世界に嫌われた少女も異世界に来るそうですよ?   作:あばばばば

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なんでもランキング四位に載っていただとか。
一時期一気に読まれる数が増えたので疑問だったのですが、そんなことになっていたとは。
続きも書いていかないとですね。
では、どうぞ。


再会だそうですよ?

 四人が店から出ると、熱い風が頬を撫でた。

「……」

 珍しく、燈火の目に輝きが見える。

 だが、それもそうだろう。

 遠目からでもわかるほどに色彩鮮やかなカットガラスで飾られた歩廊に瞳を輝かせる飛鳥。

 昼間にも関わらず街全体が黄昏時を思わせる色味を放っているのは、街の装飾のせいだけではない。境界壁の影に重なる場所を朱色の暖かな光で照らす巨大なペンダントランプが数多に点在しているためだ。

 キャンドルスタンドが二足歩行で街中を闊歩している様を見て、十六夜も喜びの声を上げた。

 問題児たちは各々の楽しみを発見したらしく、いまにもそちらへと走り出してしまいそうなほどにはわくわくしていたりする。

 これではいくら燈火と言えど、普段通りの無表情を貫くのは難しい。

 楽しさとはまた違った感情だが、それでも、彼女にはいい変化を与えてくれそうな気配を感じ取れた問題児たちは、互いに顔を見合わせて、笑顔になった。

「やっぱり一緒に連れてきて正解だったわね。でも、私も早く行きたいわ!」

「うん。燈火、ちょっとだけ楽しそう?」

「どうだろうな。それより、お嬢様はちょっと落ち着けよ」

 などと、途中から白夜叉も混ざり話していたのだが、胸の高まりが鎮まらない飛鳥は、美麗な街並みを指差し熱っぽく訴える。

「もう降りましょう! あのガラスの歩廊に行ってみたいわ! いいでしょう白夜叉?」

「ああ、構わんよ。話は夜にでもしよう。暇があればこのギフトゲームにも参加していけ」

 着物の袖から取り出したゲームのチラシ。十六夜が燈火も連れてきて、四人でチラシを覗き込むと、

 

「見ィつけた――のですよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 ズドォン! と、ドップラー効果の効いた絶叫と共に、爆撃のような着地。

 燈火を除いた全員が跳ね上がり、後ろを振り返る。

 大声の主は、問題児を追ってきた彼らの同士・黒ウサギ。

「ふ、ふふ、フフフフ……! ようぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児様方……!」

 淡い緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振りまく黒ウサギ。

 燈火からすれば、黒ウサギがここまで怒っている理由に心当たりがないため、鬼ごっことは血も涙もない遊びだったのだと誤解を生んだとか。

 危険を感じ取った問題児の中で、真っ先に動いたのは十六夜だった。

「逃げるぞッ!」

「逃がすかッ!」

「え、ちょっと、」

 十六夜は隣にいた飛鳥を抱きかかえ、この場から眼下の街へと向け飛び降りる。耀は旋風を巻き上げて空に逃げようとするが、数手遅かった。黒ウサギは大ジャンプで耀のブーツを握りしめる。

「わ、わわ……!?」

「耀さん、捕まえたのです! もう逃がしません!!」

 どこかぶっ壊れ気味に笑う黒ウサギ。

 耀を引き寄せ、胸の中で強く抱きしめ、黒ウサギは彼女の耳元で囁く。

「後デタップリト御説教タイムナノデスヨ。フフフ、御覚悟シテクダサイネ」

「りょ、了解」

 反論を許さないカタコトの声に、耀は怯えながら頷く。

「さあ、あとは逃げてない燈火さんを捕まえて――いない!?」

 後回しにしても逃げないと踏んでいた黒ウサギは、見当たらない燈火に焦りを感じていた。

 なぜなら、彼女が本気で逃げようと思っているなら、逃げきれてしまう可能性が出てくるからだ。

「あわわ、黒ウサギは燈火さんの衣装をすべて把握してないのですよ……!」

 その通り。

 問題児たちも含め、"ノーネーム"の誰一人として、燈火の衣装をすべて把握している者はいない。自分たちの知らない格好をされてしまったり、最悪、ギフトまで使用されればそれで詰む可能性が高い。

「こ、こうしてはいられないのです!」

 白夜叉に耀を投げ渡し、十六夜たちの後を追うようにジャンプする黒ウサギ。

 本人たちが知る由もないが、問題児たちと黒ウサギのゲームは、後半戦にもつれ込むのだった。

 ところ変わり、ゆっくりとだが歩みを進める燈火。

 実を言うと、初めて十六夜と別行動を取っている気がする。そのためか、じゃっかん戸惑いにも似た感情が浮かび上がっては消えていく。

「黒ウサギには、悪いことしたかな……」

 別に本気で逃げる気もなく、なんとなく歩き出しただけなのだが、黒ウサギは自分に気付くことなく先に街まで行ってしまった。せめて自分も一緒に、と思ってしまうのは、彼女たちに依存してしまっているため。依存しきってしまうのはよくあにことだ。

 自覚のある燈火は、依存ではなく、一緒にいたいと願い始めている。

 かつて、その身に宿る力を受け取ってしまったときのように、願い始めてしまった――。

 その行いがある結果を招くことになるのは、まだ随分と先の話だ。

 

 

 

 燈火が街に降りてきたころ、なんだかもう大騒ぎになっていた。

 街のあちこちから大きな音が聞こえ、たまに人の悲鳴、歓声が混ざって聞こえてくる。

 なんだかお祭り騒ぎなのか事件が起きたのかわからない。が、燈火の目はそんな中を走り抜け、飛び移るふたつの影を確かにとらえていた。

「十六夜と、黒ウサギ……?」

 なるほど。例の鬼ごっこの続きらしい。

 騒ぎの原因を突き止めた彼女は、特に止めるような無粋なこともせず、ただ目的もなく歩き出した。

 目に映る多くの品々。ショーケースに入れられた作品。

 どれも初めて目にする物なだけあって、飽きる暇がない。あちこちを見て回る燈火だが、ある作品の前で立ち止まり、食い入るように見つめる。

 視線の先にあったのは、龍の彫刻だった。

 黒く、純粋な龍。なにも知らず、けれどすべてを知っている小さな女の子。

(どうして思い出すんだろう。ねえ、いまあなたはどうしているの……。ギフトカードを見た限り、繋がりが消えた様子は見られない。なら、まだ近くにいる……? それともどこか遠くに)

 考えるだけムダなことだ。

 割り切るのは簡単だが、そう易々と切り捨てれるものではない。

 しばらく龍の彫刻を眺め、諦めがついたのか、燈火はまた他の作品へと駆けていく。

 

「燈火、もうさみしくない」

 

 小さな声でつぶやかれた言葉は、燈火の耳にも届いた。

 自分が呼ばれたことで、反射的に後ろを振り返るが、いるのは自分を知るはずもない他人ばかり。

 現に、誰もこちらを向いている人はいない。

「誰か、いたの……」

 訊いても返ってくる声はない。空耳かとも思ったが、はっきり聞こえすぎていた。

 周囲を見渡すが、やはり声の主とおぼしき者はいそうにない。

(思い出しちゃったから、呼ばれたように感じちゃったのかな)

 脳裏に浮かぶ少女の顔を思い浮かべながら、寂しそうな表情を見せる燈火。彼女にしては、わかりやすい顔をしている。

 作品を眺めるのを止め、フードを目深に被り歩みを進める。

 いままで鳴っていた建物を崩したような音は聞こえなくなったので、どんな形であれ決着がついたのかもしれない。

 どちらが勝ったところで、怪我さえしていなければ燈火としては満足なのだが。

「我、まだ燈火を大事に思う。久々の再会を祝福する」

「――え?」

 煙の上がっている方角に視線をやっていると、すぐ近くから声がした。

 反対側を向くと、黒い少女だ。

 腰を超えるほど長く伸びた艶やかな黒髪。燈火の着ていたワンピースとは正反対の黒いワンピースを着て、ジッと自分を見つめていた。

 紛れもない。あの日、目の前の現実に打ち砕かれた際に出会った少女が目の前にいる。

 こちらを見る双眸は、暗く、そして何者の闇よりもなお黒い。なのに、どうしてか安心感を得られるその瞳は、いつになっても変わることはない。

「燈火、久しい」

「……」

「燈火?」

 黒い少女は首を傾げ、返事のない彼女を見上げる。

「……どうして、ここに?」

「もとより、存在する場所に意味はない。我の存在はどこにあっても変わらない」

 理解するには不十分で、納得するにも至らない。

「でも、また会えてよかった」

「同感。感情が戻りつつあるの、わかった。とても嬉しい」

 瞬時に燈火の様子を見抜いた黒い少女は、燈火の手を取り微笑む。

 他人からしたら、その笑みは無表情でしかないが、燈火にとってはとてもわかりやすい笑顔であった。

「私もね、みんなに会えて変われたよ。変われたの……。あなたが教えてくれたんだよ、――」

 そうして彼女は、黒い少女の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 二人の少女の再会を、陰から観察する者が一人。

 会話の盗み聞きに飽きたのか、不気味な笑みを浮かべながら、その場をあとにする。

「ハッ、なにが変われただ。おまえはいまも、世界を破壊する者であることに変わりねえ。覚悟しろ。そして諦めろ。おまえは永遠に絶望していればいい」

 

 

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