世界に嫌われた少女も異世界に来るそうですよ?   作:あばばばば

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またもや空気のようですよ?

 座敷に招かれた四人は、”サウザンドアイズ”の幹部二人と向かい合う形で座る。長机の対岸に座るルイオスは、舐め回すような視線で黒ウサギと燈火を見続けていた。

 嫌な視線にさらされながらも、黒ウサギは白夜叉に事情の説明を始める。

 余談だが、客室に来るまでルイオスの勧誘は続いたものの、誰一人として取り合った者はいない。周りの目には延々と独り言を言っているだけの近づきがたい人に映ったことだろう。

「と、”ペルセウス”が私たちに対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけたでしょうか?」

 そんなことは放っておいて、話は着々と進んで行く。

「う、うむ。”ペルセウス”の所有物であるヴァンパイアが身勝手に”ノーネーム”の敷地に踏み込んで荒らしたこと。それを捕獲する際における同士の暴挙。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日――」

「結構です。その程度で収まるものでは到底ございません。”ペルセウス”に受けた屈辱は両コミュニティの決闘を持って決着をつけるべきかと」

 はなから謝罪など受け取るつもりはない。

 レティシアが暴れまわったわけではないが、口裏はすでに合わせられている。なんの問題も心配もなく、黒ウサギはウソを告げた。

(ここまでは順調。あとは向こうのリーダーの出方しだい、か)

 ここまで静観している十六夜は、口元に薄い笑みを浮かべながら成り行きを見守っていた。来るべきときに備え、燈火への耳打も忘れてはいない。

 使える手段は打てるだけ打つ。これが十六夜の楽しみ方なのだ。

「”サウザンドアイズ”にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし”ペルセウス”が拒むようであれば”主催者権限”の名の下に」

「いやだ」

 これまで無視し続けられていたルイオスに、全員の視線が集まる。

「…………はい?」

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れまわったって証拠はあるの? ほら、あるなら出してごらんよ。まあ、ないんだろうけどさぁ!」

 上機嫌で笑うルイオスを尻目に、十六夜が唐突に立ち上がった。

「あんたが証拠を見たいって言うなら、見せてやろうか」

「はぁ? だから証拠なんてないってば。ないものはどうやっても証明できないよ、名無しくん」

 嫌味ったらしく笑うルイオスに、十六夜が右手を掲げた。

 その合図を見て、燈火の持つ箒が輝きを放つ。

「な、なんだ!?」

 光が収まると、ルイオスの目の前に薄汚れた鎧に身を包んだ男性が数人、姿勢を低くしてたたずんでいた。

 彼らはいずれも、”ペルセウス”のメンバーだ。

「驚かせてくれちゃって。なにかと思えば、うちの奴らじゃないか。こいつらがどうしたって言うわけ?」

「だから、証拠さ。物や映像じゃなくて悪いが、自分のところの奴の証言なら信じられるだろ。ほら、おまえらは起きた出来事を正直に話しさえすればいい」

 並ぶうちの一人の肩に手を置き、後ろから小さな声で囁く。

「それとも、ここで黙って――また子どもの姿になりたいか? 次は一生あのままだぜ」

 ビクリと、男性が震える。

 その様子を確認し、十六夜は男性から離れていく。

 黒ウサギと飛鳥も、その後の発言を気にして、自然と食い入るように彼を見つめる。

「あ……くっ! ルイオスさま、我々同士一同、此度の件において伝えたいことがございます」

「ああ、もちろんいいよ」

「つまり、そいつらの発言がそのままあんたの意見ってことになるわけだが、問題ないんだな?」

 十六夜も念のため聞いておくが、ルイオスは軽く流す。

「しつこいな。全然構わないさ。さあ、早く話しちゃいなよ」

 “ペルセウス”の同士の登場に、こちらの優位が揺らぐことはないと確信したルイオスは、寛容な態度で話すよう促す。

 自身のおこないがどのような意味をもたらすのか知らぬまま……。

「で、では……申し上げます」

 一瞬の静寂の後、再び声が発せられる。

「さきほどの”ノーネーム”の言葉はすべて真実であり、我々が所有していたヴァンパイアが”ノーネーム”の敷地を荒らしたのを目撃しています。また、それを取り押さえようとした我々も彼らの言葉に耳を貸さず、一言のあいさつもなく、巻き込む形で攻撃を行ったこと。これらはすべて真実であると、私の口から言わさせていただきます」

 この場にいるルイオスに続き、白夜叉にも頭を下げる。

(まあこの程度でいいだろう。言い逃れするには苦しい状況まで落とし込めばそれでいい)

 十六夜が男性の背後に回りこみ、よくやったと肩を叩く。

 その動作に、やっと安堵の息を吐いた男性は、燈火へと向き直り、目線だけでもういいかと語る。

 燈火はと言えば、もちろん彼女がそんな想いを込めて自分を見ているなどと考えているはずもなく、首をかしげるだけだった。

 仕方なく十六夜が頷くことで、彼らは子どもに戻らず生活を送れそうだ。

 燈火の力によってこの場に呼び出された数名の男性は、白夜叉の計らいによってコミュニティの本拠へと帰された。

「まさか”ペルセウス”の方から証言を取れるとはな。さて、お主はどうする?」

 白夜叉に問われた本人――ルイオスは机に拳を打ち付ける。

「クソッ、なんなんだあいつら! 突然現れたかと思えばこっちが不利になることばかり口走りやがって!」

 自分の手下が裏切るような行為を取るはずがない。

 思い上がっていたが故に、避けれたはずの事態を招いている。

「どうあれ、証拠は提示させてもらった。受けてもらうぜ、俺たちとの決闘」

「ふざけるな! あんな奴らの発言が認められてたまるか! 僕の知らないところであいつらをたぶらかしたんじゃないだろうな! おまえたちこそ、僕を陥れるために――」

「うるせえよ」

 往生際悪く、あがこうとするルイオスに、冷え切った一言が刺さる。

「おまえは仲間を信頼して、この場での自身の意思をあいつらに託したんだ。これはただのその結果。一度納得したことをねじ曲げようとか考えるようじゃ、上に立つ素質なんて元からなかったんだろ。だから大事な局面でやらかすんだよ」

「あら、それは言い過ぎではなくて、十六夜くん。これではまるで、”ペルセウス”のリーダーがその器もなく虚勢を張っているだけの小物のように聞こえてしまうじゃない」

 十六夜に続いて、飛鳥がフォローとはどうあっても捉えられない発言をする。

「おいおいお嬢様。ひどいこと言ってるのはどっちだよ? 俺はそこまではっきりとは言ってないぜ。だが残念だな。その意見を否定するだけのことを、俺はあいつから引き出せない。やっぱ、器じゃないんだろうさ」

 嘆くような身振りを見せ、少々大げさな動きを混ぜながら語る十六夜。

 どう見ても、二人は楽しんでいる。

「おまえたち、いい加減にしろよ!?」

 とうとう耐えきれなくなったルイオスは、机をまたいで反対側にいる十六夜へと手を伸ばそうとする。が、彼が簡単にそれを許すはずもなく、伸ばした手はなにもつかめずに空を切る。

「ハッ、どうしようもなくなって実力行使にでも出るつもりかよ」

 一瞬楽しげな表情をした十六夜だが、ルイオスを間近にして、つまらなそうな顔になる。

「この場で暴れるようならそれ相応で相手をするぞ、小僧ども」

 追撃に出ようとしたルイオスの肩に手を置き、その場に沈みこませた白夜叉は、両名に告げた。

「俺もやる気はねえよ。そいつを相手にしてもつまらなそうだ」

「くっそぉっ! 名無し風情がこんな真似をして許されると思うなよ! 徹底的に、徹底的に潰してやるからな! おまえらなんて二度と盾突けないようにぶっ潰す!」

 喚く声がうるさくなったのか、燈火は両耳を手でふさいでしまう。

「あー、うるさかったな燈火。だいじょうぶか?」

 十六夜が普段見せないような優しい笑みを浮かべ、燈火の頭を帽子の上から撫でる。

 この光景を、彼がいた世界の住人が見たのなら、驚きのあまり倒れているかもしれない。

「十六夜、あの人……」

「ああ、おまえも気づいたか。期待した俺が悪いってのはわかってるが、正直ため息もんだぜ」

 いきなりのことについていけてない他の面々は、十六夜の次の言葉を待っている。

「名前負けしすぎ。なにもかも俺の予想を大きく下回るって、どんだけだって話」

「未熟なんだと思う」

「そりゃそうだろうさ。これならおまえや黒ウサギ、春日部あたりと戦う方が楽しめるな」

 白夜叉がニヤニヤと笑い、そうだろうな、と心の中だけで思う。

 しかし、隠しきれず頷いてしまっていた。

 黒ウサギも苦笑いでごまかし、唯一力量を計れない飛鳥でさえ、ああ、やっぱりそうなんだ、と表情に隠そうともせず表す。

「ちょっ、なんだよこの空気! どいつもこいつも僕をバカにして! わかった、受ければいいんだろ!? そこで僕の力を示してやるよ! ただし、ゲーム内容はこっちで決めるからな!」

 まんまと十六夜たちの策にはまっていくルイオスは、最後は感情に任せて決闘の申し込みを受け入れた。いや、より正しく言うのなら、受け入れてしまった。

「日付は三日後。これだけ無礼を働かれたんだ。僕が勝ったらそこのウサギとそいつをもらうからな!」

「いいぜ。おまえに燈火は不釣り合いすぎてこいつ頭おかしいの? ってレベルだが、その条件は呑んでやるよ。だが、こっちが勝ったら金髪ロリをもらうぜ」

「いいよ。フフフ、調教するのが楽しみだなぁ。ウサギもエロいけど、なによりそっちの子がたまらないね、それじゃあ三日後に」

 これまでの失態や遊ばれたことなどは忘れ、勝ったあとのことを妄想し、上機嫌で帰っていく変態を見送った一同は、揃ってため息をついた。

 このとき全員が思ったことは、あいつ残念すぎる……ということだったとか。

 

 

 

 三日後。

 

 

『ギフトゲーム名 -FAIRYTALE in PERSEUS-

 

 ・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

          久遠 飛鳥

          春日部 耀

          夜鈴 燈火

 

 ・”ノーネーム”ゲームマスター ジン=ラッセル

 

 ・”ペルセウス”ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

 ・クリア条件 ホスト側のゲームマスターを打倒

 

 ・敗北条件 プレイヤー側ゲームマスターによる降伏

  プレイヤー側のゲームマスターの失格

  プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

 ・舞台詳細 ルール

*ホスト側ゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない

*ホスト側の参加者は最奥に入ってはならない

*プレイヤー達はホスト側の(ゲームマス ターを除く)人間に姿を見られてはいけない

*姿を見られたプレイヤーたちは失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う

*失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行できる

 

  宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、”ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

                              “ペルセウス”印』

 

 

 “契約書類”に承諾した直後、六人の視界は間を置かずに光へと呑まれた。

 消える寸前の燈火の姿は変わらず魔女のようであったが、その右手には、不思議なことにマイクが握られていた――。

 




最後の最後で次回の展開が読めるようになってしまったかもしれない。でも後悔はしてないです。
感想、批評お待ちしてます。
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