女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
とりあえずリアルも自身の精神状況も落ち着いたのでここからまた更にかけていければいいな、と思います。いつ更新が止まるのか分かりませんが、それでも陰ながら最後までお付き合いしてくだされば私も非常に嬉しい限りです。
では63Sz、どうぞ。
「……こっちです」
女の人から「どうやってここに入ったか」「ルートは覚えているか」を聞いた後、俺は前に進みながら警戒し、安全だと思ったら来るように促す。なるべく近い方が安心だが、下手に二人で行動してるときに遭遇したらやや大変だ。
今のところマモノは珍しく少ないようで、あまり遭遇してはいない。もし遭遇したとして、俺一人で護れるだろうか。
そんな不安や弱音を一切口にせずに少しずつ進む。下手に吐いて不安がらせるのはまずい。
「……」
どこまで進んだだろうか。そう思いながら立ち止まる。壁からそっと、その奥を見る。見ればドラゴンがいる。まだこっちには気づいていない。ただ、他のルートはこれ以外ない。
塞がれたかもしれない。不安になるけど、ぐっとこらえて、後ろを振り向いて女性に目を向ける。
「……やってみるか」
無理に戦闘はしない。そもそも、タイマンするほどの実力は持ってはいない。無茶はするなと言われている。俺は女性に「身をかがめてください」とだけ告げてさらに様子を伺う。
……だめだ。あのドラゴンはどうやら動かないらしい。恐らく、先ほどの影響で道がつぶれたか、若しくはドラゴン自体が別のところから移動した後にここに来てまた静止してしまったか。
……完全に道は塞がれた。ここからここまで一本道だったはずだし、本来使うはずだった道も瓦礫の山で塞がれてしまった。
焦るな、何か手はあるはずだ。そう俺は自分に言い聞かせて更に辺りを見渡す。そして見つけた、ぽっかりと空いた壁の穴と小さな空洞が。
行動しないよりまだマシだろう。俺はそう思って無言で女の人に手招きし、壁の穴を指さした。
その後俺たちはその穴の中に入る。穴の中は休めるぐらいにはそれなりに狭くない空間だった。時間に関してはそこまで長く歩いたわけでもないが、正直ドラゴンとやりあってる最中に別の敵が来るとなるって考えると慎重にならざるを得なかった。
「……通信、繋がるかな」
一度空道内を確認。穴とか、マモノが侵入してきたとかの確認を取り、特にないことが分かった後にトランシーバーで通信をつなぐ。生体反応に関して、ミイナやミロクが拾ってくれるかなって思いながら。案の定、ノイズ音しか入ってこなかった。どうやら、さっきの振動でかなり持ってかれたらしい。
一人になるという不安。今まで感じたことなかった。
「……あの」
「うん?」
奥で座っていた女の人に声をかけられた。俺はその人を見る。女の人はスマホを見せてきた。
「この子、見かけませんでした?」
「この子とは? ……っ!?」
思わず顔に出てしまう。心臓が飛び出そうなぐらいに―――。
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『生体反応はこの辺りで消失………どうするんだ?』
時は少しさかのぼる。先ほどのガレキが崩れた影響でロナと別れてしまったヒカイとジョウトはまず状況確認をし、互いに無意識に顔を合わせていた。
「……言われなくても合流する。だろ、オッサン」
「あぁ。毎度の如く無茶されたら困るんだがな。……ルートの検索を頼む」
『了解。ちょっと待ってな』
ミロクの声で一度通信が途切れる。一度切れた通信の後に二人は一度周囲を見渡した。崩れた個所はいくらかあるものの、移動できないわけではない。ミロクから開示されるはずのルートを二人は待つことにした。
「なぁオッサン」
「何だ?」
「………いや、やっぱなんでもねぇ」
ジョウトは何か言おうとしたものの、即座に言葉を区切る。ヒカイもそれ以上は何も言わず、ただ連絡を待った。
ものの数十秒。ミロクから再び通信が入る。ジョウトの持っている端末にマップが表示された。
『13班。別ルートの捜索完了したぜ。恐らくこの地点からならロナと合流できるはずだ』
と、ここまでミロクは言ったあとに言葉を一旦区切り、続ける。
『ただ、ジャミングが酷い。多分帝竜が通ったせいだな。未知の領域に近いから二人とも油断はするなよ?』
「あいよ。言われなくても、オレ達は問題ねぇ」
そうジョウトは答え、ミロクは『はいはい』と言って通信が切れた。
「じゃ、行くとすっかオッサン」
「分かってるとも」
二人はマップを頼りに先へ進む。
途中、敵からの妨害があったものの、上手く退けていった。
「……あーダメだ」
「どうした?」
「んー。あのアホ娘がいねぇと楽も何もねーなって」
さも当然のような言い方でジョウトは敵から使えそうな素材を入手した後にそう言った。ヒカイも思うところがあるのか、「あぁ」と答えた
「確かに私ひとりではな……元々この戦い方自体、単体での戦闘を得意としている。集団戦ならロナの方に分があるだろう」
「そういやオッサン。その拳法ってどこ仕込みだ?」
一見興味のなさそうな言い方でジョウトは言った。ヒカイの動きが一瞬だけ固まる。何か言いずらそうに表情をきつくし、それ以上は詮索するなと言いたげに。しかしジョウトは知ってか知らずか、そのまま言葉を続ける。
「……つーか、アンタらは隠し事多すぎるんだよ。オレそんなに一般人ってことかよ?」
「隠し事、と?」
「あぁそうだ。まるで二人とも何かあるみてーだし。それもこうした状況に関係したりするやつ」
「……」
「つーかこの前、自分で行ってもいいって言ったのに渋谷の時にブッ叩くとかどういう神経してんだよ。自分が命令してないと気が済まねぇってか?」
それだけ言うとジョウトは黙ってしまう。ヒカイもその様子を見るものの、言い返せずに雰囲気が悪くなる。その光景をモニター越しに見ていたのか、ミロクが通信を入れてくる。
『お前らさぁ……喧嘩している暇あるならさっさとロナ見つけて来いよ。……当人も関わっていることだろ、それ』
「……まぁ、な」
ヒカイは呟くようにそういう。ジョウトは無言で返す。雰囲気が更に重く感じる。
「……とにかく行こう。ロナと合流次第、必ず話す」
「あいよ」
それだけ言うと二人は先に進むことにした。