これから先は平和では無いワケでは無いが、取り敢えず何かある
近々、おもしろい情報が回った。
それは“あの朴念仁店主についにイイ人が!”
…と 言う題名が、店主の開いた新聞の最初に載っていた。
出始めの部分に写真が載せてあり、それは紫色の服を着た少女が白髪の眼鏡男と向かい合って会話している姿であった。
「これは明らかに僕の事だね」
霖之助は浅い溜め息を吐いた。大方として誰がこんな記事と写真を載せたか、見当はついている。そしてこの“イイ人”とは煉の事である。
「どうりで…って、何で霊夢と魔理沙が煉を睨みつけてるのだろうか。オマケに今日は何だか異様に大量の視線を感じる」
状況としては今、霊夢と魔理沙が凄まじい形相でニコニコした煉を睨みつけてる。そして霖之助の真後ろには在る筈も無い奇妙な“穴”が存在した。
店の窓の向こう側にも気配が幾つか跋扈している。
ピリピリした空気の中、能天気な様子の煉が霊夢と魔理沙の二人に話し掛けた。
「ね、あなた達って“
お茶をすすっていた霊夢が湯呑を机に強めに置くと、その衝撃音の後に口を開いた。
「えぇ そうよ」
直後に魔理沙が前に乗り出して顔面を煉に近づけた。
「私達は幻想郷では結構有名なんだよ、お前みたいな見た事も聞いた事も無い新参と違ってなぁ」
「へぇ〜そうなの? 知らなかったよ。じゃああなた達は有名人なんだね、よろしく」
笑顔で煉が魔理沙に握手を求めたところ、直ぐに魔理沙自身によって煉の手が払われた。
「気安く触るな」
「何を怒ってるの?」
キレ気味…いや、もう既にキレてる魔理沙に対し、煉は笑顔でそう訊く。
「自分が何をしたかわからないの?」
「うん、わからない」
それもその筈、煉は霖之助に言われて一緒に住んでいる。煉はただ勘違いをされてるだけである。
そして言わずともわかるこの反応。そう、霊夢と魔理沙は…
「あ、ひょっとして。あなた達 霖之助さんがーー」
その先を言おうとした瞬間、二人は煉の口を速攻で塞いだ。
この時、霊夢と魔理沙の二人の顔は何故か真っ赤だった。
「な、何を言ってんのよ! そ そ そ そんな事あるワケ無いじゃない!」
「そ、そうだ! それに私は男を見る目はちゃんとあるんだぜ⁈」
二人は慌てふためいた様子で誤魔化す。
と、突然最初に煉の口に手を被せていた魔理沙が突然 アチッ と言って手を退けた。
魔理沙が手を退けた為、魔理沙の手の上に被せていた霊夢も勢いで手が離れた。
魔理沙は自分の手を見たところ、手の平の皮膚が真ん中から半径 約1cmが赤く腫れていた。
「私の口に手は被せない方が良いよ。これでもちゃんとした“妖怪”だし、人なんて簡単に燃やし尽くせるんだから」
煉は口を僅かに開ける。すると煉の口内から真っ赤な火が溢れ出した。
「霊夢、魔理沙。それに煉。喧嘩をするなら
霖之助は無表情で本を見たまま言う。
煉はそれに対し はーい と答え、早々に霊夢達と店の外へ出た。
「要はつまり、その事情を霖之助さんに言わなきゃ良いのと、霖之助さんと私が良い関係にならなきゃ良いんでしょ?」
煉の言葉に霊夢と魔理沙は頷く。
「なら大丈夫、あの人 ヒトの気持ちに凄まじく鈍感だし、私が何をしようとなんとも思わないから、安心して☆」
煉は笑顔で話した。
霊夢と魔理沙は不安そうな顔をしながら飛んで帰った。
「でさ、ウジウジしてるそこの隠れん坊さん達! あなた達はこのままストーカーみたいにずっと霖之助さんを眺めてるつもりなの?」
煉は非常に明るい口調でその者達がドキッとする言葉を口にする。
一呼吸 於いた後、香霖堂の周りの気配が無くなっていた。
「案外モテるんだね、霖之助さんって。にしても、鈍の感が酷過ぎ。好きになる相手も相手で気持ちを伝える事が出来なさ過ぎ。情け無さ過ぎて何も言う事は無い」
煉は明るい口調のままスッパリと言葉で切った。
そして何事も無かったかのように店の中へ戻って行った。
後日……
退屈そうに煉は香霖堂の品を眺めていた。そのところに、突然 店のドアが開いた。
立っていたのは翼が生えた黒い髪の少女であった。
背丈は煉より僅かに小さいくらいである。
「居た居た」
少女は笑顔で煉に近づく。と、直後に煉の両手を両手で掴む。
「お会い出来て嬉しいです!」
少女は煉に思い切り握手をする。
「ねぇ、誰?」
無論、煉は少女に問う。すると少女は咳払いをした。
「初めまして。私、鴉天狗の新聞記者、
少女は目をキラキラさせながら煉に訊いた。
「インタビューみたいなもんだね、良いよ。バンバン撮っちゃってよ!」
煉も興味が湧いたのか、笑顔で取材を許可した。
「では早速! 先ず、あなたの種族、名前、年齢を教えてください」
「名前は、篝火 煉。年齢は自分でもわからない。種族はーー妖怪だね」
「では、あなたはどうやって妖怪になったか、覚えていますか?」
「妖怪になったって…元々の姿が“オイルライター”だった。知ってる? ジッポーみたいなヤツだよ」
煉はそう言った瞬間、指先に火を灯した。
文は三角口で頷きながらペンを走らせる。
「実に興味深いですねぇ。何か“向こうの世界”で印象に残ってるモノとかあったりします?」
「印象…。あぁ、そう言えば最近、“途轍も無く高い塔”を観たね」
「“途轍も無く高い塔”?」
「うん。名前は確か、『トウキョウすかいつりー』だったかな。雲の高さまで届くほど高かったよ」
そう言うと文は おぉ とペンを走らせながら目を思い切り輝かせた。
「それは確かに興味深いね」
気が付くと、本に集中しっきりだった霖之助すら二人の目の前に現れ、煉の話に興味を示していた。
「そちらの世界には何かと高い建物があるのかい?」
何故かの霖之助からの質問に煉は戸惑い始めた。
「あ、うん。基本的に背が高い建造物が多いね。“山よりビル”って感じ」
煉の言葉に文と霖之助は共に目を輝かせた。
最早どっちのインタビューに答えてるのかわからなくなる…
そこで煉は一つ訊いた。
「あのさ、今これどう言う状況?」
「インタビューですけど」
『興味深いから話を伺いたくて』
「うん、結果同時インタビューでダメ。どっちの質問にも答えなきゃならないなんてキツいよ」
煉は手を叩きながら 終わり終わり と言った。
「えぇ〜 まだ私 訊きたい事 山ほどあるんですけど…」
「また機会にすりゃ良いじゃない。今日はそれを記事にしちゃってよ」
そう煉が言うと、文は渋々 香霖堂を後にした。すると煉が隣に立つ霖之助にこう言った。
「霖之助さん、お腹減った」
幻想郷の日常はいつものように平和であった…
続く
次回は未定、構想は零
ま、ゆっくり行こうよ。なんて…
また次回に