運命は偶然か、必然か。   作:雪ノ桜

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※後日、活動報告にてお知らせがあります。


残酷な夢

 

 

side:フィオナ

 

 

夢を、見ている。

 

私を殺そうとしてくる魔物を殺す夢。

後ろにはラントへの関所があって、それを守るかのように私は戦っていた。

 

関所から離れないように、なるべくその場から一歩も動かずに魔導書を広げ応戦する。

 

けれどそれには限界があったようで。

身体のそこから枯れていく感覚が襲う。夢だというのに、やけに現実味を帯びた感覚だ。

 

軈て力が抜けていき、その場にへたりこんだ。

ラントを覆い護っていたものが消えていく。

 

このままじゃ魔物の猛攻は防げない。

それ以前に、私の身すら守れない。

現に、一体の魔物が私にその鋭い鈎爪を振りかぶる。

 

-ああ、これで死ぬのか、と思った。

静かに目を閉じる。軈て訪れるだろう痛みを受け入れるように。

 

けれどそれはいつまで経ってもやって来ない。

恐る恐る目を開けていく。

そこには、アストンさんの背中があった。

どうやら剣で魔物の攻撃を弾いてくれたようだ。

 

剣を構えながら後ろにいる私を見やった。

そして私と視線が交わった途端、彼は彼は目を見開き、そのまま倒れてしまった。

何が起きたのかわからない。私を守ってくれたばかりに、傷を負ってしまったのだろうか。

 

四つん這いで近づいて彼の体を揺する。けれど反応は無い。

それどころか、身体が冷たくなっていってる気がした。

 

「そんな……」

 

思わず言葉が漏れる。

そして頬を涙が伝った。

否。

それは涙ではあったが、あまりにも驚きを隠せないものだった。

 

「え……っ!?」

 

何度も目元を擦る。

けどそれ(・・)はいくらでも零れて止まない。

擦っていくうちに手は色に染まる。

 

(なんで……なんでなんでなんでっ!!)

 

「なんで血が止まらないの!!」

 

思わずそう叫ぶと今度は口の端から何かが滴る感覚が伝わった。

口の中が妙に鉄の味がした。

 

腕で口元を拭うと、矢張り血だった。

私は思わず凍りついた。

 

一体何故。

 

そう考えた途端に胸が苦しくなる。

 

 

 

 

 

熱い。

 

 

 

 

 

 

 

熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

熱い熱い痛い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛いあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついいたいあついイタイアツイイタイアツイイタイアツイイタイアツイイタイアツイイタイアツイイタイ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

身体が引き裂かれそうだ。心臓が爆発する。心臓の………原素核(エレス=コア)が。

 

胸を掻き毟るように強く抑えて蹲る。

 

痛い痛い痛い。

 

過呼吸になりながら必死に耐える。

その間も絶えず血は滴り続け、小さな池溜を作っていく。

 

熱い熱い熱い。

 

なんで私がこんな目に。

 

その時ふと脳裏を過ぎったのは、自らが生み出す原素が暴走しているのでは?という一つの仮説。

 

仮説を立てられたのは良いが対処の仕方が無い。

空気中の水を集めて体を冷やそうにも上手く操作ができない。

 

焔の中にいるようだ。

否。

 

実際に焼かれている。

 

草木も、人も、魔物も、自分も。

 

私以外動くものは無い。

そして、焔は何者にも冷たく襲いかかる。

すべてを燃やして灰へと還していく。

目の前の彼すら焼き尽くす。

 

 

こんなにも苦しいのか。

焔は冷たく、すべてを灰へ還すのか。

守るべき人々を襲うのか。

--私を、燃やすのか。

 

何故、と付こうものに望む返事は何処からも帰ってきやしない。

 

顔を天に向け手を組む。

焔に包まれながら、私は問うた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--ああ、神様。もし貴方が真に御座すのならばお教えください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は何故、護るべくして振るったこの力で彼らを傷付けているのでしょう--

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっと力無く目を瞑る。

その時、酷く頭に何かが響いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-それはね、その力を手に入れた切っ掛けはアナタの ◼◼--

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***************

 

 

 

ひやり、と冷たい感覚がする。

すぅすぅ、と誰かの寝息が聞こえる。

カチャリ、とドアの開く音が聞こえる。

 

私はふっと静かに目を開けた。

知らない天井…ではない。

ラント邸宅の、客室の天井だ。

辺りは薄暗く、閉じられたカーテンの隙間から光が漏れている。恐らくもう夜中なのだろう。

 

セミダブルのベットが二つ並ぶ客室は、私とソフィが使用している部屋だ。

確かにこの二日寝泊まりしていた部屋に違いない。

 

先程開いたドアから誰かの足音が聞こえる。

私はゆっくりと身体を起こした。

 

ずきん、と頭が痛む。

その時慌てて夢のことを思い出した。焦るように自分の手を確認する。

勿論、手は火傷の跡も何も無かった。

あれは夢だった。それだけで安堵できた。

 

「…そんなに安心して、一体その手から何を零しそうになったんだい?」

 

「……リチャード。」

 

私に近づいてきていたのは寝間着姿のリチャードだった。

手には水が張られた手軽な桶に、縁にはタオルが掛けられている。

 

「こんな夜中に歩き回っているなんて、悪い殿下がいたものね。」

 

「君こそ、かなりの無茶をしたとアストンから聞いたよ。」

 

ベッド横の小さなテーブルに桶を置き、また近くにあった椅子に腰掛けた。

起き上がった際に落ちた濡れタオルを拾い上げ、桶の中へ放り込んだ。

 

「……………」

 

「……………」

 

何を話せば良いか分からず、互いに沈黙が訪れる。

昼間の初めてのお茶会の終わり方は明らかに失礼なものだ。礼儀もへったくれもない。

申し訳ないとも思っている。

けれど、生憎私にはそれを上手く伝える言葉が見当たらない。

 

「……フィオナ」

 

「……なに?」

 

顔を上げてリチャードを見ると、彼は目を伏せながらポツリと呟くように私に問うた。

 

「僕は君に、「なぜ行くのか」と訊いたよね。」

 

「………ええ」

 

「そしたら君は、「闘えるから」と言った。」

 

「……………ええ」

 

「…君は、「死ぬかもしれない」ことを考えていないのか?」

 

「……………」

 

すぐには答えられなかった。

 

…死ぬかもしれない、か。実際、私は殺されてもやわには死なない。体内を循環する原素が潰えない限りは。

 

「私は、簡単には死なないよ。」

 

「例え、瀕死であろうとも?」

 

「ええ。……まあ、瀕死の状態で魔物に囲まれてたらまた話は変わるけど。」

 

何でもないかのようにそう返すとリチャードは短く溜息をついた。どうやら呆れてしまったようだ。

 

実際、里から出て私が瀕死になったのは数える程しかない。ただ、その中の一度がなければこうしてアストンさんとの縁もない訳だが。

 

「…普通、瀕死じゃなくても危ないでしょうに。」

 

「生憎、普通じゃないものなので。」

 

「だから、そういう事じゃ…はぁ。まったく、君は本当にああ言えばこう言うよね。」

 

「それは、褒め言葉?」

 

「誰も褒めてなんかいないさ。」

 

どこか諦めたようにおどけて言葉を紡いでいたリチャード。私に対して人の常識を説くのは無駄だと感じたらしい。

けれどリチャードは「ただ、」と言葉を続ける。

 

「君は誰かに心配される身であると自覚した方がいいよ。そうじゃないと、君が1人で危ない所へ行く度に死ぬほど心配する人がいるんだってこと、忘れないで欲しいんだ。」

 

呆れながら、または心配しているような、苦笑のようにも取れる表情でふわりと笑う。

 

リチャードは今、何を思っているのだろう。私には理解ができない。

違う。理解出来るほど、私は正常では無い。正常者の気持ちを、異常者が理解できるわけがないのだ。

 

「…まあ、君からしたら余計な心配かもね。でも、覚えていてほしい。」

 

そして出来れば、とリチャードは言葉を紡ぐ。

 

「出来ることなら…君も、誰かに対してそう思えるといいな。」

 

私は少しだけ驚いた。

昼間の茶会で、柄にもなく私は自分のことを話したのだ。「私がまともじゃない」ことを。

 

さして大事なことでもなく、流してもおかしくないような呟きのような話を、リチャードは覚えていた。

 

覚えていてくれた。その感覚が胸の内でむず痒く感じた。

 

「さて、僕はそろそろ行くよ。」

 

夜中だし、出歩いているのを見つかったらまずいからね。

リチャードはそう行って席を立つ。今まで座っていた椅子を桶の置いてある小さなテーブルの元へと戻し、私へ向き直った。

 

「まだ言いたいことはあるけど、仮にもけが人だし。傷に触ったら大変だ。」

 

「そうね。…こういう時は、なんて言えばいいのかしら。」

 

「それは僕が教えることではないかな。きっと、フィオナが見つけてこそ、今言えなかった言葉を言えた時に気持ちがこもるものだと思うから。」

 

「……?」

 

「ふふっ、それじゃあおやすみ。フィオナ。」

 

「ええ…おやすみ、なさい。」

 

ひらひらと手を振り部屋を出ていくリチャードに手を振り返す。

私が見つけてこそ思いがこもる、か。

 

「…まだ、解りそうにない。」

 

ポツリと呟く。

けれど私を心配してくれるような人がいる事は分かった。

 

この数日は今まで生きてきた中で濃いもので、誰かにものを教えたのも、誰かから何かを気付かされるのも初めてな気がする。

その日々の中で、私は例えまともじゃないままにしても正常者の感じることと同じようなものを得られている筈。

その得られたものにも、誰かからの思いは込められていたのだろうか。

 

「……やっぱり分からない。人とは、難しいのね。」

 

カーテンの隙間から覗き込む満月を見てまた呟く。

月は見守るように、然し突き放すように煌々と輝くばかりだった。

 

 

 

 






皆様お久しぶりです。雪ノ桜です。ご沙汰しておりました。

正直な話、インスピレーションも湧かず物書きとは全く疎遠になってしまってました。この作品、プレイしたのが3年以上前ということもあり物語がどのようなものだったのか、どんなテーマでどのようにキャラクター達がストーリをを歩むのか、記憶が朧気になってしまいました。

そんなダブルパンチを食らっていたお陰で私の意欲も激減、「書く」ことから遠ざかっていました。

しかしハーメルンで他の方の作品を読む事はしていました。なので完全に離れていた訳ではありません。「書く」ことはせずとも「読む」だけはしていました。
私は文才があるとは思っていません。この作品も、その時の「書きたい!」という気持ちだけの見切り発車で始まった作品です。
当時の拙い言葉で物語を紡ぐというのは相当無理がありました。今でも向上したかと問われればイエスとは言えません。

けれど、他の方の作品を読んで強く思いました。「この人たち
は主人公を愛しているのだ」と。
書き始めた当時の私を振り返れば、あるキャラが好きで、そこに私が思い描いたキャラクターを物語に入れたい。その先に、ハッピーエンドを望んでいたこともありありと思い出しました。

未だにインスピレーションが湧いてきている訳ではありませんが、以前よりも意欲は湧いています。
私はこの物語をハッピーエンドまで連れて行きたい。私の愛するキャラクターを、幸せな道へと運びたい。その一心で今は小説を書いています。
長らく更新をお待たせするかもしれません。
ですがどうか、これからもフィオナと彼らのハッピーエンドまでお付き合いいただけると幸いです。
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