戦士「ああっ、魔法使いが死んでる!」勇者「もう王様に貰った金ねえよ⁉︎」   作:てのひら

4 / 4
勇者「あっ、野生のスライムが現れたぞ!」戦士「何でちょっとポ○モン意識してんだ」

 俺たちは久々に草原にやってきていた。

 バイトで貯めた金で、装備もそれなりに整った。新規のパックも買ったし、ストラクも三つは買った。そして残っている金の使い道はといえば、どうせ魔法使いが死ぬので一応残しておく……ようなことはせずに、ぱあっと使い切ってしまうことにした。なぜならどうせ全滅して半分になるからだ。

 そろそろ出発しようと、俺は地面に置いてあったリュックサックを背負う。

 

「えっ、鞄重たっ……これ何入ってんの……?」

「お前が買い占めた薬草だよ!!」

 

 /

 

 さっそく魔物を探す――といきたかったのだが、俺は重大なことに気がついてしまった。

 腰元のベルト付近に手をやる。そこには、やはりあるはずの感触がない。俺は、何度目か分からない溜息をついた。空を仰いで、やれやれと首を振る。腕を組んで、ニヒルに笑ってみる。俺は振り向いて、震えた声で戦士に告げた。

 

「あのさ……剣忘れた」

「何やってんの!?」

「ついでに盾も忘れた」

「道理で軽装だよ!」

「ほら、ブランクがさ……」

「そういうレベルじゃねえだろ!! もはや『記憶の喪失』だよ!」

「いや、デッキとベイ○レードはちゃんと持ってきてある」

「お前何しに来たの!?」

 

 /

 

 戦士にケツを蹴っ飛ばされて自宅に戻ると、道具を整えて草原に戻ってくる。ちなみに魔法使いは、忘れてきた枕を取りに帰ろうとして戦士に背負い投げされていた。

 魔物を探しに行く前に、一応最後の確認をしておくことにする。薬草がパンパンに詰まったリュックサックを開く、が――

 

「……戦士」

「今度は何だよ……」

「……デッキとベイ○レード忘れた」

「いらねえよ!! 何必須アイテムみたいに言ってんだ!」

「……戦士」

「次は何だよ……」

「……これ、盾じゃなくてお鍋の蓋だ」

「知らねえよ!! もういいよそれで! 一応盾の部類だよ!」

「……戦士」

「もう勘弁してくれ!」

「……これ、剣じゃなくておたまだ」

「お前ぶっ飛ばすぞ!!」

 

 /

 

 三度目の正直。今度こそ道具を整えて、草原に戻ってくる。ようやく魔物を探していると、例の透明なアイツを見つけた。

 

「あっ、野生のスライムが現れたぞ!」

「何でちょっとポ○モン意識してんだ」

「スライムA、スライムB、スライムCの三体でお送りします」

「サザ○さんも織り交ぜてきた!」

 

 冗談はこのくらいにして、俺は腰元の鞘から銅の剣を引き抜く。太陽に翳してもまるで輝かない刀身が相変わらず汚かった。

 俺は俊敏な動きで距離を詰めると、スライムに勢いよく切りかかる!

 

「ッしャァッホィホィッ!」

「掛け声!!」

「まずい、バイトの癖が」

「まだ首になってなかったのかよ!」

 

 返す刀でもう一度切りつける。

 

「はォンほォッ! へィッ!」

「お前もう黙ってろよ!」

「っふッ……」

「っちょ熱ッ!? 魔法使いメラこっちに飛んできたけど!?」

「戦士死ねっ……」

「お前はどさくさに紛れて何言ってんの!?」

 

 なんやかんやで残り一体まで減らした。俺は切りかかろうとして――いや、スライムの目がどことなく潤んでいる。……ような気がする。

 

「はっ、これはまさか……俗に言う『仲間になりたそうな目でこちらを見ている』か!」

「いや、ないだろ。そんな話聞いたこともないし……」

「じゃあ死ねェ!」

「決断の速さッ!!」

 

 /

 

「あのさ……」

 

 戦士が言う。

 

「マジで、想像以上にやばいぜ」

「今週のポ○モンの話?」

「なわけねえだろ!! チームワークの話だよ馬鹿!」

 

 戦士が地団駄を踏む。

 

「いいじゃん適当で。薬草なら零れ落ちる程あるし」

「むしろ零れ落ちてるけど!?」

 

 後ろを振り向くと、歩いてきた道を示すように薬草が落ちていて、なんというか……ヘンゼルとグレーテルみたいになってる。

 

「お、おお……これで迷わず帰れるな……」

「この大草原で迷えるなら逆に尊敬するわ」

 

 戦士の皮肉を華麗にスルーすると、俺はさりげなくレジャーシートを敷く。昼時だし休憩にしよう。持ってきた缶ジュースのプルタブを開ける。

 

「って、飲み物のチョイース! コーラは完全にやる気ないだろ!?」

「この余計に喉が渇く感じが堪らないよなっ」

「お前ってホント馬鹿だよなっ!」

「私はお弁当持ってきましたよ」

「うわあーありがとう! でもそれ絶対中身ぐちゃぐちゃだからな!?」

 

 騒がしく言い合いながら、俺たちはシートの上に腰を下ろす。魔法使いが作ってきたサンドイッチは、その姿を変えて『食パンと多種多様な具材添え』みたいになっていた。悪く言えばクッソ汚ねえ、何だこれ。

 

「勇者」

「ごめんなさい」

 

 魔法使いがヒノキの棒を掲げたので、俺は光の速さで土下座した。魔法使いが作ったらしいので、あんな姿でも味は美味いに違いないのだ。

 サンドイッチであった何かをもっちゃもっちゃと食していると、戦士が言う。

 

「話戻すけど、俺たち久しぶりでチームワークばらばらじゃん? 誰かが指揮を取ったほうが良いと思うんだが」

 

 俺たちのチームワークが良かった試しは今まで一度もないが、確かに指示を出す人間がいれば少しはマシになるかもしれない。

 俺は言うだけ言ってみた。

 

「あー! 何か今無性に魔王倒してーーっ!」

「凄い露骨にアピールしてきた!」

「ま、デュエルなら俺が勝つけどな」

「何か言ってる!!」

 

 俺が高速でスクワットをしながら迫ると、戦士は諦めたように言った。

 

「……ま、いいよお前で。曲がりなりにも勇者だしな」

「隊長と呼べカスが」

「凄いつけ上がってきた! お前魔法使いもそうやって呼べよ!?」

「あっ、司令官は座っていて下さい。コーラ飲みます?」

「頭上がってねえじゃねえか! 何だその格差!」

「怒らせたら怖いんだよ……」

「情けなっ! うちの隊長情けなッ!」

「じゃあお前は魔法使いのことカスって呼べるのかよ!」

「呼べませーん!」

「ぶっ飛ばすぞ!!」

 

 /

 

 チーム名『チームワーク過去最悪』の俺たち三人は、魔物を求めて再び草原を散策していた。

 がさりと、草むらが音を立てる。身構えた俺に、戦士が言ってきた。

 

「隊長、何か一言ありますか」

「え……マック食いたい」

「知らねえよ!!」

 

 出てきたのはスライムだった。隊長らしく戦陣を切る。俺は叫んだ。

 

「食らえ! 必殺、ゴールデンソード!」

「どうでもいいけど刀身めっちゃ汚れてんぞ!」

「金寄越せェ!」

「そういう意味かよ!!」

 

 /

 

 例の如く、俺たちはかなり不味い状態にあった。

 魔法使いは何か色々あって死んで、俺と戦士はかなりの数のスライムに囲まれている。俺は背中合わせで立つ戦士に聞いた。

 

「なあ戦士……『今の俺にとってスライムなど雑魚同然!』とか何とか言って、一人で突貫していった馬鹿は誰だ?」

「お前だよ」

 

 そういえばそうだった。

 

「でもそれに乗っかって、トリガーハッピーの如くメラを撃ちまくっていたのは誰だ?」

「それは魔法使いだ」

 

 マジで何やってんだよアイツ。

 しかし、責任を追及しても状況は変わらないのだ。どうにか現状を打破しなければ、またバイト漬けの日々が始まってしまう。

 戦士を餌にして逃げるか? それとも戦士を生贄に捧げる?

 いや、そんなこと出来るはずがない。戦士に素早く足払いをかけて、むんずと足を掴み、遠心力を利用してスライムの中へ放り投げるなんてこと、出来るはずがない!

 

「出来るはずがないーーッ‼︎」

 

 俺は戦士に素早く足払いをかけて、むんずと足を掴み、遠心力を利用してスライムの中へ放り投げた。

 

「勇者貴様ァアアアアアアアアアッッ‼︎」

 

 戦士の叫び声を背に、俺は夕焼けに染まる草原を駆け出した。

 果てしない人生の先、俺たちの前には一体何が待ち受けているのか!

 

 俺たちの冒険はこれからだ!

 

 END

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。