女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
ロナの運命、そして、戦闘中の10班。そして―――
では、46Sz、どうぞ。
「ど、どうすんだよこれ……!」
ロナは自分で立ち、未だ稼働しているトリニトロの、恐らく、『核』を見続けていた。
止める、にしても強烈な熱気で『核』は守られており、銃弾を撃ったところでそれらは溶かされる、もしくは、余計に爆発の原因になってしまう、のどちらかだ。
「くっ……ここから逃げ切れるか……?」
「おいおいオッサン。珍しく弱音だな」
「その声……タケハヤか?」
後ろからタケハヤが歩いてくる。どうやら、仲間はいない、単身で来たようだ。そして、状況を確認し、「ふぅん」と、つぶやく。
「……タケハヤ。逃げた方がいい。あいつは……!」
「それが、『正義の味方』なのかよ?」
「……だが」
「ま、見とけって……なぁっ!!」
そう言って、なんとタケハヤは核へと走った。その光景にあわてて三人は止めようとするが、誰かが割り込んでそれを拒んだ。
「っ、フウヤ!? お前……!」
「アンタらの役目じゃねぇよあんなところに突っ込むのは。……そうだろ、ロナ」
「なっ、何を……」
「うおおおお!!!」
言ってるんだ、との言葉を遮るようにタケハヤは大きく唸る。見ると、熱気をモノともせずに『核』に手を突っ込み、必死に引きはがそうとしているではないか。
「く、ううう……! 暴れるんじゃねぇ……! おとなしく……表出やがレェェ!!!」
そして、タケハヤは『引きはがした』。トリニトロの心臓と思われる、赤く光る、半透明の球体を。
それをタケハヤは力を入れて握り潰し、それを破壊した。
「はっ、俺にだって、正義の……味方……」
その言葉が言い終わらないうちに、タケハヤは地面に倒れ、意識を失った。
「っ! タケハヤさんっ!!」
フウヤは見たこともない焦りで急いでタケハヤの元へ行き、触れようとして、一瞬止まる。
服は焦げ、皮膚には水ぶくれ、黒ずんだ痕、と、とてもではないが、触れたところでさらに傷を刺激してしまうのではないか? そう思うと、迂闊には触れることはできなかった。
「フウヤ、退いて。……『
それを見たのか、だが、見ていなくても今のような行動に移っていたロナは『キュア』を起動して、なるべく傷を治していく。ただ、傷は治せても、火傷の痕などは退かせることはできないらしく、いくら当てても治らず、ロナは焦りを見せていた。
「……医療設備がここでは足りん。急いで戻るぞ。ロナはそのまま治癒の継続を。フウヤだったかな、君も運ぶのを手伝ってくれ」
「……待てよおっちゃん。俺たちはアレだぞ? 敵対組織だぞ? こういうのもアレだが、敵助けていいのかよ?」
今までの飄々とした態度からは一転、まるで遠慮しがちな態度だ。
それをロナは首を横に振って拒否する。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ? アンタ達にとってタケハヤって存在は大きいはずだろ? ここで死んだらSKYも、俺達も悲しむよ。……いいですよね、ダイゴさん、ネコさん?」
ロナは遠くからやってきていたネコとダイゴにも確認を取るように告げた。
ネコはあからさまに複雑そうな態度を見せるが……。
「頼む」
「ちょ、ダイゴ!?」
「ネコ。この男は俺達にとって偉大な存在なのは間違いないだろう? ここで意地を張るべきではない」
長い視野で見渡せるダイゴに、ロナは胸をなでおろす。
「……国分寺の近くに車を停めてある。入手経緯は聞くな。それを使って先に向かってくれ」
「分かった、ダイゴ。……先に私、ロナ、フウヤでタケハヤを運ぶ。後で迎えにくるから、ジョウトとダイゴとネコは待っていろ」
ヒカイは冷静な判断で指示をし、6人は言われた通りに動く。
―――数十分後の都庁前。車が到着する。事前にミイナづてに連絡は入れてあり、3人は医療班にタケハヤを任せる。
「私は残りの3人を連れてくる。2人は待機しておけ」
「は、はい。分かりました」
車が去って行く。フウヤはもうすでにタケハヤの様子を見に向かっているようで、すでにいなかった。
「……何か、忘れてる気がする……」
思い出そうとして、その場で立ち尽くすロナ。自身も今までのダメージがあるが、今はそれどころではない。
もっと大切な何か。もう後戻りできないような何かを。
『……ロナ。とりあえず戻ってきてください。耳に入れたいことが』
「……入れたいこと……あっ!!」
ミイナの言葉に、ロナは思わず、ある方向を見る。自分でも分からないが、ただただ嫌な予感と確信が身体を振るわせた。
「……ごめんミイナ。けどここで見逃したら……!」
『え!? ロナ、どこへ―――!?』
すぐに、走り出した。声も、すでに遠くなっていく。いや、もうそこに集中するわけにはいかなかった。
「…………」
必死に走って、走って、走って。
ボロボロの道を、フロワロが点在する道を走る。
「……ケホッ、ケホッ」
どこまで走ったのか分からない。見知らぬ十字路で意識が朦朧とし、膝をついてしまう。連戦や帝竜との戦いでの大ダメージ、そして出血。
また大きくせき込んで、何かを吐き出す。何かと思って見てみると、やはり、血だった。どうやら、予想以上にダメージが深いらしい。
「……止まってなんて……いられない」
そうつぶやくと、無理やり立ち上がって、もう一度走り始める。先ほどよりかは遅い、だが、止まっているよりかはまだまし。
自分に『キュア』をかけても、絶対に無意味。そんなことは、出来なかった。
とにかく、走る。必死に、助けるために。
「………前にも、こんなことがあったな」
ふと、思い出していた。思い出せないものの、どことなく、同じように、誰かを追いかけていた気がする。
必死に走って、走って、走ったのに、手は届かずに―――
―――キキーッ!!
「っ!?」
一瞬、車のブレーキ音が聞こえて急停止するロナ。だが、どこからどう見てもただの道路で、明らかに車は来ていない。そもそも、こんな状況で車を走らせている人なんていないはず。
となると、今のは幻聴、か。ロナは薄くなっていく思考でそう思った。
「……俺は……」
二度と……
「……あんな思いはしたくない」
唇をかみしめる。血が口の中に入る。
「絶対ダメだ……あいつに、あんなことをさせるわけには……!!」
そうつぶやいた後、ロナの走る速さがどことなく上がって来たかのように見えた―――
======東京タワー======
「っ……ハァ……ハァ……」
一体何十分もの戦闘時間が経過したのだろうか。手が血まみれだったのにもかかわらず、身体も限界に近く、視界も紅く染まっている。
銃の一つは使い物にならなくなり、もう一方の銃はまだ使えるが、銃弾も枯渇し、体内のマナも限界点に到達していた。
それは、隣のナガレも、アオイも同じ。自分でも他人でも分かるぐらいに血まみれで、生きているのが不思議なぐらいに。
けれど、それがおかしいぐらいに敵はまだ力尽きていない。恐らくは、『帝竜』と同格、いや、それ以上かと思いたいぐらいに。そんな敵は10班の事を哀れだと言わんばかりに言葉を出した。
「やれやれ、しぶといわねぇ。いい加減、私の力にひれ伏したらどうかしら?」
「……そう行きたいんだけどね、『私』がそれを許さないの。……こんな悲劇を紡ぎ出した、あなたになんかに、許しはしない」
「ふ、く、くくく……あははははは!! 何よそれ! あなた何様よ? そうやって裁きを与えようとするのかしら? けど残念……そんなくだらないことはこの力の前にひれ伏すのよぉ!!」
敵の触手がキカワに一直線に向かう。必死にキカワは足を動かそうとして、もつれ、倒れてしまう。それのおかげで避けることができ、その隙に生じてもう一度狙いを定め、連射。
敵はそのまま空中に浮いてその弾を避ける。まるで、攻撃を、いや、敵をあざ笑うと思われる避け方だ。
「そう……この世界では、力が全て! 今この力を持って確信したわ……。そして、あなた達はこの力の実験台になってくれるありがたい存在」
敵は笑いだし、だが、その笑いが収まると、キカワ、いや、『誰か』にも謝罪するような口調へと変わる。
「私、いくつか誤解していたわ。それだけは謝らないと。いつか、凡人は無価値だって言ってたわね。それは謝罪するわ……」
そう、と敵は言葉を切り、声高らかに、さらに言った。
「無価値な凡人でもかき集めれば、神の領域の生贄になれたんだから……!!」
「……だから、あなたはこうして、犠牲を犯した……そうなのね」
キカワはゆっくり立ち上がりながらも、敵に哀れみの目を向けながらそう言う。見向きもせずに、敵はゆっくり降下、首を横に振った。
「耳が遠かったのかしら……? 犠牲なんかじゃない、生贄、ってね……」
「生贄だと! ふざけるな! こんなの……ただの虐殺だ!!」
ナガレが声を上げて抗議するが、血を吐き出して咳き込んでしまう。その様子が大変滑稽だったのか、敵は大きく笑った。そう。あざ笑うように。
「あははは……!! でもね。感謝しているのよ。あなた達……『仲間』に……ね」
「仲間……! 今のあなたじゃ、そんなの、裏切りよ!!」
敵が言った言葉に、アオイは抗議し、マナを自分の腕に寄せ、『エナジーピラー』を起動。素早く撃ち飛ばす。が、敵は触手を振るってそれをはじく。
「……ねぇ、そこでまだ震えてるキリノ? 愚かで悲しいアナタに、最後の役目を与えるわ」
「っ!!」
とっさに、ナガレはキリノをかばおうとするが、敵の触手がナガレを弾き飛ばす。
「ナガレさんっ!!」
アオイはすぐにナガレに駆け寄る。キカワはいつでも射撃できるように、構えた。
「そうね。この私の『力』がいかに素晴らしく偉大なモノか、見届けるの。光栄な役目でしょ?」
「う、う……あ、あああ……」
「って、まだ震えてるのね……恥ずかしい子」
「待って」
近づこうとした敵にキカワが狙いを定めて止める。大変不機嫌そうに敵はキカワを見た。
「それ以上何か動かして見なさい。……『私』が、『キカワさん』が、許さないわ」
「……うざっ」
その言葉を聞いた途端。
キカワの身体が上空へ吹き飛ばされた。空中制御の効かず、さらに連撃を叩き込まれる。
殴られるたびに吐き出る、赤い血。そして、もてあそばれるように飛ばされていた。
「あはははは!! どうしたのよ! さっきまでの威勢はどうしたの!? この程度かしらぁ!?」
「やめろ!!!」
誰かの怒声と同時に銃弾が、敵に向かって撃たれる。気づけずに敵はその攻撃を喰らう。動きを止め、そちらの方へ振り向く。同時に、キカワの身体が地面に激突する。
「……………」
「ふふ……あらあら。13班のお仲間たちはどうしたのかしら?」
「………
うるせぇ……黙ってろよ………
この……クソババァ!!!」
分かっていた。コイツは、ナツメだということに。髪は逆立ち、目が四つになっているような顔、それなのに、一発でコイツはナツメだということに気づいた。
「……ナツメ? 誰の事かしら? ……我が名は『人竜ミヅチ』。新たなる神の名、覚えておきなさい」
「クソババァで十分だ……テメェなんか、クソババァで十分だ!!!」
ロナは激昂した。この惨事、そして、この光景、間違いなく、ナツメ、いや、ミヅチだということに。
辻褄は合う。今日いきなり半数以上が姿をけし、そして、マモノを難なく運べる存在はたった一人しかいないと言うことに。
どうやってそそのかされたかは分からない、が、コイツだったら確実に怪しまれずに消失、いや、動かすことが可能だと言うことに。
ミヅチは不愉快そうにロナを見て、哀れみの目で語る。
「……いけない子ね。……折角第二の人生を歩んでいるのに、そのお礼も言わないなんて」
「何……?」
「………実験体『
ミズチが告げた謎の言葉。その言葉に『ロナ』は微かに反応する。
だが……何も分からない。苛立ちだけが頭を走る。
「……何言ってんだ」
「とぼけても無駄よ。折角、こうして管理していたって言うのにねぇ」
「うるせぇよ! それとこれとは何の話が……あっ!?」
と、ロナは突然言葉を区切って仰天した。
ミヅチの足元。そこには小さな亡骸があった。
そして、よく見ると、面影があった。そう―――
「……あの時の、子供……」
たった数回しか出会っていない。それでも印象に残ってる相手はいる。
自分も嬉しさで一曲上げるほどで、けどそれでも十分だった。
その『十分』は……二度と来ない。
………無意識に、静かな怒りが腕を振るわした。マナも、体力も限界だと言うのに、そんな感覚すらも騙してしまうぐらいに、怒りが、こみ上げてくる。
「……この……クソババァがああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
怒りに身を任せて突進。まるで音速かと思われるぐらいに一瞬にしてミヅチの零距離に到達し、殴りかかる―――
「あぁ……思い出したわ。あの時、殴ったわよね。ロナ、いや、実験体『418』。そのお礼も、しなくちゃね―――」
怒りで我を忘れ、防御を無視したロナの腹部へと、ミヅチは思いっきり殴った。
小柄なロナの身体が吹き飛ぶ。追い返されたロナは近くのビルと激突し、地面へと倒れる。
意識が吹き飛び、一体何があったのかロナは分からなかった。意識がはっきりしたときには、ミヅチの攻撃準備が終わっていた。
くそっ……動け、動いてくれ、
せめて一発……殴らなくちゃ……死ねない……!!!
必死に、自身の力を振り絞って立ち上がろうとしたものの、完全に限界が来ていた。証拠に、全身の血が噴き出、衣服を汚し、髪の毛にすらも血がこびりついていた。
貧血、枯渇。すべての条件を満たしてしまったロナには、もうなすすべもなかった。
「ち、くしょう……動け、ない……」
どれだけ抗ってきた
触手が、一直線にロナに向かってくる。ロナはそれを凝視しただけで、何もできなかった。
ズドンと、重い一撃が、『身体』を貫いた。
「……あ、あぁ……」
見てしまった。『最期』を。
「……あ……がっ……」
血が噴き出る。まだ、残っている。
床にこびりつく。俺の足元にも降りかかった。
「……あ、あ……あ、あああ……あ、あああああああああ!!!」
恐怖、怒り、悲しみ、絶望、憤り、嘆き。
それらの感情を吐き出すように俺は叫んだ。
泣き叫んだ。怒り叫んだ。苦しみ叫んだ。
俺の目の前の―――
「ロナ………平気………?」
そっと、血まみれで笑いかけた、キカワ……に。
貫かれて、限界の筈なのに、キカワは笑っていた。
「えへへ……よかった。今度は……自分の意志で、やり遂げたんだ……だから……」
キカワのマナが、呼応していく。自分の血肉と引き換えに―――。
「や、やめろ……やめてくれ!!! また、俺達を――――!!」
「あはは……そっか。……ごめん。結局、『キミ』に迷惑かけてばかりだね……」
必死に手を伸ばす。でも、届かない。動かない。
また………守れなかったのか………?
俺は結局………『アイツ』を……『委員長』を…………守れなかったのか………?
「……でも、ロナ、いや、『キミ』なら……大丈夫」
最期の別れの、言葉。
サヨナラ。大好きだよ
満面の笑みで、
途端に、『委員長』を中心に爆発が巻き起こる。
『サクリファイス』。非常に凶悪な一撃は、自身の『人生』を引き換えにできる荒業。
爆風の近くにいたのに、俺はなんともなかった。感覚が、なくなっていたからか、それとも―――
『委員長』に、守られていたのか―――
答えは、