元々香港マフィアとフェンリルが統治するこの混沌の支部―フェンリル香港支部、両者の関係性は意外にも決して悪いものではなかった。(そもそも時の最大権力と反社会的組織、暴力組織という一見相成れない存在同士が裏で繋がっていたなど珍しい話ではないが。)
アラガミ出現後の全世界規模の混乱のさ中、いち早いアラガミ防護壁の設営によって取り敢えずのアラガミからの被害を最小限に抑えながらも香港支部内では情報ネットワークに氾濫する真偽不明の情報から伝わる外の世界の混乱、アラガミという魑魅魍魎が跋扈する外の世界に対する怯え、不安に端を発した恐慌がなくなるはずがなかった。それらによって暴徒と化した市民の反乱、秩序の崩壊を防ぐために、彼らは「アメとムチ」の関係を以て市民感情の平静を保つことに終始した。
「フェンリル」という現代においての表向きの「絶対正義」と「香港マフィア」の「必要悪」。
両者のそのバランスによってアラガミという外部の「絶対悪」、「天敵」である存在によって生じる混乱を最小限に抑えたのである。
ややすれば「強引」ともとれるフェンリル統治に反する組織を秘密裏にマフィアが「暴力団抗争」の名の下に処理、粛清し、それを表向き「絶対正義」のフェンリルが取り締まり、民間の支持を得る。「アラガミからも反政府組織からも自分たちを庇護してくれる存在としてのフェンリル」を演出し、市民感情を鎮静化させる。完全な出来レースだが時代故に必要な行為であった。結果、香港支部が前時代の姿を今も尚色濃く残せている要因でもあるであろう。
元々マフィア、もしくは日本の「極道」というものは村、町などの人間のコミュニティで自分たちの身を守ったり、秩序を守るための互助団体、もしくは自警団のようなものが彼らの言う「シマ」―謂わば「縄張り」を巡る争い、利害関係により変化していったものである。言うなれば「警察組織」や「軍」というものもそれの発展形ともいえる。
暴力、恐怖、武力によって人間の「無秩序への憧れ、逃避」を制限するという点では両者にはさほど差などないのかもしれない。
しかし―彼らはあくまで「必要悪」である以上、時に、時の権力による排除や粛清、衰退を余儀なくされる存在でもある。
まして現在の表向きの「絶対正義」であるはずのフェンリル香港支部上層部が完全に腐っている状態ではかつてのアラガミ発生時に生まれた両者の奇跡の様な均衡、団結力を期待するのは無理な話だ。前述したように人の集団、組織の関係性というものは変化していくものだからだ。
「…貴方方は現在完全な『弱者の立場』といえる。フェンリルの庇護もなく、自前の武力、暴力、脅しの類も通用しない、行使できない『相手』が近くに巣食っている状態だ。…ダージェ」
「…」
「繰り返すが残念ながら貴方方では奴に対抗できない。あの『インビジブル』というアラガミにはね。…そしてこの支部で唯一奴に対抗できるはずのフェンリルは在ろう事かその存在を許容し、放置。それだけでは飽き足らずそのアラガミに『エサ』を与えている。…ここに住む何も知らない住民たち、そして何も知らずにこれからもやってくる世界各地で居場所を無くした人たちだ」
「…」
上半身を申し訳程度に部下の大男が来ていたオーバーサイズのジャケットで覆い、半裸状態のまま俯く目の前の女性―花琳(ファリン)の表情を覗き込むように見上げながら青年―エノハは語り掛け、そして―
「…!お兄!」
エノハの隣に佇んでいた死神の少女―「レイス」が驚きで軽く目を見開くぐらいに花琳に深くエノハは頭を下げる。
「…俺たちの『身内』の恥をどうか俺たちで注がせていただきたい。でも、どうかその為に貴方方の組織に助力をお願いしたいのです。ダージェ」
しかし、そんなエノハに向けられた返礼は―
「ふっ…くくくっ…ふふっ」
「嘲笑」。まさにそう呼ぶにふさわしい心からの侮蔑を隠さないきぃきぃ声が俯いたままのファリンの喉元から漏れている。
「……?」
「寝ぼけるな。さっきも言ったとおりだ。お前らと話すことなど何もない。フェンリルの犬が今更我々に『力を貸せ』、だと?ここの住民を、そして私の部下を何人見殺しにしてきたか解っているのか?」
「…」
確かに現状、エノハたち「ハイド」はこの香港支部に居着いたアラガミ、「インビジブル」によってでたこの支部の人的被害の正確な数について把握はしていない。
そのタイプの情報統制、管理に関して香港支部上層組織、つまり香港支部支部長―張 劉朱(チャン・リューズ)は徹底している。この支部に招き入れる人間の個人情報、一人一人のデータを精査、収集、統合、管理している。例えばもしこの支部に来た人間が他の支部に家族、近親者を残していた場合―その人間が忽然と「消えた」結果、残された家族から「連絡が取れなくなった」などの訴えが当然発生する可能性がある。フェンリルの他支部からあぶれた人間を受け入れることに関してはこと張は慎重である。
反面―
とかく「喰われても問題のない」人間―「難民」は非常に受け入れが容易だ。神機適性をもたないフェンリルにとって「無価値」の人間でも「飼っている」アラガミの腹を満たして大人しくさせるぐらいはできる―そう考えている。
そもそも「難民の受け入れ」というものは国際社会にとって人道的に大切な仕事ではある。受け入れを拒否した国家には国際的非難が集中することも多い。しかし、反面難民を受け入れるという行為は受け入れ側の国家にとって相当の負担、覚悟、用意、準備、代償を強いる過酷な行為であるのもまた事実である。
何せ言葉、肌の色、価値観、文化、宗教、食べ物までも異なる様な不特定多数の人間を受け入れ、住む場所、食料、仕事の場を与えなければならないのだから当然である。それをシェアする立場の「先住者」との軋轢は当然起こるし、逆に受け入れた難民を不当に扱って私腹を肥やす手口なども横行するため、明確な国際基準の法整備が必要になったり、難民に紛れてテロリストや危険思想の人間が国内に入ってしまうリスクなどデメリットは枚挙に暇がない。
しかし、2070年代の現在―この香港支部においてはその心配がない。難民は異人であろうが善人であろうが悪人であろうが一緒にアラガミの腹の中である。
排泄物をしない都合のいいアラガミの生態ゆえに死体の処理すら必要ない。おまけに自分のいた痕跡を残すことをことさら嫌う習性、特性をもつ特殊なアラガミのため、残留物、目撃者すら残していない。
さらにさらにこの非人道的行為を香港支部が行っていることを黙認している他支部の人間も口を割ることはない、ときている。何せ自分の支部の所で慢性的な問題となっている難民やあぶれたフェンリル市民を秘密裏に香港支部に受け入れさせたのは当の彼らである。彼らが受け入れさせたその人たちがどうなるかを承知の上でだ。
当然両者には暗黙の了解―「秘密は墓場までも持っていく」密約が交わされている。
「難民」はフェンリルに公には存在していない、登録されていない人間である。しかし支部内に入った以上は指紋、血液型、神機適性の有無など厳密な管理の為に個人情報登録が通常なされる。しかし香港支部では支部内に入った難民をフェンリル市民に登録する必要はない。
なぜなら彼らにとって「エサ」を登録する必要などないからだ。
よって「ハイド」があのアラガミによってどれだけの人的被害が出ているのかを正確に把握する情報、術は無かった。
…ファリンに話を聞くこの日までは。
「聞かせてやろう」
ファリンはそう言って俯いていた顔を上げる。美しい顔を憎悪と憤怒に歪ませて。
「…解っているだけで9000名以上だ。我々の組織『黒泉(ヘイセン)』の構成員を含めてな」
「…!!」
「9、000……!?」
余りに予想以上の数字にエノハ、「レイス」の二人も言葉を失う他なかった。その表情に満足そうに、しかし尚も表情を歪ませたままファリンはこう続ける。
「この事実を知っている我らを奴らがこの先放っておくわけがない。いずれこの数に我々が加わるのも時間の問題だろうな?そんな奴らの身内に手を貸すなど…できるわけがなかろう。まぁ…むしろ貴様らが我々を今殺すつもりでここに来たのであれば合点がいく状況ではあるがな?」
ファリンは手を広げ、室内をぐるりと見まわす。懐には意識を失い倒れた部下。自分は文字通りの裸一貫。最早抵抗のすべなどない己の状況を晒すように、「さぁ殺せ」とでも言いたげであった。そんな彼女にエノハは沈痛な表情を浮かべつつ、首を振ってこう言った。先ほどまで拷問をされていた時と同じ、苦し気な口調で。
「…ち、違う。ダージェ。俺たちはそんなつもりでここに来たわけじゃない」
「ほう?信ずる証拠は?」
全く逡巡なく、ファリンはエノハを睥睨しながらさらりと囁く。
「…特に無い」
「であろう?よって私の答えは変わらない。一言一句違いなく繰り返そう。…『お前らと話すことなど何もない』。もし我らが手を貸し、協力してあわよくばあのアラガミを仕留めたとしよう。しかしその後、お前らフェンリルにとって都合の悪い情報を知りすぎている邪魔な私たちを消さない理由がどこにある?」
「…」
エノハはしばし黙り込むほかなかった。そんなエノハの表情に満足したようにファリンは最早用をなさない警報ブザーの設置された机に座り、悩まし気なほど白く、優雅な脚線を晒して足を組み、頬杖をけだるげに突いた。
「してお前達?」
「…?」
「お前たちは先程こう言ったな?『貴方方では奴に対抗できない』、と。まぁ得意げに」
「それが…何か?」
「ふっ…お前たちは私たちの事を本当に何も知らないのだな?…我らとて黙って殺される気はない。我らにも…
ベッドを賭けるに値する『切り札』がある。
お前たちだけでなくあの化け物の喉元にすら届く可能性のあるたった一つの我らの刃であり、盾…
そして『矛』がな」
「…?」
「…『J』。後は…頼むよ」
ファリンが小声で小さくそう呟いた。まだ二十代後半、この若さでこの香港の黒社会の一組織を取り仕切っていた女性が初めて年相応な表情を見せたその時―
この部屋の防音設備をいともたやすく切り裂くような轟音が外から響いたのはほぼ同時であった。
数分前―
香港マフィア―「黒泉」のアジト前の玄関にて
「ん~~っおっそいなぁ?エノハさんと『レイス』ったら何やってんのかなぁ~~?」
最近少し薄くなったそばかすをまだあどけない鼻先に散らした赤毛の少女―アナンが何とも暇そうに頬を右手の指先で突きつつ、空を見上げていた。
何とも力の抜ける口調でぼそぼそ呟いている少女だが足元には彼女が完全に意識を断ち切った「黒泉(ヘイセン)」の見張り役を務めていた構成員が一人転がっている。腕も足も既に拘束済み。何かの間違いで意識を取り戻しても最早彼には何もできない。
スキンヘッドで眉毛無し、絵に描いたような極道、チンピラ風の強面な男、おまけにアナンより遥かに体格が大柄な男であるがGEの彼女にとって彼を気絶させることなど朝飯前であった。
彼だけではなく、この玄関から入った先に居た約十数人のマフィアの構成員たちも同様で制圧、拘束を済ませている状態であり、先程アジト内に空しく響き渡った警報音も今は鳴りやんでいる。
現在「ヘイセン」の構成員たちは襲撃してきたハイドの「二人」に一矢報いるどころか自分たちが「襲撃された」という自覚も無いまま「おねんね」、という状態だ。
「ふわぁ~~あ。こんなにたくさん気持ちよさそうに眠ってる人周りに居たらつられて私も眠くなってきちゃったよ。後シクヨロね~~?…リグ?」
「お前ももう少し働けや…」
「何もない」はずのアナンの背後の空間から一人の少年が異空間から滑り出るように現れ、気だるげに玄関先でねそべり始めた赤毛の少女の顔を覗き込み、苦言を呈す。
「ステルスモード」を解いた少年―リグ。アジト内の「ヘイセン」の構成員に誰一人として存在を知られず制圧、拘束した彼も何とも退屈そうに首をならす。
「相変わらずアンタの能力は便利だよね~~?ホントこういう仕事に向いてる。私もそんな能力が良かったな~♪」
「…よく言うぜ。はっきり言ってお前ほど自分の能力に悪い意味で噛み合い過ぎてる奴は居ねぇよ」
「ふふん♪誉め言葉に与かり光栄ですヨ」
「…なんでこんなまどろっこしいマネすんのかね?エノハさんも。こんな奴ら殴って言うこと聞かせたらいい話なんじゃねぇのか?」
「焦んないの。目的忘れんな少年?私らヤーさん鎮圧しに来たわけじゃないの。私らの仕事はあくまでアラガミの討伐」
一応の年長者としてアナンはリグを窘めはじめる。
「…この香港支部に関してはフェンリルの協力、情報開示が期待できないかんね~。土地勘も無ければ、奴の住処である地下水脈に関しての情報もない。つまり闇雲に突っ込めば下手すりゃ私らも上海支部の連中の二の舞になる」
この少女は性格、そして自分の神機、特殊能力の特性上、敵を決して過小評価しない。彼女の趣味である「目の前の修羅場、地獄を楽しみ、愉悦に浸る」―そのためには手順と下調べが必要なことをよく解っている。
「おまけにこの支部内に持ち込める物品、資材も厳重に連中に管理されてるときてる。戦える戦力、装備が整わなくちゃいくら私らでも今回は危ないっしょ?今回のアラガミハッキリ言ってかなり厄介な能力、習性持ってるかんね」
「ちっ…」
「加えて…今回私らはエノハさん抜きでそいつを殺らなくちゃいけない。それで準備も装備も整わないんじゃ…どうなるか分かるよね?アンタもエノハさんが居なけりゃ自分が今までの旅で何回か死んだかもっていう自覚ぐらいあるでしょ?」
「…」
「…リグ。よく聞きな?今回は色んな意味で正攻法にはいかない。でも物事には何事にも抜け道がある。それを知っているのがこの香港支部の『裏社会』に通じた人間、つまりこの人等ってことよ」
合法、非合法、もしくはその基準が曖昧な物品を裏のルートから国内に仕入れたり、世間一般には出回らない裏の世界の情報収集を行うことに関して「裏社会」に生きる人間は時代問わずエキスパートだ。
表からが駄目なら裏から入る。至極当然の発想である。
「今回の任務にこの人らの情報、協力は必須。『蛇の道は蛇』っていうでしょう?でも…肝心な所でこの人等に裏切られたり、偽の情報でも伝えられたら私らがヤバイ。だからエノハさんは単純に力でねじ伏せて言うことを聞かせるのではなく、まず対話、交渉から開始しようってことで一人で行ったんでしょ。自分の目で見て口の堅そうで、信頼できそうな人を確認しに、ね?そこは理解したげて」
「解ってら」
「うん♪リグが少し成長してくれてお姉さんは嬉しいぞい」
そんな会話を二人がしていた時であった。
GEとして異常な程、研ぎ澄まされた感覚を持っているこの二人を以てしてもその「存在」の接近に直ぐには気が付かなかった。
――…!!!!
―迂闊…!!
内心両者自分の失態を攻める。恐らくその「存在」が初めから自分たちへの攻撃意志を持っていたのであれば奇襲され、仕留められていた可能性が高い。
「…り、リーさん…?」
今リグとアナンの目の前に現れた存在―一人の少年は彼らに一瞥もくれず見張り役の気絶した男に音もなく駆け寄ってきた。
―何だ…コイツ…!?
―…。
リグ、アナンは彼の接近に気付けなかった自分の失態に対するショックからは早々に立ち直り、身構えてはいるものの、現在いきなり現れた少年はその所作に特に反応せず、ただ愚直に倒れた仲間に声をかける。
「お、おい!リーさん!?しっかりしろって!?おい!?」
接近まで気配が感じ取れなかった割には妙に大きな声で倒れた男の名前を少年は呼び続ける。普段は周りを気にせず大声を張り上げるタイプなのだろう。そこから彼の性格が推し量れる。
感情的で気が短く、多弁で大雑把。つまり―
「お前らぁ…リーさんに何した…!?」
こうなる。
横たわった男―リーが全く反応しないことを確認したのち、その男の傍らで特に彼を介抱することもなく先程までくっちゃべっていた二人に対し、即刻敵意を隠さず詰問を開始する。今回の件に関しては誤解でも何でもなく、実際に二人がこのアジトを襲撃したことは確かなので彼の怒りは決して間違ってはいないが。
「…答えろ」
すっくと立ちあがり、少年は二人をにらんだ。年齢は恐らくリグやアナンと同年代か少し上ぐらいの印象。背もすらりと高い。くたびれたオリーブ色のカーゴパンツに黒のブルゾン、インナーには白シャツとラフな出で立ちだが細部から覗く手首、腕、胸板、肩甲骨から痩身ながらも非常に引き締まった体格をしていることが解る。
おまけに十中八九、彼のお仲間であろう「リーさん」を気絶させたのがリグ達であることが解っているため、彼の体は怒りと共に徐々に隆起していることが解る。
同時ふわりと一メートル以上の長さの結わえた黒髪も宙に舞っていた。これは中国の伝統的な髪型である「辨髪」と呼ばれる髪型である。それがまるで攻撃態勢の蠍の尾の如くリグ達を威嚇するように揺れる。リグ達に敵意を向ける眼差しは引き絞られた弓の様に細く尖った吊り目をしており、その瞼の上にはこれまたまるで蠍の鋏の様に二股の特徴的な眉毛がこれまた鋭角に引き絞られている。
そして何よりも。
彼が肩にかけている黒い物体の「気配」に二人は気圧されていた。まるで「戒め」の如く無数のベルトによってコーティング、固定された長身なこの少年の背丈を遥かに超える長細い物体―例え覆い隠されていようとそれが「何」なのかリグ、アナンの二人には解っていた。感じ取っていた。しかし、分かっていてもすぐには頭の中で理解できなかった。
―何故「それ」を…!?
それは間違いなくある意味彼らの同族―
「神機」の気配であった。
「は~~~ん。答えねぇか…じゃあそれでもいいや」
「バツん」と大きな音を立て一つのベルトの固定具を少年がたくましい指ではじくと同時、断続的に同じ音が響いてその物体を包んでいるベルト―拘束具がゆるゆると宙を舞い解かれていく。その隙間から鈍い灰色の物体が僅かに覗いたと思った瞬間―
ドォンっ!!!
地下のエノハたちが居る拷問室にまで届く程の轟音が響き、彼らのアジトの壁にまるで爆発物が直撃したかのようにな大穴が開いた。
無数の破片と埃が周囲に舞い散る中でリグは確信する。
―間違いねぇ。コイツ…
ゴッドイーターだ…!!!
「へぇ…今の躱すか…やっぱりお前ら敵決定」
周囲に巻き上がった無数の破片と煙を引き裂き、現れた痩身の少年は右手に持った長い得物を軽々と振り払い、今の攻撃に瞬きすらしなかったリグを警戒の目で見据えつつせまる。
装備神機―チャージスピア
…アロンダイト。
主に大型アラガミ―ボルグカムラン素材を抽出、摂取することによって顕現する攻守ともに強力な神機である。素材元であるボルグカムラン自体がそもそも強力かつ強大な大型アラガミ種であるため、自然これを扱える、装備できるGE自体の実力もかなり高いことが容易に伺える。
彼こそがファリンの言っていたこの「黒泉(ヘイセン)」最後の切り札であり、最高の牙、武力、そして唯一の「矛」。
名は―
「J」。