IS~Clown of Despair Clown of Hope~   作:飛翔翼刃

4 / 5
もうじきGWですね~
今年も仕事でどこにも出かけられない( ^ω^)・・・
まあ遊ぶ相手が少ないから、いいんですけどね…

まあそれは置いといて、本編へどうぞ!


第四話    クラス代表決定戦開催 前編

 

 

 

朝の連絡事項時に千冬から一夏に連絡があるそうだ。

 

「織斑、お前のISだが準備までもう少し時間がかかるそうだ」

 

「え?」

 

「予備の機体がない。だから学園からお前に専用機を用意することになった」

 

「専用機!?一年のこの時期に?」

「それって政府から支援されるって事だよね?」

「すごーい!早く私も専用機が欲しいなー」

 

周りが専用機が欲しいとか羨ましいとかざわざわ話し始める。

 

「専用機があるってそんなに凄いことなのか?」

 

「それを聞いて安心しましたわ!クラス代表の決定戦、私と貴方達では勝負は見えていますけど。

 流石に私が専用機で貴方達は訓練機では、フェアではありませんものね」

 

「お前も専用機ってやつを持ってるのか?」

 

「ご存知ないのかしら、よろしいですわ。庶民の貴方達に教えて差し上げましょう。

 この私、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生。つまり現時点でエリートの証の専用機を持っていますのよ。

 世界にISはわずか467機しかありませんわ。その中でも専用機を持つ者は全人類の60億の中でもエリート中の超エリートなのですわ!」

 

「467機しかISってないのかよ」

 

ここで後ろから一夏に解説をしてくれる鷹月静寐。

 

「ISの中心に使われている『コア』って技術は一切開示されてないの。

 現在世界中にあるISは467機。そのコアは篠ノ之束(しののの たばね)博士が作成したものなんだよ」

 

(それって、確か箒の姉さんだよな)

 

「ISのコアって完全なブラックボックスなんだって。

 篠ノ之束博士以外そのコアを作ることができないんだよ」

 

「………」

 

箒は束の話をどう思っているのか、一夏は心配になる。

 

「でも博士はそのコアを一定数以上増やすことを拒絶しているの。

 『国家』『企業』『組織』には割り振られたコアを使って、研究に開発訓練をするしかない状況なんだよ」

 

「本来なら、専用機は国家や企業に所属する人間にしか与えられないものだ。

 が、お前は状況が状況なだけな上、データ収集も目的として専用機が用意されるんだ」

 

「理解できたか?」

 

「な、なんとなくだけど。それよりも俺には専用機は用意されて、翼には専用機は用意されないのか?」

 

「それについてだが、神守は既に専用機を持っている」

 

「「「「「うそーー!!!!」」」」」

 

皆一斉に翼を見る。

 

「見られても何も出ないぞ」

 

「だからそれを心配することはない」

 

「あの先生。気になったのですが、篠ノ之さんは篠ノ之博士の関係者なんでしょうか?」

 

珍しい苗字が一緒だとそう思われても仕方がない。

 

「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ」

 

「「「「「ええええーーーー!!!!!」」」」」

 

さらに騒がしくなる教室。

 

「嘘!お姉さんなの!?」

「篠ノ之博士って今行方不明なんだよね?世界中の国や企業が探し回ってるって聞いたよ」

「大変だよねー」

「どこにいるのか、わからないの?」

「それじゃあやっぱりISの事とか操縦とかも上手いのかな」

 

野次馬の如く色々な憶測とかが飛び交う。

 

「あの人は関係ない!!

 ……私はあの人じゃない。教えられる様な事は一切ない」

 

窓の方に顔を向けてしまう箒。

周りは唖然、沈黙に包まれる。

 

「…山田先生。授業をお願いします」

 

「は、はいっ!」

 

真耶は授業を始める。

 

「それでは授業を始めますよ。今日は昨日の続きからです」

 

(箒と束さんってそんなに仲が悪かったっけ)

 

一夏は昔の記憶を思い出してみる。

仲が悪いような記憶は出てこないのだった。

 

「IS、インフィニット・ストラトスは操縦者の全身を特殊なバリアで覆って守っています。

 ISには意識に似たようなものがあって、お互いの対話…つまり一緒に過ごした時間で分かり合うといいますか、操縦時間に比例してISも操縦者の特性などを理解しようとします」

 

「さっぱりわからない…」

 

一夏は授業内容についていけない。

 

「ISは道具ではなく、あくまで『パートナー』として認識してくださいね。

 ここまでで質問がある人はいますか?」

 

「しつもーんでーす。パートナーって彼氏彼女のような感じですか?」

 

「それはその、どうでしょう…私にそのような経験がないのでわかりませんが…ええっと、どうですかね」

 

真耶は彼氏彼女の関係に憧れているのか。

それとも妄想の世界に浸っているのかわからないが、身をくねくねさせながら頬を紅潮させながら自問自答している。

 

(やれやれ、こんなんで授業が進むのかね)

 

(いわゆる女子高のノリというやつなのかな…これ)

 

一夏と翼はその雰囲気についていけない。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

午前授業も終わりお昼休みになる。

翼は空腹に負け、そそくさと食堂に行く。

 

「おねえさーん!カツ丼とからあげにラーメンの特盛りでお願いしまーす!」

 

「あら翼ちゃんじゃない。相変わらず食べるわねー」

 

「いやーお姉さん達が作るご飯が美味しくて箸が進むんだよ~」

 

「おべっかが上手なんだから!これもおまけしてあげるから、たんまり食べるんだよ」

 

「はーい!いっただきまーす!!」

 

料理をもらい、席に座り黙々と食べていると上級生の三人組が話しかけてくる。

 

「ねえねえ君、噂の一年の子と一緒に入った子だよね?」

 

「そうっすけど、何か用すか?」

 

「今度、代表候補生の子と勝負するみたいだけど、君は素人だよね?私達でよければISの事色々教えてあげようか?」

 

知り合いでも何でもない人に教わることなんてないんだがなーと思っている翼。

彼女達は翼と一夏に近づいて、あわよくば良い関係になろうという魂胆で近づいてきたのである。

ちなみに翼も一夏と同等ぐらいイケメンなので、狙ってみようと思う女子がいてもおかしくないのだ。

 

「その心配は必要ないわよ」

 

後ろから楯無が話しかける。

 

「彼のサポートは私が先生に任されてるの」

 

「せ、生徒会長が教えるなら大丈夫ですね」

 

三人組は足早に逃げていく。

 

「翼君。お姉さんに言う事あるよね?」

 

扇子に『感謝の言葉は?』と書かれている。

しかし翼は食べることに集中し始めて楯無を見ていない。

 

「本当にお姉さん悲しいわ…」

 

席に座り、よよよと泣き始める。

 

「ほれ、会長さん」

 

「え?」

 

翼はおまけでもらったケーキの苺をフォークに刺し、楯無の口の近くに持っていく。

 

「早くあーんしてくれ」

 

「ええ!?」

 

「恥ずかしがることじゃないだろが。ほれ、あーん」

 

「あ、あーん」

 

楯無に苺を食べさせる。

 

「美味しいか?」

 

「う、うん」

 

「そっか、それはなによりだ」

 

翼は美味しいと言葉を聞いて笑顔になる。

楯無はその笑顔に顔を赤くする。

 

「そういえば会長さんはなんでここにきたんだ?」

 

「同じ部屋の可愛い後輩が困ってるみたいだったから、助けてあげたのよ」

 

「そうすか」

 

「それより代表候補生の子と戦うみたいだけど、勝てそうなの?」

 

「さあ、やってみない限りはわからんな」

 

「まあ私をあそこまで追い込むんだから、余裕よね」

 

「本気で戦ってないのに、追い込むもクソもないだろ」

 

「あら、それは君だって同じでしょ?」

 

「それは神のみぞ知ることだ」

 

「はぐらかした~」

 

お昼休みが終わる五分前まで、彼氏彼女のようないちゃいちゃを周りにみせるのであった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

放課後。

一夏に連れられ剣道場にきていた。

一夏と箒は防具をつけて竹刀で打ち合いをやっている。

竹刀の叩き合う音が道場内に木霊する。

 

「ぐうぅ…はぁ、はぁ」

 

疲れたのか床に座り込む、肩で息をしている一夏。

 

「どうゆうことだ?」

 

「いや、どうって言われても」

 

「どうしてここまで弱くなっている!中学では何部に所属していたんだ!」

 

「帰宅部!三年連続皆勤賞だ!」

 

ドヤ顔で言う一夏。

 

「鍛えなおしてやる!IS以前の問題だ!

 これから毎日、放課後の三時間私が稽古をつけてやる」

 

「ちょっと待ってくれよ!俺はISの事を…」

 

「だからそれ以前の問題だと言っているだろうが!」

 

「織斑君ってさ、結構弱い?」

 

「ISを本当に動かせるのかなー?」

 

「一夏ーファイトー」

 

「おい翼も一緒に稽古してもらえよ」

 

「パス」

 

「なんでだよ!」

 

「めんどい」

 

「おい神守」

 

「なんだ篠?」

 

「私と一戦だけやってみないか?」

 

「ええー」

 

「お前も鍛えなくてはいけないか、私が判断してやる」

 

一夏は翼に竹刀を渡す。

 

「予備の防具を貸してやるから、それを着てこい」

 

「いんやいらん」

 

「馬鹿にしているのか?」

 

「いや、俺は重いものをつけて戦うことは慣れてないからな。

 それに怪我をしたって、それは俺のせいなんだから気にせず、さっさとやろうぜ」

 

「そうかお前も精神を鍛えなおしてやらんといかんようだな」

 

翼と箒は正面で向き合い、竹刀を構える。

先に動いたのは箒。

まずは相手の隙を生まれさせるために隙の少ない攻撃で翻弄していこうとしたのだが…。

翼は真下から竹刀を振り上げ、箒の竹刀を弾き飛ばす。

それもただの力技で。

 

「おしまいだな」

 

「そんな馬鹿な…」

 

「別に篠が弱いわけじゃないぞ。ただ単に力に頼った一撃で竹刀だけをふっ飛ばすのは得意でね」

 

「いや、それがありえんことなのだが…」

 

「まあこう見えても、ちゃんと影で鍛えてるからな」

 

翼は努力を見せるのが嫌なのか、影でコソコソやるのが好きなのである。

 

「暇なときは応援にはきてやるから、頑張れよ一夏」

 

「くそーなんで俺ばっかり」

 

項垂れる一夏だった。

それから毎日一夏は身体機能の向上訓練のみしかやれなかったのであった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

そして運命の月曜日。

 

「なあ箒」

 

「なんだ」

 

「ISの事を教えてくれるんだったよな?」

 

「…」

 

「目をそらすなよ。一週間剣道の稽古しかしなかったんだぞ」

 

「しょ、しょうがないじゃないか、お前のISはまだ届いていないのだから」

 

「ISはなくても知識とか基本的な動作とかは教えられただろ」

 

「……」

 

「だから目をそらすなよ!」

 

モニターにはセシリアが映し出されている。

 

「あれがあいつの専用機か」

 

(あれは見た感じ…支援タイプの武装だな。近距離戦は苦手そうだ。それにあれはビット兵器に見えなくもないな)

 

セシリアの機体は中距離~遠距離タイプの機体と見てわかる。

接近戦に持ち込むのが上策かねと策を考える翼。

 

「すみません織斑君。まだ織斑君の専用機はもう少しかかるそうなんです」

 

「そうですか」

 

「おい神守。これ以上オルコットを待たせるわけにはいかない。

 お前が先に試合をしろ。その後に織斑とオルコットの試合をする」

 

「へーい。んじゃお嬢様と軽く運動でもしてくるか」

 

翼はISを展開する。

 

「それが翼のISか。なんだかロボットアニメに出てきそうな機体だな」

 

「出てくるかもしれんな。それじゃ行ってくるわ」

 

「神守。勝ってこいよ」

 

「善処はするさ。篠」

 

そう言って、カタパルトに乗り射出される。

 

「あら、貴方が先でしたか。

 それにしても、よく逃げずに来れましたわね。

 今のうちに泣いて謝るなら、痛い目を見ないですみますわよ」

 

「なんで俺がお前に謝らなきゃならねえんだよ」

 

「やはり、男とは救いようのないおバカさんしかいないようですね」

 

「オルコット。何がお前をそう考えさせるのか知らんが、あまり他人を見下しすぎると後で手痛いしっぺ返しがくるのを覚えておくんだな」

 

「貴方に私の何を解りまして!?

 男なんて…!」

 

セシリアは翼に『スターライトmkIII』を構え向ける。

 

セシリアは頼りない父の姿を見て、子供の自分にすら姿勢の低い父が嫌いだった。

自分が悪いことをしても、何一つ叱らず、笑顔で大丈夫かいと聞いてくるだけ、それで母に罵倒されさらに姿勢を低くする父の姿が見るに耐えられなかった。

なんで、私のことを怒りもしてくれないのか、私のことが嫌いなのか、もしかして私は父の子供ではないのかと心のどこかでは思ってしまっていたのかもしれない。

悪いことをしたら怖くても叱ってほしい。

寂しいときは抱きしめてほしかった。

嬉しいことがあったら、もっと一緒に喜んでほしかった。

ただ母と仲良く笑っていてほしかった。

家族仲良く笑いあえる時に喧嘩してもいい…お金があろうがなかろうが、そんな家族を無意識下で求めるがそれは叶わない夢物語となってしまった。

父と母が亡くなったあの日から…。

それからセシリアは家を守るため、並々ならぬ努力をしてやっと代表候補生の座を獲得した。

その間にどれほど男達が自分に近づいて事だろう、家柄とお金しか目に映らない汚い男達を見てきてが、セシリアの男を見下す決定的な物事だったのだろう。

好きで嫌いな父と醜い男達…見下したくない淡い羨望が絶望に黒く塗り潰されのはいとも簡単だった。

しかしISを扱える男性が現れたとニュースで見たとき、黒く塗り潰された絶望の中に一筋の光が差し込んだ。

でも現実は甘くない…やはりISを使えても所詮男はと片付けられる男達だと思ってしまう。

まだ心の奥底では、消えかかっている一筋の光を…希望で満たしてくれると無意識で求めながら………。

 

(やれやれ、なんでこんな感情が流れてくるとは思ってもいなかったわ)

 

翼は無意識でセシリアの心の感情が流れてくるのを感じる。

少女一人で背負うには重すぎる重圧が、いつしか彼女の心を壊さないうちに望む光が差し込むことを信じて、翼は受け止めようと覚悟を決める。

 

「オルコット。その黒い感情を俺に全部ぶつけてみろ。

 何があっても俺は逃げも隠れもしないで受け止めてやるさ。

 一人で何もかも背負い込むのはもう終わりにしようぜ」

 

その言葉を聞いたセシリアは顔が怒りで歪み、翼を見下し人として見ていない目で睨みつける。

 

「貴方もそう言っときながら私を見ずに裏切るのでしょう!」

 

セシリアは引き金を引き、翼に何発も攻撃を撃ち込んでいく。

翼は回避行動をとらず、シールドで受け止める。

 

「裏切りなんてことは絶対にしない!」

 

「そんな言葉に惑わされません事よ!」

 

さらに撃ち込んでいくセシリア。

さすがにシールドの耐久性が保たなくなってきているのか警告音が出ている。

 

「仕方ないな、少しだけ痛い思いをしてもらう」

 

そう翼が言うとデータ領域から『ビームスプレーガン』を展開し、セシリアに向け撃つ。

セシリアは突然のビーム兵器が出てくるとは思っていなかったが、何とか回避する。

 

「ビーム兵器とは油断していましたわ」

 

「さあ、おいたをするお嬢様にお灸を据えるから覚悟してもらおうか」

 

そこから翼とセシリアの中距離戦の戦いが繰り広げられる。

どちらも同じぐらい掠り、所々被弾していく。

しかしジムよりも速度が出せるのか、ビームスプレーガンの攻撃が当たらなくなってきてしまう。

 

「よくそのスペックの機体で頑張りますわね。

 しかし第2世代型と第3世代型のスペック差は埋め難いもの、専用機を持っていると聞いて、少しは期待していましたのに…正直残念ですわ」

 

「性能だけで語っているうちは強くなどなれんぞ。

 どんなに優れた性能を持っていようとも、パイロットがその性能を引き出せなければ意味がない。

 今から俺のパイロットの腕があることを見せてやる」

 

そう言うと、翼は少しだけNT(ニュータイプ)の力を解放する。

 

(なんだ、神守が纏う雰囲気が変わった気が…)

 

モニター室で見ていた千冬は翼の何となくだが、雰囲気が変わったと感じる。

 

「さあいくぞ」

 

「その言葉いつまで保つかしら」

 

セシリアは慢心していた。

性能差はいくら頑張っても埋められないものだと思っていたものだから、このまま射撃戦をしていれば勝てると…。

しかし感性が鋭敏になっている翼には攻撃が当たらなくなってしまう。

それが隙となり攻撃を入れられ、焦りがまた隙をつくる。

 

「くっ!行きなさいブルーティアーズ!」

 

セシリアがそう叫ぶと四機のビット兵器が翼に向かっていく。

上下左右から襲い来るビームも余裕でかわしていく翼。

 

「なっ!?」

 

セシリアはブルーティアーズのビットから攻撃は逃げられないと思っていた。

しかし現実は全てかわされていく。

 

「まだまだビットを使うには甘い部分が目立つぞ」

 

セシリアが扱うビット攻撃のパターンが乏しいのである。

四機あるうち二機で陽動をして、残りの二機で追撃、迎撃と緩急が少ないのである。

時折違うパターンこそ存在するのだが、どのビットもこちらを仕留めようとするのがまるわかりなのである。

 

「それと決定的な欠点が目の前で露見させてしまうのはいただけないな」

 

そう最大の弱点はビットを操ってるときはビット攻撃のみで、セシリアが持つレーザーライフルのときはビット攻撃をしてこないのである。

つまり、どちらかの攻撃にしか意識を持てないのである。

これではビットの利点を潰してしまっている。

 

「そんなこと言って、貴方もビット兵器は上手く扱えるわけないでしょう!」

 

この世界では第3世代型の機体になってから、特殊な武装を開発、データ収集を行えるようになった。

しかし翼から見れば、まだまだ改良の余地があるなと思っている。

 

「俺はオルコットより扱える自信があるけどな」

 

「ですが貴方の機体には、残念ながらそれを搭載していないのでしょう。

 それなのに私より上手く扱えるなど甚だしいですわよ!

 それに貴方がビット兵器を持っていたところで宝の持ち腐れ…。

 大切なものも守れず、ただただ眺めているのが限界。

 まあ、どんなに頑張ろうと泥水をすすりながら、貴方と貴方のお仲間との傷の舐め合いがお似合いですわ」

 

セシリアは翼に対して嘲笑う。

貴方には力などないのだから、黙って指をくわえていろと言いたいのだろう。

自分のことはいくらでも馬鹿にしようが、罵ろうが構わない。

けど………俺のために、未来のために、希望のために散っていった仲間を侮辱することだけは許すわけにはいかない。

 

「おい。今何て言った…?」

 

「あら聞こえませんでしたか?

 さっさとお仲間と傷の舐め合いでもしていてくださいな」

 

その言葉を聞いた翼は容赦などいらないのだと、今居るのは『敵』なんだと認識。

冷静さはある…相手の挑発に乗るが、本心から言っているわけではない。

セシリアも周りが『敵』しかいない中、仲間もおらず一人でやってきた。

仲間の素晴らしさを教えてやればいい。

その仲間に俺がなってやればいい。

仲間達への侮辱を撤回してもらうのが先だが…。

 

「セシリア・オルコット。

 今、俺の仲間に対して言った言葉を撤回しろ」

 

『データ転送、システムオールグリーン、いつでも展開可能です』

 

「なぜですの?謝る必要はなくってよ」

 

「そうか…なら覚悟しろよ。

 これからお前に絶望をくれてやろう。

 IS展開変更システム発動」

 

翼が『IS展開変更システム』発動と呟くと全身を光が覆い、セシリアひいては観客もモニターで見ていた千冬達は目を瞑ってしまう。

光が収まり、再び翼が映るとそこには…今までと違う機体が存在していた。

これに全員何が起きたのか理解がついていけてないのだった。

 

「おい、手が止まっているぞ」

 

「…あ、すみません」

 

モニター室で録画などを担当していた生徒の手が止まっているのを指摘する千冬。

 

(何なんだあの機体は…神守のやつ、後で問いただしてやる)

 

千冬は実技試験で本気を出していなかったのかとここでわかるのだった。

 

「な、なんですのその機体は…」

 

「知りたければ俺を倒してみるんだな」

 

翼が展開したのは『νガンダム』である。

 

「たかが機体を変えたぐらいで勝てるとお思いで!」

 

セシリアは再びビットを操り、攻撃を仕掛ける。

 

「そんな攻撃当たらんぞ。まずは一つ!」

 

攻撃を掻い潜り、ビームライフルで一つ撃ち抜く。

 

「まだ終わりませんことよ!」

 

ビットを壊されないように慎重になってしまうセシリア。

 

「どうした?逃げ腰じゃ俺には勝てないぞ。

 せっかくだ、手本を見せてやるよ」

 

「手本ですって?」

 

「いけっ!フィン・ファンネル!」

 

背部の放熱板に見える所から、六基のビットが射出される。

その六基はセシリアを軽々超える技量で操っているのが理解できてしまい、絶望してしまうセシリア。

自分よりここまでビット兵器を扱えるのが悔しくて堪らない。

しかしどれほどの訓練を積めば、これほどの扱いができるのかわからないのである。

 

「くうっ!!」

 

フィン・ファンネルの攻撃を被弾してしまうセシリア。

負けじとビットで対抗しようとするが、相手はビットを動かしながら、ライフルやサーベルで攻撃を次々仕掛けてきて回避しかできないセシリア。

 

「こうやって使えれば、もっと戦略の幅は広がるんだ。覚えておくんだな

 これで二つ…三つだ」

 

ビットをさらに二つ破壊される…それも同じビット兵器によって。

 

「これでラスト!」

 

壊されたビットと回避行動に専念しすぎて最後の一基にバズーカが放たれているとは知らずに。

 

「さあこれでビットはなくなったが、撤回はしてくれる気になったか?」

 

「まだ勝負はついてはいませんわ!」

 

「そうか」

 

翼はシールドの裏側のビームキャノンで相手に牽制で撃ち込みながら接近し、フィン・ファンネルも相手に近づけさせる。

セシリアはビームキャノンをかわし、フィン・ファンネルもぎりぎりかわしていく。

 

(もう少し近づいてきてくださいな)

 

セシリアは翼が近づいてきて、こちらを切りかかるのを待っていた。

まだミサイルを搭載したビットを二基隠していたのである。

そしてセシリアの思惑通り近づいてきたところで。

 

「かかりましたわね!まだ私には二基ありましてよ!」

 

この距離ならかわせまいとミサイルを放つ。

しかし翼はそれを放たれる寸前で後ろに戻りつつ、ダミーバルーンで誘爆させる。

 

「最初から読んでたよ」

 

「あ、ありえませんわ」

 

ここまで手の内を読まれているとは思っていなかったセシリア。

もうどうしたら勝てるのかわからなくなっているのか、頭の中が真っ白になっていく。

 

「早く沈んでください!」

 

もうヤケクソなのか、ムチャクチャにライフルを撃ち込んでくるが…掠りもしない。

 

「なぜ当たらないのですか!?」

 

「そんな狙いの定まらないもので、スナイパーとしては三流以下だぞ」

 

しかしまぐれで一発だけ当たりそうになる。

セシリアは顔が綻ぶ………またしても予想できないことで悲痛な顔に戻ってしまう。

 

「おしいな、まぐれも運の内というが…残念だが、当たってやる気はない」

 

周りの観客がざわつき始める。

当たり前である、今目の前でありえないことにさらに驚かされたのだから。

ビット兵器を扱えるセシリアをも凌ぐ技術にも賞賛に値するのに、剰えビット兵器で全身を守るバリアーまで張るとは思いもしなかったのだ。

そのバリアーは一瞬にして張られ、セシリアのライフルも弾かれてしまう。

セシリアは今度こそ、彼には勝てない…触れてはならないものに触れてしまったのだと理解した。

 

「これでお終いだ」

 

翼はセシリアに瞬時加速で近づき、サーベルで袈裟切りから上に切り上げさらに突き上げる、その衝撃で上に跳ね上げる。

セシリアはこの光景を忘れないだろう…顔こそ見えないが、翼が放つ最後の一撃はセシリアへの賞賛に報いる一撃だと。

 

(セシリア・オルコット。君はまだまだ強くなれる。だが相手と本気でぶつかる事もあるかも知れない…でも本当に相手を知らずに傷つける行為だけはしないでくれ。それが俺からの願い(ラストシューティング)だ)

 

セシリアの下に潜りこみ、フィン・ファンネルを周囲に展開、発射、最後にビームライフルで(セシリア)を撃ち抜き、セシリアのシールドバリアーが無くなり試合終了の音が鳴る。

 

セシリアはISが解除されてしまい、落下していていく。

 

(私、このままでは…)

 

体が動かないセシリアは目を瞑ってしまう。

生徒や教員が騒ぎ出すが、それを予知していた翼に受け止められる。

その受け止め方がお姫様抱っこなのだが、様になっているのが内心ムカついてる人が何人かいたようだ。

 

「大丈夫か?お姫様」

 

近くで声が聞こえ、目を開けるセシリア。

お姫様抱っこされているのに気付いて、顔を赤くする。

 

「やれやれ、お姫様は可愛いんだから、自分の体は大事にしろよ」

 

「あれだけ攻撃してきた、貴方が言えることですの?」

 

「それもそうか、悪かったな。

 けど、俺にだって許せないことぐらいあるさ、それを理解してくれ」

 

「あの…あの発言は本当に申し訳ありませんでした。

 許してくれるとはお思いではないのですが、心から謝罪いたします

 本当にごめんなさい」

 

「『ごめんなさい』と素直に謝れるなら、俺は嬉しいよ。

 オルコット。その素直な心も大事にしてくれ。

 相手とぶつかった時でも、それを忘れなければ君はまだまだ強くなれるさ」

 

「本当ですか!?それと…よろしければ名前で呼んでもよろしいですか?」

 

顔は赤いまま、翼と呼んでいいか尋ねる。

 

「いくらでも好きに呼んでくれ」

 

その言葉を聞いて、今までで一番可愛らしくも綺麗で惹かれそうになる笑顔を見せるセシリア。

 

「それなら!私のことも『セシリア』と名前でお呼びください!」

 

「セシリア」

 

名前で呼ばれ、頬が緩むセシリア。

 

「これでいいのか?」

 

「はい!」

 

「とりあえず、ピットに戻るから、しっかり掴まれ」

 

翼はセシリアが待機していたピットに戻っていくのだった。

 

 

 

 

To be continued

 

 

 

 

 




次回は一夏との戦闘です。
内容は短苦なってしまうと思います。

投稿はGW明けぐらいになってしまうかと思いますが、気長に待っていてくださいm(_ _)m
ではではまた次回にてお会いしましょう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。