G・E・C 2  時不知   作:GREATWHITE

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最近どうにもシリアス路線なのでちょっと息抜きかつ早く出来上がったので投稿します。
短いですがよろしくお付き合いください。

7月4日20時ごろ追記修正

すみません。追記、加筆した文が投稿した際に何故か反映されておらずオマケ含めて一千文字ほど抜けていました。愚痴って申し訳ないですが…うわ~腹立つな~これ…。


第16話 クレイジーガール 上

エノハとリグは『レイス』とアナンとの合流ポイントである指定場所―旧産業廃棄物処理場に向かって市街外れの朽ち果てた道を走っていた。

 

前時代、アラガミ出現後の混乱、法治体制の崩壊による無法状態も相まってその場所は産業廃棄物はもちろん核廃棄物、医療廃棄物から家庭ごみなどなどバリエーション豊かなラインナップが所狭しと遺棄、投棄されていた。が…

 

正に「捨てる神あれば拾う神あり」。

 

自然現象では決して発生しないヤバメの代物の数々はアラガミ様にとって物珍しい珍味であったようだ。この「レストラン」に多くのアラガミが押し寄せ、それらはほぼ綺麗に撤去―捕食されている。皮肉な話だ。

 

しかしかつての危険廃棄物処理場+それを喰いに来るアラガミの溜まり場だ。好き好んで近づく連中などいるわけがない。秘密裏にアラガミを始末するにはうってつけの場所だ。

 

「…ノエル」

 

『はい』

 

「問題はなさそうか?」

 

『ええ特に。放射性物質の濃度、その他取り立てて害になる様な汚染物質等は検出されていません。先に現地に着いた『レイス』、アナン両名のバイタルも異常なし』

 

「了解!でも二人にはあんまり無理をさせない様にしてくれ。俺達が着くまで」

 

『…』

 

「…ノエル?」

 

『…大丈夫ですよ。多分』

 

「…そんなに強いのか?彼女達は」

 

『まぁ…「あれ」を「強い」と言っていいのかは僕には解りませんが…とりあえず見て頂ければわかると思います』

 

何とも言いづらそうにノエルはそう言った。急造のオペレーター役をはきはきと思いの外そつなくこなしてきたノエルにしては何とも要領を得ない歯切れの悪さであった。

 

「言ったろ。アイツラはそん所そこらのアラガミに後れを取る様な奴らじゃない」

 

エノハと並走しているリグが割り込むように会話に入る。エノハの言いつけ通り無線を取り付けたリグはインカムにこう語りかけた。

 

「ノエル!使ったなアイツ?「あれ」」

 

『…うん。やっぱり慣れないね「あれ」は』

 

「中型二体、コンゴウ種・・「アイツ」の能力にはうってつけだわな」

 

「…お兄さんを話に混ぜなさいキミタチ。年上をいぢめて楽しいかい?」

 

「…割と?」

 

「…」

 

リグが在る程度打ち解けた軽口を叩くようになってくれて嬉しい半面、早速「イヂリ」の対象になった複雑な感情がエノハを包む。

 

 

「…ん!」

 

リグが急に怪訝な声を出して立ち止まる。同時にエノハもリグからやや先行した地点でピタッと足を止め、振り返る。

 

「…リグ?」

 

「丁度いいや。『説明役』が来た。面倒くさいのであとはアイツからよろしく。隊長さん」

 

リグは前方のやや上を指差し、エノハがその方向を見ると軽快、俊敏な黒い影が街路樹と朽ち果てながらもデザイン性を残した街灯を交互に蹴って足を止めたエノハ、リグの前にふわりと舞い降りた。

 

「…お久しぶり。二人とも無事で何より」

 

目の前に現れたのは現在アナンと行動を共にしているはずの『レイス』であった。パタパタと身だしなみを整え、形式的な敬礼をする。カチャリと少女の華奢な背中に細身ながらも長大かつ禍々しい鎌形新神機―ヴァリアントサイズを楽々と掲げた少女は可憐な死神の様であった。

 

「レイス…?なんでここに」

口をパクパクさせながらエノハは呆気にとられてこう言った。

 

「こっちは状況が終了したから二人を迎えに来ただけだけど」

 

「もう仕留めたのか…!?」

 

「ううん。恐らくまだ。欧州第二支部の連中の追跡を振り切るだけあって中々二匹ともタフな個体だし。まだかかるかな」

 

「…どういうことだ。レイス。解る様に説明しろ」

エノハの口調が一気に冷えた。先程までのリグの戯れ程度なら受け流せるが流石にコレは洒落にならない。

 

エノハはリグを連れて彼女達と二手に分かれる前にアナンの神機の「異常性」を垣間見た。その「異常性」を踏まえるとこの場に『レイス』が居ること自体おかしいのだ。

 

普通に考えれば「ここに居てはならない」のだ。『レイス』は。

 

「…?え?」

『レイス』はほんの少しだけ気圧されるように表情を強張らせたが平静を保ち、冷静に考えを巡らせる。ちらりとリグを見る。リグは居心地悪そうにキャップ越しにカリカリ頭を掻く。

 

「…ひょっとしてリグ、ノエル・・あんた達まだエノハさんに説明してないの?」

 

「いや…まぁあれを説明しろって言われてもさぁ…」

 

『ゴメン・・『レイス』。それに…アナンの事だからさ?絶対「私の力私自らエノハさんに見せるまで黙っておいてね!先にネタばれしたらぶっ殺すからね!」とか言うに決まってるしさ…』

 

「はぁ…。納得できるだけに何も言えない。…とりあえずエノハさん落ち着いて。現地でちゃんと説明するからさ。私がここに来られた理由」

 

「…まぁレイスがそう言うんなら納得できる理由なんだろうな」

 

 

 

 

 

 

時間は遡る。

 

エノハがこの部隊―「ハイド」の部下である少年少女三人の神機を初披露目してもらった時の時間だ。その時やはりまず目に入ったのは『レイス』が持つ巨大な異形の神機であった。

 

「それが『ヴァリアントサイズ』か」

 

「そ。名前は『カリス』」

 

諸説あるが「鎌」というのは本来そもそも武器では無く、あくまで農作業用具である。それを殺しの道具として使うこと自体、用途としては錯誤もいい所なのだ。

しかしレイスの華奢な肩にかけた赤黒い刀身は禍々しい半月状の曲線を描き、その刃は触れるだけで命を「収穫」できそうな鈍い光を放っていた。まさしく伝記、宗教、創作物、ホラー映画の如くの「死神の鎌」だ。

 

「ホラ。カリス?エノハさんにご挨拶して」

 

「は~い」とでも言いたげに『レイス』の握った鎌型神機―カリス」は

 

「え?うわっ!?」

 

ぎゅるりと生物的な湿った音を立てて、エノハの眼前まで「延びてきた」。

 

ヴァリアントサイズの「ヴァリアント」―Variantは「変化、変容、変異」を表し、その名に恥じぬポテンシャルをこの神機は持つ。

通常状態が既に長めのリーチに加え、伸縮自在のこの新型神機は今までの神機に比べると圧倒的な攻撃範囲を持つ「咬刃形態」を展開でき、一定の距離から一方的に敵にスクラッチダメージを蓄積させる事が出来る。ただ展開時は長大故に遠心力が大きく、扱うGEの機動力は必然著しく落ち、懐に入られると長物特有の小回りの利かなさがネックという解りやすい弱点を持つ。取り回しの癖は中々に強い。

 

~~~♪~~~❤

 

「うん。エノハさんの事気に入ったみたい。良かったね」

 

「痛い痛い痛い。ちょっと先っぽ刺さってますって!!」

 

新型神機ヴァリアントサイズの「カリス」―ちょっと男好き。

カリスの過激なスキンシップの最中もリグの手元にある神機を見ながらエノハは

 

「リグ。君の神機は…スナイパー銃身か」

 

「ああ。名前は『ケルベロス』」

 

「…→(ぷいっ)」

 

―…それだけかよ!!こんちくしょ~~~後で見てろよコノヤロー…。

 

この時点、見た目だけではリグの神機はシンプルな「旧型世代銃神機」。特異性は解らない為、エノハの興味が見慣れない方に言ってしまうのは無理も無かった。

 

 

それほど。

 

新型神機ヴァリアントサイズを携えた『レイス』。

 

そして

 

アナンが持つ神機の見た目だけで解る特異性、異常性、奇天烈さのインパクトが強すぎた。

 

「で。・・アナン」

 

「は~い♪」

待ってましたと言いたげにアナンは手を上げた。まるで遠足に行く直前の児童がテンションを上げて教師の取る出席確認に対してとってもいいお返事をしているみたいに。

 

しかし。

 

目に見えて解る「忘れ物」はよくない。

 

しおりも持った。おやつも持った。水筒もった。ハンカチも持った。おべんと持った。遠足を心から楽しむ心も持った。完全無欠だ。

 

しかし時は2072年!彼女には足りない!!何か色んな物が!!

そしてそれは「いけませんね。こんな日に忘れ物をしちゃあ。仕方ない…先生の分を少し分けましょう…」というわけにもいかない!!

 

「アナン?」

 

「はい?」

 

「刀身は?」

 

「ありません」

 

「…銃身は?」

 

「ありません」

 

「…」

 

「エノハさん紹介します!私の神機。名前は『エロス』。世界で唯一の盾形態だけの神機だよ!!どう!?凄くない!!??凄い?凄いでしょ!?」

 

少し淡い乙女チックな白みがかったピンク色。丸みを帯びた野球のホームベースのような形状―

 

つまり…

 

その…

 

…ハート型だ。

 

 

そして何よりもその中心のデザインが何とも言えない。向かい合った男女が手を取り合い見つめ合っているという少女漫画的デザインだ。

 

コレはきつい!コレは相当きついぞ!!コレを向けられるアラガミも相当気の毒だ!!

 

「どう!?何か一言!エノハさん!?」

 

「…」

 

アナンの無茶ぶりに言葉が無い。浮かばない。リグ、『レイス』を見るが目を逸らされた。畜生。薄情な部下どもだ。

 

『エノハさん…お取り込み中のとこスイマセン…』

 

地獄で仏。無線からのノエルの声が突如響く。いいタイミングの助け船だ。

 

「はい。こちらエノハ…。どうしたぁノエル?」

しかし声に力がでない。やる気の減衰度が半端ない。

 

『オウガテイルの群れが分散しました。北北東と南南西に。どうしますか?』

 

「そうか…じゃあ仕方ないな。二手に分かれよう…では今聞かせて頂いた皆さんの神機の特性で割り振ると…」

 

「お~!いきなり私と行こっか!!エノハさん!!!」

 

「…レイス。アナンと一緒に行ってくれるか?」

 

「…了解」

 

「え~」

 

「リグ…俺と一緒に来い。まずはお前の力見せてくれ。『驚かせてやる』って言ってたろ?」

 

エノハは口では出来る限り尤もな事を言っているように見えるが、その表情は懇願していた。訴えていた。

 

―頼む。リグ。俺と一緒に来てくれよぉ…。友達だろぉ俺達ぃ。

 

と。

 

「…ああ。解ったよ」

 

―完全な消去法で選ばれた感が抜けねぇ…。

 

まぁ順当な割り当てではあった。

オールラウンダーのエノハ、銃形態のみのリグ。

 

近接型神機の『レイス』。そして盾形態のみのアナン。

 

…あくまで第2候補ではあるが。

 

理想は

 

オールラウンダーのエノハ、盾形態のみのアナン。

 

近接の『レイス』、銃形態のみのリグ。

 

この振り分けの方が両チーム近接、銃撃、防御のバランスがいい。しかしエノハのモチベーションはどうしても今はコレを避けたかった。

 

「んじゃあ私ら行くわ。ちょっ!アナン!いつまでも渋ってないで来る!」

 

「ぶ~っ」

 

アヒル口を尖らせながら渋るアナンを引きずる様に連れて行くレイスをエノハ、リグは見送り、一行は二手に分かれた。

 

これが今朝の出来事であった。

 

 

 

 

 

 




お疲れさまでした。

突貫工事です。+修正です…。一回目書いたものとは別物になっている気がするなぁ…。また見なおします。読了有難うございました!



おまけ

つまり。

アナンの神機は世界で唯一攻撃形態を持たない神機。攻撃し、傷つけ、相手の命をただ只管狩り続ける宿命を与えられた神機の中では異質と言える。
決して相手を傷つけることなく防御にだけ徹することのできる無抵抗主義を貫いた神機。平和的な神機だ。

ピンク色、ハート形、見つめあう男女のデザイン。そして愛の女神「エロス」の名。

まさしくラヴ&ピースを体現した様な神機。








…一見は。


しかしその実態は全く真逆の性質であった。
アナンの神機、そして彼女の「力」は。

争い、諍い、不和をすべて収縮した様な悪意の塊から生まれる産物。


「ふっ…くくっ…くふふっ…うふふふふふ……」




エノハ一行が到着。同時

「……!」

エノハは絶句した。リグ、『レイス』他二人は特段何も言わない。エノハが「こうなる」事を解っていたのだろう



「うふっ……あはっ!あははあはははははははっ!!!!」




何とも無邪気で心から愉快そうな声を上げ、ぱたぱたと足をばたつかせながら断崖絶壁に腰掛け、眼下に広がる光景をアナンは見下ろしていた。
赤毛の少女のその美しいエメラルドグリーンに映る眼下に広がる光景は


愛と平和には程遠い…地獄であった。



一面血の海に覆われ、小型のアラガミが最早原形を留めないくらい叩きつぶされた姿で横たわり、その屍を踏み荒らし、砕きながら中心で二つの存在が対峙していた。

それは欧州第二支部の追跡を振り切った件のコンゴウ二匹であった。

その二匹がまるで悪夢のようにお互いの体を噛み、殴り、へし折り、自分達が撒き散らした足元の血糊で滑り、血まみれ泥まみれになろうともお互いの体を破壊し合っているあまりに凄惨な光景であった。
その光景をまるで小さな子供がまるで初めての人形劇に目を輝かして喰い入るように見入っている姿のように曇りのない眼でアナンが見つめ、そして歓喜しているのだ。

「あはぁっ…あはあははははははははは!!」

全身を投げ出し両手を広げ、アナンは虚空を仰ぐ。視界には映らなくても彼女の耳、そして鼻を通して「視えて」くる。血が噴き出し、巻きあがる香りが。肉が裂け、骨が砕ける音が。堪え切れず腹を抱え、そして次に再び両手を拡げてバタバタ地を叩く。

彼女の右手元には彼女の神機―愛の女神の名を冠した「エロス」が転がっている。

神機の盾形態は装甲展開時以外


…「中心から真っ二つに割れて格納されている」。



つまり展開時は向かい合って手を握り合っていたエロスの男女の意匠は現在、中心から真っ二つに分かれ、向かい合う事も交わる事も無い。


これがアナンの血の力。その名も


「断絶」


オラクル細胞の同種同士、近縁同士の互いの攻撃識別信号を阻害し、破壊する力。


つまり協力し合い、共に歩んでいたはずの者同士を引き裂き、反目させ、最終的に衝突を扇動、扇情させる力だ。

生物は同種同士、近縁の者同士が反目、衝突、接触しあうのを出来るだけ避けるように遺伝子上インプットされている。
同族、同種殺し、家族殺し、共食いそして遺伝子的に欠損の生まれやすい近親相姦など種の保存に好ましくない物を無意識に出来るだけ避けるようにする傾向がある。

アラガミも同様だ。

しかしアナンの血の力はその壁を取り払う。

強固な岩の真ん中に僅かに出来たひび割れ、スキマ。そこにじっくりと水を流し込むように。ゆっくりと、しかし確実にひび割れを広げる。

気付けば結びあっていたものは表裏になり二度と交わらない。

現在の「エロス」のように。


愛憎は表裏一体。




「くふふっ・・あはっ!!!あはあはははははははははは!!!!!!」



アナンのその無邪気な笑い声は対峙し合ったコンゴウ二匹が自らの血の海に沈むまで続いた。

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