「今日の月は美しいねぇ~……満月かぁ……」
そう語る男の手に握られているのは、大振りの刀。その刀身は、毒々しい赤色に染まっている。
「な~?君もそう思うだろ~?」
そう微笑む男の右隣には、眼鏡をかけた中年くらいの男がしゃがみこんでいた。その服、顔には、殺された友人の返り血を浴びたのであろう跡がいくつも残っている。
「た、頼む!命だけは……命だけは助けてくれ!」
懇願する男の顔は、脂汗と涙でグシャグシャになっている。
「そ~だねぇ~。じゃあさ~、聞いていいかなぁ。この辺りに~、鷹名瀬 月って奴は住んでないかな~?」
そう言いながら、男は持っている刀の刃を舌でペロリとひとなめし、中年の男に顔を近づける。
「し、知らない!そんなやつ知らないよ!」
その言葉を聞くと、男は表情を一変させ
「そっかぁ、知らないかぁ。なら仕方ないねぇ~。もう帰っていいよぉ」
そう言って刀を鞘に納めた。
中年の男は逃げ出すかのように立ち上がり走り出そうとする。
「……あの世にな」
中年の男がはっとして振り向いた瞬間、高速で抜かれた刀が、死に恐怖する顔をことごとく斬り飛ばした。
「全くぅ~……どこにいるんだぁ?鷹名瀬ぇ~」
男はそう言いながら刀を空振りさせると、背中の鞘に押し込んだ。すると、近くの草むらから、黒づくめの男が姿を表した。
「隊長、鷹名瀬 月の居場所を特定しました」
「お~流石は僕の部下、仕事できるね~。……早く会いたいよぉ~。鷹名瀬ぇぇ~」
そう言うと、二人は虚空の闇へと姿を消した。
ーーーー
「……んっ…朝か……ん?」
『修羅場は突然やってくるぞ』と昔誰かに教えられた気がする。そのときはさらっと流してしまったが、俺は今そいつの言葉を信じた。信じるしかなかった。
「……にゅ~……んん……」
……なんで彩芽が寝てんだ?俺の布団で……俺のとなりで……。
がらがら!
「いつまで寝てるの月!もう7時……」
タイミング……最悪だな。まず俺も状況を理解していないんだが……。
「……ん?…あら梛木紗さ~ん。お早う~。どうしたの?世界の終わりでもみたような顔して(暗黒微笑)」
そして行きなりの宣戦布告的な発言……何言っちゃってんだお前……!
「ら…月の……バカ!!!!!」
「うぐはうごうわがああぁぁぁぁぁ!!」
お月様まで……飛べるかもね。
彩芽が涼宮邸に来てからはや一週間がたった朝を迎えた俺は、身体中をアザだらけにしながら朝食をいただいているところだった。よく見れば、彩芽と梛木紗の間には、アーク放電のような電撃が走っているように見え……本当に走ってるんじゃないか!?今ちょっと痺れたぞ!?
「そ、そー言えば、梛木紗さんはまだ学生でしょ?学校っていつからなの?」
彼女たちの思考を取り合えず何かしらで変えようと思いその言葉を発したのだが、帰ってきたのは思いもよらない言葉だった。
「え?今日からよ?」
「……な、なぬ?」
「だから、今日からよ」
「……(お昼ご飯……誰が作るんだろう……)」
隣に座っている彩芽は……料理は出来るが何かしらのアクシデントを起こすのだ。十中八九……。
「とまあそんなわけだから、お昼は適当に食べといてね」
そんな可憐な笑顔で言われても、先には暗闇しか見えないぞ……。
「それじゃ、後はよろしくね!」
そう言うと、鞄をもって家を出ていってしまった。あ、食器そのまま……。俺がやるのかこれ……?
ーーーー
いつも道理の見慣れた風景を眺めながら、涼宮梛木紗は学校の門を通りすぎた。ここ、国立グレモリア学園高等学校は、この町、ダルナステリア唯一の国立高校だ。主に、経済や政治についてを教えている。行政の仕事などにつきたい人間は、だいたいここにはいるのだ。等と説明している私も、政治に興味があったので選んだのだ。靴をはきかえ、教室へ向かって歩いていると、後ろから聞き慣れぬ男性の声が聞こえた。
「すみません~。涼宮梛木紗さんですかぁ~?」
ねばつくようなこの声、私は苦手だ。嫌でも体に拒絶反応が出てしまう。
「は、はい。なにかご用でしょうか」
無理矢理に作った愛想笑いで受け答えると、男はペロリとしたなめずりをすると、行きなり至近距離まで顔を近づけてきた。
「ごめんねぇ~、ちょっとおとなしくしてくれるかなぁ~」
気が付くと、私の首もとには20㎝ほどのナイフが突きつけられている。
「君さぁ~、鷹名瀬ってやつを家に止めてるでしょ?僕さぁ~、そいつにようがあるんだよねぇ~」
どうやら月の知人のようだが、明らかに悪い関係にありそうな感じだ。等と解説している場合ではない。この状況をなんとか打破しなければ。
「な、何故……彼になんの用があるの?」
考える時間を得るために適当に質問したが、男は待ってましたとばかりに語り出した。
「あの男にはねぇ、ちょっとばっかし、恨みがあるのさぁ~。だけどぉ~?普通に接触したんじゃぁ奴は感づいてすぐに立ち去るだろぉ~。だから君は、やつを誘き出すための餌って訳なのよぉ~。お分かりかなぁ~」
狂ってる……!このうざい性格だけじゃない……あのヤクザたちとは、気配も殺気も、まるで段違いだ……。怖い……。月っ……!!
ーーーー涼宮邸
午前9時を回った少し暑めの日差しのなか、俺はすることがなくなってしまったので、棒切れ片手に素振りをしていた。俺の使う刀、長曾根虎徹-終極(ながそねこてつ-,しゅうきょく)は天鋼(あまはがね)という非常重く固い、希少価値の高い金属を使っているため、木材では代わりにならないのだが、技の反復さえできればいいかと思い、今に至るのだ。彩芽はというと、朝からずっとテレビにふせっている。本当にあの、閃剣の殺女(せんけんのあやめ)と恐れられた暗殺者なのかね~。今のあいつからは見る影もないが……。
「おい彩芽!久しぶりに相手してくれないか?」
だが、その声に応答はない。
「いないのか?」
気になったので、屋敷全体の気配に意識を集中する。だが、誰の気配も感じ取れない。
「出掛けたのかな…」
なんてことを言ってると、入り口の方に複数の人間の気配を感じた。
「……六人……か」
棒切れを木の下に放り投げると、そのまま玄関の方へと向かった。
横の門を開け外に出ると、そこにはがたいのいい男が六人、スーツに身を包んでたっていた。
「あの、なにかご用でしょうか?」
そう言うと、真ん中にいた男が、胸ポケットから手帳をを取りだしながら歩んできた。
「どうも。国家警備隊危機対策部のフランク・ローダンという者です。涼宮 梛木紗さんのお宅はこちらでよろしいでしょうか」
危機対策部……国内外において対テロ活動を行う国家警備隊の特別部署が、梛木紗さんになんのようだ?
「梛木紗さんは今いませんけど……」
できるだけ丁重に答える……だが、帰ってきた言葉は俺の予想に反する言葉だった。
「知っています。実は、涼宮さんの通う、国立グレモリア学園高等学校に武装集団が立てこもり、涼宮さんが人質にとられている可能性が高い状況です」
な…んだ…って?
「あの、梛木紗さんだけなんですか?」
フランクの目を凝視するように力強く言う。
「ええ、他の生徒は全員外に退避させられたそうです」
なぜそんなことを……?たくさんの人質をとったほうが交渉の役にも立つはず。なのになぜ一人だけ……。
「武装集団の目的は……なんなんですか?」
俺はうつむきながら男にそうたずねる。
「申し訳ありませんが、それは極秘となっておりますので、お話しすることはできません。今言えるのは、ある人物をつれてくるように要求していると言うことです」
「…ッ!」
まさか……いや、偶然にしても出来すぎている。さっき調べたのだが、グレモリア学園の全校生徒は800人を越える。その中で梛木紗だけが人質にとられた。だとすれば、武装集団が要求していると言う人物、それは……
「それでは失礼ですが、家の中を拝見させて……」
「……鷹名瀬 月」
フランクの言葉を遮るように、小さく、だがはっきりとそう言った。
「な、なぜその名を!?それは極秘のはず!なぜ知っているのです!」
意表を突かれた形になったフランクは、余りの驚愕にあわてふためいている。回りの仲間も同じようだ。
「なぜ…か。そいつは今、あなたと前に立っているからですよ。フランクさん」
そう言い放つと、俺は学校のあるほうへと走り出した。
「ちょっと!待ちなさい!」
フランクは必死にそう呼び掛けてくるが、もう俺にそんな声は聞こえていなかった。ただ、自分のせいでまた人を失ってしまう。俺を受け入れ、信じてくれた人を、絶対に失いたくない。その事しか考えていなかった。それしか、考えられなかった。
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(誹謗中傷等はお止めください。所詮は初心者です。ま、所詮は初心者か……と流してください)
それでは、次は五話でお会いしましょう!