世界に嫌われた少女も異世界に来るそうですよ?   作:あばばばば

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さあ、待ち望んでいたであろう変態の登場回ですよ。


変態……変態!

 声をかけた結果、ジンは耀の看病に残ると言い、現在は十六夜、燈火、飛鳥、黒ウサギの四人が”サウザンドアイズ”二一◯五三八◯外門支店の前までやって来ていた。

 レティシアには、先に白夜叉の元で保護してもらえるように、一足先に行ってもらっている。

「ねえ、十六夜」

「ん? どうした?」

 いまだおとぎ話の中に出てくる『魔女』のような格好をした燈火に問われ、十六夜は自分の背中の方を見た。

「……私、もう足は治ってるよ」

「それで?」

 まるで意に介さない彼に困惑しながら、現状をもう一度見直す。

 やはり、燈火に変なところは見受られない。十六夜の行動に問題があるのだ。

「どうしてまだ私を背負って行動するの?」

 そう。すでに一人で出歩くことができるはずの燈火は、またも十六夜に背負われてここまで来たのだ。もちろん、疑問に思っていたのは燈火一人ではない。

 飛鳥も黒ウサギも、ここまで訊けなかっただけなのだ。

「んー……そうだな。燈火はなんでだと思う?」

「…………さっぱり」

「なんだよ、張り合いのない。まあ、言っちまえばなんとなくだな。おまえは他の奴らと比べて儚く映りすぎるから、あまり放っておけねんだよ」

 実際に思っていたことであるかは別として、儚く映る、という部分では燈火を除く女性陣が肯定するように頷いていた。

「もちろん、不満があるなら聞くぜ?」

「……不満? 例えば?」

 燈火自身は不満に思うこともないので、何気なく質問をしてみた。

「振動が大きいとか、もしくはおんぶより抱っこの方がいいとかだな」

「なぜかしら、十六夜くんが変態に見えてきたわ」

「見えてきた、ではなく変態なのですよ」

「おいコラ、聞こえてるぞ女性陣。あとで二人まとめて用水路に落としてやるから覚悟しとけよ」

 この発言により、二人からの視線が冷たくなった。

 しかし、そんなもん気にしないのが十六夜という男である。

 正直、燈火がピッタリと引っ付いているので他のことは割りとどうでもいい。

「抱っこ……されたことないかも」

 ボソリとつぶやかれた声は、当然十六夜にも届いた。

(おい、俺は一度した覚えがあるんだが?)

 燈火をお姫様扱いしたときのことである。まあ、後日の朝の出来事により忘れている可能性は高い。

「なんだ経験ないのか」

 仕方なく話に乗り、後ろに回している手を動かす。

「うん。してくれる人もいなかったし、それに……わっ!?」

 話の途中で、燈火は自分の体がくるりと回ったのがわかった。

 思わず目を瞑ってしまったが、再び目を開くと、景色が大きく変わっている。

 これまで十六夜の頭で隠れていたものが見え、代わりに振り返ると見えていた景色はなにかに阻まれるように見えなくなっていた。

「……?」

 背負われているときとは違い、全身を包み込むように抱えられている気がする。

 見上げると、こちらを見て薄く笑みを浮かべている十六夜の顔があった。

「思い出したか? 一回こうしてやったこと」

「へ……あっ」

 顔を真っ赤にして俯く燈火。

 反応を楽しむよ十六夜。

 だが、彼はもう少し燈火を抱える場所に気をつけるべきだったかもしれない。

「……んぁ」

「は?」

 いきなり、燈火が小さく声を発したのだ。

 あまりに突然のことに、十六夜もピクリと動いた。だが、その拍子に燈火が身をよじった気がした。

「おい燈火、あまり動くなよ」

「……ひうっ!? い、十六夜が触ってくるから……」

「なに言ってんだよ、おまえは」

 十六夜が首をかしげると、燈火が恨めしそうに十六夜を睨む。

(そんな表情もできたのかよ。しかしあれだな。魔女っ子コスにその表情は反則的だろ)

 何事もなかったかのように進もうと足を踏み出すと、突如、後ろからスパァンッ! といい音が鳴った。同時に、十六夜は後頭部を叩かれたような違和感を覚えた。

「なにをしてるんですか! なにを!」

 振り返ると、うさ耳をピンと伸ばした黒ウサギが怒声を浴びせてくる。少し後ろでは、飛鳥もにらみをきかせている。

「なにをって、抱っこしてるだけだが」

 二人の表情を見ても顔色ひとつ変えずに対応するのが十六夜だ。

「だけじゃないでしょう! なら、なんでむ、むむむ胸を揉んでるのよ!」

「そうですよ!」

 飛鳥が意味もわからず顔を赤く染めながら、なんとか問いを口にする。

「……ん? ああ………………」

 無意識、というよりも触っているなど考えてもいなかったのだろう。これまでの燈火の様子がおかしかったことに納得した十六夜は、なにも言わずに手の位置を変えた。

「人間身近なことには気づかないもんだな」

 その程度か、と黒ウサギたちは思っていたが、燈火は実を言うとひと付き合いのなさからか、男女の仲にも、まして十六夜以外の男性がどうあるのかを知らない。いや、知ることはできるのだ。他にどんな人がいるのかも、どのような行動をするのかも、知ることはいくらでもできる。

 しないのは、これまでは無意味だったからだ。

 たとえ知ったところで、会いにはいけない。会いには来ない。ならば、存在を知ってしまうだけ悲しくなるだけだ。

「……十六夜は、私を置いてったりする?」

「いや、その気はまるでねえな」

 少し前のことを完全になかったかのように会話する十六夜は、言ってしまえば燈火が初めて触れる友人であり、異性である。

 彼が燈火の中で唯一の。

「ならいい……。十六夜の行動はある程度なら許容する……」

「ははっ、ありがとよ」

 自分たちの距離感がどうであるかを考えない二人は、どうでもいい会話をしながら歩いていく。

 その後に続く黒ウサギと飛鳥は完全に疲れ切っていた。

「なんなのよ、あの二人。あと、私も燈火さんと話したいのだけれど」

「まったくですよ……。どうして燈火さんは気にしないのですか」

 燈火もどこか外れている少女であることを再確認した二人は、突っ込むことを諦め、静かに歩調を早めた。

 

 

 

 ほどなくして”サウザンドアイズ”の門前に着いた四人を迎えたのは例の無愛想な女性店員だった。

「お待ちしておりました。中でオーナーとルイオスさまがお待ちです」

「黒ウサギたちが来ることは承知の上、ということですか? あれだけの無礼を働いておきながらよくも『お待ちしておりました』なんて言えたものデス」

「‥‥ことの詳細は聞き及んでおりません。中でルイオスさまからお聞きください」

 定例文にも似た言葉に憤慨しそうになる黒ウサギだが、店員の彼女に文句を言っても仕方がない。

「みなさん、行きましょう……っていない!?」

「あなたが無駄なことを言っているうちに奥へ行ってしまいましたよ」

「なんで止めてくれないんですか!」

「あなたが話しかけてきたからです」

「……」

 なにも言えなくなった黒ウサギは、急いで問題児たちの後に続いた。

 

 

 

 

 

 

「おー、遅かったな黒ウサギ」

 おそらく先に行くことを提案したであろう十六夜が、待ちくたびれたように言った。

「ひどいのですよ!」

「なに言ってやがる。先に部屋に入らずに待っていて俺たちの優しさがわからねんのか?」

「そうよ、あなたが来るまで待っていてあげたのよ?」

「……遅い」

「それはありがとうございま……って、先に置いていったのは誰ですか!」

 スパスパーンと軽快な音が響く。

 ちなみに燈火は十六夜から降ろされていた。

「……おい、なんで燈火は叩かないんだよ、不平等だろ」

「まったくだわ」

「え? いや、でも……」

 十六夜と飛鳥は燈火を黒ウサギの前に出す。

「燈火を仲間はずれにするつもりか?」

「かわいそうだわ」

「……私、かわいそう?」

 見事なチームプレーである。

「あ、いや……で、でも燈火さんを叩くと儚すぎて砕けそうといいますか、いえ、仲間はずれにしたいわけでは!」

 と、ここでからかわれているのがわかったのだろう。

 目の前の三人が笑いをこらえているのがわかった。

「も、もう! なんで黒ウサギばかり!」

「いや、悪かったな。とりあえずもう行こうぜ」

「悪いと思ってる気がしない!?」

 もちろん思っていない。

 次はどういじるかを考えるくらいには思っていない。

 気を取り直して、離れの家屋に入ると、中で迎えた変態は黒ウサギと燈火を見て盛大に歓声を上げた。

 変態が誰かって? 言うまでもない。

「うわお、ウサギじゃん! うわー実物初めて見た! 噂には聞いてたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった! つーかミニスカにガーターソックスって随分エロいな! それで、そっちの子はなんだ!? 魔女っ子なんて箱庭にいたか!? しかもいまから僕好みに育てれば最高の女になるじゃん! ねーきみたち、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」

 ルイオスはさすがの変態性を晒すと、十六夜すら滅多にすることのない底冷えするような視線を、燈火以外が彼に浴びせた。

「ちょ、なんだよこの雰囲気! まるで僕が悪者じゃないか!」

「「「「黙れ変態」」」」

「ちょ、おい誰だいま変態って言ったの!」

「「「「ほぼ全員」」」」

「この野郎!」

 出会って数秒で変態と格付けされたルイオスの視線から燈火を隠すように、十六夜は彼女を自分の後ろに移動させる。

「十六夜……」

「安心しろ。あんな変態におまえを渡す奴は、この場にも、コミュニティにも一人もいねえ」

「……うん」

「ここまでわかりやすい外道も久々ね。先に言っておくけどこの美脚は既に私達のものよ」

「そうですそうです! 黒ウサギの美脚は、って違いますよ飛鳥さん!!」

 突然の所有宣言に慌てて突っ込みを入れる黒ウサギ。

 そんな二人を見ながら、十六夜は残念そうにため息をつく。

「マジかよ、すでにお嬢様のもんだったか。なら、俺は燈火でも――」

「燈火さんも私のものよ!?」

「そうですそうです! 黒ウサギも燈火さんも、って黙らっしゃい!!」

「よかろう、ならば黒ウサギの脚と燈火を言い値で」

「売・り・ま・せ・ん! あーもう、真面目なお話をしに来たのですからいい加減にして下さい! 黒ウサギも本気で怒りますよ!!」

「馬鹿だな。怒らせてんだよ」

 スパァーン! とハリセンを一閃。そろそろ突っ込み役が板についてきた。

「あっははははははは! え、なに? ”ノーネーム”っていう芸人コミュニティなのきみら。もしそうならまとめて”ペルセウス”に来いってマジで。道楽には好きなだけ金をかけるのが性分だからね。生涯まとめて面倒見るよ? もちろん、その美脚は飽きるまで僕のベッドで毎夜毎晩好きなだけ開かせてもらうし、きみは将来のことも考えて僕に付き従ってもらうけどね。いや、きみもいまのうちにイロイロしてもらおうかね」

「お断りでございます」

「燈火が死ねってよ」

 黒ウサギと十六夜に速攻で却下された。というより、燈火はなにも言っていないのだが、そもそもルイオスには二人の声が届いていないようだ。

 その後も、めげずにルイオスの勧誘が続くが、それには取り合わず、一度仕切り直すことになった一同は、”サウザンドアイズ”の客室に向かうのだった。




あれ? ルイルイとのシーン全部終わらす予定だったんだけどなぁ……。
まあいいか、次回で終わらせるように努力しよう。
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