叛逆の騎士ですがなにか?【永久凍結】   作:くずもち

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今回のイベ、ジャンヌ・オルタは当たらなかったけど、素材大量獲得できたから別に良いや。

zeroイベの為にハサンと子ギルのレベマ終わったし、まだまだ手稿は残ってる。作者的には満足でした。


新モーション見て思った、ギル欲しい……。


番外編 Fate/Apocrypha 三馬鹿降臨 1

『FATE/Apocrypha』そう呼ばれる外典が存在する。

 

日本の冬木市にて行われた第三次聖杯戦争。その際にユグドミレニアが軍すらも動員して大聖杯を奪い、己の物にした世界線。

そこで行われる魔術協会率いる赤のサーヴァント七騎と、ユグドミレニア率いる黒のサーヴァント七騎による聖杯戦争。

 

その存在を思い出したモードレッドが、抑止からの干渉受けないために分霊から宝具を奪った上で受肉させ、Apocryphaの世界線へと送り込んだ。

送り込まれた分霊は、宝具は無くとも竜の因子に由来する膨大な魔力と、母モルガン譲りの魔術でメキメキと頭角を現す。

 

やがて起こったユグドミレニアの魔術協会からの離反。その粛清の為に派遣された50人の魔術師の中に、モードレッドの姿はあった。

 

「クッソメンドくせえ」

 

モードレッドは様々な魔術効果を併せ持つ真っ黒な自作のローブを身に纏い、フードの下で物凄くやる気の無い顔をしていた。

だがこれは彼に限った話ではなく、大半の魔術師は温い仕事だと慢心し、油断仕切っていた。

何せ相手であるユグドミレニアは、既に没落又は没落しかけている魔術師達が集まった組織。自分たちに匹敵する魔術師など、当主であるダーニックを含めて数える程しかいないのだから。

 

しかしその認識は直ぐに覆る事になる。彼等の前に立ちはだかった一人の貴族然とした男。男からは尋常ならざる気配が感じられる。モードレッドは直ぐに悟った。あの男はサーヴァントだと。

 

「(槍を持っている事から察するに、ランサーのサーヴァントか)」

 

「我が領土を荒らす侵略者どもよ、余が手ずから貴様等を始末してやろう。光栄に思うがよい」

 

ランサーに膨大な力の奔流が集まると同時に、モードレッドは全身を魔術で強化。迎撃体勢を整える。

 

極刑王(カズィクル・ベイ)!」

 

ランサーがそう叫んだ瞬間、辺り一面から大量の杭が出現し、敵対者を串刺しにせんと迫ってくる。

モードレッドは手始めに足下の杭を全て踏み砕いて足場を作り、次に自分の周囲から生える杭を素手で殴り砕いていく。

 

「ほう……」

 

粗方杭を砕き終えた後、モードレッドはランサーに向かって言った。

 

「もう終わりか?」

 

「フッ、フハハハハハ!よかろう、ならば次は全ての杭を貴様に向けるとしよう……極刑王ッ!」

 

再び迫りくる無数の杭達。しかも今度は先程とは違い全ての杭がモードレッドただ一人を狙って放たれる。

モードレッドは先程と同様に杭を素手で砕き、足りなければ足を使って粉砕し、凌いでいく。

 

しかし、それでも尚全ての杭を防ぐには至らない。砕ききれなかった杭が体を掠め、傷を付けていく。

無数の杭の内一本が顔面に迫り、モードレッドは首を傾けて躱わすが頬を掠める。直後に杭はへし折られたが、傷口からは血が滴り落ちた。

モードレッドは傷口をチラリと見た後、楽しそうに笑いながら言う。

 

「ギアを上げるとしようか…!」

 

着ていたローブを脱ぎ捨て、全身に力を込め始める。すると身体中から赤雷が迸り、その動きがさらに俊敏かつ力強くなる。先程までは所々傷を負いながら対処していたにも関わらず、今では突き出される杭よりも速く動き、一撃も受けずに破壊していく。

 

砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く砕く。

 

「これでラストォ!」

 

バキンッと音をたてて、最後の杭が破壊される。総数二万にも及ぶ杭の大群を、たった一人で防ぎきった。

 

『馬鹿な!?』

 

「これ程とはな、少々侮っていたか…」

 

全ての杭を防ぎきったモードレッドは、ランサーから感じる視線が侮りから警戒へと変わったのを理解しながら、少しの間考え事をしていた。

やがて考えが纏まったのか懐に手を入れ、拳大の大きさの筒を取り出した。

 

「そら、やるよォ!」

 

モードレッドは筒をランサーに向けて全力投球し、警戒したランサーは杭で筒を受け止めようとした。

 

「フラッシュバン」

 

杭に筒が当たる瞬間。筒から強烈な光が発せられ、ランサーと使い魔で戦況を見守っていたダーニックの視界を奪う。サーヴァントだけあってランサーの視力の回復は早かったが、視界が戻ったころにはモードレッドの姿は何処にも無かった。

 

「おのれ魔術師…!どこへ行ったぁー!?」

 

そのモードレッドだが、既にミレニア城砦内部に潜入していた。認識阻害のルーンや刻印を刻み、アサシンの気配遮断にも引けを取らない高ステルス性能を誇るダンボールを被り、城砦内部を疾走する。

 

「こちらスネーク、拠点内部への潜入に成功した。これよりミッションを開始する」

 

警備のホムンクルスやゴーレムをやり過ごし、爆発物を気付かれない様にバラ撒きながら城内を探索していく。時折発見されそうになるも、遂には城砦奥に隠されていた大聖杯へと辿り着く。

 

「案外呆気なかったな」

 

モードレッドは大聖杯へと干渉し、大聖杯の緊急用の隠し機能を起動させる。かつて大聖杯に直接干渉したモードレッドだからこそ知っている機能。一つの勢力にサーヴァントが統一された時のための、新たに七騎のサーヴァントを召喚する機能。

モードレッドが大聖杯の機能に干渉していると、大聖杯のある場所に慌ててやって来る者達が居た。ランサーとそのマスターであるダーニックだ。

 

「貴様!」

 

「おーう、ようやっと来たか。もう聖杯の機能は起動したぜ。今度は七対七の聖杯大戦と行こうじゃねぇか」

 

その後激昂したランサー達から転移魔術で逃げ切ったモードレッド。彼は今回の事の顛末を魔術協会に報告し、協会陣営、すなわち赤の陣営のマスターとして参戦する事になる。英霊召喚後、しばしの間フラッと姿を消していた期間があったが、魔術協会の関係者には「日本でちょっと狩りをな」と、とてもイイ笑顔で答えたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草木も眠る深夜。激しく刃を交える二つの影があった。

 

一方は、身の丈程の大剣を軽々と振るう、胸元と背中を開けた鎧を着る灰色の髪の偉丈夫。もう一方は、黄金の鎧に身を包んだ、大剣よりも更に大きな槍を振るう青年。

 

灰髪のセイバーは生身に槍を受けながらも傷を負わず、負ったとしても直ぐに傷が癒えていく。対して黄金のランサーもまた無傷。鎧は剣士の振るう大剣を受け止め、受けた傷も瞬時に回復していく。

互いに不死身の力を持ちながら、更には武芸の技量すらもほぼ互角。一歩も譲らぬ攻防を繰り広げる二人の戦いは、永遠に続くかに思われた。

 

そしてそんな戦いを見守る者が二人。一人はセイバーのマスターである、ゴルド・ムジーク・ユグドミレニア。もう一人は、腰まで届く金髪を編んだサーヴァントの雰囲気を持つ少女。この聖杯大戦の裁定者として大聖杯より直接召喚された、ルーラーのサーヴァントである。

 

静かに二騎の戦いを見守っていたルーラーだったが、近くに別のサーヴァントの気配を感じた。それと同時に、ルーラーはその場を飛び退いた。盛大な悲鳴を上げながら下半身が蛇の堕天使がルーラー目掛けて吹っ飛んで来たのだ。

 

「ほんぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「赤の…バーサーカー……!」

 

下半身が蛇の堕天使――サマエルはズザァっと地面を擦りながら飛び退いたルーラーの横を滑って行き、少し離れた所で停止した。赤のバーサーカーは力を振り絞って上体を起こし、震える声で言った。

 

「おのれ…たけのこめ……!それでも、俺は……きのこ派…だ……ガクッ」

 

意味不明な事を言って気を失うサマエル。そしてその気絶したサマエルを追って、一匹の巨狼――フェンリルが姿を現した。

 

「フッ…所詮きのこ派などこの程度、我等たけのこ派に敵う道理は無かったか。貴様が犬派なら見逃してやっても良かったのだが、よりにもよって貴様は猫派だった。恨むのなら貴様の嗜好を恨むのだな。さぁ、止めを刺してやろう」

 

フェンリルが足を振り上げ、サマエルを踏み潰そうとしたその時。

 

「平行×(ペケ)字拳!」

 

「ぎょばぁーーっ!」

 

顔の前で腕を交差させながら、超高速で飛んできたモードレッドがフェンリルの脇腹に直撃。フェンリルはそのまま吹っ飛んで近くの壁に激突する。

 

「さちっ。犬と猫、どちらかと言えば、俺は鳥派だ。……大丈夫かバーサーカー!?」

 

「あぁ…マスター……俺、負けちまったよ…きのこ代表なのに、負けちまったよ……!」

 

「もういい!喋るな!」

 

「マスター……俺…俺ッ!悔しいぜ!くや…し……い…………」

 

「おい、しっかりしろ!目を覚ませ!俺を置いてかないでくれ……!コペルニクス=スティーブン=ゲルガッチャ=ニコス=ヴィル=メイ=トロウ=ジャクソン3世ーーーッ!!」

 

「名前長っ!?そして間違ってるんだけど!?」

 

モードレッドとサマエルの間で寸劇が繰り広げられていると、先程壁に叩きつけられたフェンリルが立ち上がる。

 

「痛ってぇ…何なんだ一体?」

 

「お前が……!お前がコペルニクス以下略ゥをやったのか!許さん、絶対に許さんぞぉ!」

 

モードレッドはサマエルを地面に叩き付けながらフェンリルに絶叫する。

 

「扱い雑っ!?」

 

叩き付けられたサマエルは後頭部から出血し、悶絶しながら気を失った。

 

「ふんっ、許さなければどうだと「ガトリングレールガン!」えちょまっ」

 

モードレッドが瞬時に虚数空間から大型ガトリング機関銃を取り出し、フェンリルの台詞を無視してぶっ放した。弾丸は一発残らず命中し、強烈な痛みとダメージを与えられてフェンリルは悲鳴をあげる。

 

「ギャアァァァァァァァ!!」

 

「オラオラオラァ!……ん?チィッ弾切れか!」

 

レールガンを全弾撃ち尽くした後、モードレッドは機銃を捨てて何かが入った大きな袋を取り出す。そしてそれをフェンリルに向けてぶん投げた。

 

「ソォイ!」

 

「へぶっ…!……なんだコレ?」

 

フェンリルがまじまじと袋を見つめていると、投げた衝撃で袋が開いたのか中身が幾つか転がり出て来た。長方形の箱に幾つものコードが繋がり、点滅するランプが付いている。

 

「これもしかして……?」

 

「爆破」

 

「やっぱりかぁーー!」

 

袋一杯の爆弾は盛大な爆音を立てて爆発し、フェンリルを吹き飛ばした。モードレッドはそれを見届けた後、サマエルに蹴りを入れて叩き起こした。

 

「おい、起きろ」

 

「んあ…?もう終わりか?」

 

「あぁ、飽きた。フェンリルを黒の陣営に潜り込ませて内部からぶち壊そうとか考えてたけど、色々とメンドくなって止めた」

 

「あそう。フェンリルー!帰るってよー!」

 

「分かった」

 

サマエルはフェンリルにやられた傷など最初からなかったかのように立ち上がり、フェンリルもまたあれだけの攻撃を身に受けたにも関わらず平然と立ち上がる。

モードレッドは虚数空間からサイドカー付きのバイクを取り出し、それのサイドカーの側にフェンリルが乗り込む。

 

「あれ、俺は!?」

 

「おまえには、これ」

 

モードレッドはサマエルの首に輪っかにしたロープをかけ、バイクに乗り込む。そして直ぐにエンジンを噴かせて発車した。

 

「え?これでどうするぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

ロープの反対側はバイクの後部にくくりつけられており、バイクが走り出した事で引っ張られ、サマエルの首が絞まって引きずられていく。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛………………」

 

嵐の様にやって来て、また嵐の様に去っていった三人だった。

 

 

 

 

 

黒のセイバーと赤のランサーが戦っていた場所から去った彼等は、赤の拠点である教会近くに来た所でサマエルを降ろす。サマエルはこれから赤のバーサーカーとして他の赤の陣営と接触し、情報を集める事にしたのだ。

その間モードレッドとフェンリルは、ルーマニアに用意した自拠点に帰って黒の拠点を叩く準備をする事にした。

 

数日後。念話で襲撃の準備が整った事を伝えられたサマエルは、アサシンの宝具である城で手頃な柱を探し始めた。それを見ていた赤のアーチャーとランサー。彼等はサマエルがマスターと味方に引き入れた黒のアサシンと共に、黒の拠点に攻め込むと聞いて引き止めに来たのだが、何かを探すようにキョロキョロと辺りを見回すサマエルを見て、不審に思って問い掛けた。

 

「汝、一体何を探している?」

 

「ん~?ちょっと丁度良いサイズの柱をなー」

 

「柱ぁ?そんなもん探して何すんだよ?」

 

「決まってんだろ。攻め込むんだよ」

 

振り返って真面目な顔で答えるサマエルに対し、二人は顔を見合わせた後、片方は首を捻り、もう片方は肩を竦めた。

 

「おっ!これなんてよさそうだな!」

 

何が琴線に触れたのかはまったくもって分からないが、サマエルは城の柱の一本を圧し折り、頭上に掲げて城の外へ運び出した。

人差し指を舐めて立たせ、風向きを確認。そして大きく振りかぶり、

 

「オルァ!」

 

黒の拠点方面へ槍投げの要領で柱をぶん投げた。

 

「とぉーう!」

 

更にサマエルは投げた柱に向かって跳躍し、見事に飛び乗る。そしてそのまま空の彼方へと消えていった。

その光景に赤のアーチャーとライダーは呆然とし、使い魔の鳩越しに見ていた赤のアサシンもまた、ポカンと口を開けて呆然とするという似つかわしくない表情を、マスターであるシロウに晒した。

 

一方その頃フェンリルは、トゥリファスの郊外から穴を掘ってモグラの如く地中を進んでいた。ただ真正面から攻め込むのは芸が無いと判断しての事だった。

ミレニア城塞の東に存在するイデアル森林の地下に到着した所で、フェンリルは一時的に掘るのを止めた。その後霊体化してその場に留まり続け、自分の出番が来るまでスタンバる。

 

「暇でござる」

 

 

 

場面は戻ってサマエルへ。

ミレニア城塞へ一直線に向かう彼は、ふと後ろを振り向いた。自分を止めに来たアーチャーとライダーがまだ自分を追って来ているか気になったからだ。すると遠方にライダーの物と思しき三頭引きの戦車と、それに乗ってサマエルを追いかける二騎が見えた。

 

サマエルは目論見通りだとほくそ笑みながら、前方を見ていなかった事で柱の飛ぶ高度が落ちている事に気付かずイデアル森林に墜落する。サマエルは墜落の際に太い木の枝に後頭部からぶつかって柱から落ち、顔面から着地した。

 

「ふごっ!?げうっ!……ぁ~痛って~。酷い目に遭った」

 

サマエルは立ち上がって辺りを見渡し、自分の居る位置を確認した後、ミレニア城塞に向けて走り出す。木々を器用に避けながら爆走していると、前方に人影が見え始める。サマエルは人影の前で立ち止まった。

 

「お前は、黒のサーヴァントか?」

 

サマエルの問い掛けに対し、黒のサーヴァントは答えることなく構え―――

 

「そうさ!僕は黒のライダー、シャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォだ!さあ、尋常に勝負!」

 

―――るのではなく、普通に真名をバラして名乗りを上げたうえで構えた。聖杯戦争で自ら真名を名乗るなど、自殺行為に等しい。それは即ち、敵に弱点と手の内を晒すことなのだから。そんな事をするのは、真名などバレても問題ない程の実力者か、理性が吹っ飛んでいるかのどちら―――

 

「俺は赤のバーサーカー、サマエルだ!さぁ来いよライダー、武器なんて捨ててかかって来い!」

 

「何言ってんのさ!大事な武器を捨てたりなんてしないよ!」

 

訂正、余程の馬鹿を追加だ。

 

「ライダー、お前空は飛べるか?」

 

サマエルは翼を広げながら唐突にそんな事を言った。黒のライダーは不思議に思いながらも取りあえず肯定する。

 

「ならついてこい!ドッグファイトだぁ!」

 

サマエルは黒のアーチャーに狙われることも厭わずに空を飛び、黒のライダーが追って来るのを待った。それを見て黒のライダーは、自らの宝具であるヒポグリフを呼び出し、サマエルの後を追った。

 

先に空に上がっていたサマエルは空中に大量の光の槍を生成、それらを雨の様に降らせて攻撃する。黒のライダーはサマエルの周囲を回る様に槍を回避し、少しずつ距離を詰めていく。

このまま光の槍を降らせて攻撃し続けようとしたサマエルだが、城塞方面から飛んで来た矢に気付いて回避行動を取った。その後も矢はサマエルを狙って飛来し続け、矢を避けながらライダーと戦わざるをえなくなる。黒のアーチャーの援護によって余裕が生まれた黒のライダーは、一気にサマエルに向かって距離を詰めた。

 

「チィッ!黒のアーチャーかッ!」

 

黒のライダーの迎撃に宙に浮かせていた槍を使い切った後、サマエルは縦横無尽に飛行しつつ後ろから追いかけて来る黒のライダーに手の平を向ける。すると手の平からマシンガンの如く光の矢が放たれ、黒のライダーに牽制をかける。黒のライダーは光の矢を避けながらサマエルを追いかけて行く。暫くの間二人は、空中で壮絶なドッグファイトを繰り広げる。

 

「墜ちろォー!」

 

「墜ちないよ!」

 

サマエルの進路を塞ぐように黒のアーチャーが矢を放った事で一瞬だけ動きを止まり、その隙を突いてヒポグリフによる突進を仕掛ける。

 

「がっはぁ!」

 

ヒポグリフの突進はAランクに匹敵する物理攻撃となりサマエルを襲った。ダメージを負ったサマエルは森へ錐揉み落下するが、途中で体勢を整えて追い討ちとばかりに飛んで来た矢を翼を硬質化させて盾代わりに防ぐ。その後このまま空中戦を続け黒のアーチャーに狙われ続けるのは不味いと考えたのか、高度を落として森の中を低空飛行で飛んでいく。そして黒のライダーもまた、木々にぶつかる危険を承知でサマエルを追いかけて森に入って行った。

 

空から森に場所を変えても二人の戦いは続いた。サマエルは光の槍や矢を放って攻撃を、黒のライダーは接近からの馬上槍もしくはヒポグリフの突進による直接攻撃を、互いに木々の間をすり抜けながら攻防を行う。

 

「このっ!」

 

「当たるかっ!」

 

黒のライダーの突進を紙一重で躱した後、後ろから光の槍を放つ。黒のライダーはヒポグリフを急上昇させる事で槍を回避し、そのまま上方宙返りでサマエルの頭上を取った。更に勢いを殺さずにサマエルへと突進していく。

 

「いっけぇー!」

 

「それで勝ったつもりでありますかぁ!?」

 

回避ではなく迎撃を選択したサマエルは、巨大な光の槍を生成して投擲体勢に入った。突進してくる黒のライダー目掛けて投げようとしたその時。

 

 

「極刑王」

 

 

地面から、木々から、無数の杭が出現し、サマエルを串刺しにした。

 

「ぐふっ、ぐばぁっ!…………な、め、る、なぁぁぁぁ!」

 

全身を杭で穴だらけにされて血塗れになり、激痛に顔を歪ませながらも、サマエルは意識を保って冷静に対処した。まず翼を杭から引き千切りながらも脱出させ即座に動かしても問題ないレベルまで緊急再生。次に剣の様に硬質化させ、周囲の杭を切り裂いて破壊。最後に翼で全身を覆って防御態勢に入る。これで黒のライダーの突進を防ぐつもりだ。

 

「うおぉぉぉーー!」

 

「ぐ、くぅっ!」

 

翼で突進を受け止めたサマエルだったが、徐々に押され始めていき、遂には翼が壊れ、無防備な体に直撃しかける。

 

しかしその直前。

 

「邪魔だ」

 

「ッ!?この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)!」

 

突如現れたフェンリルが、黒のライダーを引き裂かんと爪を振るった。しかしライダーはサマエルに集中していた為にフェンリルに気付かず、攻撃を受ける直前に直感で宝具を使った。黒のライダーが持つ宝具の一つ『この世ならざる幻馬』。それは一瞬だけ世界の裏側に移動する事で、あらゆる干渉を無効化する次元跳躍の宝具だ。

 

しかしその宝具を使うのは、あと一歩遅かった。黒のライダーが宝具を使用し、次元跳躍が行われるまでの一瞬の内に、フェンリルの爪は命中した。

ヒポグリフは攻撃が避けきれないと悟った瞬間、己の主を守ろうと黒のライダーをフェンリルの居る反対側へ体を寄せ、自分の体を盾代わりに使った。

 

「グァァ…!」

 

「ヒポグリフっ!」

 

黒のライダーはヒポグリフが独断で庇った事で体勢が崩れており、攻撃を受けた衝撃で振り落とされる。黒のライダーの盾となったヒポグリフは、引き裂かれている最中に次元跳躍したためか致命傷には至らなかった。しかし、それでも傷は浅くないためしばらくの間は呼び出す事ができないだろう。

 

「フンッ仕留め損ねたか。まぁ良い。それよりもサマエル、何だその無様な姿は」

 

「しょうがないだろー?俺はお前と違ってステータスは低い方なんだ。モードレッドの魔力がバカみたいに多いからこそ俺は真正面から複数の鯖を相手どれるが、それが無きゃそっちのライダーと同程度のステしかないんだぞ?」

 

「その分スキルが豊富で不死身だろうが」

 

「そうですた。ていうか話してる間に再生完了…そういやフェンリル、お前って別に仕事なかったってうおぉっ!?」

 

サマエルがフェンリルに問い掛けようとした時、辺りから杭が飛び出して襲い掛かって来た。サマエルは慌てて空を飛んで回避し、フェンリルは―――

 

「温い」

 

―――その場で一回転すると周囲の杭が全て粉砕された。

 

「うーわ、相変わらずとんでもねぇパワー」

 

「さっきの問いの答えだが、お前がピンチっぽかったから救援に来た」

 

 

 

時は少し遡り、フェンリルのシーン。

 

サマエルが黒のライダーと交戦を開始する前、フェンリルは地中で耳を澄ませて地上の様子を窺っていた。サマエルの仕事が赤のサーヴァントを引き連れての敵陣への特攻なら、フェンリルの仕事はそれに対応しようと出て来た敵サーヴァントの撃破である。

 

地下からの奇襲の為にずっと地中に居たフェンリルだが、誰も来ないうえに来たとしてもサマエルの側に行っていて暇だった。それでも地中で待機していたが、その結果。

 

「……ZZZ」

 

そのまま寝てしまった。

目が覚めたのは、自分の上で戦闘が起こった時だ。フェンリルの眠っている地中の上で、赤のライダーと黒のセイバー及び黒のバーサーカーがぶつかり合った。

 

「ZZZ…ふごっ!?」

 

「うおっ!?」

 

「ッ!」

 

フェンリルは赤のライダーの槍と黒のセイバーの剣が打ち合った音に驚いて飛び起き、頭だけが地表に飛び出る。丁度接近戦を行っていた赤のライダーと黒のセイバーの間にだ。

 

突然出て来たフェンリルに驚き、赤のライダーと黒のセイバーは距離を取った。

 

「…………寝てたか」

 

ゴソゴソと穴の中を探り、何かを取り出すフェンリル。取り出した物は、鮫の背ビレだった。それを背中に着けると、地中へ戻っていく。その姿が完全に見えなくなった後、地中から背ビレが現れて黒のバーサーカーへ向かって行った。

 

「ウゥ……!」

 

黒のバーサーカーは分かりやす過ぎる脅威を警戒し、戦鎚を構える。背ビレと黒のバーサーカーの距離が1メートルもなくなったとき、背ビレが地中へ引っ込んだ。

 

そして次の瞬間、黒のセイバーの足下から飛び出し、その身を食い千切ろうと牙を剥く。

 

「ッ…」

 

狙われた黒のセイバーは咄嗟にその場を飛び退き、剣を振るって反撃をするが、フェンリルは振るわれた剣を咬んで止め、強引に投げ飛ばした。

投げられた黒のセイバーは空中で体勢を整え、危なげなく着地する。

 

黒のセイバーを投げた後、フェンリルは直ぐに地中へ戻り、今度は黒のバーサーカー目掛けてトビウオの如く飛び掛かる。

 

「吾輩はトビウオだぁー!」

 

「ウゥァー!」

 

黒のバーサーカーは飛び掛かるフェンリルを戦鎚で受け流そうとするが、力の差がありすぎて吹き飛ばされてしまう。

 

地面が近付くとフェンリルは体を捻って高速回転させ、ドリルの様に潜っていく。

 

その後何度も出ては潜り、出ては潜りを繰り返し、辺り一面を穴だらけにする。そして一瞬だけ穴から顔を出した後直ぐに引っ込め、また別の穴から顔を出し、という行動を繰り返す。この動き、どう見てもモグラ叩きである。

 

ふざけている様に見えるが、実際は今のフェンリルはとても厄介な存在である。

どこの穴からいつ飛び出すか分からず、出たとしても一瞬。そしてその一瞬ですら致命打となりうる一撃を繰り出していくのだから。

 

黒のセイバーとバーサーカーはこの奇抜な戦法に翻弄され、セイバーはともかくバーサーカーは今にも殺されてしまいそうだった。

 

「ッウァ!?」

 

攻撃を避けた際に穴に足を取られ、体勢を崩す黒のバーサーカー。黒のセイバーによるフォローも間に合わず、次にフェンリルが顔を出した時、その身が引き裂かれるのは目に見える。

 

しかし次に顔を出した時、フェンリルは攻撃をせずに直ぐに顔を引っ込めた。自分目掛けて矢が飛んできたからだ。

 

「アーチャーか……む?」

 

黒のバーサーカーを討つ機会を黒のアーチャーに邪魔をされてイラついていると、モードレッド経由でサマエルがピンチだと教えられる。

フェンリルは穴から飛び出てサマエルの居る方向へと走った。

 

「そして、今現在へと至る。という訳だ」

 

「今の全部お前の回想!?」

 

 

 

黒のランサーと黒のライダーに相対するフェンリルとサマエル。二人は戦闘をそこそこに切り上げて、空を見上げて言った。

 

「さて、そろそろかな?」

 

「そうだな」

 

戦闘を止めて空を見上げ始めた二人を不可解に思う黒のランサーとライダーだが、この好機を逃す手は無いと攻撃を仕掛ける。

だがサマエルは自分たちの前方に壁の様に光の槍を突き立て、周囲から生える杭はフェンリルが尽く破壊する。

 

「ああ、お前たちも他人ごとではないから一応聞いておけ」

 

 

 

 

 

「「うちのマスターが、ここら一帯を焼き払うらしい」」

 

 

 

 

 

そしてそのモードレッドはと言うと。

 

「ただ今高度五万メートルを飛行中。視界は良好、障害物は無し。このまま目標地点へ移動する」

 

成層圏界面を、超大型の自作爆撃機で飛行していた。

 

「ふはははは!いくらアーチャーと言えども、五十キロも離れた所にあるステルス迷彩を施した機体を見つける事などできまい。このままミレニア城塞を爆撃してやるぜ」

 

物騒な事を喋りながら、ミレニア城塞に向けて爆撃機を飛ばしていく。

勿論のことだが、ただの爆撃機が成層圏界面など飛行できる訳も無い。この機体はモードレッドにより徹底的に改造されており、その改造は魔術に限らずモードレッドが行ったことのある様々な世界の先端科学も組み合わさって、中層圏どころか熱圏での航行をも可能としている。

 

「ん~レーダーじゃあこの辺がイデアル森林だなぁ。んじゃあアイツ等がおっぱじめたから、俺も動くか」

 

モードレッドがスイッチを押すと爆撃機の下部が開き、大量の爆弾が森林に投下された。投下された爆弾は爆発と同時に爆炎と衝撃を周囲に振り撒いて、木々を薙ぎ倒し、森を焼いていく。

 

「ぬぅぅっ!一体何事だ!?」

 

「だーから言ったろ。うちのマスターが焼き払うってよ」

 

「ナパーム弾か……しかも中身はクトゥグアの焔と来た。これは簡単には消えんな」

 

森林が燃え盛る中、四騎の戦いは再開する。

モードレッドによって森が焼かれ始めた事で既に赤のアーチャーとライダーは撤退を始めており、やがて他のサーヴァントが来るだろうが、それでも二人は戦いを止めない。黒が二人を逃がす気が無いのもそうだが、それ以上に今のところ彼ら自身が撤退の必要性を感じていないからだ。なによりマスターであるモードレッドが上空で爆撃を行っている。こんな面白そうな状況をみすみす見逃す手は無い。

 

途中から黒のセイバーとバーサーカー、さらにゴーレムを遠隔操作する事でキャスターまでもが参戦してきた。2対5という状況下でも二人は劣勢にならずに立ち回っていた。

その理由は二つあり、一方は二人の連携の上手さ故だろう。互いに互いの癖を網羅している二人は、抜群のコンビネーションで黒と渡り合う。

もう一方はサマエルの宝具が原因だ。サマエルの宝具は対龍に特化しており、サマエル自身が黒のセイバーは自分の格好の獲物だと直感で理解し、黒のセイバーが戦いづらくなるように立ち回っている。

 

しかしそんな二人から余裕が消えたのは、アーチャーが一向に自分たちを攻撃してこないのに気付いた時だった。黒の陣営はアーチャー以外全員自分たちと戦っているのに、なぜアーチャーは攻撃してこない?と疑問に思うと同時に、一つの予想が出た。

 

「「(アーチャー、モードレッドを狙ってんじゃね?)」」

 

そして直ぐにその疑問の答えは出る事になる。

 

「(あー、こちらモードレッド。撃破されますた)」

 

二人は互いに背中合わせになりながら会話を始める。

 

「マジかよ。おいフェンリル、迎えに行くか?」

 

「いや、アイツのことだ、転移で逃げる準備くらいは整えているだろう。しかも、そのまま爆撃機ごと城に突っ込むくらいの事はしそうだ」

 

「そうだn…………おい。あの爆撃機のサイズからいって、まだ全然弾を使い切ってないよな?」

 

「あぁ、しかも使うと同時に転移で自動充填される仕組みだから、弾なんていくらd………まさか…?」

 

フェンリルとサマエルは顔を見合わせた後、城砦の反対方面へ向けて脱兎の如く逃げ出した。

 

「走れぇぇぇぇぇーーー!!」

 

「味方の自爆に巻き込まれて死亡とか絶対に嫌じゃーーー!!」

 

無論の事、背を向けて逃げ出す二人を仕留めようと追撃を行う者も居るが、二人は傷を負う事すら厭わずに走り続ける。その様子を見て何故彼等が逃げたのか悟った黒のアーチャーは、直ぐにこの事を自分のマスター経由で全員のマスターに通達。令呪で結界により守られている城内へと、サーヴァント達を転移させた。そして次の瞬間。

 

 

 

 

 

真夜中に太陽が現れた。

 

 

 




戦闘結果(リザルト)

【戦闘参加者】

『赤の陣営』
・モードレッド(マスター)
・フェンリル(黒のアサシン)
・サマエル(赤のバーサーカー)
・赤のライダー
・赤のアーチャー

『黒の陣営』
・黒のセイバー
・黒のランサー
・黒のアーチャー
・黒のライダー
・黒のバーサーカー
・黒のキャスター
・その他ホムンクルス大勢

『中立』
・ルーラー

【死亡者】
・サーヴァントには無し
・ホムンクルス大勢

【被害】
・イデアル森林(全焼)
・ミレニア城砦(一部損壊)
・赤のアサシンの城(柱一本)
・戦略爆撃機一機(全壊)
・ルーラーの胃(ストレス性胃炎)
・監督役の睡眠時間(事後処理の量が桁違いに大きい)

『被害総額:プライスレス』

【総評】
 C
次はもっと被害を抑えたうえでサーヴァントを倒しましょう。

三馬鹿「「「嫌だね」」」
ルーラー×2「「いやホントお願いします」」





【真名】サマエル

【CLASS】バーサーカー

【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷A 魔力A 幸運D 宝具EX

【保有スキル】

[クラススキル]

狂化E-

[固有スキル]

超再生EX
瀕死の重傷を負おうとも、霊核を両方破壊されようとも、魔力さえあれば何度でも復活できる。ただし重傷であればあるほど回復に必要な魔力は上がり、さらに治りも遅くなる。そのため霊核を両方破壊されれば、延々と殺し続けられる無限ループとなる。

光力放出A+
魔力を天使や堕天使が使う力、光力に変換して扱う。光力は熟練すれば自由自在に形状を変化させられるが、サマエルはもっぱら槍しか使わない。
通常の魔力放出と同じように、単純にステータスを上昇させる事も可能。

【宝具】

神の毒(サマエル)
種別:対龍宝具
対龍に特化した死の呪い。
サーヴァント化した事で大幅に劣化しているが、それでも竜の力を持つのサーヴァントを殺すには十分。しかし本体とは違い、攻撃に呪いを乗せる事も、呪いで直接攻撃する事もできない。
そのため使い方は血を直接相手にぶっかけるしかない。

神の悪意(サマエル)
種別:対信仰宝具
本来あり得てはならない、聖なる神の悪の側面。それを一身に背負うサマエルは云わば、もう一人の聖書の神。その身は聖書の神に由来するあらゆる干渉を無効化する。



【真名】フェンリル

【CLASS】アサシン

【ステータス】筋力A++ 耐久A++ 敏捷A++ 魔力D 幸運C 宝具-

【保有スキル】

[クラススキル]

気配遮断B

[固有スキル]

神殺しの爪牙A+
加護などの神を由来とするスキル、宝具を無効化できる。さらに神性持ちには、ランクが高いほど追加ダメージを与える。

怪力A+

【宝具】

宝具分のリソースがステータスに割り振られているため、宝具未所持。
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