上杉の章 新たな兵衛   作:北極星

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第七十二話改 僕達の行方

 飯野平城城主、岩城重隆の下には二つの書状が届いていた。

 一通は長年宿敵として真っ向から対立を続けてきた相馬盛胤から。

 長年の因縁を忘れて上杉軍を追い払おうというもの。だが、決して簡単に受け入れられるものではない。

 そもそも、岩城と相馬の因縁は重隆が当初は白河結城と盟関係を固めることにより、伊達稙宗の縁戚となって勢力が盛んとなっていた近隣の相馬氏や田村氏と対抗しようとしたことから始まる。

 ところが重隆の娘の嫁ぎ先をめぐって伊達氏や相馬氏と対立し、軍事的な争いにまで発展した結果、岩城氏方が敗れ、久保姫を稙宗の息子、伊達晴宗に輿入れせざるをえなくなった。

 そこで重隆は相馬盛胤との対立が生まれ、遂に東北全土を巻き込んだ伊達家内の対立の際に顕著なものになる。

 後にいう天文の乱。

 同時の伊達氏当主、伊達稙宗と嫡男、晴宗父子間の内紛に伴って発生した一連の争乱である。

 この時重隆は晴宗に属し、盛胤は稙宗に属した。

 重隆は相馬と同盟関係にあった田村に内紛をけしかけるなど調略で活躍し、祖母が田村家出身であった重隆は晴宗派と蘆名の勢いに乗り、また結城の援助も受けて相馬の領地を攻めた。

 これが両者の間に決定的な亀裂を作ったといって良いだろう。

 その後も相馬との抗争を続けていたが、乱世の世の中は確実に重隆も盛胤も蝕んでいた。周辺を佐竹、最上、伊達に囲まれた岩城はどこに付くかの選択を迫られてきた。

 さらに上杉が関東管領でありながら東北に進出を企むという東北の国人衆には正に寝耳に水の事態が起きたのだ。

 既に最上、伊達といった東北の雄が上杉の傘下に降り、周辺の有力豪族の石川や大内もほぼ詰んでいる。

 長年外交戦略で家を守ってきた重隆だからこそ潮時であると悟ることが出来る。だが、重隆が躊躇っているのは家中の武断派が未だに徹底抗戦を主張しているからである。

 今少し待ち、この二つの書状のどちらは灰にするかを決めよう。そう考えて重隆は二つの書状を大切に閉まった。

 その一週間後に重隆の下に石川晴光が上杉軍に降伏という知らせが入った。

 待っていて良かったと重隆は心底思った。このことを何人かの重臣に聞いた時には小手森の事を引き合いに出して我々は死んでも本望であると言い切る者も多かったのである。

 しかし、聞けば晴光以下、降った者全員が許されたと聞いた。

 重隆はもう迷う必要はなかった。躊躇わずに盛胤からの書状を火にくべ、もう一通の書状を出す。

 そのもう一通の手紙は上杉軍が軍師、河田長親からの上杉との協定の打診。表向きはそうであるが、実際は降伏勧告であるのに間違いない。

 時流に乗って守ってきた岩城家、今回もその時流に乗って家を守らるしかない。

 

「(それにしてもあの時は伊達晴宗様の味方に付いて良かった)」

 

 天文の乱は越後にも影響があったのである。その時稙宗は上杉定実の下に自らの息子を養子として送り込むことで越後さえも丸め込もうとしていた。

 越後では受け入れ推進派と反対派との間で戦闘が発生したが、上杉定実や中条藤資らは反対派の同時守護代であった謙信の兄、長尾晴景や揚北衆などの越後国人衆に敗れ、ついに入嗣案は完全に頓挫したのだ。

 晴宗派に属していなければ上杉との和睦はならなかっただろう。安堵感を抱きつつ重隆はあっさりと謙信に使者を出すことを決めた。

 重隆は自ら謙信の前に馳せ参じ、頭を深々と下げた。

 

「岩城重隆、及びその配下達が我が上杉に降ることを認めよう」

「ありがたき幸せに御座います」

 

 謙信の目の前にて頭を垂れる重隆。彼は一部の旧領を上杉に授けることを条件とした降伏勧告に応じた。

 かくして石川、岩城は予想以上に早い時間で片付くことになった。

 

「ところで、何やら落ち着いていないようだが」

 

 重隆は先程からそわそわし通しで何か気にしている様子が丸分かりである。謙信に指摘され、重隆は恐る恐る口を開き出した。

 

「実は・・・・・・昨日から某の家臣の一人が行方不明でして・・・・・・」

「・・・・・・そうか、我らに降ることを良しとしない者がいると?」

「いえ、某を疑うのは致し方ないことかと。ですが、某は決して謙信様の寝首を取るなどと考えたこともありませぬ」

 

 慌てて首を横に振る重隆を見て、案外小心者であることが分かり、老獪な者ではなさそうだと少々安堵した謙信は大丈夫だと言うと改めて重隆の上杉参入を歓迎した。

 

「終わりましたな」

 

 上杉直臣のみが残ったところで龍兵衛は一つ伸びをして肩をほぐした。

 

「うーむ、戦が早く終わったのは良いのじゃが・・・・・・」

 

 対して義清はどこか不満げである。彼女からすればせっかくの功を立てる機会が戦自体が終わってしまった為に無くなってしまったのだ。

 なかなか鬱憤が溜まっているのか慶次にこの後に相手を願い出る程である。

 

「まぁ、良いだろう。我らは為すことを成した。後は景勝達の吉報を待とうではないか」

 

 満足げな謙信の言葉にもかかわらず一人だけ龍兵衛は空笑いをしている。そして、謙信に後で今後について意見を聞きたいと言われると頭を下げて誰にも体内を走る悪寒に気付かれないように振る舞った。

 数十分後、陣中の一角で龍兵衛は謙信に頭を下げていた。

 

「また勝手に動いたな?」

 

 周りに誰もいないせいか、静かな声が龍兵衛の耳に響く。その冷眼は軍師といる時にしか見せない謙信の眼。そして、怒りを押し殺して冷静な思考へと動かしていることによって恐怖がますます強大なものへと変わっていく。

 

「言い逃れは致しません」

「車斬忠、岩城家屈指の勇将。私が知らぬ訳がなかろう。あの時あれほど申したではないか?」

「・・・・・・」

 

 その台詞は眼前の龍兵衛に向けられているのかここにはいない重隆に向けられているのかは分からない。

 だが、向けられる視線は龍兵衛にだけ、この幕には謙信と龍兵衛のみがいるとはいえ油断すれば目で斬られそうなぐらいの恐ろしさに龍兵衛は汗を身体中に滲ませ、頭を上げることが出来ない。

 

「車斬忠をどうした?」

「謀反の気配があったが故に、段蔵に始末させました」

 

 

 

 それは重隆が上杉に降る三日前。段蔵が探りを入れていると叫び声が聞こえた。

 気付かれないように見てみれば重隆が上杉に降る故に、各々は好きにして良いと暇を与えている最中であった。

 しかし、それに全員が賛同する訳ではない。

 

「なりません! 何故に上杉という成り上がりに降る必要があるのですか!?」

 

 その代表格として一人の女性が前に出た。黒い髪を短く纏め、顔にある傷を隠すことなく見せているが、それが誇らしく思っているのは彼女が武人であることを示している。

 車斬忠という女性がいた。普段は佐竹との前線にある車城にいるが、この状況下となって家臣に城を任せて馳せ参じた。そして、今は主君の弱気な決断に怒りを露わにしていた。

 

「ならば丹波はどう戦うというのだ?」

「相馬からの書状の返事に承知したというように認めれば良いでしょう?」

「残念ながらあれは燃やした」

「な・・・・・・」

 

 全てはもう斬忠の思う通りにはいかない。そう通告するように重隆は斬忠に言うと彼は立ち上がって部屋から去っていった。

 そして、怒りを噛み殺すようにぎりっと奥歯を鳴らすと斬忠もすぐに何処かへと立ち去った。 

 弱気過ぎる。いくら勢力が弱小で外交戦略を駆使しなければ生き残れないとはいえあれほどに弱気な当主を斬忠は始めて見た。

 元々斬忠は重隆の戦を避けるやり方に不満があった。この乱世で生き残るには戦が一番の防御であると彼女は信じていた。今思えば斬忠の積極的な策が取り入れられたのは一度や二度ばかりであとは全て却下されている。それは重隆が年をとるごとに顕著になっていった。

 あのように弱腰の重隆に目にものを見せてやる為にも自身がやれるというところを示しておかなければならない。

 目の色は紅蓮に燃え上がり、上杉に怒りの全てをぶつける覚悟は出来た。

 そして、斬忠は部屋に戻ると書状を書き出した。その宛先がどこかは分からないが斬忠に付いていった段蔵にはかなり焦って書いていることが見て取れた。

 しばらくすると書き上がった書状を斬忠は家臣の一人を読んでこれを佐竹に届けてくれと命じた。これを聞いた段蔵はすかさず書状を託された者を追い掛け、簡単にその書状を奪うことに成功した。

 段蔵が中身を改めると内容としては佐竹が動けば上杉は今、身動きが取れなくなる。そして、その隙に黒川を落として背後を取る。これで上杉は進むも退くも出来ずに終わる。

 すかさず段蔵は潜入を頼んだ龍兵衛に報告をすると彼はただ「殺れ」と言ったのである。

 

「その後は段蔵から聞いて下さい。自分が知るのはそこまでです」

「・・・・・・分かった。要らぬ戦を未然に防いだことは褒めておく。だが、二度とそのような方法を用いるな」

「御意」

 

 くるりと背を向けて謙信はその場を去ろうとしたが、何かを思い出したように足を止めると振り向かえらずに再び龍兵衛に声を掛けた。

 

「まさかと思うが・・・・・・そなた、定満の代わりになろうなどと思っていないだろうな?」

 

 唐突に言い出した畏れ多い事に龍兵衛は「滅相もない」と反射的に首を上げて横に振る。それを見た謙信はならばよいと頷き、はっきりと龍兵衛の胸に突き刺さるように言った。

 

「そなたはまず己を見つめ直せ、よいな?」

「お待ちください」

 

 そう言って謙信は歩き出そうとしたが、今度は龍兵衛が止める。

 

「軍師として、上杉家の天下統一の為以外に何が必要なのでしょうか?」

 

 彼が今までを振り返るとたしかに何の為に色々と振る舞ってきたのか、自身でも見当が付かない。斎藤で二兵衛からの薫陶を受けた後に上杉家に仕え、軍師としてやってきて何が自らの本質であるのか。

 上杉家が天下統一する以外にそんな事を考えもせずにずっと突っ走ってきた。そうとしか結論が出せない。

 

「私は軍師としてお前は随分とよくやっていると思うぞ」

「では謙信様は何を自分に見直せと仰るのですか?」

「決まっている。お前は自分自身の、もう少し人としての本質を悟れ。己が分からない者に猿真似などと言われたくない。それに、本がなければお前の成してきたことは無意味になる。私も、主君としてそれは避けたいのだよ」

 

 龍兵衛の不機嫌そうな物言いを気にすることなく素っ気なくそう言うと謙信は足早に去って行った。今まで龍兵衛が見たことの無いような厳しい表情だった。

  

「・・・・・・これからはもう少し抑えないと」

 

 独断専行を反省するようにそう呟くと龍兵衛もそこから去っていく。その足取りは非常に重い。

 自身の生き様だったと思っていたことを真っ向から批判された。

 別に定満の代わりになろうなどと彼は全く思っていない。

 定満という軍師は日の本広しといえどもなかなかいないと彼は思っていた。もしかしたら二兵衛よりも上かもしれない。

 だが、そういった勘違いや誤解はよくあるもの。彼が最も衝撃だったのは自分以外の人間から自分の本質が分かっていないと宣告されたことである。

 

 その日の夜、飯野平城の一角で龍兵衛は義清、慶次と戦勝祝いとして酒を飲んでいた。だが、祝い酒の場であっても話題は小手森の事に関連してどうしても景勝のことになってしまう。

 

「景勝様は随分と憔悴しているそうじゃな」

「無理もありません。ですが、これを越えてくれないと困ります」

「相も変わらず、景勝様には手厳しいのう」

 

 冗談めかしのように笑いながら杯に入った酒を口に含むが、龍兵衛の心は全く笑っていなかった。

 謙信から己が未だに出来ていないと言われ、大内の状態を調べるがてらに景勝の様子も聞いたら心が汚点の影に負けそうになっていると聞いて明るくいられる訳がない。

 それ故か随分と口が悪くなってきているようだ。杯を呷る度に溜め息がこぼれてくるのも仕方ない。

 気晴らしになればと慶次の誘いに乗ったのは良かったが、普段切り替えが早い龍兵衛でもなかなか気持ちは晴れてくれない。

 今はこれから攻める結城について考えなくてはならないのに頭には景勝の心配と謙信から言われた『己を見つめ直せ』という言葉しかないのだから。

 景勝のことは会ってから様子を直で見れば良いとして、後者の問題はかなり切実である。

 二兵衛からの薫陶を受けた後に上杉家に仕え、軍師として奔走してきた彼であるが、人としての自分を確立してきたことはたしかに無かった。

 言い換えればそのような余裕が無かったと言える。

 そもそもこの乱世ではそれを必要とするのだろうか。しかし、上杉謙信という御方は必要のないことを言う人物ではない。

 ならば間違っているのは自分自身なのであろうか。

 

「どしたの?」

 

 自身は暗い顔をしているのだろう。気付けば慶次が顔を覗き込んでいる。

 彼は内心の苦悩を悟られないように頭を振る。否、おそらくばれている。内容は知られずとも聡い慶次は既に悩みを察しているだろう。

 

「いや、別に何でもない」

 

 だが、そう言うしかない。何故なら他人の力では分かるようなことではないからだ。

 結局、今日はもう飲む気になれないと二人に言うと龍兵衛は逃げるようにそこから立ち去った。

 

 

 

 

 

「かくも力の差がある以上はもはや降伏しかあるまい・・・・・・」

 

 定綱は城内から見える上杉の大軍を前に膝を着く他なかった。一族郎党が小手森のように皆殺しにされるやもしれないと分かっていてもだ。

 支倉常長という使者が己の命を顧みることなく何度も降伏勧告に来ているので無碍にはされまいと思い。定綱は終わりを迎えたと思いながらゆっくりと目を閉じた。

 その翌日に定綱は自ら上杉陣中に使者として入り、景勝を前にして降伏と自らの首を引き換えに家臣一同の命を助けるように申し出た。

 景勝は自ら上杉陣中に来た定綱の器量を評価して定綱以下、全員の助命を許した。

 だが、景勝に伊達が侵した汚点の影が入っているのは確実である。入城した際には小手森の撫で斬りを景勝が指示したと考えた兵が石を投げつけるということも起こる有り様であった。

 

「(しょぼーん・・・・・・)」

「まずいのう・・・・・・」

 

 かなりがっくりとしている景勝と共に援軍としてやってきた景資は彼女の背後で顎に手を当てて苦虫を潰したような顔をしている。

 小手森の事は景勝が到着する寸前に二人の耳に届いていた。景資にはその事の重大さが十分に理解出来た。そして、兼続と何度も首を捻り合った。

 件の事が景勝の仕業と考える者が大内の間にいる可能性はかなり高い。だが、一度吹かれた風潮はなかなか収まらないもの。

 撫で斬りを行った伊達が随分と誤解を解くために駆け回ったと聞いているが、効果はなかなか表れていないようだ。

 隣では兼続がずっと難しい顔をしている。しばらく腕を組んで考え事をし、景資におずおずと話し掛けてきた。

 

「必要な策であったとはいえ、これでは今少し時間が掛かります。吉江殿、いっそのこと謙信様に一旦こちらの状況を伝えて撤退しては?」

「ならぬ。兼続、この戦はお主達が推し進めたものであろう」

 

 東北に残る蠅を払うのは今しかないと主張し、何度も謙信を説得して得たこの機会。逃しては定満亡き後の軍師達はやはり駄目だと言われかねない。

 それを何としてでも避けるにはこの戦を勝たなければならない。景資も軍師達がそうならないようにするためにも出来る限りの事はするつもりである。

 らしくない兼続の弱気な発言に景資は背中を叩いて激励すると兼続は己を叱咤して先程と違うはっきりとした表情になった。

 

「分かりました。この兼続、小手森の一件を決して無駄には致しません」

「うむ、その心意気じゃ!」

 

 元に戻った兼続にがばっと景資は肩を掴んで持っていた扇子でぽんぽんと頭を叩く。

 ここは人目に付きやすい城内の大きな郭、当然ながら二人の光景はしっかりと見える。

 

「よ、吉江殿!? ま、まま、周りの目がありますのでお控え下さい!」

「むぅ、相変わらずお主が一番堅いのう。たまには肩の力を抜いたらどうじゃ?」

「体裁の良いこと言って私を乳の中に沈めるのは止めて下さい!」

 

 背中越しに景資の胸に包まれている感が兼続に伝わっている。顔を真っ赤にして兼続は抗議しているが、景資はすりすりと扇子で頭を撫でて「可愛いのう」と言ってさらに兼続の顔を染め上げていく。

 ますます可愛く感じて今度は手で直接撫でようとした時だった。

 

「じー・・・・・・」

「「・・・・・・」」

 

 凹んでいた筈の景勝がこちらを見ていた。そして、当たり前だが目が合った。明らかにはしゃいでいた二人の声が周りにも聞こえていたので当然のことではあるが、少し時が悪かった。

 景勝の気が曇天のように暗かったのに家臣である二人がこれでは景勝の気をさらに滅入らしかねない。

 

「(ずーん・・・・・・)」

「あ、あのー景勝様、私達は決して・・・・・・そのー・・・・・・」

「(ぷいっ)」

 

 珍しく歯切れが悪い兼続に愛想を尽かしたのか景勝は一人で立ち去ってしまった。

 

「やはりまずかったですよ」

「ううむ、落ち着くまでしばらくは大人しくさせておいた方が良い。これ以上、事が広がらないのを祈るばかりじゃ」

 

 棚に上げて偉そうに言っている景資だが、兼続も突っ込みにいれる気になれずに頷くよりも先に溜め息が出て来た。

 景勝の聡明さを二人はよく知っている。しかし、聡明過ぎるということも知っていた。

 景勝とて卑劣な行為無しに戦乱の世を生き残ることは出来ないのは重々承知しているが、自らの身体に汚点の影が入り込むような事が起こるとは二人は全く予想だにしていなかった。

 

「いつ頃立ち直るかのう?」

「さぁ、早い方が良いに越したことはありませんが、あの様子では次の相馬との戦は水原殿が指揮を執られた方がよろしいかもしれませんね」

 

 万全の状態を保って望むことこそが勝利への鉄則の一つ。しかし、景勝の心にあるであろう穴がすぐ埋まるとは限らない。

 二人はただ根も葉もない噂が広まることが無いことを祈るばかりであった。

 

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