Nanoha×MGS = The Rebrllion =   作:No.20_Blaz

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遅くなりましたが第二話です。
少しスランプ気味だったのですがどうにか持ち直せました。
IS×MGS共々頑張っていく所存です。

さて。第一話を見てもらった方ならお分かりだと思いますが、今作は基本ティアナやエリオたちといったフォワードメンバーが主軸になります。よって、なのはたちは出番は少なめになっています。ていうかします。あくまで主人公ティアナなので。
後、設定がかなり細かいので出来るだけ後書きの欄に書いていって、ある程度溜まったりしたら纏めを出そうかと思っています。

さて。それでは、月壱ないし月弐更新のNanoha×MGS。スタートです。


第二話 「決意と出会いの日」

とある次元世界の辺境の地。

そこで、ティアナは一人の物取りの少年と出会った。

 

 

名はエリオ。エリオ・モンディアル。

 

歳は教えてくれなかったが、まだ十歳にも満たないのは確かだろう。

鋭い目と赤い髪。身体は近くで見ればそれなりに肉のついたもの。恐らく何度も物取りをして自然と身に付けた()なんだろう。

歳の割りには体つきはしっかりとしている方だ。

 

これなら労働基準法だなんだという五月蝿い管理局のお小言を無視して働くという事も出来るかもしれない。

だが、その(脚力)がついたのは全て物取りのお陰。

全うに働ける見込みは、その時点で既に失っている。

 

だから続けるしかない。だからもう、戻れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・オーケー。んじゃ改めてアンタに訊くとしましょうか、エリオ」

 

「・・・・・・。」

 

面と向かい合い、それでも余裕の表情を崩さないティアナはエリオに言う。

二人は今、市街地の狭い路地裏で顔を合わせている。互いの間の距離は目測で大よそ三メートルあるか否か。

ティアナは廃材同然の木箱の上に腰掛けており、手にはエリオが盗んだ食料が一つ袋詰めの状態である。

そしてその食料をいつ取り返せるかと窺いつつ、エリオは反対側の壁に背を預けていた。

 

「・・・その前にそれ(食料)返せよ。それは話に関係ねぇだろ?」

 

「駄目よ。話が終わったら返してあげる」

 

「・・・・・・。」

 

状況からしてティアナが有利なのは明白だ。

裏路地の人気の無い場所で狭い道を挟んで向かい合う二人。

片や圧倒的とも言える戦闘スキルを持ち。もう一人は未熟な魔術のみが使用できる程度。

能力差もあるこの状況では覆す事も、ましてや食料を取り返すことでさえも無理だ。

 

「言っとくけど、さっきの魔術は無理よ。アレ、助走して勢いつけてでないとマトモに使えないんでしょ?」

 

「・・・!」

 

「仮に出来たとしても制御は出来てないし、突撃自爆技だから後ろの壁に激突して鼻を折るのが精々なものね」

 

「―――。」

 

彼女のいう事全てが図星だった為、エリオは言い返すことは出来なかった。

歯を軋ませ、俯くその顔は悔しさの色が濃く現れていて拳を強く握り締めていた。

彼がそこまでしか実力がない、もし自分以上の魔術を使える人間が現れれば負けるという事は自分が良く知っている。

だから改めて口で言われれば誰だって良い気分はしない。

 

「まぁ話如何によっては直ぐに返すけど・・・・・・」

 

だから流石に言い過ぎたかと思ったティアナは苦笑交じりで補足を付け加え、彼とまともに話せる場を作ろうとする。正直、ティアナはこういった尋問のような質問は得意ではない。大抵相手を怒らせて失敗するか、他の誰かに手間を取らせてしまう。

そのジンクスに苛まれながらも、彼女はエリオの機嫌を直そうとする。

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・絶対に返せよ」

 

「えっ、あ・・・分かってる」

 

泣き気味だった。持ち上がった顔は少し赤らめており、瞳の中が潤んでいたので涙を必死に堪えていたのが分かった。メンタルはまだまだ子供らしい。

明らかに自分が完全悪のようになってしまったティアナは自分の行いを自虐しつつも、エリオの幼いその涙ぐんだ表情に心を撃たれた。好みだったようだ。

 

「ヤバイ・・・ショタの涙はヤバイ・・・」

 

「・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙を拭いたエリオは気持ちを落ち着かせ、深く深呼吸をする。

そしてそれから少しを間を置いて、彼は元通りの表情を取り戻すと、ティアナに一言だけ言った。

 

 

「・・・着いて来な」

 

「・・・は?」

 

ただ一言。そう言ったエリオは路地の道を歩き出した。

ココが何処の路地裏なのか知っているようで、彼の歩く速度はそこそこ速い歩きだ。

だが気にする所は其処ではない。

突然ついて来いとだけ言われたティアナはココで話すのではないのかと思っていた。

が、彼にこの場で話す気というのは元から無かったようで、呆けているティアナを無視し本人は日陰が差す路地裏を黙々と歩いていた。

食料は要らないのか。思う所がそこかと自分自身に突っ込むティアナにエリオが遠くから呼びかける。

 

「来ないのか?別に食料はまた盗って来れば良い話だし、いいんなら・・・」

 

「え・・・えー・・・・・・」

 

一本取られたようだ。呆けたティアナは彼が本気で言っているのだと気づき、自分を気にせず歩いていく彼にただついて行くだけしかできなかった・・・

 

「・・・ああもうッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒れた荒野が広がるこの次元世界は、ただ人々が安住の地を求めただけで人々が住み着いたわけではない。

もっと他の、彼らにとって有益になる理由が存在したのだ。

 

人がその地に住み着く理由。土地の環境、地形、そして資源。

荒れた荒野で殆どが崖や峡谷。渓谷といったのが大半。

ならば最後にあるのは資源ただ一つ。

彼らは資源を求めてこの地に辿り着いたのだ。

 

鉄や鉱物といった資源が主に採れるこの地ではかつてはその殆どを管理外の世界に輸出。

交易で食料や水などを確保していた。

鉱物などは加工すれば宝石などの金品になり、他にも建造物の為の資材に加工されるものもある。

そして鉄は主に質量兵器と呼ばれる銃火器。また、余り知られていないがデバイスにも鉄は使われているものもある。主に量産型のデバイスやストレージ・アームドデバイスにも一部採用されている。単純な強度と重量を考えれば当然の事だろう。

 

 

 

 

 

 

そのデバイスや銃器などに使われる鉄が採掘される採掘場()

その工場の正面と思われる場所にティアナとエリオは立っていた。

 

「廃工場・・・」

 

「今は俺たち(・・)の家さ」

 

「俺たち?」

 

「来な。みんなに会わせてやる」

 

「みんなって・・・やっぱ、アンタ・・・」

 

 

 

古く錆びた採掘工場の跡地に入っていく二人。

錆びた鉄の扉を開けると中はホラー染みた世界、とまではいかず枯葉の木々や茂った人工芝などが最初に目に入った。

手入れ自体は放置されているようだが、それでもまだマシだ。

 

「足下、気をつけろよ。薬莢で転ぶかもしれねぇから」

 

「薬莢?なんでこんな所に薬莢が・・・」

 

「・・・・・・。」

 

工場に入った二人はそのまま奥へ奥へと進んでいく。暗く電灯も付けられていない場所に、警戒心を持つティアナは無意識に左右を見回す。

入ってすぐに加工ライン等の大型機械。

階段を上がり、途中にあるガラス窓の奥を除けば簡易的な指令室。

人気の無い場所なので気味が悪い。

 

「・・・。」

 

「ここは元々鉄を採掘して、採掘された鉄を加工・溶接して鉄資材にしたりするのが目的だったらしいんだ。お陰で時々廃材の鉄とかよく見かけるし」

 

「その廃材を売ろうって考えは無かったの?」

 

「ここいらじゃあ値打ちが低すぎて無理だ。束で売っても札一枚にもならない」

 

「・・・だから盗みになった、か」

 

「・・・仕方ねぇだろ。生きていくためだ」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

やがて廃工場の中にある会議室や配電室のような部屋が見え始め、製造加工ラインから離れ、業務関係の部屋が集まる場所に移動していく。

 

「所々穴抜けしている床あったりするから、俺たちは基本ああいう場所は使わないんだ」

 

「じゃあ一体、アンタたちは何処で生活してるの?」

 

「・・・トラックヤード」

 

「は!?」

 

トラックヤードとは、トラックが工場内から物資や荷物を積み込んだり積み替えたりするスペースの事を言う。

一般的にトラックヤードは駐車しやすくするためにシャッター等がないのだが、この採掘工場の場合は荷物が湿気たりしないように室内に駐車スペースがあるようだ。

 

「いざって時に逃げやすいし、あそこから色んな場所に行ける排気口もある。それに空のコンテナが役にも立つからな」

 

「はぁ・・・」

 

エリオの説明に半ば呆れ気味のティアナは頭を抱えそうな表情で俯き、彼の後ろをついて歩く。実に子供らしく馬鹿馬鹿しい考えだと彼らの歳相応の発想に頭を抱え込んでいた。

そんな考えでやり過ごせるのなら誰も苦労はしない。彼もまだ子供という事か、と自慢げに話していたことに批判し、それを口に出さないように頭の隅に留めておく。

するとエリオが足を止めた。どうしたのかと尋ねようとしたティアナだったが、二人の正面には少し大きめの古びた扉が立ち塞がっていた。どうやらここがトラックヤードに繋がる扉らしい。

その証拠に扉にはトラックヤードの文字がかすれ気味ではあるが刻まれており扉の隙間からは僅かにだが光が漏れていた。

その古びた扉に両手を置いたエリオは、力一杯に扉を押し込む。

小さなホコリと鉄のカスをふるい落とし重い扉が開かれた。

 

 

「・・・・・・!」

 

開かれたその先に広がっていたのは、ただ長く。コンテナというコンテナが散乱するトラックヤードと呼ばれていた場所だった。

閑散としたトラックヤードだが、妙に人気と温かみを感じる。

恐らく、温かみはココにだけ点灯している電気の事だ。

そして人の気配。考えられるのは一つだけだ。

 

 

 

「・・・!」

 

「ッ!」

 

コンテナの影から小さな影が一つ、文字通り顔を見せる。小さな黒髪の少女が、警戒した様子でティアナとエリオを見つめていたのだ。

 

「リーナ。戻ったぞ」

 

「・・・エリー、その人、誰?」

 

「・・・分かっている。ちゃんと話すよ。クルトは?」

 

「・・・・・・こっち」

 

エリー。それが彼のニックネームかと思っていたティアナはおどおどとしている少女に向かい小さく首を傾けて挨拶をする。

リーナと呼ばれた少女は、呟くような声でエリオの問いに答えると隠れるようにコンテナの影に消えていく。

 

「・・・。」

 

「リーナは少し気が弱いんだ。あと、人見知りで大抵コンテナとかの影に隠れてるんだ」

 

「・・・あの子、いくつ?」

 

「・・・先月、五つになったばかり」

 

「・・・・・・。」

 

まだあんな歳なのにと、重苦しい空気が二人の間に流れる。ティアナ自身、分かってはいたが実際見るとなると胸に突き刺さった現実はかなり痛いものだ。

そのリーナの後を追い、コンテナで出来た道を通っていく二人。

エリオ曰く、コンテナで出来た道はいざと言うとき隠れたり上ったりして逃げたりする時に役立つらしく、作るのにかなりの手間と時間を要したとの事。

それにはティアナも無駄に頑張りすぎね、と動揺と呆れを隠せなかった。

何よりも、それを提案したのはエリオではなく彼が言ったクルトという人物らしく、相当の馬鹿なのかと頭の隅で呟く。

 

 

 

しかし、彼女は直ぐに納得してしまう。

こんな大袈裟なことをする理由が、あるのだと理解してしまった。

直後に目に映った光景。それがティアナを嫌でも納得させたのだ。

 

「・・・戻ったか、エリオ」

 

「ああ。ちょっとオマケ付きだけどな」

 

リーナと同じく黒い髪をしており伸びても髪を斬ることも出来ないので後ろに幾つか束ねられている。

正面から見れば分かり難いが僅かに横を向いていたお陰で後ろで髪を束ねているのが見えることが出来る。前からだけだと短髪の少年だとしか思えない。

エリオと同じく歳に似合わない鋭い目をしている。あれが彼の普段の目つきなのだろうか。だとすれば目つきが悪いでは済みそうにも無いと溜息を吐く。

 

「・・・ソイツは?」

 

「・・・・・・。」

 

みすぼらしいとしか言えない服に身を包んだ彼は目線をティアナにへとズラし、彼女を連れて来たエリオに尋ねる。本人もこうなるのは分かっていた事だが、流石に現実となるとどう言えばいいのかわからないもの。頭を掻いてうなり、その場しのぎではあるが返答する。

 

「今から話す」

 

「・・・・・・。」

 

「心配すんな。奴等じゃない」

 

「・・・そうか・・・」

 

 

その時だ。ティアナは自分の目に映った光景に驚きを隠せなくなった。

 

「・・・ッ!」

 

コンテナや他の色々な物陰から一人、また一人と幼い子供たちが姿を現したのだ。

一人や二人ではない。ざっと見ただけでも十人前後は居る。

双子。兄弟。姉弟。中には赤ん坊を抱く子供までも。

まざまざと見せ付けられた光景に言葉が出なかったが、無意識に彼女の口は動いていた。

 

「―――ココにいる全員・・・ストリートチルドレン?」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・いいや」

 

クルトが険しい顔になり、エリオは嘆きそうな表情と声で否定する。

そして、冷たい声でクルトがティアナの疑問へと答えた。

 

「みんな、孤児さ」

 

「・・・戦災孤児」

 

戦災孤児。戦争で親を亡くした子供達のことだ。

この子達には確かに親は居た(・・)が、この世界を管理するために起こした戦争で彼らの親は死んでしまった。

そして、残された子供たちは身寄りのないまま、この廃工場で共に暮らしているのだろう。

 

「アンタ。本当に管理局の連中じゃないんだな」

 

「・・・寧ろ嫌われてるわ。向こうからも、こっちからも」

 

念のためにと尋ねた事をカラカラと笑い否定するティアナに、クルトは疑いの目を向ける。

彼女が管理局の人間なのではないというのは理解したが、それでも彼女の雰囲気の所為か油断する事は出来ず逆に警戒心を高めるばかりだった。

その会話の中にまた新たに一人が加わる。

 

「・・・レジスタンス?」

 

「というよりも、唯の慈善団体って奴よ。あいつ等(管理局)の言う管理外世界に対してのね」

 

リーナの質問に苦笑で答えるティアナ。

慈善団体と言っても時に荒事も担当するけど、と頭の隅で呟いた。

口には出さなかったがどうやら勘がいいのか、エリオとクルトはまさかといった顔を二人揃えてしていた。

 

「別にアンタたちをどうこうする気はないわ。元より別の用事でこの世界にいるんだし」

 

「・・・なら何でココに来た」

 

「そこのガキンチョにこれ(食料)を渡しにね」

 

「渡しにじゃなくて返しにだろ。言い間違えんな」

 

「・・・・・・。」

 

本当に大丈夫なようだ。クルトはエリオとティアナの会話を聞き、彼が警戒心を持っていないというのと彼女が管理局の人間ではないというのを理解し、ある程度ではあるが警戒心を解いた。

 

「・・・・・・わかった。アンタが管理局の人間じゃないってのは信用してやるよ。けど、変な事したら・・・」

 

「する訳ないでしょ。弱いものいじめは余り好きじゃないのよ、こう見えて」

 

 

 

 

 

 

クルトたちに理解を得られたティアナは客人として彼らに迎え入れられる。

しかしまだ信用しきれていないのか警戒する子供も多く、幼い子や気の弱そうな子はまだ隠れたりしてティアナを窺っていた。

その彼らの事を視界に入れつつティアナはエリオとクルトに一番彼女が気になっていたことであり、聞いてはいけないのだろうタブーを訊いたのだ。

 

どうしてこんな所に住む事になってしまったのか。

 

 

 

「一年前、突然奴等(管理局)が大きな船に乗ってこの世界に侵攻してきた。俺の親父たち大人は奴等の狙いが直ぐにこの世界で採れる鉄や鉱物だって分かって騒いでた」

 

「・・・管理局は最近、空戦魔導師の個人の戦力の増強に力を入れてるわ。それを推進している本局の差し金なんでしょうね。資源を確保し戦力増強の為の研究にする。理由はそんなところよ」

 

「当時。俺たちの世界にはそれぞれの町に自警団が存在して、クルトのオヤジさんも自警団に所属していたんだ。魔術が使えなくても、この世界で採れた鉄を使った武器があったからな」

 

だが。思えばそれが間違いだったのかもしれない。

武器の豊富さを宛てにした彼らの油断が、今の自分たちとなってしまったのだ。声に出さず、俯いた表情のエリオとクルトはその過去を思い出し、低くなった声で呟いた。

 

「・・・けど、甘かったんだ。俺たちは」

 

「ッ・・・」

 

「俺たちが奴等の管理下に入るのを拒否したから、管理局の奴等が力で俺たちを黙らせようとしたんだ。物量と能力。そのどちらもから攻められた自警団だったけど、なんとか粘って。この戦い自体は三ヶ月ぐらい続いたんだ」

 

「三ヶ月・・・そんなに武器に余裕が?」

 

「まぁな。こと鉄にかんしちゃ困らない世界だし。クルトの親父さんも笑って言ってたしな」

 

「ああ。オヤジが頑張ってくれたから・・・自警団はあそこまで戦いを続けられた。みんな守り続けてくれたんだ。けど・・・」

 

 

 

それは突然の始まりだった。思い出したくも無い、空からの来訪者達。

その時の記憶を思い出しただけでもクルトは全身に振るえが止まらず、苦しさと悲しさが心の底から吹き上がったのだ。

 

「・・・奴等。空戦の魔導師たちが、毎日のように空から仕掛けてきたんだ。俺たちを捕まえたりする為にな」

 

「制服が?ココは陸戦の支配地域じゃ・・・」

 

「確かに陸戦は居た。それも半端ない数のな。クルトのオヤジさんたちも当面の相手は奴等(陸戦)だと思っていた。けど、それは甘かったんだ」

 

 

エリオ曰く。

ある日、突如として奴等が現れた。まるで神の代行者のように、空を覆い光を降り注がせた。

 

そして、最後には裁定を下したかのように大きな光が放たれ、町一つが全て飲み込まれた。

 

「ただ吹っ飛ばすってだけの攻撃。それで町のひとつが全て無くなっちまった。建物も人も。みんな・・・消えちまった」

 

「―――。」

 

毒を吐く様に語るクルトの目は怒りと憎悪に満ち溢れていた。

声や目の色。言葉の一端。そしてその時の事を話した時の様子。

思い出したくも無い苦しかった日々を思い出したクルトは、段々と声のトーンを下げて自分たちが受けて来た苦しみを思い返す。

 

突然の事にただ呆然とするしか出来なかった自分。

辺り一帯は廃墟となり、まるで遊び終えて興味を無くされた人形の様に人は転がっていた。

物のように瓦礫に埋まり、挟まれる人々の殆どが体のどこかの部位を失い、中には見ただけでその人が死んでいると一目で分かるものもあった。

 

絶望と悲しみしかない光景に幸運か災いか、生き残った少年たちの思考は停止し何も考えられなくなってしまった。

そして、無意識のうちに支離滅裂な言葉を口にし、一人でに泣き出した。

 

「・・・現在でも思う。正直、あの時に死んでいたらどれだけマシだったかって」

 

「・・・。」

 

 

そして、その時を待っていたかのように偽りの希望の手は差し伸べられた。

 

「分からないぐらい、泣いた。そんな時だ。奴等がまた俺たちの頭上から神様のように降りてきたのは」

 

「制服が?」

 

「ああ。あいつ等、手のひら返したかのように・・・俺たちを助けた(・・・)んだ」

 

 

低く重い声で話すクルトに眉を寄せたティアナは小さく、やっぱり、と呟く。

彼の話は管理外の世界ではよくある事。管理世界の一般市民に対し、好印象を保ち続ける為に彼らが行う偽善行為で現在でも彼らはそれを行っている。

カバーストーリーを作り、自らの地位と力を保持する為の方法。バレなければ全て良しという事で、自作自演に近い。

 

 

「よくあるマッチポンプね。自分たちで壊しておきながら、攻めておきながら、ほとぼりが冷めたら今度は正義の味方として助けに行く。奴等が使う手口よ」

 

「・・・・・・。」

 

「あいつ等にとっちゃ、攻めた世界で生き残った人間なんて自分たちのアピール材料にしかならない。用済みになったら殺すか連行して実験の材料にするか」

 

「ッ―――実験!?」

 

「まだ確実じゃないけど、とある場所からの情報じゃ管理外の非公式研究所で延々と続けられてるって話よ。大方、目的はキメラ(合成獣)か、ミュータントか。はたまた・・・」

 

「ッ―――」

 

 

そんな事は誰も知らず、管理世界の人々には彼らの表の面だけしか映らない。

正義の味方。法と秩序の守護者。この世全ての善。

どれも都合の良い物ばかり。

しかし、光があれば必ず影がある。黒く濃い影は、光に遮られその姿を見せずに済んでいるのだ。

 

「我田引水とはよく言ったものね。連中が水の管理をしているから、人はその水の本当の色(真実)を知らない。血の色で濁った水を奴等が色を変えて、色を落として・・・ね」

 

「・・・・・・。」

 

「けど、あんた達はその色を知った。だから・・・逃げたんでしょ?」

 

そうだ。エリオたちは濁った水の色(真実)の事を知っている。

色を落とされず、色を変えられていない本当の色を知っているからこそ、彼らは今こうして生きている。

 

「・・・ああ。みんなで一緒に逃げたさ。奴等の目を潜って、目が届かないだろう場所を求めて、ずっと・・・」

 

奴等に助けられてしまったエリオやクルトたちは彼らを信用できない以上に恨みと殺意を持って居た。親や友。多くの人を殺した相手に対し、本心では今すぐにでも復讐したいと思っていた程に強く。

しかし自分たちにそれだけの力があるだろうか。

それだけの事を成し遂げる知識があるだろうか。

大前提を覆せないと知った彼らには、その場で復讐を行うという決断は踏めなかった。

 

残された抵抗の手段。

彼らには「逃げる」しか他に無かった。

 

「逃げる時にはココにいる倍ぐらいの奴等が居たんだけど、みんな途中で奴等に見つかって捕まっちまった。結局、残ったのはココにいる十八人」

 

「それでも多い方ね。私が知っている内じゃ三人が平均だから」

 

「・・・それだけ、俺たちは運が良かった、かな?」

 

「な訳ねぇだろ。俺たちに強いられたのは生き地獄だ」

 

頬を掻き、呟いたエリオを言葉をクルトは即答で否定する。

親や家族を殺されて残った事が幸運なものか。

全力で。低く怒気のある声で否定したクルトは拳を強く握り締めた。

血が出そうなほど握り締めたその姿にエリオは俯き、ティアナは小さく溜息を吐いた。

 

 

「・・・俺たちの話はここまでだ。今度はアンタだぜ」

 

「・・・・・・。」

 

事情は全て話した。今度はそちらの番だ。

目でそう訴えるクルトとエリオを見て、ティアナは改めて自分かと自身に指差す。

道理としては間違っていない。どうしてと最初に尋ねたのはティアナなのだ。

ならば、エリオやクルトたちにも質問の権利は当然としてある。

頭を掻き、さてどうするか、と考えたティアナは話しにくそうな言い方で口を開いた。

 

「私ねぇ・・・事情あって、あんまり多くは語れないけど・・・まぁ大雑把に言えば・・・」

 

「・・・。」

 

「管理局に異を唱える側の人間・・・ってとこかしらね」

 

「レジスタンス?」

 

「もっとマトモよ。私の居る所は」

 

だが流石に傭兵部隊の人間、とまでははっきりとは言えない。言ったとしても信じてもらえるかだろうし、仮に信じてもらえたとしても、その先を追求させられて面倒になってしまう。ココでの面倒事は流石に後々不利になると予想したのだ。

そこで取り合えず、彼らに対しティアナは自分が敵ではないと明言した。

未だにエリオやクルトは自分が敵ではないのか、と疑っていた様子なのでそこだけでもはっきりとしておけばその場をやり過ごせるからだ。

 

案の定、ティアナの明言を信じた二人はそれを前提に更にティアナに尋ねる。

 

「・・・。」

 

「・・・なら、なんでそのアンタがこんな所に?」

 

「食料渡しに来た・・・っていうのはココで出来た事。本当はちょっとした用事でね。ミッドチルダに行こうとしていたの」

 

ミッド(本拠地)に!?」

 

ありのままの事実だが、僅かに事実をずらしたティアナ。

本当は任務でミッドに行くのだが、ここではそこまでを語らずともよいと判断し、その言葉だけに纏めた。

 

「別にテロ行為をするって訳でもないわ。ちょっと所用ってところ。あんな所、長居する気はあんまりないから」

 

と言ってもかなり長居しそうな予感ではあるが、と頭の隅で呟く。

正直、任務完了が何時なのかは本人も、ましてや言い出した二人(スネークとカズ)でさえも分からないのだ。

何時終わるのかと始める前から落ち込むティアナは、ただ俯いて失笑するしか出来なかった・・・

 

「・・・・・・。」

 

「確かに、ココからの転移列車はあるが・・・本気なのか?」

 

「本気よ。言ったでしょ、悪いことするために行くんじゃないって」

 

寧ろそれ以上にタチの悪いことをしに行くのだが、とまた頭の隅で呟く。

だが、そろそろそんな本音を言わなければいけない状況に迫りつつあるのも事実で、現にエリオとクルトは彼女に対し次なる質問を考え始めている。好奇心による質問攻めは彼女にとってはどうしても避けたい事態だ。

これ以上長引くと流石に面倒か、と思ったティアナは話をまとめに向かわせる。

 

「―――ほらッ」

 

「っと!?危ないな!」

 

突然ティアナは自分が持って居た食料の袋をエリオに向かい投げつける。

覚えているだけで中には生ものなども入っていた気がするが、袋をひっくり返すほどでもないので気にはしない。

その袋を間一髪のタイミングでキャッチしたエリオは中身の食料が無事なのかを確認する為、袋を開き中を覗き込む。

 

「中身は・・・無事か」

 

「それ返すから、詳しい話についてはチャラにして頂戴。私も今は少し急いでるの」

 

「は・・・?」

 

唐突に彼女が言い出したことに面くらい、声を上げるエリオは間髪入れずに言い出したティアナの方に顔を振り向けた。

彼女は既にその場から立ち上がって歩き出しており、その様子はどこか急いでいるというよりも焦っている様子だ。

 

「元々、時間つぶしで町うろついてたんだけとアンタ(エリオ)が出てきて予定が狂ったの。まぁアイツ等(魔導師)の鼻をへし折れたから別にいいけど」

 

「・・・。」

 

「んじゃそう言うことで。邪魔したわね」

 

「「・・・・・・。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがそう言って「はい、そうですか」と納得する者が居るだろうか。

 

 

 

「・・・まぁ分かってはいたわよ。あんなイキナリ有耶無耶にしたのでやり過ごせるなんて思ってもないわよ」

 

「んじゃ何であの時あんな事言ったんだよ」

 

「仕方ないでしょ。他に思いつく考えが無かったんだし」

 

ステーションと呼ばれる駅の中。

 

このステーションから出発する次元運行が可能な列車、通称「次元列車」が管理世界や列車の運行が可能な管理外の世界にへと一般の人間が行き来でき、物資の運搬。人員輸送などの軍事的役割から民間人の交通手段としても確立している。

しかし、民間人の使用が可能となった昨今。管理局内ではその列車の中に反体制派の人間が紛れ込み、首都グラナガンないしミッドに容易に入られてしまうと危険視もしている。

現に、その一員であるティアナがステーションの中に平気でいるのは正にそれだ。

警備シフトや何処を重点的に警備すればいいのかなど、詳細な事が出来ていない今なら「行って下さい」と言っているのと同義なのだ。

 

 

「それに、私基本ああいうの苦手なのよ。纏めようとしても纏められないから」

 

「子供か、って・・・まぁ俺と同じ子供か」

 

頬を赤らめ、エリオから顔を逸らしたティアナは恥ずかしそうな顔で黙り込む。

その場を纏めるというのは彼女には難儀であり、どうにかして直そうとしても結果として前進の気配は全く無い。纏めようとしても他の誰かが口を出してしまい結果纏める事はできずじまい。

自分にはボス(スネーク)のようなカリスマはないのだと痛感した時だったという。

 

「っていうか平然とこんな所に居るけどいいの?そこらに局員とか結構うろついてるわよ」

 

「心配ねぇよ。足には自信あるからな」

 

「・・・要は逃げるって事じゃない」

 

「まぁな」

 

能天気で良いわねと皮肉を言うが、エリオはそれを軽く鼻で笑う。ここがどれだけ危険な場所であるかは彼も重々承知しているのだろう。

そうでなければ其処に堂々と立っていること自体、自殺行為となんら変わりない。

その為の切り札である足を叩いたエリオは自信ありげな顔で彼女に言い返した。

 

「確かに。俺は魔術もロクに扱えないし、使えもしない奴さ。けど、だからってそれで全てが決まるワケじゃないだろ?要は使いよう。要は―――生き方だ」

 

「生き方・・・ね。生きるために身に付けたって事」

 

「ああ。だってそうだろ?生きる為に生きるための力を手に入れる。生き抜くための技術を身に付ける。俺は生きる為ならなんでもするさ」

 

「・・・だからって盗みが続くワケでもないし続けていい理由にもならないわよ」

 

「分かってる。けど―――それしか俺たちに生きる方法が無いのは分かったはずだ」

 

「―――。」

 

多くの子供たちを養う為に。明日を生き抜く為に。

彼は自分の名誉を、命を危険にしてまでも盗みを続けていた。

恥も外聞も無い。生きるという意味を突き詰めた結果が今のエリオなのだ。

 

「正直・・・俺はアンタが羨ましい」

 

「羨ましい?」

 

「俺とは違う生き方で生きるアンタが・・・俺には羨ましく見える。だから思っちまう。

 

 

 

 

 

『アンタみたいに生きられたらな』って」

 

「・・・。」

 

「・・・なんだよ」

 

「・・・いや。何でもない」

 

自分の生き方を羨ましがられたティアナだが、その内心は複雑な心境だった。

それを素直に喜ぶべきか。それとも「それはいけない」と否定するべきか。

そして、事実を教えるべきか。

迷った彼女の思考は纏まらず、結果飾り気のない言葉が彼女の口から漏れてしまっていた。

だが。

 

「―――何時か、もう一度アンタに会いに来るわ。その時に・・・もし私の事を知ったのならば・・・一緒の生き方を教えてあげる」

 

「―――。」

 

「もし―――知ったらの話だけど」

 

知ることが出来るのだろうか。

知る機会があるのだろうか。

そんな心配とも危険視とも取れる感情に胸を痛めつけながらティアナはそれとは真逆の優しい笑顔を彼に見せていた。

 

「アンタ、一体・・・」

 

「ティアナよ」

 

「―――え?」

 

「ティアナ。私の名前よ。アンタから聞いて自分の名前を明かさないってのもフェアじゃないし、食べ物の事もある。だからその見返り・・・っていうのかな?お返しよ」

 

「・・・・・・ハッ・・・なんだそりゃ」

 

小さく笑ったエリオの顔は嬉しそうな様子で、本当に子供の笑顔その物だった。

あれが彼の本当の笑顔。彼の顔なのだとティアナはこの時、始めて知った。

本当は優しい少年なのに、生きる為に押し殺してトゲのある性格を装ってしまっていた。それが戦争の所為であり、奴等の所為なのだと知ったティアナは無意識に拳を強く握り締めていた。

 

 

「・・・じゃ、そろそろ行くわ」

 

「ああ。また・・・何時か会えたらな」

 

「ええ。その時にはもう少しマシな性格してなさい、エリオ」

 

「アンタに言われたくないぜティアナ」

 

そう言って二人は分かれの挨拶として互いの手を勢い良く合わせ、乾いた音を鳴らした。

また何時か会おう。その意味も込めて、二人はその後再び振り向かずにその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらオセロット(・・・・・)。予定通りミッドチルダに向かえました」

 

『こちらミラー。よくやった。後は向こうに着いて安全を確保した後に再度連絡してくれ」

 

「了解。その間、見つからない事を祈ります」

 

『心配するな。奴等はお前の事を知らない。仮に知っていたとしても、上手く誤魔化せるしな』

 

「一抹の不安しかないですけど・・・まぁ期待しますよ」

 

『安心しろ!お前の為にお父さんがんば―――』

 

仕様も無い雑談の為に連絡したのではない。

無言のまま、少女は連絡機器の電源を落とした。

任務の時ぐらい真面目にならないのだろうか。

・・・いや、無理か

 

 

「はぁ・・・・・・」

 

 

深い溜息を吐き、ゆったりとした座席に深く腰をかける。

柔らかい材質の為に自然と奥底から眠気がわき上がってくるのを感じ、少女の目蓋は重くなっていき、意識は遠のいていく。

 

(まだ時間はあるし・・・寝よ・・・)

 

今は僅かな間のまどろみ。休めるときに身体を休めよう。

やがて少女は窓の外に映る世界を見ながら、ゆっくりと目蓋を落とし、眠りについたのだった。

 

 

窓の外に映る世界、管理局本拠地ミッドチルダの首都。

グラナガンの夜景をその目に刻んで。

 

 




オマケ。

= 魔法と魔術について =
今作では魔法の下位である魔術が存在し、明確にその二つは部類されている。
しかし世間では魔法と魔術の見分けを知らない人間が多く、正確に部類で斬る人間は極僅かとなっている。

基本概念は変わらず、魔法は無から有を作り出す力。
(例題としてはフェイトの稲妻だったりシグナムの剣に纏う炎のみがこの部類。紫電一閃の場合は空気中の酸素を使って火力を上げるので魔術の部類)

逆に魔術は有から有を作りだす力の事を斥す。
(例題としてはクロノの氷がコレ。氷は空気中の水分を凍らせて生成するので)

尚、魔力スフィアも実際リンカーコアで生成された魔力を使用するもので、どちらかと言えば魔術に部類される。
また、光の魔法だったり闇の魔法だったりというのも存在するようだがこれは歴とした魔法に部類される。
なのはとフェイトで簡単に表すなら
なのはは魔術のみ。(周囲の魔力を取って使うSLBはどちらかと言えば有から有なので魔術)
フェイトは半魔法・半魔術(サンダーレイジなどが魔法。武器強化だったりは基本魔術《今作オリジナルであり》)





= 次元列車 =
原作では転送ポートと呼ばれていたが、こちらではコレが主に次元世界間での交通の便になっていて文字通り次元を渡る列車。主に管理局の管理する管理世界か、勢力が及んでいる世界等で活用されている。
物資の運搬、人員の輸送等の効率が良く事故の確率はかなり低いが、短所としてステーションと呼ばれる場所の設置が必要。
尚且つ、次元空間が安定していないと途中で事故を起こしたり、最悪の場合、別の世界に跳ばされる可能性もある。
今作では近年、陸戦魔導師の人員輸送として重宝されており、逆に次元航行艦は殆ど使用される事はない。理由としては「大人数を送れるが迅速な人員輸送を行えない」・「運用時と補給・整備時の資材等の消費が馬鹿にならない」などのデメリットがあり、現在本局は所有する艦の近代化改修と新造艦の生産。また旧型艦の解体などを急がせているが、それが完了するまで後十年はかかると予想されている。(実際はそれ以上とも)





= 管理局の評価と現状 =
一言で管理局の評判を言うならば「可もなく不可もなし」。
管理世界の人間でさえ殆どが管理局を警察組織程度にしか認識していない。
そのため、制服(空戦魔導師)が自分たちの善意を売り込んでいてもその程度にしか認識されない。
体制と内情は完全に二分されている状態で、制服組みである本局派と陸戦魔導師の地上派の二つがある。しかし制服の中には陸戦魔導師を懐柔して引き込むという行為(それもある特定人物が)が多発し、有能な陸戦魔導師の殆どが現在本局派になっている様子。
双方の見解は本局が「こちらの意思を分かってくれた(by三提督)」地上本部が「養分(人材)を奪われている(byレジアス)」とのこと。
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