世界に嫌われた少女も異世界に来るそうですよ?   作:あばばばば

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三ヶ月ぶり、くらいでしょうか?
他の作品に時間を割いていたため、こちらの更新が遅れてしまいました。その間に頂いた感想ですが、しっかり読ませてはもらっていますが、返信はこれからのものだけにさせてもらいます。申し訳ありません。
これからちょくちょく更新していこうと思いますので、またどうぞ、読んでやってください。
では、どうぞ。


それは誰を写したものなのか

 おかしい。

 自分ではわからない感情が、いくつも浮かんでは消えていく。

 その言葉にならない感情と共に、燈火はある記憶を呼び覚ましては、無理やりに振り払う。

「違う……私は、いつだって…………」

「燈火?」

 自分の名前を呼ぶ、耀の声。

 いまはゲームの最中だ。自分が世話になっているみんなのためにも、なにかをしなくてはいけない時間なのだ。

 そう思いなおした燈火は、しかし。

 銃を相手に向けながら、撃つ動作をまるで見せない。

「燈火、だいじょうぶ?」

 なにがあったのか想像できない耀は、燈火の側に降り立つ。

「……平気。それよりも、耀ははやく外に出て。この迷路を抜けるのが、一番早い」

 だが、燈火はあくまで話すつもりはないらしい。

 苦しげな表情を一切見せず、普段と変わらない顔を耀に見せる。

(無理、してるのかわからない……どちらにしろ、早めにケリをつけた方がよさそうだ。幸いにも、向こうのギフトのことはわかってきた)

 耀はすでに、ジャック・オー・ランタンの秘密に気がつき始めている。

 ならば、ここは燈火の言う通り、さっさとゲームを終わらせるために行動するべきだろう。

「わかった。でも、燈火も来て。二人でいこう」

「……うん」

 燈火の手を取り、走り始める耀。

 後ろを気にしつつも、やはりなにより気になるのは燈火の状態だ。

(いつもと、違う……十六夜がいてくれれば、なんとかなるのに!)

 自分では彼女の様子の変化の原因がわからない。そう憤る。

「集中、して……」

「燈火?」

「耀も、わかってるはず。あの人たち……無視できるほど、弱くない」

 なにせ、燈火は一度、力を直に見ているのだ。

 仮に本気で来なかったとしても、耀を勝たせるのなら、意識を集中させるべきは燈火ではなく、相手にでなくてはいけない。

「燈火、でも……」

「だいじょうぶ。みんないてくれるから……なんとかなる」

 それはなにを意味した言葉だろうか?

 少なくとも、この状況に対して向けられたものでないことを、耀は悟った。

 同時に、いまなにを言おうと、燈火の意見が変わらないことも。

「なら、勝とう。そうしたら、燈火と一緒にお昼寝したい」

 ゲーム開始前に話した、お昼寝の約束。

「うん、しよう……二人でゆっくり、寝よう」

 燈火も忘れていないのか、嬉しそうに笑ってくれた。

 ひとつ頷いた耀は、意識を相手に向け始める。

 ゲームに勝つために。なにより、できる限りはやく、燈火とお昼寝をしたいがために。

 少女の原動力というのは、多く存在する。

 たぶん、耀にとっては好きなことを好きな者とする。それは、さぞかし大きな原動力になるのだろう。なぜなら、彼女もまた、問題児であるのだから。その考えと行動を理解できるかと問われれば、否だ。

 ゆえに、なにが原動力になったかなど、周りの者が気づけるはずもなかった。

「あーくそ! ちょろちょろと避けやがって! 三発同時に撃ち込むぞ、ジャック!」

「YAッFUUUUUUUuuuuuuuuuu!!」

 アーシャが左手をかざし、次に右手のランタンで業火を放つ。先ほどより勢いを増した三本の炎。

 対する耀は、燈火を抱えつつも、危なげなく、すべてをすり抜ける。

「……なっ…………」

 その様子に、絶句するアーシャ。

(やっぱり。うん、これなら問題なくかわせる。この炎、出してるのはジャックじゃない。あの子の手で、可燃性の高いガスや燐を撒き散らせているんだ)

 何度撃ち出そうとかわされ続けるアーシャは、種を見破られたことを察し、慌て始める。

「くそっ、やべえぞジャック……! このままじゃ逃げられる!」

 攻撃は対処され、まるで届かない。

 アーシャの言う通り、このままならば、二組の差は開くばかりだ。

「…………くそったれ。悔しいけど、あとはアンタに任せるよ。本気でやっちゃって、ジャックさん」

「わかりました」

 え? と耀が振り返る。

 遥か後方にいたはずのジャックの姿はそこにはなく、耀たちの前方に霞のごとく姿を現したのだ。巨大なカボチャの影を前にした耀は、驚愕して思わず足を止めた。

「これが、十六夜の言っていた……」

「ああ、やはり彼はあなたのお仲間でしたか。まあ、それはそれ。いまはゲームの最中ですので。失礼、お嬢さん」

 ジャックの真っ白な手が、強烈な音と共に二人をなぎ払う。

 かに見えたが、その直前、燈火がジャックに蹴りを入れていたようで、両者共に、樹の根の壁まで吹っ飛んでいた。

「ねえ、耀」

「なに?」

 衝撃はさほどなかったようで、二人とも平気そうではあるが、かなりの距離を戻されてしまった。

「先、行って……」

「でも、それだと燈火が」

「平気だって、言ってる。それより、聞いて。あのね――」

 視界の端では、アーシャがジャックと話している。

「さ、早く行きなさいアーシャ。あの子に本気を出されたら、守りながらでは戦えませんので」

「悪いね、ジャックさん。本当は私の力で優勝したかったんだけど……」

「それは貴女の怠慢と油断が原因です。猛省し、このお嬢さんのゲームメイクを少しは見習いなさい」

「う〜……了解しました」

 アーシャは返事をしたあと、耀たちを一瞥もせずに走り抜ける。

「ま、待っ」

「待ちません。貴女方は此処でゲームオーバーです」

 それではいけない。

「耀、言った通りだよ。私が残るから、早く行って……」

 普段より、言葉使いの変わってきてる燈火。

 この燈火は、いったい……考えている時間など、ないのはわかっている。

「ごめん、お願い」

 短く感謝の言葉を告げ、耀は再び走り出す。

 眼前にジャックが立ちはだかるが、直後。

「「「……いかせないって、言ったよ」」」

 無数の燈火が、ジャックに絡みつくようにして出現し、彼の動きをほんの一瞬だが封じた。

「ヤホホ……こ、これは驚きました」

 その一瞬を見逃す耀ではなく、最高速でジャックと燈火の横をすり抜けていく。

「あとはお願いね、耀」

 残された燈火は、眼前でジャックに絡む自分たちを眺める。

「フフッ、やっぱり私たちは醜いね」

 その声は、果たして燈火のものだったのだろうか? 彼女の顔には、見た事もない、楽しげな笑みが浮かんでいた。

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