世界に嫌われた少女も異世界に来るそうですよ?   作:あばばばば

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燈火はもしかしたらチョロイかもしれません。
ちょっと押せば簡単に落ちるかもと思い始めました。


天使顕現……しましたか?

 燈火が震えていると、両肩に手が置かれた。

「落ち着け。ここにいる奴は誰一人として、おまえを軽蔑したりしない」

「そうですよ。燈火さんのこと、私たちはみんな仲間だって思ってるのです」

 十六夜と黒ウサギだ。

 燈火の事情を知っている二人は、彼女がどれだけつらい状況にあるのかは理解しているつもりだ。しかし、だからこそこの場で力を見せるべきだと考えていた。

 世界が否定するだけではないことを教えるために。

「燈火、おまえが強いかどうかは別として、ここには俺や黒ウサギ、果ては白夜叉までいるんだぜ? 俺たちがおまえを止められないわけないだろ。だから安心していいぜ」

「私が、最悪暴走しても、止められる……?」

「ああ」

 しばらく迷いを見せていた燈火だが、十六夜と黒ウサギに支えられ、決意する。

(世界は私を否定した……。あの日から、ずっとずっと、誰もが私を否定したんだ。でも、この世界でなら、私は――)

 次の瞬間、一条の光が差し、燈火の全身を包んだ。

「へぇ……。なんだか面白いことになりそうだな」

 燈火から離れた十六夜が呟く。

「というよりも、私たちは何も把握できてないのだけれど」

「意味がわからない」

 飛鳥と耀が十六夜と黒ウサギに向け、説明しろと言いたげな視線を送る。

 が、勝手に話していいものかと悩む黒ウサギ。

「悪いんだが、これは俺たちから言うわけにはいかないな。あいつが言いたくなるのを待つか、聞きに行くべきだろ」

 十六夜はすでに答えを持っており、燈火に聞いて来いと意見した。環境が環境なだけに、自ら言わない限りは彼も黙っているつもりだ。

「なら、コミュニティに帰ったらいろりろ聞くことにするわ」

「うん。燈火とも、友達になりたい」

「それなら黒ウサギも混ざりたいのですよ」

 女性陣の話を聞きながらも、十六夜は燈火を眺めていた。

「白夜叉、あいつの力が強力かどうかくらいはわからねえのか?」

「ふむ。現状なんとも言えんな。しかし、止められないほどではないだろう」

 こいつ使えねー。そう評価した彼は、燈火の髪の先端が白く変わっていくのを見て、僅かながら驚いた。

 緋色から白へと、先端へ行くほどにグラデーションがかかっていく。

「綺麗」

 耀が感嘆をこぼす。

「いや、まだだな」

 変化は髪だけに留まらなかった。

 燈火の来ていたわワンピースは形を変えていく。

 身体の線に沿うように纏わりついたドレス。満開の花のように大きく広がったスカート。そして、頭部を囲うように浮遊したリングから伸びた、光のベール。――それら全てが、目の覚めるような純白で構成されていた。

 それはまるで清らかな乙女のみに纏うことが許された花嫁衣裳か――さもなくば、闇の中に降り立った天使の姿を思わせた。

「天使顕現とはよく言ったもんだ。まんまじゃねえかよ」

「いや、しかしいい衣装をしている。肩出しの胸元から腹にかけての肌色成分の多さ! そして脱がしやすそうとくれば、買いだ! 黒ウサギとともに買おう!」

 十六夜と白夜叉は盛り上がっていた。

 白夜叉の目は本気だった。横に置いておきたいと思うほどには本気だ。

「浮遊できるのね」

「これなら燈火と空中散歩ができる」

 飛鳥と耀は、空中に浮いていた燈火に対しての話をしていた。

 耀の発言で、私はできないじゃない……。とか拗ねた一件はまあ、置いておこう。

「あの、怖くないの……?」

 燈火が恐る恐るといった様子で語りかける。

「まったく。むしろいいんじゃねえの」

「ええ。よく似合っているわ」

「今度私と空中散歩に行こう」

「黒ウサギもつきあうのですよ」

 予想外の反応に、どう返したらいいのかわからない燈火は、四人を見ながらただ黙っていた。

「ちょ、なんで泣くのよ!?」

「わ、私たちなにかした……?」

 けれど、自然と涙が流れていたらしい。

 事情を聞いていない二人がおろおろしだす。

(嬉しいときに泣いたのも、久しぶり……。今日はそんなことばっかりだ)

 うっすらと笑みを浮かべながら、空中から降りてくる。

 だが、降り立つ寸前、誰も予想していなかった事態が起きた。

「背中は丸出しか。よいのよいの! ほれ、ここか? ここかぁ?」

 ツーと白夜叉が燈火の背中をなぞる。

「ひゃっ……」

 大きくバランスを崩した燈火は、白夜叉ごと地面へと落下した。

「おお、黒ウサギに負けず劣らずのもみ心地! 吸い付いてくる素肌! これはもうゴバァ!?」

 燈火のことなぞ気にした様子のない白夜叉は、黒ウサギと十六夜に蹴り飛ばされ、グリフォンへと飛んでいった。が、グリフォンまで避ける始末だ。

 耀とグリフォンのゲームにおいて、スタート地点として建設されたゲートの柱へと、顔面から突っ込んでいったのは、もう無視してもいいだろう。

 現に、誰も白夜叉への反応を示さなかった。

「だ、だいじょうぶですか、燈火さん」

 黒ウサギが燈火を起こすと、

「だい、じょうぶ……。左足以外は……」

 無事だった左足で着地するはずでいたのだが、バランスを崩されたおかげで痛める結果になってしまった。

 まさに最悪だ。

「これだと移動に不便そうね」

「私が運ぼうか?」

「それはいい。コミュニティに帰ったら女性陣に運んでもらえ。仲良くするなら調度いいだろ。それに燈火は軽いからな。お嬢さまはともかく、黒ウサギか春日部なら楽勝だろ」

「そんなに軽いの?」

「まあ、軽すぎたな」

 飛鳥が恨めしそうに燈火を眺め始めた。

 スタイルはあまり変わらないはずなのだが、といった目だろうか?

「おんしら、美少女を蹴り飛ばすとはどういう神経をしているんだ。しかし、いい感触を楽しませてもらった。ギフトカードは持っていくといい」

 それなら初めから力を見る必要なんてなかったのでは? と全員が非難の視線を送った。

「コホン。とにかく、黒ウサギと燈火は今日から私のも――」

「なりません!」

 ハリセンではたかれる音が鳴り響いた。

 

 

 

 

六人と一匹は暖簾の下げられた店前に移動し、耀は一礼した。

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むのだもの」

「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」

「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。………ところで」

 白夜叉は真剣な顔で黒ウサギ達を見る。

「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」

「ああ、名前とか旗の話か? それなら聞いたぜ」

「ならそれを取り戻すために、"魔王"と戦わねばならんことも?」

「聞いてるわよ」

「………。では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 黒ウサギは黒哉の視線から目をそらす。

「そうよ。打倒魔王だなんてカッコいいじゃない」

「"カッコいい"で済む話ではないのだがのう………全く、若さゆえのものなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろう。それでも魔王と戦う事を望むというならば止めんが………そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ。それに緋色髪のおんしも、素質は認める。だがどうしてか知らんが、自身の力を嫌っておるな。そのままなら、死ぬぞ」

 予言するように断言する。耀と飛鳥は一瞬だけ言い返そうと言葉を探したが、魔王と同じく"主催者権限"をもつ白夜叉の助言は、物を言わさぬ威圧感があった。

「打倒魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。今のままでは魔王のゲームを生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれ死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ」

 全員にそう告げる。

「ご忠告どうも。だがな、次はお前の本気のゲームに挑みに行くから、その時にでも改めて評価してもらおうか!」

「ふふ、望むところだ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。………ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」

「嫌です!」

「その条件呑んだ!」

「呑みません!!」

 黒ウサギは即答で返す。対して白夜叉は拗ねたように唇を尖らせる。

「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯を遊んで暮らせると保証するぞ? 三食首輪付きの個室も用意するし」

「三食首輪付きってソレもう明らかにペット扱いですから!」

「その手があった」

「だな。じゃあ俺がいい感じの樹を切り倒してくるから、春日部は小屋の設計図と首輪の調達を頼む」

「うん。あとは――」

「なんの話をしてるんですかこの問題児様方あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 十六夜と耀は二人揃ってハリセンを叩きつけられた。

 怒る黒ウサギ。笑う白夜叉に十六夜と耀。店を出た五人と一匹は無愛想な女性店員に見送られて"サウザンドアイズ"を後にした。

 

 一日で両足を痛めた燈火は、元の緋色一色の髪、白地のワンピース姿に戻り、またも十六夜に背負われていた。

 コミュニティに戻ってからは耀と黒ウサギが主に助けてくれると言うので、それまでは十六夜が、ということになったのだ。

(コミュニティに帰ったら、あとの二人にも話さないと……)

 燈火はそんなことを思いながら、優しさに溢れた人たちとの交流を受け入れつつあった。

 




燈火がどんな感じなのかを近々絵で表してみるのもいいかなぁとか思い始めた作者です。
時間? そんなものはない!
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