運命は偶然か、必然か。   作:雪ノ桜

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気づけば7000字越え…あれぇ…おっかしぃぞぉ?5000くらいで終わらせようと思ってたのに…(´・_・`)

さておき、今回はほんのりほのぼの?回です。


追記:原素、輝石など、物語において重要な単語ですが、こちらのルビをこの回から振りません。
初めて出てきた用語などはその話限りで振らせて頂きます。
把握、お願いします。





永遠に続く約束を

 

 

 

 

「フィオナ殿、此方が──フィオナ殿?」

 

「え?あ、はい。すみません。こういった事には慣れていないので…」

 

見惚れていた、なんて言える訳ない。

 

「では──」

 

「いいよアストン。僕が自分で言うから。」

 

「?そうですか。では、大人の私はここで失礼致します。」

 

一つ礼をしてアストンさんは来た道を戻って行く。

一体、私は何をすれば────

 

「…立ってないで、座ったらどう?」

 

「っ!で、では、御前失礼します。」

 

ドレスの裾を軽く摘んで椅子に座る。こういった所作については着付けが終わった直後にメイドに叩き込まれた。

 

(…アストンさんも必死だな。一体こんな子どもに何があるんだか…)

 

まだ高鳴り続ける胸を落ち着かせて、給仕室からやってきたメイドの淹れた紅茶を一口啜る。

(ほの)かに薫るベリーの香り。しかも1種類ではなく、ミックスされた所為か更に味までも引き立てられていた。

 

「…では。」

 

「…?」

 

「ご紹介に預かりました、フィオナ・ハーティスと申します。以後お見知り置きを。」

 

ティーカップを置き簡潔に紹介を終えると浅めに座礼をした。

 

「…ハーティス、か。そんな家聞いたことないけど…君はどこの国の貴族だい?少なくとも、ウィンドルじゃあ聞いたことないし。」

 

「私は貴族などではありませんよ。」

 

そう答えると目を丸くして驚いていた。

 

「え、じゃあなぜアストンは僕に会わせたんだい?貴族じゃないなら僕には合わせないはずだけど…」

 

「気になるなら、貴方の御名前と立場を教えて頂きたい。でなければ、私は貴方とお話しすることは出来ません。」

 

相手は顎に手を添え俯き軽く考える。

名前と立場を言わなければ私とは話せない。可笑しな話だ。

けれど本当に話せないのだ。相手が何処の誰で、何者で、何故アストンさんが私に会わせたたのか、その理由を確かめる…いや、確信するためにも。

 

「…僕はリチャード。ウィンドル国国王の息子さ。」

 

「…では、リチャード殿下という事で宜しいでしょうか。」

 

「好きに呼べばいい。」

 

リチャード殿下は、不機嫌そうにそう答えた。

 

「では、貴方をなんと呼べば宜しいのですか?」

 

「だから、好きに──」

 

「貴方がこう呼んでほしい、というのは無いのですか?」

 

「…どうせ、言ったところで僕の身分の所為で通るはずないだろ。」

 

「頭に乗るな、ガキが。」

 

あ、と思った。しまった、とも言う。

あまりにも自らを悲観している所為で、ついつい言葉として出てしまった。

 

「今、なんて?」

 

「…いいえ、忘れて下さい。」

 

何事もなかったかのように再度紅茶を啜る。

まったく、こんなガキの何処が私と似ているのやら…いや、『過去の私』と似ている、か。

 

(他人を信用しないのなんて普通に考えて当たり前だし、抑私はここまで捻くれる程拗らせて…)

 

ふと頭の中に過去が過る。

 

(…たかもしれないな。だとすると、リチャード殿下…いや、リチャードは『過去の私の鏡』のようなものか。)

 

まったく、おかしな話だ。そう考えると自然と笑みが零れる。

彼にとってはまったく理解出来ないようで、不思議そうに私を見ていた。

 

「お聞きしますが、貴方の一番欲しいものはなんですか?」

 

「…?何故そんなことを?」

 

訝しげに私を見る…が、私はそんな視線を全く無視してお茶菓子に手をつけていた。うん、美味しい。

 

「…僕は、自由が欲しい。あと…友人、という存在も。」

 

我儘だろう?

彼はそう言ってお茶菓子に手をつけた。

 

「いえ、我儘じゃないと思いますよ?」

 

「ふうん…本当だったらいいけど。」

 

ここまで人間不信か…いや、でも私よりは軽いかもしれない。私の場合はもっと酷かった。

 

「貴方は人を信じきれていないだけです。立場上、人は信じられないですから。」

 

「?君は何故、さも僕と同じような立場であるというような言い方をするんだい?」

 

「ああ…そういえば、まだ何も言ってませんね。リチャード殿下…いえ、リチャード。貴方は『エルシェ族』という種族をご存知だろうか?」

 

「…っ、エルシェ族…といえば、この星の最初の人間の種族の事かい?」

 

「ええ、間違いありません。」

 

「だけど、エルシェ族は古代の種族で、もう絶滅したと本に書かれていた。」

 

「だとしたら、その本は嘘を書いていますね。」

 

クスクスとおかしくて笑ってしまった。

逆に何故おかしいのか、というような目でリチャードは私を見た。

 

「エルシェ族は今も尚、その存在を消してなどいません。」

 

「で、でも本当にそうだと僕は教わった。聞くけど、まだ存在しているという証拠はあるのかい?」

 

「ええ、ありますよ。」

 

リチャードはまだ不思議そうに私を見る。

まだ気づかないのか。

 

「なんせ、私はエルシェ族であり、次代の長ですから。」

 

「っ嘘だ!なら何故、その()()()()()()()がない!?」

 

「…特徴であるもの?」

 

特徴?そんなもの、特に其処等の人と変わらない…

いや私がそう思っているだけで、実は外に伝わっていたとか…

というより、里から外に出て行く者がいない中で特徴たるものが伝わる筈がないのだが。

 

「…僕が読んだ本だと、エルシェ族は体の人目の付くところに花の痣があるって書いてたんだ。」

 

「ああ、花の痣ですか。それならありますよ。」

 

そう言って私は左手で左胸の辺りの布を少し下にずらす。

 

「ちょっ、何を!?」

 

「花の痣でしたら、此方に。私のは桜と百合が重なったものですね。色がくっきり着いてる上、二種類なんて珍しい…と、どうしました?」

 

何の返答もない事に違和感を覚え、リチャードを見ると彼は顔を真っ赤に染めながら視線を逸らせていた。

 

「…どうかなさいましたか?」

 

「いいいいや!!そっ、そもそも!人前で胸元の肌をあらわにするのは如何なものかと!だっだからほら早く隠して!」

 

声をひっくり返しながら全くの正論を言われる。

私も落ちたものだな。

 

「そうですか…いえ、失礼。里では痣は見せるのが当たり前なので…」

 

「…どうして、見せるのが当たり前なんだい?それに、痣はみな同じ場所にあるのかい?」

 

胸元をきちんと直したことを確認してからリチャードはまた私を見直した。

里、か。この事を詳しく誰かに話すのは初めてだから伝わるかどうか…

 

「痣を見せるのは、自分が「エルシェ族である」事を証明するためです。それに、痣の位置と刻まれている花の数と種類は家系によります。」

 

「へえ、数や種類まであるんだ?」

 

「ええ。それぞれ決まっています。抑、この痣はエルシェ族である証明とともに、その家系や個人の潜在能力がどの程度かを推し量るために──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ふうん、聞いてる限りじゃあエルシェ族の里というのはウィンドル国にあるようには思えないね。」

 

「私から見てみれば、リチャードの住むこの世界こそ私達の里と同じ世界にあることが信じられません。」

 

里の話を始めてどのくらい経っただろうか。リチャードは飽きもせずに私の話を熱心に聞いてくれた。

彼は最初の時から比べて笑うようにもなった。

 

「えっと、それでなんだけど…どうして、次期エルシェ族の長と僕をアストンは会わせたんだい?」

 

「大分最初の質問に戻りますね…元々は、私がアストンさんに頼まれたんです。私が貴方に会ってくれないか、と。」

 

「アストンがそんな事を…」

 

「貴方が少し前の私に似ていたのでしょう。誰も信じきれず、周りが敵だけであると思い込んでいるところが。」

 

「そりゃあ、誰も信じきれるわけじゃないさ…」

 

「なら、私がエルシェ族だというのは嘘だと思いますか?」

 

「っ!それは…だって、君にはその証拠があるから…」

 

「特徴たる痣を私が知っていて、後から付けたかもしれませんよ?だというのに、貴方は私がエルシェ族だと信じた。」

 

それは紛れもなく私を信じた、という事になる。まだ出会って少々しか経っていない私の事を。

 

「貴方はもっと相手の事を知ってから疑うべきなのです。私が同じ事をしてきたように。」

 

「…君は、何故そこまで言ってくれるんだい?」

 

「…気まぐれ、でしょうか。或いは、私と同じようになって欲しくないからですね。」

 

クッキーを1枚取って囓る。

リチャードにしてみれば素っ気なく聞こえたのだろう。だけどそれが本心である事を相手に伝わらせた。

 

「そうか…ふふっ…」

 

「?どうかしました?」

 

唐突に笑ったリチャードを見て首を傾げる。

少し悩み事から解消されたような、晴々とした表情をしていた。

 

そしてその表情を見ると、また胸がきつく締まるような感じがする。

まったく、この気持ちはなんなのだろうか。

 

「いいや…フィオナは、友だちはいるかい?」

 

「?そうですね…「友」、と呼んで良いのかはわかりませんが、私の中ではそう思っている人はいます。」

 

「そうか…僕はね、もうすぐ出来そうな気がするんだ。」

 

私には、リチャードの言っていることが理解し難かった。

一体何の話を…

 

「フィオナ。」

 

「…はい?」

 

「良ければ、その…」

 

口をもごもごと動かし、言葉をくぐもらせて何か言い掛けているようだった。

 

「リチャード、伝えたい言葉は口から吐き出さなければ伝わりませんよ。」

 

「わ、わかってるさ!」

 

半ば呆れ気味に聞こえたのだろうか。少しだけ落ち込んでるように見えた。

…そんな表情、させるつもじゃなかったのに。

 

(リチャードは一体何を…)

 

其処ではたとつい先程の会話を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

─僕は、自由が欲しい。あと…友人、という存在も

 

 

 

 

 

 

 

 

─フィオナは、友達はいるかい?

 

 

 

 

 

 

 

 

─僕はね、もうすぐ出来そうな気がするんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(…成る程、そういう事か。)

 

リチャードが私に言いたかった事、私に願った事。

それは──

 

「リチャード、私と「友」になりたいのですか?」

 

「!」

 

見透かされた、というような表情をしていた。でも何処か嬉しそうでもある。

何故、私なんかと「友」になりたいのだろうか…

 

「…君は、信じられると思ったんだ。」

 

まるで私の心を読んだかのように、私が欲しがった答えを彼は私の目を見て真っ直ぐに答えた。

 

「君は気づいているかはわからないけど、君は僕と話している時ずっと目を見て話してくれたんだ。仕草も含めて、「嘘」を吐いているようには見えなかったから。」

 

それに、と彼は付け足して続けた。

 

「僕を利用するような奴は、大体は僕の機嫌を取ろうとする。けどフィオナは僕の機嫌を取るような事をしない。思った事を素直に言って、僕を「殿下」としてではなく「1人の人間」として見てくれたから。」

 

「…まあ、貴方の素性を知ったところでどうしようとも思いませんし、貴族だからといって特別扱いするわけもないでしょう。この国に直接住んでいるわけじゃないですし。」

 

もし貴族の気に障り今後国内で手配される──なんて事があったとしても、だ。武力行使してでも私を捕まえたかったら、私も武力を持ってそれを払えばいいだけなのだから。

…きっと物騒だ、と言われそうだが。

 

「だから、フィオナとはその…と、「友だち」になりたい、と思ったんだ。」

 

「そうですね…」

 

私は考える素振りを見せる。

別に友になっても構わないのだ。

けれど友に対する誓いが私にはある。

 

「──私は」

 

「…フィオナ?」

 

「「友」とした者の事は、危険に晒された時私の命を賭してでも護り抜くと誓っています。でも、貴方はそれを成し遂げる自信がないのです。何故なら─」

 

「僕が貴族で、あまり自由に外に出られないから、かい?」

 

リチャードの答えに静かに頷く。

王宮内となると流石に私も無断では立ち入れない。寧ろ立ち入りたくない。手続きとかが面倒そうだから。

アスベルとかはウィンドルにいれば原素の力をフルに使えば何処にいても向かう事ができる。

 

だが王宮だとどうだろう。

空から侵入して人に見つかれば即刻投獄されるだろう。

だからリチャードを護る事が難しいのだ。

 

(ああ、でも、ひとつだけ…)

 

ひとつだけ方法がある。

ただ少々の危険が付き纏ってしまうけど。

 

「…「誓約の儀式」をすれば、離れていても貴方を守る事ができる、かな…?」

 

「それじゃあ、僕と「友だち」になってくれるかい?」

 

「でも、貴方をきちんと護り抜ける自信が─」

 

「「誓約の儀式」というんだから、自信が云々じゃないんじゃないと思うんだ。」

 

「…っ!」

 

「君が僕を護ると誓うのならば、どんな方法を使ってでもそれを厳守する。それが「誓う」という事なんだと僕は思うんだ。」

 

───そうか。

誓うというのは、本当はそういう事なんだ。

 

「ならば…私は誓います。「貴方を何者からも必ず護り抜く」と。」

 

椅子から立ち上がり前のめりになってリチャードの右耳を左手で覆い、私の左耳を右手で覆う。

 

「我らが誓いに、風の祝福を。」

 

微風が吹き始めると私達を中心に風が舞い始める。

辺りの風と私から生み出す原素を混ぜてティアドロップ型のエメラルドグリーンの煇石を創り上げ、ピアスに似たアクセサリを生成する。

 

「永遠に続く、約束を──」

 

微風を全て原素に還元させ互いのに収束させる。

間も無く風は凪が来たかのように静かになった。

 

「フィ、フィオナ…?」

 

「…身体に異変はありませんか?何か、具合が悪いとか…」

 

「いや、特には…それより、何をしたんだい?」

 

私はまだ手を離さず要点だけをまとめて現状の説明をした。

「誓いの欠片」を生成したこと。

この欠片の意味。

そして──

 

「本来なら貴方に危機が訪れれば私に知らせるだけなのですが…私が貴方の傍に居られる保証はありません。なので、危なくなったら風が貴方を助けてくれます。」

 

「か、風が…?」

 

「はい。私が作ったこのアクセサリは、原素が沢山詰まった煇石で出来ています。詰めたのは風の原素なので、風が守ってくれるんです。」

 

ただ、と私は一つ付け加える。

 

「この風は相手を攻撃することはありません。なので目眩しや貴方への危害を防ぐ程度にしかなりませんので…危機を感じたのなら、風の力を借りながら騎士の下へと駆けつけてください。」

 

「でもそれは一回だけかい?」

 

「いえ、バロニアには大翠緑石(グローアンディ)があるので…バロニアにいればまた原素を貯められます。」

 

「そうか、ならこれからはいつでも君が守っていてくれるんだね。」

 

「……まあ、そうですね。」

 

遠回しにそうなるのだろうか。

でも、実際は煇石が守ってくれているから少し違う気も…

 

(でもこれで、リチャードが危険に晒されても大丈夫だろう。それで何よりね。)

 

慣れていないのに体内で生成した原素を詰めた所為なのか、それともリチャードが少しでも身の安全を確保できることに安堵したのか、ふっと体から力が抜けて地べたに座り込んでしまった。

 

「フィオナ!大丈夫かい!?」

 

「…ええ、大丈夫。」

 

ストンと視界から消えたことに驚いたのかリチャードはガタッと音を発てて椅子から立ち私の前の顔を覗き込む。

 

…何故だろうか、「大丈夫だ」と答えたのに彼は私の顔を見続けている。

 

「…リチャード?そっちこそ大丈夫?」

 

「えっ…あ、ああ。その、君が笑っているところ、初めて見たなと思って…」

 

「え──」

 

私が、()()()()()

そんなまさか。

笑うことは、もう諦めた筈なのに…?

 

「それに、一瞬でも君が敬語を使わなかったのが嬉しくて。」

 

「あ。」

 

「いや、直さないで。折角友達になれたんだから、敬語なのは嫌だな。」

 

「…わ、判った。」

 

そう言いながら差し出されたリチャードの手を取る。立ち上がった私はドレスの裾を払い、着いた葉をほろった。

 

さて、どうしたものか。

どうすればいいのか全くわからない。このまままた席について談笑すればいいのだろうか。

 

俯せていた顔を不意にあげると、リチャードは私のことをずっと見ていたのだろうか、ふいと顔を逸らした。

 

(なにか、悪いことでもしたかしら。)

 

そう訊こうとした時だった。

ふと私の梟の気配がする。彼の足首に着けた私が生成した煇石が私に場所を教えてくれる。

そしてずっと旋回している。その場所は…

 

(西ラント道…?)

 

旋回…これは危険を指している。西ラント道上空で旋回。という事は…

 

「っ!アストンさんっ!」

 

「フィオナ!?」

 

急に走り出した私の後を彼は急いで追い掛けて来る。だけど今は構っていられない。ラントが危険に晒されるのだ。

アスベル達をー護らなくては。

 

「待ってフィオナ!せめて何があったかだけでも─!」

 

「ラントが危ないの!申し訳ないけどリチャード、お茶会はここまでよ。また今度、お誘い頂けるかしら?」

 

「え──あ、ああ。勿論だとも!」

 

ありがとう。それだけ言って踵を返そうとするのをリチャードは私の腕を掴み止める。

細い体躯の割に力はあるようで、私は簡単に引き止められてしまう。

 

「リチャード、手を──「なんで君が行こうとするんだ!」………っ!」

 

嘆くように、叫ぶように彼は言った。

問いのようなそれに、私は答えを持ち合わせている。ただ私が「歪な力(ちから)」を持っているから。

彼も判っている筈だ。誓約の儀式をした時点で気付いている筈。

 

リチャードの護衛の時の負傷で動けない兵士もいる。アストンさんはきっとアスベル達に屋敷から出るなと言うだろう。ならば、自由に動けるのは私しかいない。

だから、守れるものは守る。少なくとも私が厄介になってるから。

 

「私は、闘えるから。それだけ。」

 

そう一言、私はリチャードに向けると原素を用いて彼の手から逃れる。その隙を逃さず私は今度こそ踵を返して屋敷の中へ入っていく。

 

その時扉でリチャードの傍にいたあの騎士とすれ違った。糸目で、細身のあいつだ。

彼は私など気に留めないようで何の反応もなく淡々とリチャードの下へと向かっていた。

 

後ろからあいつの、リチャードを屋敷に戻らせようとする声が聞こえる。

それを聞きながら私は走って屋敷へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

「!フィオナ殿!リチャード様とはもう──」

 

「アストンさん!魔道書の類はありますか!?」

 

エントランスでアストンさんとばったり鉢合わせする。アストンさんは何か言いかけていたが、時間もないのでバッサリと遮る。

 

「え、ええ。おい、フレデリック。お持ちしろ。しかし何故…」

 

「アストンさん、急いで動ける兵を招集して西ラント道まで行ってください。もう直に魔物がやって来ます。珍しく、群れを成してくるようです。」

 

「なんと!それは本当ですか!?」

 

「ええ!だから、私は先に言って侵入を食い止めます。アストンさんは兵を率いてなるべく早く来てください。恐らく食い止めるだけで、私じゃ数は減らせそうにないですから。」

 

「わかりました。すぐにでも集めましょう。」

 

先程指示されたフレデリックが手にとても分厚い魔道書を持って戻り、私に手渡した。

少し埃を被っているようで、私はそれを手で払う。表紙と裏表紙には一面を埋め尽くすような十字架、その中央に菱形の風の煇石が埋め込まれていた。

 

「では、私は先に行きます!」

 

魔道書を抱えて扉まで走る。

ノブに手を掛け、ふと思い出して立ち止まり、アストンさんへ振り返った。

 

「申し訳ありませんが、折角のドレス、ボロボロにしますね。」

 

そう言い残して私は屋敷を飛び出した。

 

 

 




さて、「花の痣」ですが、

フィオナの故郷ではエルシェ族の証であると同時にその一族の強さを示しています。
あまり力を持っていない家は蒲公英などの雑草の類になります。

その一方で強い家は桜や百合など、華やかな花の痣があります。


また、椿や水仙は「武」ではなく「芸」に秀でた家になります。

色のつき方にも意味があります。
色が濃く、はっきりしているほど自分の力が引き出せている証拠です。

痣の範囲にも意味が。
その範囲は強さの上限を決めます。「芸」の花はどれだけ上手くなれるか、ということです。
痣の範囲が広ければ広いほど底知れない力を秘めていることになりますね。
因みに、範囲は一族で決まっていて、最大まで広げられた人は数少ないらしい。
例外で限界突破などもある…らしい(´・_・`)


さてさて、花は通常1人1種類です。ですがフィオナは桜と百合の2種類。
これは激レアです。1.000,000人に1人の確率で現れます。もちろん、桜も百合も強い。なので簡単に言うとめっちゃ強い。
範囲については今回触れてませんが現段階では掌より少し小さめです。これから広くなります(´・_・`)



主人公、チート臭半端ねぇ(´・_・`)

追記
【2019/10/30】
一部表現の変更を行いました。
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