女ルシェに転生して2020年の東京で運命ごと『かえる』!!   作:エマーコール

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―――ドラゴン襲来まで、残り約半年。

大丈夫じゃない、問題だ。……ということでまたお久しぶりです。何とかちょこちょこ積み上げてきてやっと投稿できるようになりました。その……なるべく来年までに2020の最終Chapterまで書き上げようと思うので、頑張ります。

というわけで、64Sz、どうぞ。


64Sz 役目

「………」

「その反応………この子を知っているんですか?」

 

 女性に言われる。俺は黙ることしかできなかった。

 言い訳なんて、本当はしたくない。

 

 でも……本当のこと言って、信用してくれるのか?

 

 怖い。

 嫌だ。

 でも。

 

 次の言葉を発しようとしても、のどに鉛でも入れられたかのようになって声が出なかった。

 事の発端である、都庁での出来事。そしてフロアで偶然出会ったこと。たった二つしか思い出がなかったけど、俺はその2つが印象に残っていた。それは覚えている。

 

 そして……ナツメに殺された事。

 

 黙ったまま俺は目を逸らす。女性……母親の表情は分からない。怖い。

 自分がやったわけじゃない。仕方ないことだって言いきれてしまうかもしれない。

 でも黙っていたところで、いつかバレる。なら話した方がいいんじゃないか? いやそれは駄目だ。けど。

 

 心の中で押し問答が続く。沈黙だけしか聞こえない。

 

「………あの」

 

 少しして、母親が声をかける。不安そうな声だ。

 ……分かってるんだよ。そりゃ、嘘を言ってでも「俺は知らない」と言えば良い。そうでなくても「死んでいない」という虚言を言うだけでいい。今の状況ならそれがいいんだ。でも俺は黙ってるだけ。

 それが俺自身の中での『答え』となっている。もう分かってる。だから黙るしかない。

 そして嘘を言うことは、それだけは俺は許せなかった。もう全部知ってることだし、今までのことを否定するだけだ。

 

「………ごめんなさい」

 

 長い沈黙の後に、俺から出せる言葉はこれだけだった。

 

「そうですか……」

 

 まるで希望を打ち砕かれたような、どんなドラゴンの一撃よりも重苦しい言葉だった。

 

 ……俺は強くない。もっと強い人なら、この場をどうにか出来たかもしれない。

 いや、本当にそうなのだろうか? どんな強い人でも……この状況、どうにか出来たのだろうか?

 

「……あれ。ちょっと待ってください」

 

 俺は空洞内から通路を覗く。……やっぱり、ドラゴンはまだそこにいる。だから流石にきつい。けどこの足音は……人の足音か?

 その足音は確証へと変わっていく。ドラゴンが塞いでいる通路の奥から、足音が聞こえた。俺は母親にそこにいるよう伝えると、姿を現す。

 

「……ヒカイさん! ジョウト! 俺はここだ!!」

 

 俺は強くない。『狩る者』なんて言われてもさっぱり分からない。

 けど1つだけ確かなことはある。

 

 足音に呼びかけると同時、俺はドラゴンへと向かって走っていく。盾を持ったドラゴン、『シールドドラグ』は俺の声に反応して両腕の盾を構える。よし、上手くこっちに引き寄せた。

 更に俺は銃を構えて連射する。使って随分経っている銃は振動を両手に強く走らせる。……頼むからもう少しだけ耐えててくれよ。

 もちろん銃弾は盾によって、上に向かって弾かれる。狙い通りだ。

 

 そしてその直後、黄色いスーツの男の人がドラゴンの背後から飛び掛かる。ヒカイさんだ。ヒカイさんは気合の声を短く上げてドラゴンの後頭部に強打を与えた。

 すかさず俺が、その動きに合わせるように弾かれた銃弾を見つめる。その銃弾はマナを込めたものだ。だから弾かれて終わりってわけじゃない。

 銃弾が跳弾となって複数方向からシールドドラグにダメージを加える。

 

「オートコード起動。med!」

 

 更に、バンダナの人が現れると俺に治癒をかけてくれた。ジョウトだ。

 2人が、俺の隣に並ぶ。ドラゴンはまだ健在だ。

 

「……合流記念だ。気を張りたまえよ、2人とも」

「任せてください!」

「ヘッ、誰に向かって言ってやがる!」

 

 俺には、仲間がいる。それだけで……とても頼もしかった。

 

 ―――体感、それほど経ってないような時間で俺たちは連携しあってドラゴンを撃破した。いつも通りだけど、それが凄く嬉しくて、俺は小さくガッツポーズをした。

 

「……すごい」

 

 いつの間にか後ろで様子を見てた母親が、言葉を漏らした。

 多分、こうして俺たちがドラゴンを倒せたことによる驚嘆だろう。そりゃ、今までは俺1人だった。だからドラゴンはなるべく避けてたし、マモノも出来る限り遭遇しないように注意してたから。まともに戦うことはなかった。

 でも今は違う。ジョウトやヒカイさんがいるからこそ、俺はこうして戦える。……1人で無茶しなくてよかったって、ふと思ってしまう。

 

「……その力があれば、きっと。」

 

 母親が呟くと、俺の手を両手でしっかり握ってくる。

 

「……頑張ってください」

 

 ……その言葉で、全てを悟ってしまったのだろうと、俺は痛い気持ちになる。

 けど……信用もしてくれた。

 事実を俺の口から言うことはできない。それは今言えることじゃない。

 でも……行動で示すことは出来たかもしれない。

 俺は、黙ったまま頷く。もうあんな思いは嫌だから。

 

======

 

 一度俺たちは地下道から外に出る。母親はそこで保護され、都庁へと案内されていく。俺たちは支給品の再確認をしていた。そしてついでに俺は地面に触れ、帝竜がどうなっているのかの確認もしてみた。……何の反応もなかった。

 

「さてと……」

 

 と、ジョウトがゆっくり立ち上がる。……って、あれ、まだ早くないか? 俺は時間を確認しようとして、しようとする前にジョウトがヒカイさんに声をかける。

 

「おいオッサン。約束忘れてるんじゃねぇだろうな?」

「約束……? ジョウト、お前約束してたのか?」

 

 質問を投げる俺。直後、2人の間の空気が何やら異様に重いことを感じた。

 ……2人とも、どうしたんだ?

 

「……何があった?」

「お前も疑問に思わねぇのかよ。オッサンの戦い方だ」

「いや別に……確かに色々あるっちゃあるけど、ジョウトから見ての俺だって同じだろ?」

「お前はいいんだよ。素人だってのがオレでもはっきりわかる」

 

 お前俺の事そう思ってたのかよ。何かムッとした。そう言ったらお前だって同じだろうが。と思ったが特に何も言わなかった。どうせいつものジョウトの皮肉だし。

 

「んでえぇっと……あぁそうだ。それとアホ娘、お前は何者だよ?」

「……ルシェだけど」

「は?」

 

 どうせ知ってる人多いだろ。ということで俺はあっさりとばらした。言葉の割にはジョウトのリアクションは少ない。まぁ……都庁を取り返す前に見てただろうから薄々感じてたんだろう。それについては特に何も思わなかった。

 

「正直言うと俺にも分かんない。俺がルシェであること以外さっぱり。……けど、ナツメは俺の事を知ってるみたいだった。これが記憶喪失ってやつなんだろうな」

 

 若干嘘を交えつつもそんな風に分析する。……いや嘘はつきたくないってさっき言ったけどさ、こればかりは誤魔化すしかないし状況がそもそも違うわけで。

 

 まぁそんなことは置いといて。それとこれとは一体何の関係があるんだ? 俺は無意識に、ヒカイさんを見てしまう。ヒカイさんは俺を見て、そしてジョウトを見て息をつく。

 

「分かった……私の事についてだな。いいだろう。約束は約束だ」

「ヒカイさんの過去……?」

 

 ヒカイさん、他にもあるの? 俺の疑問に答えるかのように、ヒカイさんは淡々と自分の過去について話し始めた。

 

 

 

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