世界に嫌われた少女も異世界に来るそうですよ? 作:あばばばば
他の作品に時間を割いていたため、こちらの更新が遅れてしまいました。その間に頂いた感想ですが、しっかり読ませてはもらっていますが、返信はこれからのものだけにさせてもらいます。申し訳ありません。
これからちょくちょく更新していこうと思いますので、またどうぞ、読んでやってください。
では、どうぞ。
おかしい。
自分ではわからない感情が、いくつも浮かんでは消えていく。
その言葉にならない感情と共に、燈火はある記憶を呼び覚ましては、無理やりに振り払う。
「違う……私は、いつだって…………」
「燈火?」
自分の名前を呼ぶ、耀の声。
いまはゲームの最中だ。自分が世話になっているみんなのためにも、なにかをしなくてはいけない時間なのだ。
そう思いなおした燈火は、しかし。
銃を相手に向けながら、撃つ動作をまるで見せない。
「燈火、だいじょうぶ?」
なにがあったのか想像できない耀は、燈火の側に降り立つ。
「……平気。それよりも、耀ははやく外に出て。この迷路を抜けるのが、一番早い」
だが、燈火はあくまで話すつもりはないらしい。
苦しげな表情を一切見せず、普段と変わらない顔を耀に見せる。
(無理、してるのかわからない……どちらにしろ、早めにケリをつけた方がよさそうだ。幸いにも、向こうのギフトのことはわかってきた)
耀はすでに、ジャック・オー・ランタンの秘密に気がつき始めている。
ならば、ここは燈火の言う通り、さっさとゲームを終わらせるために行動するべきだろう。
「わかった。でも、燈火も来て。二人でいこう」
「……うん」
燈火の手を取り、走り始める耀。
後ろを気にしつつも、やはりなにより気になるのは燈火の状態だ。
(いつもと、違う……十六夜がいてくれれば、なんとかなるのに!)
自分では彼女の様子の変化の原因がわからない。そう憤る。
「集中、して……」
「燈火?」
「耀も、わかってるはず。あの人たち……無視できるほど、弱くない」
なにせ、燈火は一度、力を直に見ているのだ。
仮に本気で来なかったとしても、耀を勝たせるのなら、意識を集中させるべきは燈火ではなく、相手にでなくてはいけない。
「燈火、でも……」
「だいじょうぶ。みんないてくれるから……なんとかなる」
それはなにを意味した言葉だろうか?
少なくとも、この状況に対して向けられたものでないことを、耀は悟った。
同時に、いまなにを言おうと、燈火の意見が変わらないことも。
「なら、勝とう。そうしたら、燈火と一緒にお昼寝したい」
ゲーム開始前に話した、お昼寝の約束。
「うん、しよう……二人でゆっくり、寝よう」
燈火も忘れていないのか、嬉しそうに笑ってくれた。
ひとつ頷いた耀は、意識を相手に向け始める。
ゲームに勝つために。なにより、できる限りはやく、燈火とお昼寝をしたいがために。
少女の原動力というのは、多く存在する。
たぶん、耀にとっては好きなことを好きな者とする。それは、さぞかし大きな原動力になるのだろう。なぜなら、彼女もまた、問題児であるのだから。その考えと行動を理解できるかと問われれば、否だ。
ゆえに、なにが原動力になったかなど、周りの者が気づけるはずもなかった。
「あーくそ! ちょろちょろと避けやがって! 三発同時に撃ち込むぞ、ジャック!」
「YAッFUUUUUUUuuuuuuuuuu!!」
アーシャが左手をかざし、次に右手のランタンで業火を放つ。先ほどより勢いを増した三本の炎。
対する耀は、燈火を抱えつつも、危なげなく、すべてをすり抜ける。
「……なっ…………」
その様子に、絶句するアーシャ。
(やっぱり。うん、これなら問題なくかわせる。この炎、出してるのはジャックじゃない。あの子の手で、可燃性の高いガスや燐を撒き散らせているんだ)
何度撃ち出そうとかわされ続けるアーシャは、種を見破られたことを察し、慌て始める。
「くそっ、やべえぞジャック……! このままじゃ逃げられる!」
攻撃は対処され、まるで届かない。
アーシャの言う通り、このままならば、二組の差は開くばかりだ。
「…………くそったれ。悔しいけど、あとはアンタに任せるよ。本気でやっちゃって、ジャックさん」
「わかりました」
え? と耀が振り返る。
遥か後方にいたはずのジャックの姿はそこにはなく、耀たちの前方に霞のごとく姿を現したのだ。巨大なカボチャの影を前にした耀は、驚愕して思わず足を止めた。
「これが、十六夜の言っていた……」
「ああ、やはり彼はあなたのお仲間でしたか。まあ、それはそれ。いまはゲームの最中ですので。失礼、お嬢さん」
ジャックの真っ白な手が、強烈な音と共に二人をなぎ払う。
かに見えたが、その直前、燈火がジャックに蹴りを入れていたようで、両者共に、樹の根の壁まで吹っ飛んでいた。
「ねえ、耀」
「なに?」
衝撃はさほどなかったようで、二人とも平気そうではあるが、かなりの距離を戻されてしまった。
「先、行って……」
「でも、それだと燈火が」
「平気だって、言ってる。それより、聞いて。あのね――」
視界の端では、アーシャがジャックと話している。
「さ、早く行きなさいアーシャ。あの子に本気を出されたら、守りながらでは戦えませんので」
「悪いね、ジャックさん。本当は私の力で優勝したかったんだけど……」
「それは貴女の怠慢と油断が原因です。猛省し、このお嬢さんのゲームメイクを少しは見習いなさい」
「う〜……了解しました」
アーシャは返事をしたあと、耀たちを一瞥もせずに走り抜ける。
「ま、待っ」
「待ちません。貴女方は此処でゲームオーバーです」
それではいけない。
「耀、言った通りだよ。私が残るから、早く行って……」
普段より、言葉使いの変わってきてる燈火。
この燈火は、いったい……考えている時間など、ないのはわかっている。
「ごめん、お願い」
短く感謝の言葉を告げ、耀は再び走り出す。
眼前にジャックが立ちはだかるが、直後。
「「「……いかせないって、言ったよ」」」
無数の燈火が、ジャックに絡みつくようにして出現し、彼の動きをほんの一瞬だが封じた。
「ヤホホ……こ、これは驚きました」
その一瞬を見逃す耀ではなく、最高速でジャックと燈火の横をすり抜けていく。
「あとはお願いね、耀」
残された燈火は、眼前でジャックに絡む自分たちを眺める。
「フフッ、やっぱり私たちは醜いね」
その声は、果たして燈火のものだったのだろうか? 彼女の顔には、見た事もない、楽しげな笑みが浮かんでいた。