世界に嫌われた少女も異世界に来るそうですよ?   作:あばばばば

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みなさん、こんばんはです。
いやー、五月ぶりですかね? 多分五月以来初の投稿じゃないでしょうか。
なので、一番待っている人が少ないはずのこの話から更新していきます!(ナンデダヨ!)
話を忘れた人たち、大丈夫ですからね。また最初から読めばいいじゃない! はい、すいません調子乗りました。待っていた方々、ありがとうございます。
またかわいい? 燈火の生活を書いていこうと思いますのでよろしくですよ。


ギフトゲームですよ?

 目を覚ますと、視界に金色が飛び込んできた。

 寝起きの働かない頭で、なんであるかを把握しようと手で触ってみるものの、毛のようであることしかわからない。

(私、昨日の夜どうやって寝たっけ?)

 自分の記憶が曖昧であることから、自然と眠りについたことを悟った燈火は、いつベッドに入ったのかと疑問に感じた。しかし、その問いの答えを探す前に、抱くようにしていた金色の物体が、もぞりと動いた。

「わっ!? え? ……これって、もしかして」

 静かに視線を下へと向けると、金色以外に、肌色や黒といった色が見え始める。

 それは、何度見直しても人の顔であり、もっと言ってしまえば、昨日出会った少年の顔であった。

 燈火はいま、十六夜の頭を胸に寄せるように抱きながら寝ている自分の姿を認識し、直後。

「ん? なんかいい香りがすると思ったら。こいつはいい」

 燈火の腕の中で、十六夜が目を覚ました。

「あ、あああああの……どういう、状況でこんな……」

 突然のことについていけず、燈火は羞恥で顔を真っ赤にさせながら疑問を口にする。

 十六夜は十六夜で、恥ずかしいなら離れればいいだろ、と冷静に思ったに違いない。同時に、離れないことに対してなんらかの推測を立てている表情をしていたが。

 放っておくと乙女のスクリームよろしく発狂する心配もあったので、彼はおとなしく疑問に答えた。

「おまえを迎えに行ってすぐに人の腕ん中で寝ちまったからそのまま連れてきた」

「じゃあ、なんで一緒に?」

「決まってんだろ。燈火が俺の服を掴んだまま離さなかったからデスよ」

 からかうように言ったその一言が、燈火の顔をさらに赤く染めた。

(離さなかったって私が? 私がだよね!? う、うぅ……)

 出会って一日も経たない相手になんて行動を取ってしまったのかと身悶える彼女を、愉快そうに見つめる十六夜は、楽しそうでありながら、どこか安心した表情を作っている。

(思ってたより明るく過ごせてるじゃねえかよ)

 などと、保護者とも取れる目をしていたことは、彼も知らないことだろう。

「さて、そろそろ起きて下に行かないとお嬢さま辺りに怒られそうだな」

「へ? う、うん」

 コクリと頷いた燈火を確認し、十六夜は笑みを浮かべた。それはもう、この後の反応が楽しみで仕方がないといった感じに。

「てなわけだから、そろそろ離してくれて構わないぞ。まあ、俺としては胸や肌の感触を楽しめて悪くない環境ではあるんだが――」

「ご、ごめんなさい!」

 指摘すると、瞬時に燈火が離れていく。

 が、彼女もうっかり忘れていようで。両足首を痛めている彼女が急激に動いて立とうとしてもできるはずはなく、痛みとともにバランスを崩し、ベッドから落下しそうになる。

「っ、バカか!」

 燈火の手を掴み、こちらへと引っ張りこむ十六夜のおかげで落下の危険から救われた燈火だが、離れようとした相手がさらなる至近距離で、それも相手から自分を抱く形になっている。

 ここでとうとう、燈火のキャパシティが限界を迎えた。

 朝一番。

 ノーネーム本拠で、言葉にならない乙女の声が響き渡った。

 

 

 

 

「うぅ、ひどい目にあった」

 自らの緋色の髪をいじりながら、十六夜の背に顔を埋める燈火。

「ヤハハ、俺は役得だったぜ?」

「私は恥ずかしさしかない……。まさか十六夜の服を離さなかったなんて」

 そっちかよ、と笑いたくなった十六夜だが、ここでいじるよりは後々のネタにしてやろうと、心の中に今日の出来事をしまいこんだ。

 忘れているかもしれないが、彼は自由気ままに生き過ぎる問題児である。

 たぶん何年後かの未来でもそれが変わることはないだろう。

「それにしても、朝はなにがあったのかしら?」

 フォレス・ガロのコミュニティの居住区を訪れる道中、飛鳥が燈火に問う。

 朝のこと、とは燈火の絶叫を指しているのが、彼女自身わかっていた。だが、どう答えてもあまりいい状況にはならないことを察してか、一向に口を開こうとしない。

 なんなら聞こえなかったふりをしてもいいだろうと思っている。

「私も、気になる」

 だが、相手は問題児だ。面白いことがあれば首を突っ込まずにはいられない彼女らが、簡単に諦めるはずもない。

 一瞬のアイコンタクトにより、耀も話に入ってくる。

「な、なにもなかった……」

 さすがに無視できなくなり、なにかがあったとわかってしまう返しをしてしまう。

「怪しいわね」

「うん、怪しい」

 結果、二人から好奇の目を向けられる。

「そうだわ、十六夜くんはなにか知らない?」

「さあな。俺はこいつが寝ている間は離れられないから本を読んでたんだが、特に変わったことはなかったぞ? 大方、変な夢でも見て慌てて起きたんだろ」

 突然話を振られたにも関わらず平然と返したことで、飛鳥は納得したように引き下がった。

(うなされていたのは本当なんだが、そんなことよりもだ)

 十六夜が気遣った反面、その顔にはこんな面白いネタをいま話すのは惜しいとハッキリと書かれていた。

(もう少しコミュニティに打ち解けてきたら明かしてやるか)

 その考えを知ってか知らずか、飛鳥も耀も、これ以上この話を続けることはなかった。

 なぜかうっすらと笑みは浮かべていたが。

 

 それからしばらく歩くと、目的の居住区が見えてきた。

 六人が一斉に視線を向けると、全員が微妙な反応を示す。

 それもそのはず。

 居住区が森のように豹変していたからだ。正面まで来て、ツタの絡む門をさすり、鬱蒼と生い茂る木々を見上げて耀がつぶやく。

「……。ジャングル?」

「虎の住むコミュニティだしな。むしろ妥当だろ」

「いえ、フォレス・ガロのコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず……。それにこの木々はまさか」

 ジンがそっと木々に手を伸ばす。その樹木はまるで生き物のように脈を打ち、肌を通して胎動のようなものを感じさせた。

「やっぱり、鬼化してる? いや、まさか」

「気持ち悪い……。十六夜、絶対あそこに近づけないで。絶対だよ」

「それは振りだと思っていいのか?」

 聞くと、燈火は全力で首を横に振った。

「みんな、ここに契約書類が貼ってあるわよ」

 飛鳥の声に、全員が門柱に貼られた羊皮紙の前に集まっていく。そこには、今回のゲームの内容が記されていた。

「なんだって?」

「ガルドの身をクリア条件に…………指定武具で打倒!?」

「これはまずいです!」

 ジンと黒ウサギが悲鳴のような声を上げる。

「このゲーム、そんなに危険なの?」

 飛鳥が心配そうに問う。

「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はルールの方で……このルールでは、飛鳥さんのギフトで彼を操ることも、耀さんのギフトで傷つけることもできないことになります」

「……どういうこと?」

「”恩恵”ではなく”契約”によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません! 彼は自分の命をクリア条件に組み込む事で、御二人の力を克服したのです!」

「すいません、僕の落ち度でした。初めに”契約書類”を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに…………!」

 ジンはギフトゲームに参加したのは今回が初めてであり、ルールが白紙のギフトゲームに参加することが如何に愚かなことであるかわかっていなかった。

「敵は命がけで五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな」

 十六夜のこの台詞に、飛鳥と耀はやる気を出していた。

 元より勝つ気である二人にとって、このくらいのハンデは相手のプライドを壊すのに好都合とさえ考えている。

「三人とも、気をつけて」

 燈火の言葉に頷いた参加者三人は、門を開けて突入していった。

 

 

 

 

 

 三人が突入してしばらく経ったころ、門前で待っていた黒ウサギ、十六夜、燈火の元に、獣の咆哮が届いた。

「なんだか面白そうなことになってるみたいじゃねえか。見に行ったらまずいのか?」

 そろそろこのつまらない状況に飽きてきていた十六夜が黒ウサギに聞く。

「お金をとって観客を招くギフトゲームもありますが、最初の取り決めにない限りはダメです」

「なんだよつまらねんな。審判権限とそのお付きってことでいいじゃねえか」

「だからダメなのですよ。ウサギの素敵耳は、どこからでも大まかな状況がわかってしまいます。状況が把握できないような隔絶空間でもない限り、侵入は禁止です」

「…………貴種のウサギさん、マジ使えね」

「せめて聞こえないように言ってください! 本気でき――」

「燈火はどうだ? お嬢さまたちの様子がわかったりとかしないか?」

 黒ウサギを無視し、背中にいる燈火へと話しかける。

「どうだろう。距離を殺すことならできるけど、ここから視界に収めるのはできない、かな」

「そうか。まあいい、詳しいことは御チビに聞けばいいしな」

「話の途中で無視は酷くないですか!?」

 二人して談笑する中、黒ウサギの悲痛な声が門前から響いた。

 余談だが、この叫び声はギフトゲーム中の三人の耳にも届いたとか。

 そうしている間にも、ゲーム終了の合図のように、木々が一斉に霧散していった。

 

 

 

 

 ゲーム終了後、黒ウサギは三人の元に一目散に走り出した。彼女を追うように、十六夜が燈火を背負って追随する。

「おい、そんなに急ぐ必要があるのか?」

「大ありです! 黒ウサギの聞き間違いでなければ、耀さんはかなりの重傷のはず……あっ!」

 三人がジンたちの元に駆けつけると、すぐに耀が怪我を負っていることがうかがえた。右腕からの出血が酷いことから、傷跡もそれ相応のはすだ。

「すぐコミュニティの工房に運びます。あそこなら治療器が揃ってますから!」

 黒ウサギが耀を抱えようとしたとき、燈火が静止の声をかけた。

「待って。せめて傷だけでも早めに塞がないと。本当は他人に簡単に行使していいわけじゃないんだけど」

 言うが早いか、燈火の全身が赤く発光を始めた。

「へえ……」

 十六夜は自分にかかる体重が軽くなったことを確認し、燈火を下ろす。すると、彼女は数十センチ空中に浮かび上がり、変化を見せ始めた。

 着ていたワンピースは白い和装へと変わり、袖が半ばから揺らめく火焔に変化した。天女の羽衣のごとく身体に絡みついた炎熱の帯。そして、側頭部より伸びた、二本の無機的な角。

 身体の周りに焔を纏わせた少女が、そこには浮かんでいた。

「燈火さん、前とまた衣装が変わっているのですよ」

「これはこれでいいな」

 黒ウサギと十六夜が、まったく異なる反応を示す。

 そんなことに興味は無さそうに、燈火は浮かぶ焔の一つを耀に向けた。

「ちょ、なにをするつもりですか!」

 ジンが問いただす前に、その焔は耀の右腕へと接触した。

「と、燈火さん!?」

 黒ウサギが慌て出すが、すぐに驚愕へと変化する。

「これは……」

 焔が揺らめき、耀から離れると、右腕に負っていたはずの傷は、痕を残さず消えていた。

 まるで、傷を負っていなかったかのように、完璧に。

「完治、している? まさか!?」

 ジンは信じられない、と言いたいかのような表情をする。

「治ったけど、失った血が戻ったわけじゃないから。どの道すぐに輸血が必要」

「わ、わかりました!」

 燈火の言葉に頷いた黒ウサギは、耀を抱えて、今度こそコミュニティの工房へと向かっていった。

(この力、やっぱり他人にも使えるんだ。でも、本来とは異なった使い方したせいか、疲労もすごい、かな……なんか、もう、限界…………)

 普段のワンピース姿に戻った燈火は、十六夜に空中で抱えられ、そこで意識を手放した。

 




そろそろ燈火のギフトの正体に気づいた人もいるんじゃないですかね。
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