Nanoha×MGS = The Rebrllion = 作:No.20_Blaz
タグにPWがついていますが、基本的にノリがPW的な明るい目。また少しネタに走ったりするストーリーとなっています。
それでもしっかりとシリアスはやるつもりです。
あと、本編に入る前に前日談が続くと思いますのでよろしくお願いします。
それでは、Nanoha×MGS。スタートです。
あの日、私は死ぬ筈でした。
ですが、私は救われました。
そして、私は教えられました。
この世の全ての真実を―――
◇
『おはようございます。モーニングニュース、今日はこのニュースからです』
日の光が小さく差し込み、肌寒い冷たさの風が静かに吹き通る。
春の時期だというのにまだ暖かい陽気は見えず、冬の冷たさが残っていた。
そのお陰か、眠っているときに使う毛布が思った以上に心地良い。肌で丁度いい程合いに温められ、安定した睡眠をくれる。
毛布の外では科学と魔術が統合された技術を用いて作られたテレビが動いている。
前もってテレビの時間をセットすると自動的に電源が入り、何時もの様に朝のニュースが放送される。朝のニュースは最高の目覚まし時計であり時間つぶしだ。
「んっ・・・・・・朝か・・・」
ほんのりと温められた毛布から小さく顔を見せ、寝起きでぼやけている視界に微かだが見えているテレビ画面を見て少女は呟く。
起きたばかりなので頭はまだ呆けているが、ほぼ日課になっているニュースが始まっているのだけは瞬時に理解していた。
「―――。」
だが眠い。まだもう少し寝ていたい。
睡眠欲に駆られもう一度眠りに付こうとするが、生憎とニュース画面を見て理性が働いて眠気は少しずつ消えていってしまう。
このニュースが始まったら起きなければいけないと決めていたからだ。
「―――はぁ」
やがて、眠気が理性に負けてしまい頭も起きはじめていく。
もう暖かい毛布から離れる時かと思うと、残念というよりも屈辱的なものを感じてしまう。
自分の睡眠欲が理性とニュースに負けてしまった。彼女にとってはなんとも言い難いものだ。
「んッ・・・」
ゆっくりと毛布から身体を起こすと、暗い毛布とベッドとの間に包まっていた寝巻きが姿を見せるが、その姿はとても寝巻きとは呼びがたい。
黒のタンクトップ一枚と下着のみという健康的な肌を露にした状態で、睡眠するにしたら問題はないだろうが余りに無防備すぎると言える。
「ふあっ・・・」
小さく欠伸をする少女は下着の端を調整すると使っていたベッドの上から立ち上がり、身体を伸ばしつつ眠気を覚まさせる。
「んーっ!」
身体中から骨が鳴り響き、身体が更に柔軟に動けるようになっていく。
今日も問題なし。
調子を確認した少女は閉め切られていたカーテンを勢いよく開いた。
「・・・今日も平和ね。この世界は」
その先に広がったのは未来的な光景の広がる街。
朝日が外の世界を照らし、ガラス窓の外から雑な機械音が響いてくる。
少し顔を上げれば青い空が広がり、今日一日が快晴であるのは間違いない。
そんな朝の風景を見て、少女ことティアナ・ランスターは小さくぼやいたのだった。
「―――平和ね」
MSFスタッフことティアナがミッドチルダに到着したのは今から約一週間前のこと。
そして、今いる隠れ家に潜伏してからもう三日が経過している。
その間、彼女は副指令であるカズヒラ・ミラーの根回しによって予めある程度の準備が済んでいた
寝床は近くの廃工場やらなんやらを転々としつつ、最後にはココに落ち着いたもので彼女自身は久しぶりのベッドで熟睡出来た事に喜んでいた。
必要最低限の物と自前で持ってきた武器などが置かれたミニテーブル。
その上には更に、そのテーブルの上には不釣合いな絵柄のした紙が数枚置かれていた。
「さてと。今日の・・・えっと十時からだったっけ?」
そのテーブルの上に置かれた紙を僅かに視界に入れるとティアナはいそいそと寝巻きを着替え始める。
と言っても身に纏っているものは僅か二枚なので脱ぐ事に苦労する事は無い。
問題はその後。彼女が着慣れていない正装というものを着るのだ。
「はぁ・・・」
着るのは二度目なのである程度は問題ないが、彼女の溜息の理由は別にあった。
女なら誰もが気にするだろう『見た目』。
つまるところ服のデザインだ。
「・・・ダサいわね」
ダサい。正直ティアナの目からしても目の前にかけられた制服というのはその一言だけで片付けられる程のダサさだった。
斬新さを求めた結果それに行き着いてしまったのだろうが、そのダサさはファッションセンスの無い人間からしても一目でダサいと断言できる。
その服を一言で表すなら奇抜なヒーロー服、とでもいうのだろうか。
それとも、光の巨人が出てくる特撮の人類の防衛軍の服装とでもいうべきなのだろう。それのカラーチェンジ版と言っても良い。
兎も角。それほどまでに制服は着る気にはなれない物で、それをティアナは苦い顔で見つめていた。
あんなのを大事な時に着るのだとなるとかなり恥ずかしいし阿呆らしい。
「全く、これデザインした人どんな頭をしてるのよ・・・」
ちなみに、その服をデザインした人物が後にティアナが知る人物であると言う事はココだけの話。
『――――――“あの事件”からもう二年半。現在の新管理世界『ヌアザ』の様子をリポートしてきました』
「・・・!」
聞き覚えのある名前が彼女の耳に入る。
目をテレビの方へと向けてシャツを着替える途中のまま動きを止めると、そのままテレビに釘付けになる。聞き覚えのある単語が耳に入ったので思わず興味が其方に向いたのだ。
ヌアザ。それは彼女にとって忘れる事の無い記憶の鍵となっていたからだ。
『今から約二年半前。私達を守る組織、時空管理局が新たに保護した世界『ヌアザ』では、元々治安も良くなく、局員達が犯罪者を逮捕するというのが日常的でした』
出来上がったカバーストーリーを淡々と読んでいくニュースキャスター。本人に悪気はないのだろうが、キャスターが語るニュースの殆どはティアナにとっては嘘のほかに何でもなかった。
『それが、あの日。突如として襲い掛かったのです。―――そう。血のバレンタインと呼ばれた『ヌアザ内戦』の始まりです』
ヌアザは確かに
だがそれはあくまで管理局側にとってはの話だ。
元々ヌアザは独立した管理外世界であり、管理局なしでも十分に機能する世界で同時に反管理局勢力にとっては重要な拠点となっていたのだ。
武器や物資の流通が盛んでそれを利用し、各反管理勢力へと物資を供給するという事さえヌアザの自治政府は認可していた。それが自分たちにとって有益であると、向こうにとっても悪いことではないと分かっていたからだ。
だがそこを管理局に漬け込まれた。
大義名分を彼らに与えてしまったのだ。
『今から二年半前の二月十四日。反管理勢力が管理局の駐屯地を爆破。それにより多くの死傷者を出しました。当時、管理局は現地自治組織との交渉を進めており、進駐軍が多く入っていました。そこを彼らに狙われたと、当時の司令官は言います』
実際は違う。大義名分を得た彼らは水を得た魚のように餌を求めて集まってきたのだ。
圧倒的武力を持って現地政府を脅し、降伏を迫った。
「ここで降伏せねば武力を持ってこの地を更地にしてやる」と、まるで自分たちが神の代行者であるかのように。
あまりにも見下したような物言いに見かねた反管理勢力は遂に決起。
これが本当のヌアザ内戦の切っ掛けだ。
「ヌアザを取られてしまってはいけない」。それが反管理勢力たちが団結する理由となり、近隣の大小様々な反管理勢力、及び軍事請負企業等が参加。現地政府も裏ではそれに賛同し当時ヌアザに座り込んでいた管理局勢力に勝るとも劣らない数が集まり、爆破事件を皮切りに戦いの火蓋は斬って落とされた。
約一ヶ月に及ぶ、大攻防戦の始まり。地獄の日々の幕開けだった。
PMC的立場であったMSFも会戦初期から参加。現地組織に雇われ、戦力の供給と『反管理勢力連合』と呼ばれたゲリラ兵たちの訓練を請け負った。
連合だと言われていても所詮はゲリラ兵であるのには変わりない。戦闘能力は一般人に毛が生えた程度でとてもではないが即戦力になるとはいえなかったのだ。そこで、現地兵士の訓練を視野に入れていたMSFに白羽の矢が刺さり、伝説的な戦士と呼ばれていたビッグ・ボスのことも知った彼らは高額の報酬を用意し自陣に招きいれたのだ。
最強の戦士、ビッグ・ボスが率いる部隊。それだけでも相手への圧力にもなり、連合側のゲリラたちの士気も高揚していく。
その戦意を更に高揚されるかのようにビッグ・ボスも自ら前線に立つ。
そして、その中でティアナは大人たちに紛れ少年兵ならぬ少女兵として参加していた。
『約一ヶ月に及んだこの内戦は最終的に管理局本局の主力部隊投入という大規模な作戦、通称『天の息吹作戦』によって反管理勢力の司令部を制圧した事により終戦。多大な
だが実際、ゲリラ勢力と呼ばれていた反管理勢力はそれ以上の被害を受けた。
勢力が小さいところによってはその作戦に参加した全員が全滅したと言う話も現地で良く聞いたことだった。ひとつやふたつではない、十や二十といった数を軽く超したのだ。
更に、現地政府もその『天の息吹作戦』によって中核人物たち全員が死亡。
これが決定打となり、反管理勢力は敗北を余儀なくされた。
「―――。」
『多大な犠牲を払い、正義を行った局員達を弔う為に今日戦没者慰霊碑の前には多くの関係者が集まり、黙祷を捧げました』
そして其処からの関係者達の悲痛な声。というのが画面に映り、視聴者達に涙を誘わせる。
同時に反管理勢力への強い怒りと軽蔑の種となり、何も知らない人々はただ表にだけ現れたカバーストーリーに涙するのだった。
『非人道的行動を取った反管理ゲリラたち。現在も各地に分散し、管理局の保護行為を妨害していると―――』
胸糞が悪い。
ティアナは余りに出来すぎたカバーストーリーに苛立ち、テレビの電源を落とす。
まるでキャスターが裏の事実を全て知っていたのにも関わらず、知らないフリをしているかのように思えてしまい、彼女にはそれがどうしても我慢できなかった。
「・・・嘘ばっかり」
ドキュメンタリー系の番組はどこかしらばっくれた感じがしてならない。
自分たちが味方している側の悲壮感や悲惨さを強調し、軽蔑、軽視している側は嘘を交えて残虐さ、悪という感情を埋め込ませる。
ミッドチルダについてからというものの、そんな番組などが殆どだ。
まるで日常的に人々へと洗脳行為が行われているかのようで、その洗脳を受けた人々は機械のように教えられたことを口にし、元にして考える。
この世界、ミッドチルダはいわばディストピアだ。見方を変えれば、管理局が都合の良いように情報を操作し、統制して人々を欺く。
こんな世界に居る人間など、タダの一人としてまともな人間は居ないだろう。
毒を吐くようにティアナは外の世界を見つめる。
鳥かごのように囲まれた外の世界を、彼女は息苦しそうに思っていた。
◇
ティアナが管理局へと潜入する方法。スパイ活動を行うには先ず、当然ながら局員にならなければならない。出なければ本局内部での活動に多くの支障が出てしまう。
また非正規の方法での入隊が無理な以上、合法的に正規でしか入る方法は無い。
協力者が居ると言っても、ミラー曰く「其処まで高い地位ではない。一般局員クラスが精々だ」との事。裏口の見込みはこの時点で潰えていた。
なのでティアナは正規で課程を終えて局員になるしか道は残されていない。
「・・・学校、かぁ」
一般人が管理局員になる方法は二つ。手続きを踏み、専門の訓練校での課程を終えて局員になる。しかしこれは規定の年齢以上の人物に該当する方法で彼女には当てはまらないもの。
ではどうすればいいのか、と言われて上げられるのがもう一つの方法だ。
管理局が定めた規定最低年齢。それから一つ目の年齢に該当するまでの歳の者。つまり子供たちが同じく専門の訓練校で課程を全て終えれば晴れて局員になれるのだ。
面倒ではあるが、これしか他に道は無い。
急がば回れ。地道に課程をクリアして局員になるしかないのだ。
ティアナは複雑な心境を胸に、小さく呟くと目の前に建つ建物を見上げる。
「課程を終えれば即局員・・・可笑しいでしょコレ」
眼前に建つ建物は、これから彼女が利用する事になる陸士訓練校。
文字通り陸戦魔導師の養成学校で、噂では
ミラーからの伝手曰く、「空戦を体験コースとするならば陸戦は米海兵隊レベル」との事。
聞いた時には酷い差だな、とスネークがぼやいていた事を思い出す。
つまり、天と地ほどの差があると言う事らしい。
訓練校の正門前には、そんな事を知ってか知らずか様々な顔つきの少年少女が居た。
見た目が非行少年のような者や、がり勉と呼ばれている委員長系という少女。
だが、中にはしっかりとした面構えをする者も何人か見え隠れしている。
熱血系、沈黙系。見た目はよしだが、果てさて中身は、と思う者も何人か居て、正に十人十色だ。
「・・・ま。大丈夫でしょう、色々と」
そのうち振り落とされるか自分から逃げるかで数は減っていくだろうと本心では思っても居ない事を考え、ティアナは一人訓練校の門を潜って行った。
さて。ココで少し陸戦の訓練校について説明しよう。
陸戦魔導師にとって重要となる技術や能力。魔力関係といったものから技能的なものまでのカリキュラムを効率よく組み上げ、それを三年という短い間に実施、生徒達に身に付けさせるのがこの訓練校の主な目的だ。
更に、陸戦魔導師は空戦と違い飛行したり大量の魔力を保有するという事が少ないのでそれを補う為の訓練。連携での作戦行動を行わせるなど実戦的なものを行う。
また個々の能力を反映し個人にあったスキル向上を図るなどもあり、近年では優秀な魔導師を多く排出している。
ただ、その裏では当然ながら振り落とされる者も少なからず存在する。
訓練を軽視して居た者、耐え切れない者。理由は様々。
だが、乗り越えれば精神的にも成長し、最終的には一般からすれば優秀と見られるほどの実力になる。見返りは十分にあるのだ。
つまり、漫画などのような二次元で言い表すなら、落ちこぼれの主人公でも最終的には強大な悪を倒せる力を最低でも持てるようになるという事。
ただし、それはあくまで訓練校を無事卒業できればの話だ・・・
= 訓練校・学長室 =
「さて。今年の入学希望者は?」
「去年の1.3倍。約五百そこそこです。毎年ながら
場所は変わり、訓練校の学長室では二人の壮年の男二人が面と向き合った状態で椅子に腰掛けて、テーブルに置かれた入れたての緑茶に手をつけていた。
一人はまだ若さが残る黒い髪の短髪と無精ひげを生やす男。退役将校である人物で訓練校の学長だ。
その彼と対面して座っている白髪のおやj……男は、管理局の陸戦魔導師
「五百・・・まぁ予想の範疇ですかな。近年では就職率だなんだで騒がれてますからね」
「態の良い職場だと思っている・・・なーんて思ってたら大間違いなのは後で気づくんですがね。そういう奴等は」
「ええ。今年の振り落としは大いに期待できますな」
「ははは・・・まったくです」
と、笑いながら雑談を楽しむ壮年二人だが、実際会話の内容は聞き方によっては容赦ないことを平然と話しているとしか思えないものばかり。
自身たちが所属している組織への悪口から始まり、職場の鬱憤。更には新人が入ってきた目的への文句等々・・・悪態づいた事を延々と話していたのだ。
(この二人、いつも顔を見合わせたら居酒屋モードなんだから・・・)
その光景を呆れた様子で聞くのは、108に所属する局員でゲンヤの娘、ギンガ・ナカジマで何時もの事だと思ってはいたが、流石に何時も長話を聞かされている身としては敵わないと、見切りの良いところで釘を刺した。
「・・・お二方。長話も良いですけど、そろそろ用意しなければいけませんよ?」
「おっと。もうそんな時間か」
「早いモンですな時間が過ぎるのは」
「まったくだよ、歳を取ってしまっては余計に早く―――」
「お二方?」
「・・・分かってるってギンガ。そんな眉間にしわ寄せてたらシワがで―――」
「ゲンヤ司令?」
「・・・すまん」
ゴキッ、と骨が鳴った音を聞き青ざめた二人は彼女の怒りと鉄拳が爆発する前にとさっさと学長室を退室する。
娘ながら彼女が怒りを見せればゲンヤでも頭を下げるしか謝る方法がないらしく、「そんな娘に育てた覚えはねぇのになぁ」と時折ぼやいていた。
明らかに尻しにかれた父親の姿に友人たる学長も同情の念を見せた。
「もうっ・・・今日は
「わってるって。特等席から見れる大切な日なんだからな」
そう笑いながら歩いていったゲンヤの背を見て、ギンガは小さく微笑む。
「まったく・・・我が父ながら・・・」
◇
今や陸戦魔導師というのは空戦魔導師に変わり、花形職業と言っても過言ではない。
多大な戦果。多くの実績。優秀な局員。
少し前までは一部の空戦魔導師が広告塔のようにライトを浴びていたが、近年の陸戦の目覚しい実績等があり、完全に立場を失いつつある。
故に、近年では空戦魔導師の希望者は年々減少していき、その減少の原因。吸い取ったかのように陸戦は希望者数を伸ばしていた。
そして今。その陸戦魔導師になるための訓練校の道が開いたのだ。
『あー・・・先ほどご紹介に預かりました・・・108部隊の司令官をしているゲンヤ・ナカジマですっ』
ぶっきらぼうな物言いと表情で壇上に立ったゲンヤは内心「面倒だな」と思いつつも彼の姿勢に目を光らせる他の陸戦将官を窺いつつ話を進めていた。
せめて礼儀だけは出来ていると知ってもらいたいと他の将官、佐官は思って彼を見ていたのだが・・・
『・・・・・・はぁ・・・堅苦しいのはここまでにしようや』
と、狙っていたかのように言い出したゲンヤに、将佐官一同は呆れてずっこけていた。
これには釣られて新人たちも笑っていたりと、緊張の解れには丁度よかったのだろう。
しかし将官たちにとってはせめてもう少しは頑張ってもらいたかったようで、特にギンガは頭を抱えて近くの人間にも聞こえるほどの溜息を吐いていた。
『さて。改めて、お前さんらにおめでとうと言わせてもらうが・・・ココで気を抜いたらお前等は明日にはココを去ることになるぞ』
(・・・。)
しかしそこからはゲンヤなりの話が始まり、真剣な眼差しとなった彼を見て意外そうな表情を見せる者も居た。
『はっきりと言わせてもらう。ココはお前等が思っているほど生易しい所じゃない。本気で陸戦魔導師、またはそれに近しいものになる奴等が入る場所だ。職だ金だとか思っている奴等が居るなら・・・今ココから出て行っても俺は何も言わん。知らなかったんだからな』
図星の者が居たのか、何人かがぎくりと表情を変え目線を逸らす。
それは新人だけでなく、一応ながら同席が許されていた親兄弟もで、特に母親の八割方が表情を暗くした。
『ココは陸戦魔導師を育てる場所。最悪の場合、俺たちのように戦地に赴くなんてこともある。残念ながら空戦のように空からドンパチなんてことは一切無い。
分かるか?入れば最後、「絶対に安全」なんてのは無くなっちまうんだ』
「へぇ。どうしてなかなか・・・肝据わってる人ね」
『俺たちの仕事はそれだけ危険であると言う事。はっきり言えば得なんぞ無いに等しい。それでも、俺たちと同じ場所に居てみたいっつー馬鹿野郎どもは・・・
ついて来な。ココはそう言う馬鹿が集まる世界だからな・・・!』
その言葉に誰もが震えた。
怯えて震えた者。どうせハッタリだと思っているのに本能がそうさせた者。
後悔した者。
そして、武者震いをした者。
俄然、馬鹿になった者。
面白い、と興味を見せた者。
この瞬間。彼らは二つに分かれる。
去る者と残る者。利口な者と、馬鹿になった者に。
「・・・で。大切な初日でそんな馬鹿なことを言った馬鹿の今の心境は?」
「まぁ良かったんではないでしょうか、中将」
その後。再び学長室に集まったゲンヤや学園長だが、其処にはギンガは居らず、代わりに二人の男女がソファーに腰をかけ、そのソファーの後ろに立っていた。
陸戦魔導師の総本山。地上本部のトップであるレジアス・ゲイズとその娘であるオーリス。
現在の陸戦魔導師、そして地上本部の体制を気づいた男がそこに座っていたのだ。
しかし現在レジアスの表情はいつもよりも曇っている。
いや、半ば怒りを爆発させる数分前といった様子だ。
まるで活火山が今にも吹き出してしまいそうな、そんな表情相手にゲンヤはマイペースに言い返していた。
「・・・・・・。」
「ゲンヤ三佐。毎度のことながら度が過ぎます。これでは・・・」
「まぁ分かってますよ、オーリス三佐。ですが最近の若者にはこれぐらいの方が丁度良い。軽くしか見ていない馬鹿には、ね」
「・・・・・・。」
深く溜息を吐いたレジアスはゲンヤと学長に残った人数を尋ねる。
あの後、かなり場の空気が冷えていたのでかなりの人数が止めたはずだ。
「・・・で。あの演説でどれだけ減った」
「正門の私服隊員たちの話だと約半数。つまり残ったのは・・・」
「二百五十・・・あるか無いかって所ですかね」
「・・・・・・。」
「過半数・・・まさかそれ程とは・・・」
「それだけウチの事を軽く見ていた馬鹿が居たって事でしょうな」
学長から聞かされた数にレジアスは深く椅子にもたれかかる。
確かに学長が言ったとおりなのだろう。それだけの脱落者が居るという事はそれだけ軽視していたという事。そこは素直に喜ぶべきなのだろう。
だが、問題はその脱落者が世間で
中には話に虚実を織り交ぜ肥大させた話を言いふらす物も居るだろう。
もしそんな嘘か真か分からない事が世に出回ってしまってはどうなるか。
そこをオーリスは敏感に警戒していたのだ。
「ですが、それでは脱落した者達が何をしでかすか・・・」
「それは多分ないでしょうな。仮にもウチは管理局。組織の行動が明確なほど嘘を並べても信じられにくいでしょうに」
「・・・。」
「それに、何時までもそんな事を考えてたら前には進まんでしょ。落ちたなら落ちたでさっさと前に進めるべきです」
「・・・では、既に訓練生たちは?」
「ええ。今頃、ゲンヤ三佐が連れて来た隊員たちも手伝っているでしょうな」
その頃。
訓練生たちは少し古風な掲示板のある場所に集まり、あるものを確認していた。
再度割り振りが行われた部屋割りの一覧が大きく張り出されていたのだ。
ゲンヤの脅し混じりの演説に屈せず残った約二百五十人をもう一度シャッフルし、二人一組の部屋に振り分けたようで見出しには括弧書きの中に「再編版」と書かれている。
どうやらかなり大幅な再編のようで訓練生の中には元々予定されていた部屋の組み合わせが変わったことによって様々な表情を見せる者が居た。
仲の良い二人が離れたり、いやだと思っていた相手と離れられたりと見せる顔は様々。
その中、ティアナは一人人ごみの中を潜り、張られていた一覧から自分の名前と割り当てられた部屋の番号を確認する。
「えっと、ミ・・・ティアナっと・・・」
ちなみに、ティアナ・ランスターの名前は都合上ややこしくなる原因であるので今回の場合は姓を偽装している。その間の姓は本人が預かり知らぬ間に『ミラー』の姓になっていたのだ。
これには本人も我慢ならず、立案者兼犯人である某杉田を約半日CQC訓練のサンドバッグにしたという。
「・・・32号室ね」
自身の名前を思い出しただけで腹が立ったティアナは、その名前を視界から消す為に素早く部屋の番号を確認すると、直ぐ様その場を後にした。
いくら任務とはいえ、自分に話も無しとなれば酷いとしか言い様がない。
しかも、これが独断で決められたとなれば尚の事だ。
「はぁ・・・あんなグラサンの名前を使うなんて・・・せめて他のにして貰いたかった・・・」
ぶつくさと呟きながら割り振られた部屋へと歩いていく。
自分の知らない所で名前を決められるなどという事は誰だって嫌な事だ。
正直危険に曝されるのはグラサンだけで十分だ、と。
なのに、自分も危険に曝されるとなると余計に恨めしくなる。
「―――ん?」
「あ―――」
刹那。ティアナは正面から歩いてきた人物の姿を見た瞬間、血の気が引き全身が冷たく凍り付いてしまう。
記憶の中に刻まれた恐怖が、見た瞬間に呼び覚まされたのだ。
「――――――!!」
青いロングヘアーと過去の出来事で僅かながら焦げた肌。間違いない。
彼女の前に現れた人物、ギンガにティアナは無意識に警戒心を持ち焦りの表情を見せていた。
(げっ・・・まさかココで鉢合わせるなんて・・・)
挨拶の時に顔は見ていたので警戒はしていた。
出来るだけ会わないようにと心がけていたのだが、偶然出会ってしまったらどうするという想定を考えていなかった所為か、顔が見合った瞬間、頭の中が真っ白になってしまう。
どう対応するべきなのか。どういい訳したらやり過ごせるだろうか。
「貴方・・・訓練生?」
「えっ・・・ええ。はい・・・」
思った矢先、ギンガは何の疑いもなくティアナに話しかけてくる。しかし話の内容は他愛の無い事なので答えるのは簡単だ。
それでも上ずった声で答えるしか出来ないティアナは目線をずらし出来るだけギンガと目を合わせないようにする。
「ふーん・・・」
「・・・えっと・・・なにか?」
何か考えるかのようなポーズを取り、全身をジロジロと見つめるギンガに恥ずかしくも焦ったような声で聞き返す。
すると、その質問を待っていたかのように、ギンガは舌なめずりをして興味のありそうな表情と声で答えた。
「・・・いい身体してるわね」
「――――――へ?」
「うちの妹も大概いい身体と肉付きしてるけど・・・うん。うま―――実にいい体格してるわ。陸戦に入って正解よ」
「・・・・・・。」
今一瞬「うま」と言わなかっただろうか。
まさかと思うが、と頭の隅で余計な疑惑が浮かび上がり警戒と焦りは段々と薄れていく。
今あるのは単なる恐怖だけだ。
彼女の性格に対する、本能的な恐怖。
まさかと思うが・・・
「・・・・・・ねぇ」
「・・・はい」
「名前、なんていうの?」
「・・・・・・ティ・・・ティアナ・・・ミラーです」
「そう・・・じゃあミラーさん」
「な、ナンデゴザイマショウカ・・・」
「今夜、私の部屋に一人で来なさい」
野生の肉食獣の目だった。
「
全力で否定して逃走した。
◇
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
全力疾走で逃げたティアナは疲労した身体を休め、壁に手をつけて呼吸を整えていた。
ここまで体力を消耗して疲労する事など最近では殆ど無かったので久しぶりな感覚だなと懐かしむが、その感覚を呼び覚ました原因を思うと気分が落ちてしまう。
思った以上に撒くのに手間取ったと言いたいが、恐らくまだ油断は出来ないだろう。
ティアナが逃げた直後に、不敵な笑い声と共に追いかけてきたギンガから逃げるのに一時間近くを費やし、出来る限り逃げたり隠れたりとしてやり過ごそうとしたのだが、どれも彼女には通用しなかった。
ダンボールに隠れる。ドラム缶で転がる。デコイを使う。グラサンを投げる。
正直ここまで帰りたいと思った事は無いだろう。
「はぁ・・・・・・なんちゅー連中よったく・・・本当にロクでもない組織ね・・・」
深く息を吐き、呼吸を整えるとぼやくように悪態を吐く。
内心帰りたい一心だが、任務を投げ出してというのも駄目な事。その為に自分は態々ここまで来たのだ。
こんな事でやめると言ったら単なる根性無しとしか思えない。自分でも分かっている事を考えるティアナは諦めて帰りたいと、それでもココに残らなければいけないと相反する思いを胸にしまうと、ゆっくりと上半身を起こした
その時だ。
「あのー・・・」
「ッ!!!」
突然後ろから聞こえてきた声に、思わず振り向いたティアナは直ぐ様後ろへと振り返る。
何時の間に自分の後ろに立っていた、と驚きつつも後ろを取られた事で臨戦態勢を取ろうとした。が、その人物を見た瞬間、警戒心は消え失せてしまった。
そこには、一人の同い年ほどの少女が立っていたのだ。何の変哲もない、ただ気遣いでティアナに声を掛けた青いショートヘアーの少女が。
向こうも突然振り向いた事に驚いたのか半歩下がっており、驚いた顔は今の彼女の様子そのもの。
空回りしてしまった警戒が解けてしまい、二人の間に気まずい沈黙が流れた。
「「・・・・・・・・・。」」
このままでは不味い。そう思い、ティアナが適当に言ってこの場を収めようかとした時。
同じ事を思っていたのか、相手の少女が先に口を開いた。
「えと・・・だい、じょうぶ・・・ですか?」
「え、ええ・・・ちょっと走って疲れただけだから平気よ・・・」
心配なのは確かだが、聞いてもいいのかと気まずさに飲まれ言葉は途切れ途切れとなるが一応ながらティアナへと尋ねる。
聞かれた本人も気まずい空気に飲まれていたが、冷静さを取り戻し返事をする。
「え、走ってたって・・・」
「・・・変人に追っかけられてただけ。逃げ切ったからいいケド・・・」
「・・・本当に大丈夫ですか?」
「・・・まぁ大丈夫よ。心配させてごめんなさい」
「・・・・・・。」
とりあえず本人が大丈夫と言っているのだ。大丈夫なのだろう。
そう思い、ひとまず胸を撫で下ろした少女は、図々しいとは思うがと彼女へと願い出る。
「・・・あー・・・そのー・・・」
「・・・?」
「そこドアの前・・・」
「・・・あ」
今更ながら自分が手をつけていたのが目的地のドアである事に気づいたティアナは、悪くは思いつつも寧ろ好都合と思い返事をした。
「大丈夫よ。ここ、私が使う部屋だから」
「・・・へ?」
「・・・ん?」
すると帰って来たのは抜けた声で、その声に釣られて同じく抜けた声を出す。
ティアナの脳裏に「もしかして」と予想が浮かび上がる。
「・・・え・・・ってことは・・・」
「・・・・・・ああ」
「貴方が・・・ミラーさん?」
「・・・・・・。」
ミラーの単語に不愉快さを感じたが、彼女の脳裏に浮かんでいたもしかしてが的中する。
彼女が部屋のパートナーだ。
「え、違ってた・・・?」
「・・・いや、間違ってないけど・・・姓で呼ばれるのは好きじゃないの(勝手に決められた意味で)」
「え・・・?」
「だから。これから呼ぶときはティアナって呼んで。私の名前だから」
「・・・あ、はい」
どうして姓が嫌いなんだろう、と本人にとって深い理由をとてもではないが聞けそうに無かった少女はそのまま彼女の言葉に頷く。
別に嫌な訳ではない。ただ少し驚いただけだ。
そう思い、調子を取り戻した少女は返答代わりにと自己紹介をした。
「私はスバル。スバル・ナカジマです。よろしくね、ティアナ」
「よろしく。ナカジ・・・ナカジマ?」
「うん。さっき壇上に居たのはアタシのお義父さん。で、後ろに座っていたのはお姉ちゃん」
「・・・・・・。」
つまり。自分は彼女の姉に追っかけられていたという事。
そして、最悪の場合また鉢合わせする確率が格段に向上したという事。
前途多難。一難去ってまた一難。
ぶっちゃけありえない。
ティアナの目の前は一瞬にして真っ暗になったのだった。
オマケのキャラクター設定。
ティアナ・ランスター
Old : 13(前日談時) 16(本編開始時)
Like / Don't Like : 愛用銃のメンテナンス マウンテンデュー 安心できる場所 / 管理局(制服は特に) ミラー(完全に嫌いと言う訳ではない) 空爆 砲撃 子ども扱い
Affiliation : 元・国境なき軍隊 実戦部隊スタッフ
Staff Rank : 実戦・A 開発・C 糧食・C 医療・D 諜報・B
Skill : ガンミス(ハンドガン・狙撃銃) グリーンベレー 声優
本作の主人公。ちなみに歳は一話開始前に誕生日を迎えたとの事。
原作とは違い凡人だなんだというコンプレックスは無く、寧ろ凡人とは何なのかと逆に問いたいと思っている。また、髪はツインではなくそのままロングヘアーで伸ばしており、腰近くまで伸びている。短髪にする考えもあったが、子供の頃に兄に「ロングが似合う」と言われたのを切っ掛けにロングヘアーを続けている。
性格は基本的に優しくも冷静。また現実主義ではあるが理想主義は否定はしない。が、あくまで否定しないだけで反論する事もあり、その場合は徹底的に否定を通す。
戦場では冷徹なもので敵と判別されたら息の根を確実に止めるまで続け、その為に狙撃についてはハンドガンでの近接に続き高い。CQCではスタンロッドはあまり使わず、殆どナイフを使用して尋問したりする。
魔法・魔術に関しては素人に毛が少し生えた程度ではあるが才能自体はあるようで既に幾つ物技を身に付けており、原作のものは粗方習得。オリジナルの物も編み出している。
過去の出来事から兄を失い、独りとなってしまった為に生きる活力を失ってしまい、兄の死後間も無くして自殺しようとしていた。
しかし、そこに偶然ながらスネーク(ビッグ・ボス)が現れ彼女を保護。その後、彼の組織したMSFに身を置く。当時は孤児院に預けられる予定だったが本人が頑なに拒否し、暴れた為に孤児院行きは取りやめられ「戦う力が欲しい」という理由で訓練の参加を申し出る。
それに折れたスネークは、彼女に対し一対一での訓練の手ほどきをする。
数年後には実戦部隊のスタッフとして子供ながら戦場に立ち、八歳の時には幾つもの戦場を渡っていた。
今回はスパイ活動として管理局に潜入。先行き不安ながらも独り奮闘する。
= Weapon =
主にべレッタM9とナイフを携行し任務によってはMP5やM10を使用する。
また狙撃にはレミントンM700かVSSを使用。また幼い時はM21を使っていた。
戦闘スタイルは狙撃か銃による接近戦で主に後者をメインとしている為、リロードはスネークよりも若干速い。
最近はリボルバーに興味を示しており、特にマテバ6Unicaなどの系列を好んでいる。
魔法・魔術は最近から使い始め(というか学び始め)、主にアームドデバイスを使用。M9とレミントンM700をモデルにした二つだけを使っている。
M9タイプでは複数の魔力スフィアを同時に生成し時間差での攻撃だったり、マーカー弾代わりに貼り付けたりする事ができ、M700では魔力を通す事でスコープを更に倍率化。弾の大きさや貫通力を調整したりも出来る。
また原作通り幻影魔術も多少ながら使えるが、まだ慣れていないために消費魔力はかなり多いというデメリットを持つ。