世界に嫌われた少女も異世界に来るそうですよ?   作:あばばばば

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十六夜くんとジンくんの返還シーンはすっ飛ばしていきますよ!
多分だけど、今回で確実に燈火のギフトの正体がバレます。


吸血鬼ですよ?

 目を開くと、見慣れた寂しい部屋の天井ではなく、自分を温かく迎え入れてくれた人たちと暮らす一室の天井が視界に映った。

(今度は十六夜がいてくれたりはしないんだ……)

 起きても一人では、あの頃となにも変わらない。そんな思いが彼女にあったせいか、どうにも寂しく感じているらしい。

「みんな、どこにいるんだろう」

 気づけばベッドに寝かされていた。

(耀に力を使ったのがいけなかったのかな。やっぱり自分以外に治癒効果を譲渡は厳しいかも)

 おそらく、それが大きな負担になったことは間違いない。まさか意識を失うことになるとまでは思っていなかったから、想像以上に危険だということは学べた。

「でも、耀が無事ならいいかな。まずは、十六夜たちに会いたい」

 このまま一人でいたら、不安になる。もしかしたら、また一人っきりになってしまうのではないかと考えてしまう。それだけは、絶対に嫌だ。

 ベッドから静かに足を下ろす。そのまま立ち上がってみても、すでに痛みは感じない。

 本来であれば、こんなに早く回復することはないのだが、耀に施した力の一部が自分にも作用してくれたのだろう。

「どこに行ったらいいんだろう?」

 部屋の扉を開け、廊下に出る。

(……思ったより広い。十六夜の部屋にしか行ったことないからわからないや)

 むしろ十六夜に連れられていたので、他の部屋に行く機会がなかったのだが。

「うん、適当に歩けばそのうち見つかるよね。誰もいないところよりは、誰かいるってわかってるから気持ち的に楽だし頑張れる」

 頭の中に浮かんでくる音に歌詞をつけながら、燈火は進みだした。

 

 

 

 

 

 しばらく歩くと、談話室の方から声が漏れてくるのが燈火の耳に届いた。

 覗いてみると、十六夜の姿が確認でき――さらに、見知らぬ少女の姿を捉えた。

(誰だろう?)

 入っていいものか悩んでいると、こちらを向いた十六夜と目が合った。十六夜も燈火に気づいたらしく、かすかに笑みを浮かべる。

 しかし、一向に談話室に入ってこないので、手を振り入ってこいと合図をした。

「えっと、初めまして? でよかったのかな」

「ああ、はじめましてだな。なるほど、綺麗な緋色をしている」

 なにを言われたのかゆっくりと理解をしていき、髪のことを褒められたと気づき顔を赤くする。

「私より、あなたの方が綺麗だと思うけど……」

 プラチナブロンドの髪を持つ美少女にそう返すと、

「ふふっ、それは嬉しいな」

 素直に喜んでいるように見えた。

 しかし、それも十六夜の奇妙な視線を感じるまでの話だ。

「どうした? 私の顔になにか付いているか?」

「別に。前評判通りの美人……いや、美少女だと思って、目の保養に観賞してた。まあ、燈火に比べればどうだろうな? 個人的には――いや、これは失礼か」

 この場にいる二人のどちらに尋ねるでもなく、自分から打ち切る。

「ふふ、なるほど。君が十六夜か。しかし観賞するなら黒ウサギも負けてないと思うのだが。あれは私と違う方向性の可愛さがあるぞ」

「あれは愛玩動物なんだから、観賞するより弄ってナンボだろ」

「ふむ。否定はしない」

 燈火が頷いて肯定する。

「誰か否定してください!」

 紅茶のティーセットを持ってきた黒ウサギが急いで突っ込みを入れる。

「燈火さんも、目が覚めたんですね。意識を失った状態で十六夜さんが背負ってきたので心配だったのですよ」

 温められたカップに紅茶を注ぎながら、黒ウサギはあることに気づく。

「あっ、燈火さんのぶんのカップを持ってきてないのですよ!?」

「気にするなって、駄ウサギ。燈火、俺のぶんを飲んでいいからな」

「十六夜さん、なんだがお兄さんみたいな――って誰が駄ウサギですか!」

 黒ウサギの怒声にびっくりしながら、燈火は十六夜に差し出されたカップに手を伸ばす。

「ありがと」

「おう」

 十六夜は、嬉しそうに紅茶を飲む燈火に手を伸ばし頭を撫でる。

「また無視られたのですよ……」

 肩を落とす黒ウサギに、レティシアは、あの独特な距離感の二人に割り込んでいこうとするとは、と思っていたかもしれない。

「で、アンタはなにしにここまで来たんだ?」

 燈火を撫で、満足気な十六夜は話を進めようと質問を口にした。

「なに、新生コミュニティがどの程度の力を持っているのか、それを見に来たんだ。実は黒ウサギたちが”ノーネーム”としてコミュニティの再建を掲げたと聞いてな。なんと愚かな真似を、と憤っていたが、最近になって神格級のギフト保持者が、黒ウサギたちの同士としてコミュニティに参加したと聞いてね」

 黒ウサギの視線が反射的に十六夜に移る。おそらく白夜叉にでも聞いたのだろう。

 レティシアがここにいることだって、無関係ではあるまい。

「そこで私はひとつ試したくなった。その新人たちがコミュニティを救えるだけの力を秘めているのかどうかを」

「結果は?」

「残念ながら、ガルドのゲームに参加した彼女たちはまだ青い果実で判断に困る。……こうして足を運んだはいいが、さて。私はおまえたちになんと言葉をかければいいのか」

「あんたが心配するのもわからなくはない。その不安、拭う方法がひとつだけあるぜ」

「十六夜?」

 隣で立ち上がった彼の行動を疑問に思い呼びかけるも、こちらを一度見ただけで前に進んでしまう。

 仕方なく燈火も腰を上げ、その後に続く。

「実に簡単な話だと思わねえか。アンタは俺たちが魔王を相手に戦えるのかが不安で仕方がない。なら、その身でその力を試せばいい。――どうだい、元・魔王さま?」

(元・魔王!? 会話の流れ的に仲間だったみたいだけど、ついてけない……。あとで黒ウサギに詳しく聞かないと)

 なにやら知らぬまに事態が進んでしまっているらしい。

「ふふっ、なるほど。それは思いつかなんだ。実にわかりやすい。初めからそうしておけばよかったなあ」

「ゲームのルールはどうする?」

「どうせ力試しだ。双方が共に一撃ずつ撃ち合い、そして受け合う。これぐらいシンプルでいいだろう」

「地に足を着けてた方が勝ち。いいね」

 笑みを交わし二人は窓から中庭へ同時に飛び出した。

「キャー! どうして窓を割っていくんですか!?」

「「かっこいいから」」

「修繕費どうする気ですか!」

「「さあ?」」

「御二人とも楽しんでるだけでしょう!」

「「もちろん」」

 声にならない叫び声を黒ウサギがあげる。

 窓を割って飛び出していった二人は笑顔を浮かべながら中庭に降り立った。

 だが、レティシアはすぐに上空へと体を浮かせる。

「へえ? 箱庭の吸血鬼は翼が生えているのか?」

「ああ。翼で飛んでいる訳ではないがな。……制空権を支配されるのは不満か?」

「いいや。ルールにはそんなのなかったしな。構わねえよ」

 立ち位置からして十六夜に不利な戦いだが、十六夜に不満の色は一切見えない。

 レティシアはその態度をまず評価した。

 ギフトゲームにおいて、対戦者はすべてが未知数であると考えるのは基本である。言ってしまえば、相手が不死であっても殺せない側が悪い。答えが用意されていても実行できない側が悪いと見なされる。

(なるほど。気構えは十分。あとは実力が伴うか否か……)

 金と紅と黒のコントラストで彩られたギフトカードを見た黒ウサギは蒼白になって叫ぶ。

「レティシアさま!? そのギフトカードは」

「待って、黒ウサギ」

「燈火さん!?」

「私にはよくわからないけど、これは大事なことだと思うから、邪魔しちゃダメ」

「ですが――」

「いざとなったら、私が二人とも守るから大丈夫」

 十六夜は必要ないと思うけど、とわざとらしく付け足す。

 そこまで言われて止めに行くのも、と黒ウサギは内心ハラハラしながら様子を見守ることを決心した。

「互いにランスを一打投擲する。受け手は止められねば敗北。悪いが先手は譲ってもらうぞ」

「好きにしな」

 レティシアは呼吸を整え、翼を大きく広げる。全身をしならせた反動で打ち出すと、その衝撃で空気中に視認できるほどの波紋が広がった。

「ハアッ!」

 怒号と共に放たれた槍は瞬く間に摩擦で熱を帯び、一直線上に十六夜に落下していく。

 流星のごとく大気を揺らして舞い落ちる槍の先端を前に、十六夜は牙を剥いて笑い、

「カッ――しゃらくせえ!」

 殴りつけた。

「「は?」」

「大変!」

 素っ頓狂な声をあげるレティシアと黒ウサギ。

 そして、焦るように手を伸ばす燈火。

 大気の壁を突破する速度で振り落とされた槍は、鋭い先端も巧緻に細工された柄も、たった一撃で砕け、ただの鉄塊と化し、さながら散弾銃のように無数の凶器となってレティシアに向けられた。

(ま、まずい……!)

 馬鹿馬鹿しい破壊力に加えて、第三次宇宙速度に匹敵する速度で迫る凶弾など、いまの彼女に避けようがない。

(これほどか……これほどの才能ならば、あるいは)

 十六夜の力に安堵し、血みどろになって落ちる覚悟を決めたとき、風が吹いた。

「なに!?」

 大嵐のように吹き荒れた風は、鉄塊を絡みとるようにその速度を殺し、レティシアに届く前に地面へと落とす。その光景を見届けたかのように、一瞬で大嵐は弱まり消えていく。

「こんなことできそうなのは――」

 十六夜が視線をある一点に移動させると、そこにはやはり燈火の姿が。

 髪の色は先端にかけて橙色へとグラデーションがかかっている。瞳の色も、水銀色に変わっているらしい。

 だが、なにより目を惹くのはその衣装だ。

 暗色の外套を纏い、体の各所を、ベルトのようなもので締め付けている。おまけに両手両足と首に錠が施され、そこから先の引きちぎられた鎖が伸びているときたものだ。まるで途方もない大罪を犯した咎人か――さもなくば、猟奇的な被虐快楽者のような出で立ちである。

「――ブハッ!?」

 燈火を視界に収めてすぐ、十六夜が赤い液体を吹き出す。

「こ、これは中々効くな。クソ、元が儚いせいか拘束されてるような様が随分似合いやがる……」

 異変を察知したのか、窓から飛び降りてきた燈火が側に屈み込む。

「十六夜、どうか、した?」

 下から覗きこむようにされたため、露出度の高い彼女の肌がまぶしいほどに映り込む。

 これで衣装が変わるのは三度目だが、今回はいままでと比較しても明らかにやばい。そこいらの男性ならばすでに押し倒していただろう。

 トマトソースを吹き出しただけに留めた十六夜はさすがといったところである。

「……十六夜?」

 返事がないことを不審に思い、もう一度名前を呼ぶ。

 ピョコピョコと落ち着きなく動くので、長く伸びる三つ編みに括った後ろ髪が呼応するように跳ねる。

(なんだ、この露出度高めな子犬!?)

 出血量が余計に増え、十六夜の下の地面に赤い血だまりを作っていく。

「あ、あれ? 十六夜どこか怪我したの? 大丈夫? ねえ、なんでこっち見てくれないの!?」

 燈火は燈火で、自分の方を一向に見ようとしない十六夜に対して泣きそうな声で訴える。

(クッ……これまでなら、むしろこんな衣装で迫られたら役得だったはずなんだがな。情けねえ!)

 十六夜と燈火が互いにどうしようかと悩む間、黒ウサギはレティシアが弱りきった状態になっていたことに絶句していた。

 この場において、冷静に物事を観察しているのは、すでにレティシア一人だけだった。

  

 




 はい、どこかで見た覚えのある衣装が出てきましたね。一巻の内容終わるまでに全部一通り出せたらいいなとか考えていたりします。攻撃なんてしなくていい、出てくればいいんだ!
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