Nanoha×MGS = The Rebrllion =   作:No.20_Blaz

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皆さんのアッついご感想と感触の良さに、性懲りにも無く連載に振り切りました・・・が!!


基本、更新速度は亀と爺さんが競争して結果ナマケモノが勝つぐらい遅いです!
ぶっちゃけ・・・IS×MGSが優先となります。


・お知らせ・

えー・・・検討した結果、月に一本か二本のペースで投稿することにしました。
かなり遅いと思いますが、どうか首を長くしてこちらの作品を見守っていただけると幸いです。


前日談篇
第一話 「快晴の街の下」 


 

「地球は青かった」と言う言葉をご存知だろうか

 

 

有名な宇宙飛行士ユーリイ・ガガーリンが語ったとされる言葉だ。

 

だが。実際、彼はこの言葉を言ってはいなかった。

 

この言葉は一人歩きして生まれたのであり、彼が言ったそれとは違いがあった。

 

 

 

「空は非常に暗かった。一方、地球は青みがかかっていた」

 

これが彼が語ったとされている言葉。

 

また、彼の著書では「地球はみずみずしい色調にあふれて美しく、薄青色の円光に囲まれていた」と記述されている。

 

 

 

これがガガーリンの言葉の真実。彼は「地球は青かった」と口にはしなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ふうっ」

 

ぱん、と片手で本を閉じる。

本一冊を読み終え、それまで呼吸をしていなかったかのように腹の奥から溜まっていた空気を吐き出す。それまでの集中が吐く息と共に出て行くようで複雑になりつつあった頭の中は、その一回の呼吸で排出されていくのだ。

 

本の世界に引き込まれて時間が経つのも忘れ、まるでその本を読んでいる間に数年の時が流れたかのようだった。

 

 

「面白かったわね。時間つぶしには丁度良かったし・・・また来れたら借りようかしら?」

 

読み終えた本の表紙を見て簡潔な感想を呟き、あるべき本棚にへと本を戻す。

元々これは自分が持っているものではない。まして買えるものでもない。

読んでいた本は借りる物。

ここは本を借りられる場所、図書館だ。

 

「えっと、時刻は・・・まだあるか」

 

まだ余裕のある時間だ。

見上げた壁には張り付けの時計があり、そこに刻まれた時刻を確認すると次をどうするかと考える。

時間に余裕はある。そう焦る時間でもないので、またしばらく時間を潰すかな、と読書中立ち続けていた足を動かすが、咄嗟にその動きは中断される。

 

「・・・・・・。」

 

その先に居て欲しくない者達が居たからで、今この場からすれば明らかに場違いな身なりの二人組みが入ってきたのだ。

 

同じ服であるのは指定された制服だからで、その服装でどこの所属かは一目で分かる。

そして、その服を着る人間の印象もいくら性格がよくてもその制服だけを見れば嫌悪される。それを承知なのか、否かは分からない。

だが、この二人がただの図書館に入ってきたのはそれを承知の上でなのだろう。

 

 

 

(管理局・・・それも海の連中ね)

 

時空管理局。様々な次元世界を管理・統制する組織だ。

近代的技術と魔術の融合する科学技術。それを主流に強大な戦力を誇る。

表立っては警察組織。更には政府組織としてもあるのだが、それは彼らが優勢であるが為に行っている演技に過ぎない。

 

現実の管理局の行いは独裁。または侵略、略奪。

ある筈の無い平和の理想に泥酔した者達の集まる組織。言えば宗教カルトだ。

平和の為に武器を取れ。魔術を学べ。そして戦え。

警察組織と謳っておきながら、行うこと全ては武力での制圧や支配となんら変わりない。

彼らはそれを善と取る。しかし、他の者。管理局から外に居る者達にとってはどうだろう。

これだけの事をして外の人間たちは、これを善と取るだろうか。

 

そんなわけは無い。誰もが『悪』だと言い張るだろう。

力で全てをねじ伏せ、自分達の幸せだけを考える。

幸せを奪われた者達の苦しみを、彼らは知ることは無いのだ。永遠に。

 

 

 

「すまない。人を探している」

 

その管理局の局員二人が、一般的な魔導師の装備をして図書館の係員の前に立ち一枚の写真と共に尋ねる。

人を探しているようだ。

 

「・・・・・・。」

 

「この写真の子供だが、知らないか?」

 

「・・・いえ。知りません」

 

 

「・・・・・・。」

 

「嘘は言ってませんね」

 

「そうか」

 

 

「ご丁寧に相手の心理を読む魔導師まで・・・上位ランカーの魔導師のスキルよ・・・」

 

いずれにしても今は不味い。気づかれたくないのだ。

音を消し、気配を消して彼らに見つからないようにその場を後にしよう。

決断すると蛇の様に足音と気配を消し、姿を消した。その場に居た誰もが気づかないうちにまるで幽霊かのように。

 

 

「・・・失礼した。では・・・」

 

「・・・。」

 

「っと。一つ忘れていた」

 

「・・・?」

 

 

「この辺りで反管理局のゲリラが活動していると聞いている。もし何か情報を持っているのなら、また私達に伝えてきてくれ。相応の報酬は用意しよう」

 

「・・・・・・。」

 

局員二人はそう言い図書館を後にするが、後ろから係員の女性が彼らの後姿に対して舌を出していたと気づかず。誰も知っていたとしても話さないと無意識のうちに同じ事を考えられていたと思わず。

 

 

そんなものだ。

偽善の塊である彼らを受け入れる者など、嘘偽りの事を吹き込まれた者達だけ。

嘘を暴かれれば、彼らの栄光など容易く崩れ去る。誰もが信用しなくなる。

だから人は平気に嘘をつく。

保身のため。地位のため。力のため。権力のため。

最終的には金のため。

 

己の事を第一とする強欲で傲慢な人間。

そんな奴等だけが生き残ってしまう世界。

 

この世の成り立ちはもう腐り果てているのだ。

 

 

 

 

だから”彼女”は選んだのだろう。

腐敗した体制に、彼らに引導を渡すが為に。

彼女は自ら危険を犯しその中にへと向かう。

 

 

「・・・向こうに行ったかな」

 

古ぼけたフード付きのマントを羽織り、顔を隠すその姿は一目では男か女か分かり難い。

しかし僅かではあるが彼女の顔と長い髪が、燦々と輝く日の光に当たり照らされていき、隠れていた彼女の顔が見えていく。

オレンジの髪と碧眼。肌の色が白いところからして性別は女。しかも歳はまだ十代前半と、

言うなれば本当に少女と呼べる歳だ。

 

名をティアナ・ランスター

彼らによって存在を消された、本来生きている筈の無い少女。

そして、一人の英雄によって育てられた戦士でもある。

 

「なんで海の連中がここをうろついてんだか。確かここの世界は地上連中の管轄って聞いてたのに・・・」

 

物陰に隠れ、去っていく局員二人の様子を窺いつつティアナは反対側へと歩き始める。

あの二人の局員がこの世界に居ると言う事を前もって聞かされていなかった彼女は、あの二人が居ると言う事に驚くと共に、まるで自分たちが居る事が当たり前であるかのように振舞っている事が気に入らなかった。

 

図書館に現れた二人は空戦魔導師と呼ばれ、主に空を飛んで戦闘を行う。

また局員一人一人の魔力のランクは高く、戦法は集団戦が基本。

物量と弾幕での面制圧が彼らの主戦法だ。

 

その空戦魔導師とは違う魔導師。地上戦を主体とし、連携での集団戦だけでなく少数精鋭の小隊での行動。更に上位に行くと単独での活動も可能としている陸戦魔導師が居る。

魔力ランクは空戦よりも低くい者が殆どだが、それを補う為に軍隊の色が強い戦法、戦術を基本としている。

 

空戦を『量』ととるなら、陸戦は『質』を重視していると言ってもいい。

個々の能力が低くともそれを戦略等で補い、場合によっては覆す事も可能。

地を這い戦う彼らは、地球でいう軍人となんら変わりはない。

空戦は見栄を張るエリート。陸戦はたたき上げの番犬だ。

 

「大方、威張り散らしてここに入ってきたか・・・よほど自分達の支配地域を延ばしたいか力を見せ付けたいのね」

 

 

 

現在、ティアナが居る世界は最近になって管理局に制圧・占領された世界だ。

広大な荒野と荒れ果てた街。建築物も中東的な物ばかりで人種も多様だ。

文明レベルは平均。特出するのも無ければそれ以下もない。安定していると言っていい。

 

ここを制圧したのは先ほどの空戦魔導師たちではない。実戦経験豊富の陸戦魔導師だ。

この世界だけではない。殆どの世界は陸戦魔導師たちによって占領され、今もその高い錬度を活かし様々な次元世界を制圧する。

反管理組織ゲリラや武装集団の言う魔導師とは基本彼らを斥す言葉で、空戦魔導師は制服と呼ばれている。傷も汚れも無いまっさらな制服。その服を着て堂々と土足で踏み入る。

皮肉以外見当たる理由はない。

 

 

「自分たちの見栄だけが取りえね。ホント嫌な連中ねぇ」

 

自分達が勝利者だからと言う理由だけで身勝手にされる。これ以上に無い屈辱だ。

だが、今はその本音を隠さなければいけない。生きていけない。

バレれば自分の人生が『終わる』からだ。

 

「はぁ・・・先行き不安だわ、コレ」

 

これからの事に不安さを感じるティアナはため息を吐く。彼らの姿を見ただけでも不安になるのは彼らを嫌い、呆れているからだ。

力はあっても技術は無い。名誉はあっても実績はない。

中身の無い空な存在である彼らをティアナは誰よりも嫌っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちやがれ!このコソ泥小僧ッ!!」

 

直後。ティアナの後ろから怒声を張り上げる男の声が聞こえてくる。

かなり大きな怒声であるのでどうやら相当血が上っているようだ。

突然の怒声の声に驚いたティアナは目を見開き、反射で後ろにへと振り向く。

 

 

「・・・物取り、のようね」

 

どうやら男の経営する店で物取りがあったようで、その犯人を男は追っている最中だったようだ。

振り向いた先に木の角材を持って追いかける男と、逃げる少年の姿があった。

 

「子供・・・!?」

 

ティアナの視界に入ったのは赤い髪の少年。歳は自分よりも下で大体7歳ないし8歳ほどか。妙に大人びた顔つきな為、正確な歳は分かり難い。

目つきは細く鋭い敵意のある目。まるで目に見える人間すべてが敵と言う目だ。

 

「どけっ!」

 

「うえっ・・・私か?」

 

真っ直ぐ彼女の方に向かってきた少年は驚く人の中を潜り抜け、追いかける男から逃げ続ける。叫ぶ声は本当に子供だと改めて認識させられる。

その少年が叫ぶ相手が自分だと気づき。抜けた声で自分に指差すティアナは彼が強引にでも押し通る気だと見て、数秒ではあるがどうするべきかと考える。

素直に道を開けるか。助けるか。それとも成敗するか。

もし少年が被害者の側であれば助けるが今回の場合は逆。彼が事を起こした側だ。

 

 

「・・・まぁ抵抗感はあるが、ゆるしてもらおうか」

 

「ッ!?」

 

彼女は応戦する気だ。

普通なら驚いてそのまま避けるところだが、少年の考えは大きく外れティアナはその場に立ち止まって彼を迎え撃つ事にしたのだ。

 

「くそっ!」

 

「・・・。」

 

素直によければいいものをと言いたいところだが、少年は話しをする余裕は無い。

このまま強引突破するだけしか方法はないのだ。

 

 

「ッ・・・!」

 

(退けばいいものを!)

 

刹那、少年の足に電撃が集まり始める。

突然現れたその電撃が自然のものではなく魔力によって作られた魔術であるのは誰の目からも明らか。彼も恐らくはかじった程度ではあるが魔術の心得を持っているのだろう。

だが、問題はその電撃を何に使うかだ。

足に纏っても使いようは様々だ。電撃を纏った足でそのまま蹴るのか。それともただの牽制か、もしくは。

 

考えようは様々だが、今は正面の彼をどうにかしないといけないのは確かだ。

 

「雷電霹靂・・・!」

 

「雷の属性・・・ッ!」

 

 

 

 

 

「ドライブッ!!」

 

電撃を足の裏に集束させ、それを一気に爆発。即席のブースター代わりにして、爆発的な加速を生んだ。

始めから戦う気などない。ここを突破する気だったのだから、突破する事を第一にする筈。

見落としていた事を今更ながら思い出したティアナだが、もう遅い。

少年のスピードは誰も追いつくことも、目で追うことも出来ない。

これで勝った。少年の脳裏に勝利の二文字が現れた。

 

その一瞬が、その一瞬の油断さえしなければという言葉が前にあると気づかずに。

 

 

 

「・・・え?」

 

「残念」

 

 

気づいた次の瞬間、少年は地に足をつけていなかった。

くるりと回転したかのように身体は宙を舞い、視界には青く透き通ったかのように何も無い空が広がっていた。

一時的に重力に縛られず、浮いているかのような感覚は僅かな時しか感じられなかった。

やがて重力に引かれ、少年は背中から勢いよく地面に叩きつけられた。

 

 

「っあ・・・」

 

背中から盛大に叩きつけられた少年の身体は肺の空気が吐き出され、脳が激しく揺さぶられる。地面の砂利や砂、小石が自分が地面についたのだと再認識させてくれた。

なにが起こったんだ。真っ白になっていた脳裏に最初に浮かんだ言葉を理解していたかのようにティアナが近づく。

 

「かっ・・・かはっ」

 

「筋はあるけど荒削りだしタイミングを読みやすいから、それに合わせてやれば単なる自爆技にしかならないわ」

 

「・・・いったい・・・」

 

「アンタの呼吸とタイミング、そして間合い。それを元にアンタが私の技のレンジに入るまでの間合いを計って、入ったと同時に投げ技をかけた」

 

日の影で顔が黒く塗りつぶされた彼女の顔を少年は眩しそうに見る。

一方でティアナは日の光を眩しそうに見る少年を見下ろし、手には彼が盗んだ品々の入った袋を何時の間にやら持っており、一応彼が何を盗んだのかと中身を物色する。

 

「・・・・・・。」

 

その中身を見てティアナは再度少年を見る。

ホコリと汚れに塗れた一般的なフード付きの服とハーフパンツ。なのだが見るべき場所はそこではない。彼の顔だ。

彼の行いにティアナは仮説を立てる。彼の行動の意味。どうして盗みを行ったのかと。

 

「アンタ、まさか・・・」

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・よ、よくやったぜお前!そのガキをこっちに渡してくれ!」

 

そこへ後ろから先ほどの男がようやく追いつき、ティアナに向かい彼を渡すように言ってくる。息切れが激しいので余り体力に自身が無いのだろう。だがその表情は苦しいものではなく寧ろ喜びに満ちた顔だった。

男の言動と持っている角材。

なるほど、と納得したティアナは独り言を呟き、男の方へと振り向く。

 

「な、なんだよ・・・」

 

「・・・私が払うわ。それでいいでしょ」

 

「お前ッ、女か?」

 

「ええ。それよりも、いくらなの?」

 

「・・・は?」

 

「この袋一つ分の金。私が払うって言ってるでしょ」

 

突然の事に話を飲み込めなかった男だが、直ぐにどういう意味かと理解する。少年の盗んだ物を彼女が代わりに買うという事だ。

物の売買というのは売り手が物を売り、買い手が物を買って成立する。彼が盗んだものがまだ支払われていないから、その支払いを済ませればこの場は丸く収まるはず。

それなら向こうも了承してくれるだろうとティアナは懐から持ち合わせの金を取り出そうとする。

しかし、事はそう簡単に終わることではなかったようだ。

 

「・・・嬢ちゃん。それは有難いがなぁ」

 

「・・・何かあるの?」

 

「ああ。悪いが、それ一つ分じゃ割にあわねぇからな」

 

「・・・・・・。」

 

「ッ・・・」

 

男の返答はノー。それだけでは収まらない理由が彼にはあった。

彼だけではない。周囲を少し見回せば彼の意見に同意するという人間が多くいた。

 

「俺たちはソイツにもう何度も物を盗まれっぱなしなんだ。数え切れないほどにな。このまま払えば終わりなんてのは無理なんだ。俺たちの腹がおさまらねぇ」

 

「・・・管理局に引き渡すとでも言うつもり?」

 

「ッ!」

 

「残念だがな。仮にも奴等は警察だ。治安を守るぐらいは出来る」

 

「・・・それで済めば誰も苦労はしないわ」

 

確かに彼らの意見は尤もだ。

罪を犯したのならそれを償わなければならない。

それも常習犯となれば尚の事だ。

だが、仮に彼を引き渡し、それで全員納得するだろうか。

少なくとも一人、納得できない人間は居る。

 

「分かっている。だがな。そろそろ俺たちも我慢の限界なんだ」

 

「なら、もっと他に方法はあるでしょ。この世界での労働基準なんて関係ないはずよ。コイツに罰としてアンタたちの下で働かせる。それで万事解決じゃないの?」

 

「確かにな。けど、そこの悪ガキはかれこれ数年もこんな事をここいらで行っているんだ。それが出来たとしても、俺たちの怒りは収まらない」

 

「・・・魔術を使うから?」

 

「それもある。だが、それが原因でこの街は占領された。このガキも間接的にだが連中に加担したんだ」

 

「・・・魔力感知による索敵レーダー、か」

 

魔術に依存する管理局の設備は殆どが対魔導師に重視したものを採用している。

その中で魔力探知による索敵レーダー等が開発され、魔力に関係する事、つまり魔術を使えば確実に察知される。

少年が先ほどの加速系の魔術を使用したことでこの街の存在がばれてしまい、管理局の勢力下におかれたのだろう。

つまり、少年はこの街の人々の自由と平和を奪った人間だと見られている。

 

「進駐軍が入ってきて俺たちの自由は無くなった。毎日毎日、連中の顔を窺って生活しなきゃならねぇんだからな。それもこれも、みんなそのガキの所為なんだよ・・・!」

 

「・・・・・・。」

 

本当は持っている角材で彼を気が済むまで殴り倒したいのだろう。

先ほどの怒声と言い、男は今にも怒り狂いそうな気持ちを胸中に抑え込んでいるのだと、それが他のまわりの人間も同じなのだと、ティアナは周囲を見回し感じる。

間接的に少年がここの自由を奪ってしまい、更にはそれを都合よしとして物取りを続けた。

彼が生きるためと言うが、傍から見れば悪業にしか見えないだろう。

 

「・・・だからって、それじゃあ状況悪化になるわよ。こんな事で奴等に媚売ってたら、あいつ等は調子付いていい加減な理由を突きつけて自分たちに都合のいいようにするだけよ」

 

「・・・・・・。」

 

「それならまだ生かしているほうがマシでしょ。生き地獄の方がまだ生きてるだけマシ。向こうに引き渡したらそれこそ自由なんて夢のまた夢になるわ」

 

「・・・・・・。」

 

だが管理局に渡す事はティアナは絶対に納得しない。

彼らがどういう組織なのか。それは管理外と呼ばれている世界の人間。強制的に管理させられた世界の人間にとっては痛いほど分かる事だ。

それならまだ死んだ方がマシだといわんばかりの言葉に男は口をつぐむ。

彼女の説得で管理局に引き渡すという考えが少しではあるが揺らいできたからだ。

 

「こんなのを天秤にかける意味なんてない。引き渡すのだけはやめなさい。代わりに、コイツがアンタの所で働くなり何なりして返せばいい、そうでしょ」

 

「そうだがな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや。お困りですかな?」

 

 

「「ッ・・・!!」」

 

そこに聞くと苛立ちを感じる言い方で誰かが会話に割って入ってきた。

一体誰かと思うと、男の後ろから局員が二人。ずかずかと我が物顔で歩いてきたのだ。

 

「な・・・なんだアンタ等!?」

 

「なに。この辺りで物取りがあったと通報があってな。その犯人を『排除』しにきた」

 

「はっ・・・は!?」

 

(さっきのとは別の二人組み・・・しかもこのタイプ・・・出世願望の塊が来たわね)

 

善意の欠片も無い笑みを浮かべ、出てきた局員は支給タイプの杖を持ち男に事情を話す。が、その内容は誰が聞いても過剰と取れること。タダの物取りだけでなにも犯人を殺す理由もないし、言語道断の極みだ。

 

「えっ・・・なっ・・・えっ!?」

 

(ちっ・・・これだから海の連中は好きになれないのよ!)

「そこのガキンチョ。こっちに来なさい」

 

「えっ?」

 

「いいから。黙って」

 

「・・・・・・。」

 

舌打ちを鳴らし、ティアナは後ろでやっとの事で立ち上がったが少年に小声で呼びかける。

非常すぎることに未だ納得できていない少年はどうすればいいのかと迷うが、ティアナの声に敵意が無いと分かったのか、黙って彼女のいう事に従い、立ち上がると同時にティアナのもとに駆け寄る。

 

「ん?そこの君。その小僧を渡せ」

 

「・・・・・・。」

 

「その小僧は窃盗と魔法の乱用の容疑がある。管理局が統治しない場所で魔法を使う魔導師くずれが居るのは危険なんだ。即刻その小僧を排除しなければならない」

 

「ッ・・・!?」

 

見下した目で局員の一人が言うが、二人の立ち姿はまるで見栄を張るだけしか能が無い殿様と、その従者だ。無能だと知らずその外見だけに騙された従者と、その騙しを真実だと受け止め調子付く殿様の魔導師。ティアナからすれば見ているだけで自身が恥ずかしいと思えてしまうほどだ。

だが言葉には効果があるようで、その証拠に少年はティアナに寄り添いながらも必死に睨みを利かせていた。言葉では勝てない、彼らは本気で自分をやる気なのだと。

 

「随分と過剰な事ね。たかが窃盗と魔術の使用で殺す事はないんじゃない?」

 

「・・・女か。まぁ関係ない。君は知らないだけだ。無法者が魔法を使えばどれだけ危険なのかをな」

 

「・・・魔法と魔術の区別も付かない・・・トーシロにも程があるわね」

 

「・・・・・・。」

 

少年を守るように手を置いたティアナはまるで生意気な子供を相手取るかのように余裕の表情で局員にへと言い返す。

ため息を吐いて彼の言葉に呆れるティアナに局員の一人は眉間にしわを寄せ始めていた。

だがそれでもティアナの反論は止まらない。

 

「それに。危険だと思ってるのはアンタたちだけでしょ?加えて、この程度の魔術ならムショ行きで済む筈・・・大方手柄を立てて点数を稼ぎたいって言うんでしょ?小さい理想ね」

 

「ッ・・・口を慎んでもらおうか」

 

「ココに居る魔導師様を誰と心得る!ミッドチルダ有数のエリート魔導師・・・」

 

「三流魔導師の間違いでしょ」

 

「さっ・・・!?」

 

図星だったのだろう、威張っていた局員が苦しそうな表情を見せ始める。

すぐに苦虫を噛み砕いたかのような顔を見せるのは制服連中が見せる顔だ。

威張るだけ威張り散らしても大した成果を立てていない。家柄などを押し立てて自分を大きく見せるだけだ。

その彼をフォローするかのようにもう一人の局員が話に割り込むが、それを更にティアナが割りに入る。心に思っていた事を彼女は思い切って口にしたのだ。

 

「あ。ゴメン。五流だったわね。格は下の下だったかしら?」

 

「ッ・・・ッ!!!」

 

「き、貴様ぁ!!」

 

 

どうやら当たりのようだ。

挑発に乗った局員は頭に血を上らせて怒りだし、もう一人もそれに観応して怒りだす。

気にはしていた。そして気づいていた事なのだろう。

怒りに任せ、子供の様に力を振るう二人はその象徴とも言える杖、支給の量産型デバイスを構える。

 

「もういい!貴様も同罪だ!!」

 

「おお怖っ。これだから・・・」

 

だが、隙は与えない。杖を構える局員たちを見てティアナは少年を離す。

これからの事に少年は足手まといでしかならないから。何より、彼を巻き込みくないという理由もあった。

 

「・・・!」

 

「離れてな。ちょっと片付けてくるから」

 

「片付けてって・・・相手はデバイスを・・・」

 

「たかが量産型よ。あれぐらいならどうにでもなるわ」

 

「は・・・?」

 

そう。ティアナにとって相手のデバイスなどどうにでもなる。

そもそも、挑発に乗った瞬間から既に彼らは手の上で踊っていたとも言える。その理由はティアナがこれぐらいの事を自力で、それも簡単に突破できる技術を身に付けているから。

武器も使わず、手だけで勝てるという絶対的保障があるからだ。

 

「まぁ見てなさい」

 

「・・・・・・。」

 

それを今証明しよう。そう言わんとティアナは

手に何も持たずに局員二人へと向かい走り出した。

 

「ッ!?」

 

「馬鹿め!!」

 

「丸腰で勝てると思っているのか!」

 

「・・・ええ」

 

勝てる自信。保障。根拠。全て持っているティアナはスピードを緩めず、一直線に二人との間合いを詰めていく。

双方距離は一メートルも無い。直ぐにティアナと局員二人の間合いは詰まり、ティアナの手が局員二人のデバイスにへと届く。

そして、それを見た局員二人は勝機を得たと確信し、デバイスに魔力を集中。

殺傷設定の魔力弾を形成した、筈だった。

 

 

「これで私の勝ちだからよ」

 

 

 

 

刹那の間にそれは起こった。

気づけば、局員二人の杖は一瞬にして先端部がバラバラに分解されていたのだ。

 

「・・・は?」

 

「えっ?」

 

 

 

ティアナが二人の後ろに立ったときには、既に分解されたパーツは地面に音と共に落ちており、先端の部分のみが丸々無くなっていた。

僅かな隙で起こった事に局員二人は呆然と立っており、正面から見ていた少年も言葉が出なかった。デバイスを壊すというのは聞くが、分解するなど聞いたこともない。

誰もが目の前の事を疑い、信じることが出来なかった。

 

「で・・・デバイスを・・・」

 

 

 

「・・・えっ・・・なっえっ!?」

 

「なんだ・・・なんで・・・なんでだぁ!?」

 

だが時間と共にその現実はゆっくりと受け入れられていき、やがては嫌でも受け入れなければならなかった。

受け入れたくも無い現実を受け入れた局員の二人は、目の前の事を未だ信じられずかなりの慌てぶりを見せていた。

 

「いっつ・・・指切ったか・・・まだ上手くはいかないわね」

 

「っ!!き、貴様いったい私達に何をした!?」

 

「なにをって言っても分かるでしょ。ちょっとその杖に手を入れて外したのよ」

 

「は、外したって・・・!?」

 

「デバイスを・・・解体した!?」

 

精密な機器と魔力が常に行き来するデバイス。

そのデバイスを破壊(・・)ではなく解体(・・)したと簡単に言われても、誰もが直ぐに納得出来る筈が無い。

あまりに精密であるデバイスは現在解体すると言う行動は無謀に他ならず、例えるならマグマに素手で手を入れるほどに危険な事なのだ。

精密であるが故、一箇所でも欠落すればそこから魔力が漏れ出し大暴走しかねず、最悪大爆発などもあり得る。過去にそれが原因で起こった事故の事例もあり、幸い重傷事故となった。

 

なのに、彼女はそれを平然とやってのけた。しかもデバイスを暴発させず、更には気づかれもしないスピードでだ。人によっては神業と取れる事を彼女は指を少し切った程度で成し遂げたのだ。

 

「ば・・・馬鹿な!!たかが無法者の小娘にそんな芸当が!?」

 

「小娘舐めるなって事よ。それに、今は自分の身を案じたほうがいいんじゃない」

 

「何を・・・!」

 

「さっきアンタ達が私を無法者って言ったでしょ。つまりはそう言うこと」

 

「・・・?」

 

 

「まだ分からない?ココは私のような無法者が平然として居る無法地帯。法も無ければ権威もない。アンタ達権力の使者にとっちゃここ等での局内での権力だなんだは無いの。という事は・・・」

 

法で裁かれる事もない。

法無き世界に法などは存在しない。あるのはその世界での摂理だけ。

外的から一致団結し抵抗するか。強き者が頂点に立ち、弱者が虐げられる弱肉強食となるか。

いずれにせよ、法無き世界に法の番人が居るというのは自殺行為に等しい。

法の番人という肩書きが意味を成さないのだから。

 

「うっ・・・」

 

「ま、不味いですよ・・・ほかの連中が!」

 

「き、貴様等!もし我々に危害を加えればどうなるか・・・!」

 

「どうなるの?」

 

「それは・・・」

 

鋭い目で二人に睨みを利かせるティアナ。その表情は余裕と愉悦によるもので、焦りを見せる二人の姿を見て今にも笑い出しそうな様子だった。

無言の視線に圧迫される二人の局員はこの場は圧倒的に劣勢だと、逃げるように走り始めた。

 

「き、貴様!今度あったら唯では済まさんからな!!」

 

「覚えてろよ!!」

 

「・・・なんちゅー典型的なモノを・・・」

 

古典的な逃げ台詞と共に逃げ去っていった局員達。

その後姿は情けなさの一言に尽き、彼ら二人が威勢だけであるというのを自ら示していた。

慌てふためいて逃げていくその様に清々した人々は逃げる局員達にバッシングを浴びせていく。武器が無くなればこちらの物だと言わんばかりの状況に、ティアナ軽くため息をつかせ呆れた様子で周りの人々を見ていた。

が。それも直ぐに終えて、ティアナは少年の肩を軽く叩くと彼の耳元に近づき小声で囁く。

 

「チビ。黙って付いて来なさい」

 

「・・・あ、え?」

 

「逃げるわよ」

 

「あ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

そういえばそうだったな、と思い出す少年は頷くと彼女の言葉に従い無言のままその場を後にする。

局員たちの割り込みで自分が追われていた事を忘れていた彼は、彼女の言葉で思い出した。

勿論、言った方は覚えてはいたが、それよりも彼女は聞きたい事があった。

少年がどうして物取りをしているのか。その理由を聞くため、二人は人気の無い路地裏にへと入っていく。

複雑な構造である裏路地であれば見つかった時に逃げ切れるだろうという理由と、誰かに聞かれてはいけないという彼女なりの理由もあったからだ。

 

 

 

燦々と照り付けていた日の光が裏路地に入るとその輝きを建物や曲がり角などに遮られ、昼だというのに辺りはかなり暗い。日の光が強いほどそれによって出来る日陰の濃さもまた濃くなるからだ。

 

「さてと。ここなら誰にも聞かれる心配はないわ」

 

「・・・。」

 

人気の無い場所に連れて来られた少年は辺りを見回し不安そうな表情をしている。

別にとって食うわけではないのでと言ってはいるのだが、やはりまだ信用はされていないようだ。

 

「ま。そう易々と信じてもらえるとは思ってないけど・・・で。なんでアンタはこんな量の食料(・・)を盗んだのかな。チビ助」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・答えたくない、か。まぁアンタのようなチビがこれだけの量を盗める事もさることながら、よくこれだけの量の食料抱きかかえて逃げられたわね。脚力半端ないわよ」

 

「・・・あのさ」

 

「なに?」

 

「なんでさっきは『ガキンチョ』って呼んでたのに今は『チビ』にランクダウンしているんだよ」

 

「・・・あまりに情けない顔していたから」

 

「・・・・・・。」

 

彼の癇に障ったのか、少年は口をかみ締め今まで溜まっていた怒りをティアナに向けて爆発する。あまりに舐めきっていた言動に少年は我慢なら無かったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チビチビって・・・・・・俺には『エリオ』って名前があるんだよ!!」

 

「・・・オーケー。んじゃ改めてアンタに訊くとしましょうか、エリオ」

 

少年、エリオの威勢に笑みを浮かべたティアナ。

その意気や良しと、今度は彼の名前を呼んで再び問いを投げた。

 

 




後書き。

「いや、これは無理だなぁ・・・」と思って脳内で色々とクロス系のストーリーのアイディアのを浮かべる自分。半ばアニメか何かの脚本についての会議状態ですねぇ・・・
諸事情で色々とボツ案になったり中身を忘れて廃案になったりというものが多々ありますが、自分が「これだ!」と思った物は今でも脳内で思い出せる・・・それが今連載や投稿している作品達ですね。

さて・・・なのはともう一つのISはどうするか・・・(汗)
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