女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!! 作:エマーコール
大丈夫じゃない、問題だ。……ということでまたお久しぶりです。何とかちょこちょこ積み上げてきてやっと投稿できるようになりました。その……なるべく来年までに2020の最終Chapterまで書き上げようと思うので、頑張ります。
というわけで、64Sz、どうぞ。
「………」
「その反応………この子を知っているんですか?」
女性に言われる。俺は黙ることしかできなかった。
言い訳なんて、本当はしたくない。
でも……本当のこと言って、信用してくれるのか?
怖い。
嫌だ。
でも。
次の言葉を発しようとしても、それらは息となって言葉にならない。
でもいつか、言わなくちゃいけないことだ。だからこそ。俺はぎゅっと握りしめると、俺が知っていることをすべて話した。
事の発端である、都庁での出来事。そしてフロアで偶然出会ったこと。たった二つしか思い出がなかったけど、俺はその二つが妙に印象に残っていた。それは覚えている。
そして……ナツメに殺された事。
やはり女性は信じられないような顔だった。とにかく俺は淡々と事実と、子供の話をしただけだった。
何秒、という時間は感じられない。まるで俺だけ時間が止まったような、そんな感じだ。
一通り話し終える。女性はやはりショックだったらしく、言葉に出来なかった。
それもそうだ。俺だってこんな事話したくなかった。だからって、嘘をつくわけにも……行かなかった。
「………あの」
少しして、俺は声をかける。同時に俺は、どうして事実を話そうとしたのか、という疑問に至る。
そりゃ、嘘を言ってでも「俺は知らない」と言えばよかったんだろう。そうでなくても「死んでいない」という虚言を言えばよかったはずだ。でも俺は事実しか言っていない。
なぜなのか。答えもはっきりしていない。ぼんやりと霧のような、雲のような、そんな感じだ。
でも、それが俺自身の中での『答え』となっている。言葉に出来ない解答、みたいなものだろう。はっきりとしていないはずなのに。
けど。それで本当にいいのか? 嘘ついたところで……事実を見て見ぬふりをしていいのか?
きっと、それが嫌だったのかもしれない……。
「………ごめんなさい」
俺から出せる言葉はこれだけだった。
……女性は、ゆっくりと首を横に振った。
「そうですか……」
「……」
「……分かってました。きっと、何処かで連れ去られて……でも生きている希望を失いたくなくって……」
その希望は、俺の言葉で無くなった。……そう思うと、一瞬だけ自分をぶん殴りたくなった。ほんの一瞬だけだ。もちろん反省も後悔もある。
けど。言わなければいけない事実だったんだ、きっと。だって、俺がその時近くで目撃してたからだ。……だからこそ。正しいって思うしか、なかった。
「……でも、ありがとうございます。本当は言いたくない事実だったのですよね?」
「え……あぁ、はい。……そうです」
「……辛かったの、ですよね?」
……その通りだ。俺は言われるままに首を縦に振る。多分、表情に出ていたのかもしれない。割と顔に出やすいのかも、と思いつつ。
「それでも事実を言った……それはきっと、いつか知らなければいけないことですから、でしょう?」
「……そうですね。……失った人なんて、もう二度と帰ってこれませんから」
「……強いのですね」
強くない。俺はその言葉に目を背ける。そして女性は一瞬目を伏せるとひとりでに頷く。
「……何があったのかは、まだ聞きません。……ですから、もう一度……お願いします」
「護衛ですね。……了解です」
俺は頷きながら承認する。そして空洞内から通路を覗く。……やっぱり、ドラゴンはまだそこにいる。だから流石にきつい。……二人が来てくれたらきっと大丈夫なのに。
その時だ。ドラゴンが塞いでいる通路の奥から、足音が聞こえた。紛れもなく人間の足音だ。誰だ、という疑問の前に、俺は女性にそこにいるように指示して苦無と銃を取り出す。
「……よし、行くぜ!」
ここにもいる、という風に声を上げ、ドラゴンに突撃する。そして見えた。ヒカイさんとジョウトだ。そんな幸運に俺は笑ってしまうが、すぐに戦闘を開始する。
―――結果はいつも通りだ。ヒカイさんが前線に出て、俺が横から差し込み、ジョウトが支援する。当たり前の事が、当たり前のようにできて。俺は思わず小さくガッツポーズをしてしまう。だがすぐに遠くの女性に呼び掛け、来るように指示する。
「……すごい」
女性は開いた口が塞がらないようだった。それは多分、こうして俺たちがドラゴンを倒せたことによる驚嘆だろう。そりゃ、今までは俺一人だった。だからドラゴンはなるべく避けてたし、マモノも出来る限り遭遇しないように注意してたから。まともに戦うことはなかった。
でも今は違う。ジョウトやヒカイさんがいるからこそ、俺はこうして戦える。……一人で無茶しなくてよかったって、ふと思ってしまう。
俺は女性に笑いかける。
「これが俺たちの力ですよ。……犠牲を生まないため。だから俺たち13班は戦うんです」
「……そう、なのですね」
「……正直、今でも申し訳ないって思ってます。……でも、事実は事実のまま……ですから」
だからこそだ。罪滅ぼし……なのかよく分からない。けど俺は2人と一緒に戦う。散々俺が迷惑かけたし……。
「……そうですか」
女性はゆっくり頷くと、俺たちに言ってくれた。「頑張ってください」って。俺たちは勿論、と言わんばかりに頷いた。
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一度俺たちは地下道から外に出る。女性はそこで保護され、俺たちは支給品の再確認をしていた。そしてついでに俺は地面に触れ、帝竜がどうなっているのかの確認もしてみた。……何の反応もなかった。
「さてと……」
と、ジョウトがゆっくり立ち上がる。……って、あれ、まだ早くないか? 俺は時間を確認しようとして、しようとする前にジョウトがヒカイさんに声をかける。
「おいオッサン。約束忘れてるんじゃねぇだろうな?」
「約束……? ジョウト、お前約束してたのか?」
質問を投げる俺。直後、二人の間の空気が何やら異様に重いことを感じた。
……二人とも、どうしたんだ?
「……何があった?」
「お前も疑問に思わねぇのかよ。オッサンの戦い方だ」
「いや別に……確かに色々あるっちゃあるけど、ジョウトから見ての俺だって同じだろ?」
「お前はいいんだよ。素人だってのがオレでもはっきりわかる」
お前俺の事そう思ってたのかよ。何かムッとした。そう言ったらお前だって同じだろうが。と思ったが特に何も言わなかった。どうせいつものジョウトの皮肉だし。
「んでえぇっと……あぁそうだ。それとアホ娘、お前は何者だよ?」
「……ルシェだけど」
「は?」
どうせ知ってる人多いだろ。ということで俺はあっさりとばらした。言葉の割にはジョウトのリアクションは少ない。まぁ……都庁を取り返す前に見てただろうから薄々感じてたんだろう。それについては特に何も思わなかった。
でも……それとこれとは一体何の関係があるんだ? 俺は無意識に、ヒカイさんを見てしまう。ヒカイさんは俺を見て、そしてジョウトを見て息をつく。
「分かった……私の事についてだな。いいだろう。約束は約束だ」
そういって、ヒカイさんは淡々と自分の過去について話し始めた。