女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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23Sz 俺達の『意思』

 

 

 

 その後は、覚えていない。

 

 一度全員作戦を中断して、そして、気づいたときには都庁だ。

 

 ……なんで、こんなことに……。

 

 ……俺は、気づいていたはずなのに……

 

「………緊急会議だそうだ。会議室に集合」

 

 ……ヒカイさんがそう言う。

 ……なんでだよ。

 

「……ヒカイさんは平気そうですね。なんでアンタはそう冷静なんだ……?」

「…………」

 

 ………

 

「……すまない。」

 

 ……

 

 俺は、それ以上何も言えなかった。

 

 

===============

 

 

 ……会議室。

 

 ……やはりと言うべきか、ここも沈黙だらけだ。

 

 たった1人の、死によって。

 

「……来てくれたのね」

 

 まるで、ナツメがどこか悲しんでいるような声で言っているが、彼らにはただ、偽りの仮面をかぶっているようにしか思えなかった。

 

「失態だわ……私の作戦ミスね」

 

 ……

 ……

 ……

 

 

 

 

「……どういう意味だよ」

「……何かしら?」

 

 

 

「どういう意味だっつってんだよクソババア!!!」

 

 

 

 叫んだのは、ロナだ。

 

「作戦ってなんだよ!!あんな犠牲を伴った作戦で、それで俺達が納得できるのかよ!!」

「そうだよ……あんなの、作戦じゃない!!」

 

 ロナの言葉に同意するように、アオイが言う。

 

 だが、ナツメは冷静に言う。

 

「みんなで手を取り合って仲良く勝利できたら、いいでしょうね」

 

 ………それも、確かに同意だ。

 その言葉に、反論するような、でも、力なく告げたのはリンだ。

 

「ガトウは……アタシ達のために……」

「アナタ達のせいではないわ。もっと、徹底すべきだった」

 

 

 さらに、言う。

 

 

 

「伝えるべきだった。犠牲を伴う作戦だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   自衛隊は、捨てゴマだと……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時。

 

 

 ナツメの顔面が大きく揺らぐ。

 

 

 いきなりすぎる光景に、全員が驚く。

 

 

「……もう1回、言ってみろよ」

 

 

 震える腕で、ロナは、自分で殴りつけた相手を睨みつけた。

 

 

「……もう1回言ってみろよクソったれがぁぁぁ!!!!!」

 

 

 追撃をかけるようにナツメに、ロナの叫び声と共に鉄拳が容赦なく打ち出される。

 

 ナツメが整理された机へと、吹き飛ばされる。

 

 ロナの呼吸が荒く、全身で息をしている。

 

「……それ以上は流石に殴るのはダメだよ、ロナ」

 

 キカワがロナの目の前に立ちふさがる。ロナの顔は、涙で濡れていた。

 

「……っ!! テメェのほうがよっぽど悪魔だよ!!マモノより、ドラゴンより、帝竜より!!!じゃあなんだよ!!人の屍で築いた道をお前は平気で歩けるのかよ!!答えろクソババァ!!!!」

 

 悲しみと怒り、それから自分(ロナ)の抑えきれない感情が全て口となって吐き出される。

 

「ロナ……」

「ヒカイさん……今は言わせてあげてください」

 

 止めようとするヒカイに、ナガレは肩に手を当てる。

 

「……ガトウさんに言われたんです。もしロナが声を上げるときがあれば気のすむまで叫ばせろって。そうすれば現実が見えてくる……」

 

 そこでナガレは一度息を吐きだす。つい数刻前に言われたことが、もう遠い記憶になっているように。

 

「……僕達も見るべきだと思うんです。『現実』を」

 

 ナガレの視線が、ロナへと向けられる。ロナの呼吸が更に荒くなっているのが、遠目でも分かる。

 

「あいつらにだって、あいつらにだって!!!家族や友達がいたはずなのに、反論することなくテメェのくそったれな作戦に乗ったんだよ!!!何でか分からねぇだろうよ!! お前は。お前は……っっ!!!」

 

 それ以上吐き出せなくなり、とうとう力尽きたようにその場でへたり込むロナ。ヒカイ、そしてジョウトがロナの隣に立つ。

 

「……2人はこの作戦、納得できたのかよ」

「……」「……」

「……答えてくんねぇか? 俺だって吐き出したんだぞ? あんた達だって吐き出す権利あるだろ……?」

 

 ロナは力なく、ヒカイとジョウトに告げる。

 

「……嘘偽りなしで答えるべきだろうな」

 

 先に口を開いたのはヒカイだ。

 

「……正直に言おう。『仕方なかった』」

 

 言った。

 

 その言葉にショックで、その感情とは真逆にロナは片手を握りしめる。

 

 けど、ヒカイは続けた。

 

「……だが、それとこれとは別だ。大人ぶったところで、こんな作戦を続けてほしいとは思わん。こんな作戦は人間のやることではないからな」

 

 息を整えるようにヒカイは目を伏せる。そしてその視線はジョウトに変わる。

 

「……オレはオッサンと違って大人じゃねぇ。頭で考えたところで笑っちまうぐらい簡単だろ? ……納得いかねぇよ。ロナと一緒だ」

 

 ジョウトがそう言ってる間に、ナツメは立ち上がっていた。咳き込みながらも、ナツメは自分の正論(言い訳)を続ける。

 

「……けど……自衛隊にはS級はいない……知ってる……?……S級1人には、何十人もの力があることを……」

「けどナツメさん」

 

 ロナをなだめるように立っていたキカワが、ナツメに振り返る。

 

「どんなに違う大きさのペットボトルでも、全部1つって数えられるんですよ? ペットボトルに穴が空いたら全部流れちゃう。それって普通のペットボトルも、高級なペットボトルも同じ。……人間で例えるなら命、ですよ?」

 

 そう言いながら、キカワは13班に預けるように下がる。ロナは立ち上がっていた。

 

「その通り。我々は1人の人間で、1つの命がある。そして我々は決定的に違うところがある。……ジョウト、答えられるか?」

「当たり前だろ? オレ達は道具なんかじゃねぇ。『意思』ってやつだろ?」

 

 さらにジョウトが、仲間たちに肩を貸すように言った。

 

「そういや、オレ達が試験にいるころ、ガトウがこういってたぜ。『3人1組でチームを作れ』。こいつ、当たり前の事と思ったが全然ちげぇよな。……だって人間ってのは『1人1つ』だからな」

「……そうだな。もし、何十人もの力があるS級だとしたら、たった1人1人だけで進むことになっただろう」

「2人の言う通りだ。……ナツメが何十人って例えてたけど、ガトウさんはそんなこと言わなかった。それは、人間、どんなやつでも、1なんだ。けど……」

 

 ロナが周りを見る。

 

「……俺達は1だけど、その中にはいろんな1が混じってるはずなんだ。誰かから渡された、『意思』ってやつの1が。」

 

 ロナが、ヒカイが、ジョウトが。

 そしてその場にいる全員が。

 

 自分の意思となって。自分たちの『意思』へと変わっていく。

 

「…………」

 

「……総長。作戦を提案します」

 

 そこに、今まで沈黙を貫いていたキリノが入ってくる。

 

「……帝竜ウォークライの『生体サンプル』を使わせてください。帝竜から得た素材を加工し、自衛隊の兵装を強化しましょう」

「キリノ……!」

 

 ロナの顔が、どこか輝き始めた。

 今まで暗く、何かを恨んでいた顔から、希望の顔へと。

 

「それであのレーザーにも多少は耐えられるはずです」

「………却下します」

 

 だが、ナツメは首を横に振った。

 

「あれはムラクモの切り札よ。……ガトウに……与えるはずだった」

「でしたら!!」

 

 そこに、ナガレが挙手する。

 

「だったら、僕にください!!ガトウさんの『意思』を引き継いだ……僕に!」

「ナガレさん……」

「それに、ガトウさんだって望んでいないんです。住んでくれる人がいなくては、東京を取り返したって意味がない。……きっと、ガトウさん……いや、我々10班は、そのために戦っているんです」

「……そうですよ。みんなが犠牲になったのに、それに目をつぶるわけにはいかない。……私も、目の当たりにしたから」

 

 ナガレ、アオイがそう言う。

 

「……ガトウさんは言ってたわ。後悔のないように生きろ、と。何もしないより、何かしたほうが、良い」

 

 キカワが言う。

 

「……………」

 

「もう拒否するの、やめてくれよ……」

 

 ロナが、全員の前に立つ。

 何も分からない。分からなかった。記憶もほとんどない。

 けどそんな分からないことだらけの状態でも、分かることがある。

 

「これだけの、作戦や決まり事よりも大切な、『俺達の意思』があるのに、アンタはそれを拒否するのか? ……そんなの、違うだろ」

 

 

 

「…………

 

 

 

   分かりました。承認します」

 

 その言葉に、いたるところから声が出る。

 

「私が間違っていたのかもしれません……今回の作戦、私は外れます」

「ナツメさん……」

「キリノ……あとはお願い」

 

 それだけ言うと、ナツメは何処かへと歩き、この会議室を後にした。

 ロナは自分の手を見つめる。……無意識だったが、超えてはならない一線だけはかろうじて踏み超えなかった手を。

 

「……え、えーっと」

 

 この場を任されたキリノは、未だに戸惑ったままで周りを眺める。咳ばらいを1つして気持ちを整えた。

 

「ともかく、作戦は承認されました。自衛隊の強化開発も含め、1日で結果を出します」

「1日?大丈夫なのか?キリノ」

 

 ロナの言葉に、キリノは力強くうなずく。

 

「……みなさん、どうかお待ちください!」

 

 

===============

 

 

「……」

 

 夜。俺は都庁の広場にいた。

 寝転んでいた。地面は固くて、寝にくいけど、なんか、休めておきたかったからだ。

 だったら、ベットで寝た方がいいのかもしれないんだけど、でも、外の空気にも当たりたかったからだろう。

 

「………ガトウさん」

 

 無意識に、俺はガトウさんの名前を言った。

 ………意思。か。

 

「……ロナ?生きてる?」

 

 うわっ……って、キカワさんか。いきなり覗き込まないでくださいよ。

 

「あーよかった。……どうして寝てたの?」

「えっと……ちょっと、外の空気を吸って、ついでになんとなく寝転んでいました」

「ふーん。………ちょっと、会話、いいかな?」

 

 ……?なんだろ。俺は起き上がりながら、キカワさんの会話に乗り始めた。

 

「……ロナはさ。……すごいんだよね。……どんな相手でも、恐れず立ち向かう。ナツメさんだって、そうだったでしょ? ま……流石にあそこで殺しにかかってたら幻滅しちゃったけど」

「……う、あれは……ただ単にキレただけですよ。そりゃあ……俺達と同じように、命がある、人間ですから。……それに、ちょっと自分でも驚いているんです。あの時マジで殺しに行くつもりだったかもしれません」

 

 もしそうだったらどうなっていたんだろう。けど……これ以上は怖すぎて想像したくなかった。

 

「でもその怒りごと、最高責任者のナツメさんに言ったんだよ? 拳を叩きつけてね」

「だ、だから!あれはただ単にキレただけですって!……さすがに、反省してますけど……」

「本当に?」

「………半分以下は」

 

 その言葉に、キカワさんは笑った。……ちなみに本当だ。殴ったことは反省してるけど、でも、許せなかった。今でもな。

 ひとしきり笑うと、キカワさんはどこか悲しそうな顔で、言った。

 

「……私はさ、そういうのが出来ないんだ。まるで、自分を変えちゃうようでさ」

「……それが、普通なんじゃないんですか?」

「ううん。……ねぇ知ってる?大勢に印象つけられたら、最後までそれをやり抜き通さなくちゃいけないこと」

「……え?」

「……私はさ、そんな環境に生まれたから、そうならなくちゃって無意識に思っているの。……だから、ロナのことがちょっとうらやましい」

「………」

「似ているんだよね。私の知っている人と。だから、ロナのこと、親近感湧いちゃうのかな……」

 

 そんな……辛い過去だったのかな……?けど、……誰に似ているんだろ?

 

「ふふっ、男の子、って言えばいいかな?」

「……俺女っすよ」

「あはは!!分かってるって」

 

 ……まぁ、心は男なんだけどな。

 ……けど、どこか、キカワさんもある人に似ている気がする。……うーん、分からん。

 

「……さて、そろそろ寝よっか?明日のためにもね」

「……えぇ」

「……おーいガトウさーん!!私たちの事、見守っててくださいよー!!!」

 

 天に向かって、キカワさんが子供っぽくはしゃぎながら叫んだ。

 ……そうだな。大事な物に気づかせてくれた、ガトウさんに、感謝、そして、宣言しなくちゃな。

 

「ガトウさーん!!!俺達、絶対、世界を取り戻しますからね!!!」

 

 ……だから、見ていてください。ガトウさん―――

 

 俺はそう思いながら、明日を待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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