長い私の(中での)バカンスが終わり、投稿です。
リチャード出したいのに出せない葛藤が続きます…
side:フィオナ
また一つ疑問が増えてしまったあの夜の次の日、私達は四人で庭に出た。
怒りながらアスベルが扉を勢いよく開けたのを私達は少し気の毒な気持ちで後に続いていた。少女はまぁ…何も判ってないみたいだから。
と言うのも、朝起きて朝食をとるためにアスベル達と合流したときの事。
軽く挨拶を交わし、一階の食堂に向かっている途中、踊り場でアストンさんと会ってしまった。
アスベルとしては朝から最も会いたくなったわけで、それだけで不機嫌になるというのにアストンさんは「昨日も言ったが余計なことはするなよ。子どものお前では出来ることなどないだろう。」と言い捨てて二階の奥へと消えていった。
お陰でアスベルは食事の最中も始終不機嫌なままで、それが今に続いているのである。
「ああもう腹が立つなぁ!親父はいつもああやって威張って!俺の話だって聞いてくれても良いじゃんか!」
「まあまあ兄さん。外に出ちゃって僕たちが動けば、父さんが気付くまでなら自由なんだし、そんなに怒らなくても…」
確かにそうだ。人の話はきちんと聞くものだ。決めつけるのもよくない。
けれど彼がアスベルにそう言ってしまうのは前例があるからか、又は本当に心配なのか。
「それに親父にがみがみ怒られるのはいつも俺ばっかりだ!何でなんだよ!」
「それは兄さんが長男で将来このラント領の領主になるからだよ。父さんは兄さんがフィオナみたいになってほしいんじゃないかな。立派で自分の未来を見据えてる…」
「それはフィオナだからだろ!」
「それは私も同感ね。人は誰かのようにと憧れても完全には成れないのだから。」
ソフィと共に花壇を見ていたが、ヒューバートの一言でつい口を挟んでしまった。
他人は誰かに成り代わることなど出来ない。
私は
「俺は本当は王都へ行って王様に仕える騎士になりたいんだ…」
「なればいいじゃない。」
昨夜聞いた会話。嫌な予感しか駆け巡らない。
此の予感が当たってしまったら…此の兄弟は、離ればなれになる。
「そんなの…どうやって」
「アスベルが決めればいい。どうやってなるか、そんなものは他人が決めるものじゃないでしょう。」
花壇の花から目を離さずにそう言った。
さあっと涼しい風が、私達の少しの沈黙を駆けた。
未来は待つものではなく、「掴み取る」ものなのだとラントに来てから考えるようになっていた。
「あ、アスベル…?」
あれからほんの少し経ってシェリアが困惑した様子で私に説明を求める視線を流す。不貞腐れたアスベルはそっぽを向いて自分の考えていることだけに集中しているようだった。
やれやれ、とか思いながら事の
「アスベル、不貞腐れるのも良いけどそろそろ聞き込みしないと。私が稽古をつけることも出来なくなるよ?」
「うっ…それもそうだな…」
「稽古って…剣の?でもフィオナは剣持ってないじゃない。」
「まあそうなんだけど…それにどちらかと言うと剣より刀とか短刀だけどね。」
「ふうん…よくわからないわ。」
まあこの年頃の女の子は剣になんか興味ないか。私とか、一部例外は除いて。
取り敢えずそんなことは置いておいて、探しに行く…
「その前に、昨日保留したこの子の名前は?あ、言っとくけどタイガーフェスティバルは無しね。」
「アスベルそんな名前つけようとしてたの!?」
流石のシェリアもこれには驚いていた。私も吃驚したけど…今更だけどタイガーフェスティバルって…き、奇抜、だな…?
「そうだよ。兄さんったら変な名前付けようとしてたから、フィオナに怒られてたんだ。「人の名前を侮辱するな」ーって。」
ははと苦笑いするシェリア。
さて、冗談ではなく本当に名はどうするか…
「シェリア、昨日アスベルから貰った花、「クロソフィ」って言ったっけ。」
「うん。クロソフィの花だよ。」
「クロソフィ、か…なら、「ソフィ」っていうのはどうだ?お前、あの花気に入ってたもんな。」
偶然か、私もその名が思い浮かんだ。こんなに単純に決めてしまっても良いのか判らない。
「私は、ソフィ……」
与えられたばかりの名を繰り返し呼ぶ。クロソフィからとった、「ソフィ」。花弁の桃色と少女の色は、相似していて似合っていた。
「…似合っていると思う。」
「えっ…」
皆、意外そうな顔で私を見た。そんなに変なことを言った覚えはないんだけど…
「フィオナ、少し笑った?」
「笑った?私が?」
大層可笑しな事を言うものだ、シェリアは不思議そうに見ているが、私は笑った覚えなど微塵もない。
…が、彼等の目は嘘を言っているようには思えない。
だから私が笑ったなどという起こり得ない事が起こったのだろう。
(少しずつ、私も変わっている…のか?)
喜ばしい事なのかいまいち判らない。変わったところで…裏切られるもの。
変わらずにいようって決めたはず。心を鋼にして、
いつから変わってしまった?
…まさか、3年前?
「……………ナ、……オナ、フィオナ」
「……っ?」
少女…ソフィが私の目の前で掌をヒラヒラと振っている。思考に耽っていたからか、全然気がつかなかった。
兎も角、彼らといるときぐらいこの思考はやめよう。彼等の時間を食ってしまう。
「何でもないよソフィ。さあ、記憶を探しに行こうか?」
ソフィは嬉しそうに、私と手を繋いで隣を歩き始めた。ふと気付いたが、ソフィと呼んだのは私が初めてだ。
だから嬉しそうなのかな?
(…まあいいか。先にこの子の手がかりを探さないと)
まずは街の人に聞き込み、か。
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それから三時間ほど街の人に聞いてみたものの、全くと言っても良い程に何も得られなかった。
またラントを抜けて小さい村に行って聞いてみる…そんな話も出てきたが、シェリアの体調と往復にかかる4時間と言う大きな時間を考えたところ、今日はこれでやめにした方が良さそうだった。
さて、聞き込みが終わったと言うことはアスベルの剣術の稽古だ。現にラント領主邸に戻ってくるや否や、目を爛々と輝かせてじっと私を見てくるのだ。私も約束は破れないから相手はする。
場所は中庭。ヒューバートとシェリア、ソフィは入り口の階段でじっと私達を眺め、私とアスベルは倉庫から持ってきた木刀を一本ずつ持って向き合っている。
「さ、始めましょうか。先ずは私に打ち込みをして。私はそれを全て流すから、流された後すぐ次の攻撃への姿勢を身に付けてね。」
「それじゃあ、フィオナは反撃しないのか?」
「そうしたら稽古じゃなくて一方的なものになるから、私はしない。それをするのは貴方がもっと強くなってからだね。」
私のその一言で彼に火が点いたようで、突撃と共に無造作に打ち込みを始めた。
段々と後ろへ下がっていく私に、段々と私を追い詰めるアスベル。まあ、煽ったらこんなものね。
そして面白いことに、ただ無造作に打ち込んでるだけかと思えばきちんと考えているのだ。私にある筈のほんの少しの隙を探りながら、私に当てないように気を使う。
だけど器用だけでは勝つことは出来ない。彼が打ち込んでくる中、試しにアスベルの木刀を少しつついたが、たった其れ丈の事で急いで距離を取ってしまった。
「やっぱり…いつ反撃されるか警戒して打ち込んでるのね。警戒のあまり慎重になりすぎて不意打ちに弱い。警戒すること自体は悪くない。寧ろ良い心掛けね。けど、それだけじゃ相手を倒すことはできない。それに自分がやられる可能性が出てくる。なら、相手と斬り合っているときは不意打ちからのカウンターを目指すことね。」
「カウンターか…けどそしたら、フィオナが怪我するかもしれないだろ?」
…ふむ、私が「怪我をする」か。そんなこと言われたことないが…しかしなんだろうか。少しばかり嬉しい。
「心遣いは有り難いけど、今は私は貴方の剣の「師」であり「相手」でもある。故に、その気遣いは無用。全力でやらないと稽古の意味がないよ?」
私の真剣さが伝わってくれたのか、再び剣を構えるアスベル。武の道に情けは無用。ましてや稽古などその入り口にもすぎない。
それで手を抜くなど、私から言わせればやる気がないと。
「てやぁぁぁ!」
剣を振りかざし、向かってくる彼に防御の構えをとる。
真正面から来る…そう思っていた。
だけど彼は私の間合いに入った途端、姿勢を低く落とし両手で剣を握り横に斬るように振った。
そして、そのまま私の横を斬り抜けた。察して直ぐ縦に剣の向きを変えて防いだ。…だけど腕に軽い痺れと横腹に鈍い痛みが響く。
つまりは、アスベルの「フェイント」は見事成功し私に一撃を入れた。
(…面白い。)
心の底から、何かが沸々と湧いてくる。
私がこの稽古…いや「手合わせ」を続けたいと、そう願っている。
「…っはははは…!」
「フ、フィオナ?そんなに痛かったのか?」
「いいや、違うよ…貴方の成長が早くて、楽しくなってきちゃった。」
斬り抜けたアスベルに向き直って体を横にし姿勢を落とし、左足を後ろに引いて左手で木刀を持って体の前に出した右腕に木刀の峰を置いた。
我流の構え方。見慣れないこともあってこの攻撃は十中八九当たる。
「さあ、構えて。私も本気で相手をしてあげる。貴方を嘗めてたみたい。殺す気でおいで。」
「殺す気で」という言葉にアスベルは動揺していた。けれどブンブンと首を横に振ってから剣を構え直す。
彼が動くまだ私は動かない。このハンデは変わらない。
そして、少しの間を置いてから彼は動き出した。
no side
数分も経たないうちに、その「手合わせ」は終わった。勝敗は言うまでもなくフィオナの勝ちである。
アスベルは擦り傷まみれになって尻餅をつき、肩で息をしていた。
アスベルはその時思った。「もうフィオナに追い着くことなどできない」と。
そんなアスベルの心中を知らずにフィオナは手を差し出した。とても、申し訳なさそうな顔をしながら。
彼女は初めての感覚…胸の高鳴りを一つ覚えた。近い将来必ず強くなるであろうアスベルに対して、「心が踊った」のだ。
それは彼の父アストンでさえも与えることの出来なかった感覚。本気でやっていなかったとはいえ、大切な師の子を傷まみれにしてしまったに変わりはない。
心が踊り過ぎた、そういうのが正しい言い訳だろう。
「…ごめんねアスベル。立てる…?」
心配と不安の混じった眼差しと声音に、芽生えたばかりの畏怖は消えることはなかった。けれど差し出された手を素直に取るのを見たところ、あまりその気持ちも濃いわけではないようだ。
「やっぱり、フィオナはやっぱり強いな。俺もいつかは…」
「強くなんて、ならなくて良いんだよ。」
アスベルの言葉を遮り、ポツリと彼女は呟いた。
言った本人はきっと気づいてない。言われた彼も気付いていないだろう。ただ、周りにいる者がその言葉の真意を悟った。
刹那、とても複雑な気持ちになっていった。
side:フィオナ
あのアスベルの稽古の後は、ヒューバートに少しだけ稽古をつけてあげた。アスベルに比べてやや技術は劣るものの、やはり筋はよかった。たしなみ程度と言っていたからあまりきつくはしなかった筈なのだが…当の本人は、大の字で寝っ転がっていた。
「フィ…フィオナ…あんまり、きつく…しないで…ぜぇ…」
「それはお前が体力無いだけだろー?俺みたいにもっと動き回れよ。」
「僕は勉強もしなきゃいけないんだよ、兄さんとは違って。」
むくりと体を起こしたヒューバートは口を尖らせながら反論した。
ふむ、私も勉強などたしなんだ事はない。
そう言ったら凄く驚かれた。
「勉強したことないって…どうやって字を読めたの!?」
「えっと…巻物とか、書物を読み回って覚えた。私一人だと解らなかったから、幼馴染みに読んでもらってた。」
その幼馴染み、私を育てた一家の長男だったけど。
因みにこの国の言葉は旅を重ねるうちに覚えていった。大きな都市で一日外に出歩いて、人々が話している話題や指している物、感覚で覚えた。
「と言うより勉強『してない』よりも『教わらなかった』と言えば良いのか…つまりは勉強を教えてくれる人がいなかった。」
「それじゃあ、数式とか見ても何も解らないの?」
「多分。科学者がするようなことは、一切したことないから。」
「誰も教えてくれなかったの?」
シェリアの問いに、どう答えれば良いかわからなくなった。
誰も教えてくれなかったと言えばそうだ。けど、私からも教えてくれとは言っていない。…いや、言えなかった。
「…まあ、育った環境が環境だから。仕方ないと言えば…そうなる。」
「そしたら、その幼馴染みの子は?」
「きちんと勉強していた、かな。」
「…じーっ……」
はい、皆さんに質問です。
ソフィはさっきから何故私にベッタリなのでしょう?
自分抜きで話されていたのが気に食わないのか、又は自分が判らない話だからでしょうか。
「ソフィ…どうかしたの?」
「フィオナ、少し寂しそう。」
「え?」
「…よく、わからないけど。」
…直感、ってやつか。感性の鋭い子ね。
実際、私は寂しいなんて事思ってもいないしソフィの気の遣いすぎ…かな。
取り敢えず撫でておこう。本人も嬉しそうだから。
さて、今は午後三時位、この後は…
「…私の修行をしよう。」
「え、これで終わり?」
ヒューバートが驚いた様子で聞き返す。黙って頷いて彼等に背を向け海辺の洞窟へ歩き出した。
…否、歩き出そうとした。
「フィオナ!」
「…………?」
シェリアの声で私は振り向く。
「あの…私も行って良い?」
「?面白いものなんてないと思うけど…」
「それでも良いの。あ、そうだ!ソフィも行きましょう?」
「フィオナの、しゅぎょう?」
「…仕方ないな。」
ソフィは興味津々だし、シェリアは退かなそうだし。時間の無駄を考えると私が折れた方が良さそうだ。
二人してアスベル達のもとから楽しそうに私に近寄ってくる。
「アスベル、フレデリックにこの事伝えておいてくれる?少し帰り遅くなりそうなこと、アストンさんにも伝えておいて。」
「わかった。気を付けて行ってこいよ。」
手を振って私達を見送る二人を見てから歩き出した。
にしても、何でシェリアは急に付いてこようなんて……
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「…ふう、こんなところかな。」
掌に浮かせた水球を洞窟内の水溜まりへと捨てる。
今日したことは私の体内から生成した
「フィオナはいいよね。アスベルとかヒューバートとかに剣を教えるほど強くてさ。」
ぽつりと唐突にシェリアが呟いた。どんな小声だろうと、何て言ったって洞窟の中だから容易く響いて聞こえる。それとも、わざとだろうか。
「いきなりどうしたの?」
「そのまんまの意味よ。」
「…じゃあ私も言うけど、強くたって良いことなんてない。」
「良いことだらけじゃない。」
その刹那、私はかっとなりそうだった。私の気も知らないで、勝手なことを…
「…アスベルとたくさん遊べて。」
「…っ」
けど、私も同じだった。シェリアの気なんか知らないで、自分だけを悲観していたのかもしれない。
「シェリア、アスベルたちと遊びたいの?」
「…まあ、ね。だってアスベルはすぐに危ないところに行くから…」
「だから、強くなりたいの?」
私とソフィの問いに、シェリアは静かに頷いた。
誰かと共にいたいから強くなりたい。それは、きっと私にはない考えだから私は理解できない。
「本当にそんな理由?」
「本当よ!本当に本当!」
ムッとして反論するシェリア。ムキになるというなら、本当なのだろう。
ふむ、ラントには強くなりたいと願う者が多いのね。
(仕方ない、あまり負担のかからないものを教えよう。)
「そうね。なら、投げナイフを教えてあげる。」
「本当!?ありがとう!」
心の底から喜ぶ彼女を見て、複雑な気持ちになった。
本当に、強くなることが良いことなのだろうか…
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..
「えいっ!」
「違う。肩の力はちゃんと抜いて。」
自らの
またもう一度、と飛ばしてみたものの、設置した的には届かなかった。因みに的は土の
「ねぇ、もう少し的って近くにできない?」
「近くしてもいいけど、
「う…それはちょっと…」
まぁ、このぐらいの子どもは
「…まだ及第点は多いけど、今日はこれまでにしておこう。陽も沈んできたし、夜道は危ない。」
「そっか…そうね、そうよね。危ないものね。」
残念そうに納得するシェリア。
何か、勘違いをしていないか?
「なんでそんなに残念そうなのかは知らないけど、明日からも指導は続けるから。」
「!うん!」
一気に表情が明るくなったシェリアは、気分良さげにスキップしながら洞窟の出口へ向かう。
やれやれ、と思いながら的を崩し、ソフィと共にシェリアの後を追った。
「ソフィは、何故ラントに?」
ふとした私の問いに、ソフィは首を傾げ答えることはなかった。
よくよく考えれば記憶喪失なのだから判らなくても当然の事。
…当然の事なのだが、何かが引っ掛かったままほどける事もなかった。
そのあとは領主邸に三人で帰り、私からケリーさんやアストンさん、フレデリックに頼み込んでシェリアを泊まらせて、ナイフの投げ方のコツとか色々伏せながら私の旅の話をした。
締めをどうしようかな~とか考えてかれこれ1ヶ月通りすぎました今日この頃、台風の被害を受けたかたもいるかもしれませんが如何お過ごしでしょうか。
更新を楽しみにしてくださる皆さま方に、感謝の気持ちと共に遅れてしまったことのお詫びをさせていただきます。
…次回待っててくださいね!!テヘペロ((((