初めての方もこんにちわ、明石明です。
さて、Jumper -IN DOG DAYS-の第1話を書いている頃に思いついたネタのプロローグが何故か書けてしまったのでなんとなく掲載してみました。
今までオリ主が神様のミスや神様に導かれて転生というネタを多く見てきましたが、『神様自身が転生をする』という作品を見たことがなかったことから作ってみました。
タグを見ていただければ察してもらえるかと思いますが、主人公TUEEEEな展開になることが予想されます。ご注意ください。
それでは見切り発車ではありますが、どうぞご覧ください。
「――じゃあ行先は無印リリカルなのはで原作開始一か月前からのスタート。特典は銀髪のオッドアイにSSSランクの魔力、高性能インテリジェントデバイスにニコポナデポ、王の財宝で問題ないな?」
「そうだよ! わかってんならさっさと転生させろやコラ! 神の癖に手間取ってんじゃねえぞ!」
目の間で醜く喚いている小太りの男にイライラしながら慣れた手つきでパネルを叩き転生のゲートを開くと、男の顔が気持ち悪い笑みで歪む。
「はい、いつでもどーぞ」
「遅ぇんだよ! けどこれでこんなクソみたいな世界ともおさらばだ! 待ってろよ俺の嫁たち!」
男が嬉々として飛び込むと、ゲートは役目を終えてあっという間にその入り口を閉じる。
一人残された俺は報告書を書き上げて天界東京支部にいる上司に転送し――理性の限界を迎えた。
「――も、もうこんな仕事やってられるかあああぁぁぁぁぁぁ!!」
誰も聞いていないことをいいことに、肺活量の許す限りで思いっきり叫ぶ。
叫びすぎて自分の耳がキーンとなるが、お構いなしに叫びながらつぶらな瞳がチャームなサンドバッグくんと金属バットを召喚して一心不乱に暴れる。
「これで何十人、いや何百人目だッ!? 毎回同じような転生先で同じような特典ッ! おまけに共通してるのがほぼ全員自己中とかふざけんなッッ!!」
神として転生業務に従事するようになってはや8年。誇ることではないが、これまで結構な人数を転生させてきた。
要求された転生先としてリリカルなのはや東方Project、インフィニット・ストラトスやハイスクールD×Dが群を抜いて高く、結構な確率で最強チートにお手軽ハーレム形成能力を要求している。これだけならまだ流せるが、要求しているほとんどがかなり自分勝手な連中だった。
やれ自分は選ばれた存在だのやれ最低な世界から抜け出せるだのと勝手に喚き、挙句にはこっちが手を貸しているのにさも当然のように命令してくるのが余計に腹が立つ。
その鬱憤を払うように力の限りバットをスイングしてサンドバッグくんに叩き込む。バッスンバッスンと痛々しい音を上げて揺れ若干涙目になっているようにも見えるが、許してくれサンドバッグくん。こうでもして憂さを晴らさないと、俺が自分を保てそうにない。
「はぁ……はぁ……すまん、サンドバッグくん」
ひとしきり暴れて憂さを晴らし終えると、理不尽な怒りをぶつけたサンドバッグくんに謝罪をして自分の部屋に転移する。
今日の仕事も終えて報告書も上げたし、直帰しても特に問題はない。
それなりに高いベッドに体を投げ出し、しばしダレる。そのままカレンダーに目をやると、明日からしばらく休みが続くことを示すマークが並んでいた。
今まで取れなかった休みと消化できていなかった有休をまとめてとったことで生まれた自分だけの大型連休だが、それを眺めてついに決意する。
「……やめよう、この仕事」
始めこそ割と誇りをもって取り組めたし、中には転生することでお礼を言ってくる人もいたからそれなりに充実した仕事だと思っていた。
だがここ数年で今日みたいな奴が増えだし、俺の精神もいい加減限界が近い。
この仕事についていればとりあえず不老と高額な給料と年2回のボーナス、残業なしの週休二日に有給と福利厚生が保障され、下界に遊びに行くことだって普通にできる。
神様なだけに一般企業からすれば天国のような好待遇だが、先ほども言ったように俺のメンタルがもう持たない。
幸いにして下界で普通の暮らしをすれば老後まで安定して過ごせるくらいまでの資金は貯めたし、精神面を考慮すればそちらのほうがいいかもしれない。
その場合不老と安定した高給は得られなくなるが、あんな連中の相手をしなくなるならもうそれでいいよ。
そうなるとさっそく退職願を出すわけだが――
「……あ、そういえば」
ふと思い出し、床下収納から配属当初にもらった書類の束を引っ張り出す。
「えーっと……あった、退職金と退職特典について」
退職金とは下界にある企業と同じく、一定年数を務めた上で退職するものに渡されるお金でこちらは特に問題ない。
俺が気にしたのはもう一つの退職特典という項目だ。
こちらは5年以上働きかつ退職金を辞退する代わりに誓約書と一体化している専用書類に必要事項を書き込めば、今まで転生者に施してきたように別の世界へ転生できる特典だ。
つまり、8年間働いてきた俺も退職金を辞退すれば特典を得て別の世界に行けるというわけだ。
「これを使わない手は…………ないよな、っと」
退職届と一緒に専用書類をさっと書き込み、記入項目に抜けがないかチェックする。
名前、所属部署、退職理由などを確認し、最後に特典項目を確認する。
希望特典その1「異世界移動能力」
希望特典その2「元の世界のインターネットと接続できる高性能ノートPC」
希望特典その3「亜空間倉庫」
希望特典その4「BASTARD!! -暗黒の破壊神-で使用された技や魔法などの使用(罪と罰編まででかつ攻撃が殺傷、非殺傷に切り替えることができる)」
希望特典その5「その4の力を問題なく扱える程度に身体能力と魔力を強化」
……自分で書いておいて何だが、4と5がエグ過ぎるな。
1はいろんな世界を観光するためだ。さっき転生させた世界のリリカルなのはにある翠屋のシュークリームを食べてみたいし、本物のラピュタも見てみたい。
疲れたらまたこの世界にある自分の家に戻って休んだり、回復したらいろんな世界を回って行きたいし。
ただこれ、許可が出るかわからないんだよな。やろうと思えば他の転生者がいる世界線に干渉もできるし。
2は単にこの世界の娯楽が好きだからだ。その情報を常に集められるのに一番適していると思ったのがノートPCで、3の亜空間倉庫に入れておけば邪魔にもならない。電源は……まあ、どうにかなるだろ。
だが残り二つは強すぎるかもしれない。その5の強化についてはどの程度まで上げられるかわからないけど、まあダーク・シュナイダーほどではないだろう。その4についても一応使用できる技とかは罪と罰編までにしているから無詠唱で
それでもやり過ぎてる感は否めないが、個人的にこれは外したくないんだよな……かっこいいから。あとは移動した先で傍若無人な振る舞いをしていたら懲らしめてたりするのもありだ。非殺傷に切り替えることもできるし。
「それでもできるだけ使わない、という方向で行くか」
そもそも暴れに行くんじゃなくて、観光に行く先で身を守るための物だからな。強すぎるくらいがちょうどいいかもしれない。
「あとはこれを送って承認をもらえば良しだな」
仕事用の端末を起動させ、書類を紙媒体から電子媒体に変化させて上司に転送する。
返事が来るまでに持っていくものを選定するかと考えていると、すぐさま目的の人物から通信が送られてきた。
コールを受諾して空間ウィンドウを起動させると、俺の上司である女性が映し出された。
「早いですね」
『……これは本気か?』
「はい」
先ほど送った書類を見せられ、間髪入れずに答える。
向こうも理由とこちらの状況を察しているためか「そうか」と答えると、残念そうに書類に受領のサインを入れる。
『できることなら、あと半年は残ってもらいたかったな』
「その頃なら人事異動とかの季節だから配属の調整しやすいですもんね。それはわかりますけど――」
『わかっている。 今まで本当にご苦労だった。書類が完全承認されるまで2、3日かかるから、それまでゆっくりしてくれ。ただ、特典1の『異世界移動能力』は認可が下りるかわからないぞ。過去に一人だけ制限付きで所有が認められた能力だが、彼は例外中の例外だったからな』
「了解です。では」
通信を終了させ、大きく伸びをする。
これで承認が完了すれば、晴れて自由の身だ。時間もできたことだし、溜まった趣味を消化するか。
心なしか体が軽くなったのを感じながら、とりあえず本棚から読みかけのシリーズ小説を手にしてベッドの上に身を投げ出す。
――この時、あんな面倒事が起きるなんて俺は露にも思わなかった。
◇
退職願を出して三日。ソファーに寝転んで本を読んでいると予定通り上司から通信が入ったが、その表情は明らかにすぐれないものだった。
「……なにかありましたか?」
『……非常に言いにくいことなんだが、退職する前に一つ仕事を引き受けてもらいたい』
避けては通れなさそうな嫌な予感を感じ体制を直しつつ尋ねると、予想通りの答えが返ってきた。
しかもこの声のトーンからして、かなりの面倒事のようだ。
『前回、君が転生させた男なんだが……』
前回……ああ、あの小太りデブか。あれがどうしたんだ?
『……転生した先の世界で自分の思い通りにいかないからと転生する世界のやり直しを要求しているらしい。しかもこれが受け入れられなければ、その世界を破壊するとまで言っているそうだ』
「……は?」
呆れてものが言えなかった。
思い通りにいかなかったから世界を人質にしてやり直しを求めるとか、そんなの初めて聞いたぞ。
「別に無視していればいいんじゃないですか? その世界がなくなっても、どうせ『ありえた可能性』としてその世界がなくなるだけですし」
この転生システムは転生先の世界に新しい世界線を組み込んで転生者に第2の人生を歩ませるが、仮にその世界線が滅んでも『転生者が入ったことで辿り着いた可能性の一つ』として処理されて終わるだけだ。
他の世界線には何の影響も与えないし、こっちとしても「ああ、こいつの二回目はこれで終わったのか」程度の認識でしかない。
『それがな、破壊する手段に時の庭園の動力炉と自身の魔力をオーバーロードさせた上でジュエルシード21個全てを暴走させると言っているんだ。動力炉とジュエルシード10個ほどの暴走だけなら問題ないが、SSSランクの魔力と全ジュエルシードの暴走が加わった場合、少なくない確率で強大な歪みが発生してオリジナルの世界が根本から崩壊する可能性があるというのがわかった』
「はあ!?」
オリジナルの世界の崩壊だと!? そんなことになったら世界そのものがなかったことになって別の世界線に転生した人間まで巻き添えになるぞ!?
『幸い彼が転生してまだ日が浅い。原作とやらも始まっていないようだし、食い止めることは十分に可能だ』
「……ちょっと待ってください。 まだ原作が始まってないのにやり直しを要求してるんですか?」
『ああ。なんでも聖祥大付属に転入して原作キャラと会合を果たしたのに、特典で得られたニコポナデポが機能していないと言っているそうだ』
「……まさか初対面でいきなり頭を撫でに行って、それが成功しなかったのが原因とかじゃないでしょうね?」
自分で言っといてあれだが、ガチでありそうな気がしてきたぞこれ……。
『そこまでは分からないが、このまま放置しておくわけにもいかないので上層部は彼を行動不能にしたうえでこの世界線から取り除き安定を保つことを決定した』
「行動不能に持ち込む理由は何ですか?」
『悪足掻きをされないようにするためと、地獄へ落とすためだな。本来ならまず天界裁判にかけられるのだが、脅しにしてもやろうとしていることの結末があまりにも酷い。その身勝手な要求と脅迫が閻魔局長の逆鱗に触れて、あの方直々に無間地獄行きの決定が出された』
よりにもよってあの局長の決定か。まあオリジナル世界の消滅とそれに伴う無関係の転生者の巻き添えを考えれば妥当なところだな。
「それで、具体的にはどんな風にするんですか?」
『ああ、向こうが自分を転生させた神……つまり君を連れて来いと喚いていてな。退職特典を受け取り次第、君には対象者の鎮圧を行ってほしい。既に承認は降りている」
「……質問、いいですか?」
『なんだ?』
「過程はどうあれ、とにかくあいつを行動不能にしたらいいんですよね?」
『そうだ。特典の5については特典4の内容を知っている奴の意見を参考にして設定するが、決して弱い者にはしない。あと報酬は認可が下りるか不明瞭だった『異世界移動能力』の確約と、君がここに勤めていた時の年収と同額の貴金属だ』
「受けましょう、その依頼」
ほぼ諦めていた『異世界移動能力』が確約されるのは非常に大きい。それにBASTARDの内容を知っている人の基準で強力な力が付与されるのは思わぬ収穫だ。ダーク・シュナイダーはやり過ぎだと思うはずだから精々カル=スかアーシェス・ネイくらいに抑えるだろう。魔力的な意味で言えばルシフェルとかミカエルなんてもっとやばいかも知れない。
「出発はいつですか?」
『少し待て…………今、特典の認可が下りた。ゲートを形成するからそれをくぐってくれ。それで特典が付与される』
「了解」
ソファーから立ち上がって軽く体をほぐすと、目の前にいつも転生者をくぐらせるためのゲートが出現する。
『座標固定完了。転生システム正常稼働。あとは大丈夫だな?』
「大丈夫です。吉報を待っててください、部長」
「わかった。 最後に、その世界で活動するにあたってこちらで名前を用意した。今後、この名前を使ってくれ」
送られてきたデータを頭に叩き込み、その名を今から俺の名前として刻み込む。
「了解。ジェクト・グレイザー、行ってまいります」
仰々しく敬礼をして見せてから通信を切り、俺は目の前のゲートをくぐった。
見切り発車なプロローグ、いかがでしたか?
あらすじにもありましたが、現在書いている作品が完結、または行き詰ったら続きを書いてみますので、更新はどうか気長にお待ちください。
それでは、失礼します。