郎と共に伊達軍の攻勢を防ぎに向かった。

 その後続々と将がやって来る。お互いが仲間を取り戻すため、負傷した仲間のために再び激戦が始まった。

 お互いの将達とそれに鍛えられた兵士達が一進一退の攻防を繰り広げる。

 

「敵の大将は確か輝宗殿の跡取りだったな?」

「ええ、政宗殿という方だそうです」

 

 謙信の近くにいた颯馬が口を開く。

 

「会ってみたいものだな・・・・・・」

「謙信様・・・・・・?」

 

 おそるおそる颯馬が謙信を見ると既に謙信の姿は無かった。

 

 

 お互いの兵が無秩序に倒され倒れていく。その中で謙信は単騎で敵を斬り捨てて政宗の前に立つ。突然の謙信の来訪にも政宗は眉一つ動かさない。

 

「何故に伊達軍はこのような真似を?」

「さぁ、貴殿なら分かっているのでは?」

「自らが築く天下の為か?」

 

 先程の龍兵衛と同じようなやり取りを政宗がしていると周りには伊達軍の兵が続々と集まって来る。

 謙信に襲い掛かろうとする兵達を政宗は制して更に続ける。

 

「如何にも、貴殿も同じことを考えているのか?」

「ああ、その通りだ。故に、誰かに譲る気などさらさら無いがな」

「奇遇だな。私もだ」

 

 そう言うとお互いに刀を抜いて斬り掛かる。大将同士の一騎打ち。周りの兵は見るばかりの観客。

 謙信は盛周と一騎打ちを繰り広げて伊達の包囲網を斬り抜ける為に自ら刀を振った。

 そして、この一騎打ち。勝てる物も勝てないような疲労が溜まっている筈だが、それを微塵にも感じさせない。

 

「ふっ!!」

「はぁ!!」

 

 それがどうしたと政宗と対等に渡り合う。顔色一つ変えずに刀を振るい目の前の政宗に斬り掛かる様。その姿はまさしく軍神そのものである。見る人は伊達軍の兵ばかり。

 それでも謙信と政宗の戦いは皆を魅了した。

 お互いに刀を振るい相手の剣撃を避けて斬り掛かる。

 見事なまでに無駄な所が無い演劇のような動きに目を見張り、見ているだけでここが戦場であることを忘れてしまう。

 越後の竜と独眼竜の一騎打ちが始まった。

 その戦いを霞ませるような戦いが他でも行われていた。

 

「剣聖と名高い上泉秀綱殿と合間見えることが出来るとは・・・・・・この左月、光栄の至りである」

「ふっ、そう言わずに、私も恥ずかしいではないですか、こちらこそ左月殿も伊達の宿将、お会い出来て光栄です」

「北山義藤・・・・・・聞いたことはないですけど、何ともその覇気は油断ならないですね」

「ほう、妾の相手はそちか・・・・・・お主もなかなかの力を秘めていると見た。楽しめそうじゃのう」

「あらぁ、あんたがあたしの相手ぇ? あたしは前田慶次っていうのよろしくぅ」

「うぅ~なんかその身体を見ると負けられない気がする」

 

 三組の戦いがゆるりとした口調で言葉を交わす、そして舞い上がった。

 

「「「「「「はぁああ!!」」」」」」

 

 秋の長い夕暮れ時の空、砂埃を上げて六人の両軍自慢の猛将の叫びはどこまで聞こえたであろうか。

 

 

 

 

 

 

 謙信と政宗はお互いに何かを得ていた。田舎と言われてもおかしくない越後や奥州から天下を取る。口で言えば簡単だが、その道はひどく険しい物となると知っている。

 だが、この乱世を変えたいという気持ちは二人にあった。その為に狙う場所が最上領という一緒の場所になり、こうして巡り合った。

 謙信は信玄並みの脅威を政宗に感じ、この勝負が心底楽しくなって来た。

 政宗も楽しくなって来ている。彼女は謙信のような宿敵は居ないが今それを得た感覚がある。

 そして、二人は思った。お互い仲良く出来るのではないだろうか。

 乱世にあってこんなことを敵に思うなんて思わなかった。心を許せて、自らと同じ方向に向かう家臣達が居る。だが、分かり合えるであろう人物がここにもいる。しかも家臣ではなく、他家の当主となどとはお互いに夢にも思わなかった。

 また一人、分かってくれている者が居た。

 それでも二匹の竜は争うことを止めない。

 

 決着の時は刻一刻と近づいて行く。無情の時間が止まることは無いが、二人はそれを逆に今か今かと待っているように見える。

 刀が一本飛んだ。周りの兵が我に帰る。

 二人を見る。一方が首に刀を一方がそれを抵抗無く受け入れている。

 兵はそれを見て顔色を変える。動こうとする兵がいる。だが、それは自分達の当主によって止められた。

 もう一人は刀を鞘に納めて言った。

 

「我らと共に歩まないか? 伊達政宗よ」

「私が当主ならば喜んで、と言いたいところだが、生憎私は当主ではない。父輝宗を裏切ることは出来ない」

「ならば、行くが良い」

「・・・・・・宜しいので?」

 

 命を取ることは無いと思っていたが、ここまで迷うことなく言った謙信に政宗はかなり驚いた。

 

「何なら、そなたを盾に降伏を迫るのもありだがな」

「それは貴殿の信義に合わないと?」

「そういう風に生きてきたからな」

 

 政宗は笑みを浮かべた最後の言葉には謙信の人間味が表れている気がした。

 

「小十郎・・・・・・いや、景綱は・・・・・・」

 

 それが今一番気になることだ。

 

「彼女は解放することは出来ない。だが、生かしておくことは約束する。それに不自由にはしない。案ずることは無い。私から命じておく」

「感謝しよう」

「では、また会うとしようか」

 

 お互いに頷き合いそれぞれの軍に戦の終了を命じた。二人は互いに健闘を讃え合い。握手を交わし帰って行った。

 終わりが命じられるとそこからは早かった。

 一騎打ちを演じていた将達はお互いの武を認め合い、再戦を誓い合って撤退して行った。

 この時、夕日が沈むか沈まないかの一番綺麗な時間帯であった。

 

 

 

 

 

 

 一人で自らの怪我と戦う龍兵衛が陣でうずくまっていた。

 

「龍兵衛、大丈夫?」

「ええ・・・・・・まぁ・・・・・・ああ・・・・・・くっ・・・・・・」

 

 とても大丈夫には見えない。肩が外れたまま歩くのは龍兵衛にとって生き地獄その物だった。

 彼が陣についた時に景勝は彼の変わり果てた姿を見て目を疑った。

 普段から自分の感情は表に出さない筈の彼が痛いという感情を思い切り出している。

 景勝は駆け寄って肩を貸そうとするが「結構です」と龍兵衛は言って自力で陣幕に入り、座り込んだ。

 景勝が外れた右肩にそっと触れると完全に肩の骨が陥没している。中がどうなっているのか想像するだけで気分が悪くなるような状態だ。

 帰って来た将達も心配そうに彼を見ているが、幾分治し方が分からない。

 龍兵衛が肩の痛みから解放されるには方法は一つしかない。それを彼は知っている。

 龍兵衛はふぅと息を吐くとふらふらと立ち上がり、軍議を行う場所に向かう。そこにある机の角を怪我をしている無理やり右腕を上げる。

 颯馬達が慌てて止めようとするが、龍兵衛はこれしかないと言って聞かない。

 彼は、ここにいる謙信を含めた上杉軍の面々の前で皆が目を逸らしたくなるようなことを始めた。

 覚悟を決めたようにもう一度息を吐くと一気に外れている右肩を机から離さないまま身体を屈める。

 同時に聞くに耐えない断末魔のような声を今一度上げる。

 

「うあぁぁあああ!!!」

 

  ぼこっという聞こえた音は先程成実が聞いた音と同じ音であった。そして、今度は元に骨が戻ったのだ。

 肩で息をしながら龍兵衛は右肩に手をやると完全に元に戻ったことを確認してがっくりと地面に倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 上杉軍はこの戦で二千の兵を失い、負傷兵を入れると五千の損害を受けた。

 上杉軍の被害の殆どが伊達軍によるものだが、上杉軍は最上軍にそれ以上の損害を与えた。ちなみに伊達軍は八百の損害だそうだった。

 形上では伊達の勝ちになった。

 谷柏楯に入ると龍兵衛は手拭いで処置していた肩を包帯でしっかりと三角巾を作り、それに右腕を吊した。

 

「これで二度目か・・・・・・」

 

 平成の世では三回やったらもう手術に踏み切るしかないと通告されていた。肩の寿命は最後の一つとなった。

 終わりまでもってほしい。上杉の天下統一までに自分が生きているかは知らないが、最期まではもって欲しい。

 だが、切なる願いが叶うかはわからない。

 だからこそ龍兵衛は自分自身に腹が立った。

 訳も無く。それがただの八つ当たりだと分かっていながらも大事なところで言う事を聞かない身体が龍兵衛は憎かった。

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