漆黒の悪魔と復讐の天使   作:七つの星の七つの夢

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皆さんこんにちは。長期間の放置、大変失礼しました。しばらく学業に専念していたため、なかなか更新できませんでした。ある程度落ち着いて来たので、また更新を始めたいと思います。読者の皆様にはご迷惑をお掛けしました。僭越ながら、これからもよろしくお願いします。それでは、第六話をお楽しみください。


第六話『誰かのために』

 そこでは、耳をつんざくような金属音が、何度も、何度もうちならされていた。音の谷間に、時より、笑い声と、歓喜の声が顔を覗かせる。そうしてすでに、3分の時間が過ぎた。だが、どちらも退くことはなく、ただ、互いに刀を打ち合っている。そしてようやく、月が大きく横に刀を凪ぎ、それを避けるべくノックバックをうった二人の間に、静けさが舞い降りた。私は、遠退きそうな意識をなんとか奮い起こし、二人を見続けた。

 

「ふぅ~。やっぱり強いねぇ~…俺もかなり修行積んだんだけどねぇ~」

 

3分以上切りあっていたにもかかわらず、特に疲れた様子も見せず、あのにやけ面もまだ崩れていない。

 

「……」

 

対する月は、先程から一切表情が崩れてない。それが逆に私に一縷の恐怖心を芽生えさせる。

 

「クールだねぇ~、鷹名瀬月くんよぉ~。そろそろ本気でお前を切り刻んでやるとするかなぁ……こいつを使ってさ」

 

そう言うと、先程持っていた圧力注射器を再び取り出し、新しいカートリッジをはめ込み、自分の腕に打ち込んだ。

 

「これはねぇ……いわゆるブースタードラッグなんだよぉ~。脳神経伝達物質の分泌量を促進させるんだ……打つと案外気持ちいいもんだよぉ~?」

 

等と笑いながら話していたが、突如、カーターの気配がさらに鋭くなった。相変わらず月は一切表情を変えることはない。

 

「全く……本当にイラつかせてくれるよねぇ君は……俺は切り札を使ったんだからさ……君も何か見せてはくれないのかい?」

 

カーターのその言葉に、ようやく月が口を開いた。だがそれは、かつて私を助けてくれた月とは、何か違うものを感じた。

 

「……お前が何をどれだけ使おうと構いはしない……。好きに使え。だが俺のやることは変わらない。俺が殺すといった以上、お前が死ぬのは必然だ。」

 

そう言うと、再び刀を、右下45度に構え直した。カーターもそれに答えるように、にやけ面をいっそう濃くして上段に刀を構える。

 

「舐めやがって……その口今すぐかっ裂いてやる!」

 

先に駆け出したのはカーターだった。上段に構えた刀をなんの惜しげもなく全力で振るう。先程とは比べ物にならないほどの剣速だ。だが月はそれを避けることなく自らの刀で受けとめ、自分の左側に流す。それを見たカーターは左手を刀から離し、腰から抜いた短刀を月へ放つ。月は、それを先読みしていたかのように、引き戻した刀の柄でそれを受けとめ、開いた腹部へと強烈な膝蹴りを叩き込んだ。

 

「うごぁっ!!うぐ……うぶぁぁ……」

 

3メートルほど蹴りとばされたカーターは、苦しそうに腹部を押さえ、口から吐瀉物を吐き出している。よく見れば、先ほど飲み込んだ解毒剤入りのカプセルも転がっている。

 

「き、貴様ぁ……」

 

殺意丸出しのその目は、獲物を狙う蛇を彷彿させるが、月はそれを蔑むように見つめている。

 

「カーター。お前はさっき、相当修行を積んだといったな」

 

「それがどうした!修行が足りませんなんてふざけたこと言いやがるつもりか!!」

 

すでにその顔からはあのにやけ面は消え、月への殺意のみが浮かんでいる。

 

「そんなことを言うつもりはない。確かにお前はあの頃とは別人だ。軍にはいれば要職につけるだろう。だがそれでも、お前は俺に勝つことは出来ない。なぜかわかるか?」

 

「……」

 

カーターは月を睨み付け、口は開かない。だが月は構わず話を続けた。

 

「俺とお前では、背負うものの重さがが違うんだよ。お前が掲げる快楽や復讐など、人を強くするものに値しない。自らの地位を失ったことに対する復讐だと?ふざけるな……。その腐った意思、命と共に消え去るがいい」

 

そう言うと、月は天然理心流の構えを横にしたように構え、腕を力一杯引いた。

 

「貴様さえ……貴様さえいなければ!俺は今ごろダニエル閣下のあとをついで陸軍参謀になっていた!貴様だけは……貴様だけは殺す!!絶対に殺す!!!」

 

叫びにもにた言葉を発し、月の方へと突進していく。だが勝負は着いている。カーターの心は精神はズタズタだ。あの状態では、もうまともに剣も振るえないだろう。

 

「生きているだけよかった。そう思えばよかったんだ。地位や権力がなくたって、人は幸せに生きていける。俺はそんな人を見た。だがお前はそんな人を自分の下らない欲望のために利用した。お前だけは、絶対に許さない!!」

 

その瞬間、眠っていたものが覚醒したかのように、今まで感じさせなかった月の殺気が、一気に空間に放たれた。まるで風を受けているかのような強烈な殺気だ。

 

「だあぁぁまれぇぇぇぇ!!!!!」

 

血走った目をまっすぐに向け、カーターは突進を続ける。

 

「疾神殺蒼流 第三秘剣!牙天昇(がてんしょう)!!」

 

刹那……月の体は、私の目には全くとらえられない速度で動いた。カーターも同様だ。気がついたら走っていたカーターの背後に、彼の姿はあった。カーターは何が起こったのかと言う様子だった。だが次の瞬間、カーターの頭部は中心から縦に真っ二つに分かれた。次いで激しく鮮血を撒き散らし、10メートルほど離れた私の頬に、赤い点を付けた。

 

数秒間動かなかった月だが、はっと気がついたかのように、落ちているカプセルを拾い上げ、私のもとに走ってきた。

 

「梛木沙さん。大丈夫?」

 

それは、飄々としてどこかあどけない、いつもの私の知る鷹名瀬月だった。

 

「えぇ……大丈夫よ……」

 

苦しかったが、少し無理してそう言った。

 

「はいこれ、解毒剤だ」

 

そう言って彼は、私の口に薬を放り込んだ。あまり力は入らなかったが、月が水を飲ませてくれたお陰でなんとか飲み込んだ。数十秒ほどたつと、即効性の薬なのか、体の痛みや倦怠感、呼吸困難などが少しずつ消えていった。

 

「ありがとう……助かっ」

 

「ごめんね梛木沙さん。本当にごめん」

 

月にお礼を言うべく口を開いたが、それを遮るように月はそう語った。

 

「僕と一緒にいたから、僕と知り合ったから、君をこんな目に遭わせて……」

 

私は、返す言葉を見つけられなかった。初めてだったから、月がこんな顔するの。

 

「もう、ここにはいられない……。これ以上、君に迷惑はかけられない。お別れだね……」

 

そう言って彼は、床に置いていた刀を拾い上げ、鞘に納めると、私に背を向けて歩きだした。

 

嫌だ……

 

なぜかは分からないが、私の心は、かたくなにそれを拒絶した。彼との別れを。

 

頭にそれがよぎったとき、既に体が動いていた。

 

「……梛木沙…さん?」

 

自分の胸の前で握りしめられていたはずの私の手は、いつしか彼のてをつかんでいた。

 

「嫌だよ……私、まだあなたのこと、全然知らない!もっと知りたいことあるのに!もっとあなたと話していたいのに!こんなの……こんなお別れ、酷すぎるよ!!」

 

ーーーー

 

その言葉は、俺の心に染み渡るように響いていった。気がついたら、俺は彼女を抱き締めていた。涙を流して訴える彼女を、優しく、受け入れた。

 

「ごめんね梛木沙さん。君の気持ちは嬉しい。だけど、僕と一緒にいたら、またこんなひどい目に遭ってしまう。分かってくれ」

 

そう言って彼女を話そうとした。だが彼女は、いつもの彼女からは想像できないほどの力で、俺を強く引き寄せた。

 

「だったら!あなたが私を守ってよ!ヤクザに襲われた時みたいに、イカれた男に殺されかけたときみたいに、私の正義の味方になってよ!!」

 

違う……俺は正義の味方なんかじゃない。権力者に利用され、ただ人を殺し続けた人間のクズだ。ヤクザやカーターなんかよりももっとたちの悪い、最悪の人間なんだ。

 

「梛木沙さん。僕は昔、インペリアル三世の指示で、暗殺の役目ををになっていたんだ。たくさんの人を殺した。人殺しのための道具なんだ。そんな俺が、正義の見方になんて……」

 

だが彼女は、俺の言葉を遮り、語る。

 

「違う!あなたの過去がどうであれ、私を助けてくれたことには変わらないよ!私にとってあなたは、人殺しの道具んかじゃない。いつもニコニコしてて、優しくて、強くて、何かあったら助けてくれる。本当のヒーローなんだよ?」

 

涙が溢れた。生きてきて初めて、俺は嬉しさで涙を流した。そしてわかった。もう迷いは消えた。もう、迷わない。

 

「……分かったよ。梛木沙さん。今ここで誓うよ。君に何があっても、僕が、いや、俺が必ず君を守る。絶対に……守るから」

 

その言葉に顔をあげた彼女は、涙を流したままだったが、確かに見せてくれた。いつもの、あの優しい笑顔を。

 

この世にもし神様がいるんだったら、聞いてもいいかな?俺は、たくさんの人を殺した。より良い国を作ろうと奮闘していた人々を、俺は殺した。だけど、そんな俺でも、本当に大事なものくらい、守ってもいいよな?それくらい、許してもらえますよね?

 




いかがだったでしょうか。楽しんでいただけましたでしょうか。久々なので、誤字脱字等あるかもしれませんが、その時はご指摘いただけると幸いです。また、感想、アドバイスをお待ちしております。誹謗中傷以外であれば心よりお待ちしております(笑)それでは、次話でお会いしましょう。
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